聖杯戦争で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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フタガミウタネを登場させるつもりも無かったので……


ウタネIF

「次は……フタガミ……お前だ」

 

 満身創痍の正義の味方。

 循環する世界を否定し、静止した世界に標準を定める。

 

「ん……まぁ、シオン攻略おめでとう。よくわかんなかったけどすごかったよ」

「っ……!自分の分身が死んで!そんな子どもみたいな感想しか出てこないのか!」

 

 嘆くマジェスティリバイブ。

 対するウタネはシオンの刀を片手に持つだけ。

 

「んー、シオンは私なんだ。私はここにいる。別に細切れになっても他に感想は無いよ。私からすれば貴方たちみんな、子供みたいなもんだし」

 

 ウタネは感情を見せない。自身の分身が目の前で殺されても、目的達成のみを口にする。

 

「……すぐ終わらせてやる!」

《クロックアップ》

 

 その様子に少しの苛立ちを覚えた衛宮士郎初手、シオンの時と同様にガタックウォッチ起動、時空を超えた超高速で走る。

 しかし──

 

「……!」

「たとえどれだけ速くても……この世界の人間であることに違いは無い。同じ人間なら……攻撃を防げないはずがない」

 

 対するフタガミウタネ、その恐るべき能力──双神詩音に通ずる現実改変能力。

 口にした文言が一貫し、矛盾無く意味を持つのなら、その現実性を無視してそれを可能な世界に書き換える。

 クロックアップで加速した攻撃を生身で受ける事は不可能。だがウタネはそれを現在、対応可能だとして捌いている。

 四肢にジェットエンジンを搭載するほどの強烈な魔力放出により限界を遥かに超える瞬間速度を力技で叩き出し、攻撃の全てを持ち前のカン任せに受け続ける。

 常人であれば既にミンチと化す出力にも、ウタネの能力は即座に修復し耐久力をもたらす。

 そしてそれだけの身体的ダメージがありながら、ウタネは顔色ひとつ変えずに動き続ける。

 

「まだだ!」

《INVISIBLE!》

 

 それに対する衛宮士郎、第二の矢。ディエンドによる透明化。

 自身の姿を完璧に消す事で視認される事なく攻撃できる。

 

「例え姿が見えなくとも、実体はそこに存在する。実体が見えなくとも、その他の要素を全て感知できるなら……さして脅威では無い!」

 

 ウタネ、その対応。

 見えない衛宮士郎本人を視認する気はまるで無い。周囲の地面を蹴る音、振動、殺気……本体以外の全てを感知して、透明化以前と変わらぬ動作でして攻撃を防ぎ続ける。

 

「く……」

 

 不可視で超高速の攻撃を何度繰り返してもウタネは的確な防御を続け、衛宮士郎は生身の人間に攻めきれない為に難色を示す。

 

《分身!》

《マッスル化!》

 

 次に衛宮士郎が追加するのはブレイブによる4人への分身。

 エナジーアイテムを追加で使用し、物量で押し切る作戦だ。

 

「……たとえ数が増えようとも、全く同時の攻撃は魔法でなければ不可能。ならばそれが限りなく短くとも、その瞬間だけは1人であるのと変わらない。そしてその瞬間を動けるのなら……回避は可能。そしてどれだけパワーを上げようと……まともに受けなければ効果は無い」

 

 もはやヒトではない──衛宮士郎の恐怖した感想である。

 概念的な時間軸により、あくまで外から見て超高速で動く衛宮士郎だが、ウタネは通常時間にてその動きに対応している。

 いかに現実改変によりその対応が可能になったとはいえど、それをするのはあくまでウタネ自身。

 その超高速に耐えられる肉体ではなく、動かした先から肉が千切れ、神経が分断され、骨が砕け散る。

 だがウタネの能力はその言葉。理論が通るのなら……どれだけ不可能であれども理論を通せるのなら、それを実現させてしまう。

 ウタネの反射……本人の思考や思惑とは別に、少し先の出来事を予感する第六感により、あらゆる超高速に対しその四肢は自動的に、かつ最適な形でそれを対処する。

 そしてウタネの能力……そう思っているだけの双神詩音の能力……により、その不可能な反射動作に耐えきれなかった肉体を瞬時に元の形に復元し固定し、造作も無く実現した様に見せる。

 極めつけはウタネの気力……自身ですら認識できない自身の動作速度、それによる自身の肉体の欠損、その修復……それらの恐怖と激痛を否定、無視。ただ戦い続ける事を選択する。

 

「……!??」

 

 衛宮士郎の動作が中断され、一時静止する。

 その行動は本人さえ困惑している様子。

 

「ん……そろそろ?」

 

 その原因に勘付いたのはウタネ。

 ただ続けた戦闘時間、実に3分。

 100を200を超えて打ち合った戦闘も現実時間で見ればただその程度しか経過していない。

 

「シエルさんいたでしょ。私が誘拐してきた埋葬機関。あの人と同じ。私と5分戦っちゃったの。その末路は知っての通り、悪意を抱くことにさえ拒否反応が出る。3分も戦えば……自分の武器を見るのさえ嫌になる。頑張って耐えて戦っても……5分経過すれば、私の前に這いつくばるしかない」

「く……お前、自分で分かって……」

「分かってるよ。わかんない力なんか戦術に組み込むわけないじゃん」

「ならお前は……耐えられるのか、この何もかもが嫌になる感情に……!」

「……勿論。私は耐え切った。私は耐えて、戦い続けた」

「……!?」

「私ね、仲良かったんだよ。自分で言うだけでどうだかわかんなかったけども。仲間のために自分を犠牲にして、みんなと共に高めあった。前に話したよね。高町なのは。あの子のいた世界をさ、10年過ごして、壊しちゃったんだ。貴方の固有結界みたいに、現実世界をね」

「……」

 

 ただただ偶然だった。

 管理局でのとある業務。節分の日に人攫い組織を豆まきで壊滅させた際に助けた少女。

 それがたまたま紛れ込んだ別世界の天人であり、スカリエッティの欲求に捕まってしまった。

 聖王の代替として使用された少女の扱いにガチギレしたウタネは感情のままに世界の全てをゼロにした。

 そして他の世界に転生し……その次に、また高町なのはと出会うことになる。

 

「でね、その並行世界にまた行っちゃったの。壊したはずの世界を、神が再構築して、私の記憶だけ隠蔽してね。同じくらいの時期から、同じくらい、10年くらいね。誰もさ……誰も、何も、覚えてないんだよ……私のことも、以前過ごした10年以上のことも。過去に戻った……とは違うんだよね。私が壊した世界を再構築して、私が行った時からリスタートした世界だからね、記憶にはあるんだよ。私がみんなを殺したことも、世界を壊したことも。でもね、それを認識できない。あるけど見えない記憶。ホントにね、笑っちゃうくらい嫌だった。私に少なからず罪の意識があるのに……誰も罰しようとしない。どころか歓迎してさえいる。涙さえ出たよ。ホント……いや、コレは嘘。けっこー楽しんじゃった」

 

 知っているはずが思い出せない、ではなく、知っている事を認識できない。

 記憶をノート書き込む、思い出す際にはページを探して以前と同じか確認する。ウタネが2度目に訪れた世界ではウタネの情報が記されたページを開くことができない。

 

「やっぱりお前はそうなんじゃないか。お前は誰がどうなろうと関係ないんだろ!」

「……そうだね。そうだと思う。自覚ある」

「なら今さら俺に何を話す!お前を倒す事に変わりない!」

「貴方なら、耐えられる?自分だけ歴史と記憶からくっぽり抜かれた世界で……知らないフリして、溶け込むなんて……」

「……っ」

 

 仮想の問い、衛宮士郎は想像する。

 友人が、教師が、自分の事を何も覚えていない世界。

 その世界で、当たり前に生きていく……相手の理解度に合わせ、自分の記憶を封印し、現状以上に踏み込み過ぎない……親しかった人間ほど、それは難しくなるだろう。つい、咄嗟に、自分だけが思う関係性が漏れ出てしまう。

 

「私は無理、そんなのできるワケない」

 

 ウタネは自分の戦術を自分では耐えられないと自白する。

 

「……だがっ……!お前は耐え抜いたんだろう!?」

「私は……シオンがいたから、耐えられた」

「そうか」

「シオンは私の社会性を100%補う存在だ。シオンなくして私は人間社会にいられない。私はシオンに存在を託すことでその世界にいられる。シオンのいない社会に私はいられない。でもそれじゃあ人間の未来を知れない。誰かが私の求める答えを持っているかもしれないのに、その答えを得る手段が無い。だから……私は、私の答えを押し付ける」

 

 こうなるとウタネは感情を殺せない。

 ウタネにとってシオンは精神的、社会的な制御装置だ。

 それを失った場合、ウタネは人の話を聞かない。いや、聞くことができない。

 テレビの向こう側、名前も知らない見識者の理屈は頭に入ってはこない。自分の意見を助長する場合ならば聞き入るだろうが、そうでなければ聞くだけ聞いて流れていくだろう。

 シオンのいないウタネはそれと同じこと。

 どうせ死ぬ生命体とだけしか思っていない。人類最後の1人以外は皆、ただ死ぬだけの存在でしかないのだ。

 

「人を殺すのってさ。楽しいんだ。部屋の片付けしてるみたいで。『せーぎのみかた』ってさ、部屋にいろんなオブジェとか置いてくみたいなもんだよね。要らないもの捨てられずにさ、ごちゃごちゃ散らかってさ、ホコリとか溜まってくんだよ」

「散らかった部屋で……何が悪い!」

「私が貴方達の部屋を綺麗に掃除してあげようってこと。何にも無い綺麗な部屋。何も増えず、何も壊れず、何も汚れない。それは永遠だ」

「俺を殺せるか」

「うん。でもね、倒すことにした」

「……お前じゃ俺を倒せない」

「そーだね。私の能力じゃ殺すしか無理だ。けどね、能力の再現は可能ってわかったの。今シオンの身体は無い……私はシオンだ。限定するなら、私も使える」

 

《ダイナソー!》《ウィンドミル》

《レボリューション!》

 

 ウタネの腰に巻かれたエボルドライバー。

 2つのボトルを挿入し、ハンドルを回す。

 

「バカな……それはシオンの!」

「コレもニセモノ。けどそれでもホンモノだ。フウシャ(シオン)は絶滅した。けどそれは化石の様に私に残る」

 

《are you ready?》

 

「変身」

 

《プライム!》《プライム!》《エボルプライム!》

《フハハハはっはっはっはっは!》

 

「シオンとは別のプライムライダー。まぁ、能力的にはフェーズ1程度だろうけどね」

 

 ウタネはシオンと同じフェーズ1へ変身し、その感触を確かめる。

 

「だが関係無い。いくぞ!」

 

《マジェスティ!エルサルバトーレ!》

 

「ふふ、使ってみたかったんだよね、ライダーシステム」

 

 ウタネは嬉々としてハンドルを回す。

 その右足にエネルギーが集中していく。

 

《READY!GO!》

 

 ウタネは衛宮士郎のライダーキックに合わせるように蹴りを放つ。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「む……フェーズ1じゃ無理なのか……」

「はぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 互いのキックは少しの間拮抗したものの、マジェスティリバイブの出力が上回り、後頭部で地面を抉り滑る様に吹き飛ばされる。

 

「う……いたぁ……けどなんか大丈夫そう……死にそうにない……これが強い身体って事か……いた……」

「俺の勝ちだ。フタガミ」

「確かに……戦闘で私は……その辺の中学生にさえ完敗する……けど何度でも言うね……シオンも私なんだ。私だってフェーズ2も可能なはず」

「何……!」

 

《スパイダー!》《クロック》

《レボリューション!》

 

「永遠に執着してる……私って、短絡的で固執した存在なんだ。けど誰も私を納得させられない。だから私も変わらない。基準がゼロなら、そこから何も変わらない。何も生まれず、何も死なず、何も存在しない……」

 

《are you ready?》

 

「……それは、不変という永遠だ」

 

《プライム》《プライム!》《クロックスパイダープライム!》

 

「さぁ、これでフェーズ2相当だ。少しはマシになったでしょ。さー、私ってばカンが未来視レベルに鋭いからさ。肉体が追いつけばせんとーもそこそこイケちゃうわけよ」

「プライムフェーズ2……!宇宙レベルか!だが!」

「だが!?」

 

《ディエンド》

《KAMENRIDE》

《ギンガファイナリー!》《ギンガ!》《ゴッドマキシマムマイティX!》

 

 マジェスティリバイブにまとわりついたウォッチのひとつを起動、召喚されたライダーが能力を発動し、3人のライダーを召喚した。

 

「ファイナリーって……えっちゃんのプライム!……のオリジナル!マジェスティリバイブの能力以上でしょう!?」

「宇宙の力と無制限の能力だ!お前の未来予知だって無限じゃない!」

「うぅ……!」

 

 計5人の遠近交えた攻撃がウタネを襲う。

 ウタネのカンと魔力放出による動作はウタネ自身の思考に依存しないためかろうじて回避は出来ているが、段々と押され始めている。

 

「ぬうううう……く……よし、そっちが増えるなら、こっちはランクアップだ!」

 

《オーバー・ザ・レボリューション!》

 

 ウタネがエボルトリガーを起動、魔力余波でライダーたちが怯む。

 その隙に挿入、ハンドルを回す。

 

「……!フェーズ3か!」

 

《スパイダー!》《クロック!》

《レボリューション!》

 

「せーかい。私だって惑星を破壊して廻るだけの力は持ってる。私達の力もまた同じ」

 

 針の静止した時計と十字の盾が浮かび上がり、それらを圧縮する様に黒いパネルが周囲を舞う。

 

《アーユーレディ!?》

 

「変身……」

 

《ブラックホール!》《ブラックホール!》《ブラックホール!》

《レボリューション!》

《フハハハはっはっはっはっは!》

 

 パネルが箱を形成し、更に収縮、1度完全に姿を消して現れたフェーズ3。

 

「やはは、コレがブラックホール……消滅の象徴だ」

「ブラックホール……だが」

「だが!?」

「それでも敵役である以上コイツに敗北しているはずだ!」

「そ、そのウォッチって縦回転するんだ……?」

 

《ハザードオン!》

《ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!》

 

「うぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁ!」

「……!まだベルトを魔改造するなんて……!こいつ、主人公か……!?」

 

 衛宮士郎は取り出したハザードトリガーをジクウドライバーにセット、エボルドライバーのハンドル部分にあたるウォッチであるはずの何かを回す。

 そうしてマジェスティリバイブはブラックホールをも超えるハザードレベルを得た。

 

「俺が!お前を倒す!世界を壊すお前たちを!俺が!救世主だ!」

「ぐっ……何で……!このまま……!」

 

 重力圏を完全に無視した殴り合い。

 マジェスティリバイブは完全にウタネのフェーズ3を押している。

 

「わ、私が……!シオンの能力を使ってまで……!人間なんかに負けるもんですか!」

「人間をオモチャにするお前たちを俺は絶対倒してみせる!うおぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」

「人間は……!互いを妬み、恨み、争い……!奪い合い、殺し合う!そんなもの、生きてる意味なんて何も無い!わざわざ積み上げた歴史を、技術を、能力をそんな事にしか使わない!積み上げるだけ積み上げて好き勝手に崩してく!そんなくらいなら!たった数100年しか生きてられないのに崩れてくだけなら!初めから何も無い方が良いでしょう!?」

「っ……」

 

 ウタネの語る本心。

 予想に反して……先程までの発言とは真逆の、人を想うことを感じさせる言葉に衛宮士郎の攻撃が止まる。

 

「お前、自分の言ってる事分かってるのか」

「何、どう言う意味?」

「全人類を滅ぼそうだなんて奴が、積み上げたものを崩されたくないって……人間の悪い部分だけを否定している様に、人間自体は肯定している様に聞こえる」

「それの何が分かんないの。私がいつ生命自体を否定したの。人は死ぬ、みんな死ぬ。なのに争い合って死んでいく。そうしなくてもいずれ死ぬ。だから永遠を求めるんだ、私達は。永遠に生きるなり永遠に生まれないなり様々だけどさ、みんな求めるものは同じ。あなたたち人間が、生命が生きてるからこそ滅ぼすの。死んじゃうならさ、産まれてこなければいい。何も積み上げないなら、何も崩れない。私の言葉は生命の全てを否定して、何も産まれない世界を創れる。それは……永遠だ」

 

 生きる命のその先は死。

 動物に限らず、植物、無機物にさえ腐敗、破損といった死……カタチを失う、存在を失うという死が存在する。

 ウタネはその『失う』事を忌避している。

 人間の世界を楽しい、面白いと思うだけの感性は持ち合わせているものの、それらは全ていつか失われる。

 失うくらいなら、何も得ない方が良い。積み上げる幸福も、崩れ落ちる不幸を埋める事はない。

 

「あり得ない……!人は生きてこそ意味を持つ!確かに人は、いずれ死ぬ。その歴史は平均80年……お前からすれば、ちっぽけな時間だ」

「でしょー?だからさ、私達から提案があるの」

「提案……?」

「1、全滅して生まれない。2、才能を開花させつつ、人を妬まず、恨まず、奪い合わない。3、誰も傷付けず、傷付かず、誰もが寿命を全うすること。4、世界の全てを敵にしても怯まないほど子を愛すること。5、誰もが幸福な夢を見ること。誰も不幸にならないこと……この5つ全てに適合すること。それでVNAは人間を殺さない」

「……理想的と言える。最初の提案以外はな」

「なんで!?私だよ!?」

「お前だからだよ!自分が何をしてるのかわかってるのか!?お前は人間を!命を!存在を!物質の全てを完全否定してるんだぞ!?」

「……言ったでしょ。失うくらいなら無いほうがいい」

「たとえ失うとしても!生き続けるその瞬間は!生き続ける限りはその活力を発揮できる!それを否定するお前は!活力ゼロ!ミイラも同然だ!」

「……」

 

 無気力、無感動、無表情。おまけにロングスリーパー、超少食、身体の脆弱さともなれば反論は無い。

 日々何かをするでもなく、ただ自室で時が過ぎるのを見ているだけ。人間というより動物、動物というより植物、植物というより無機物に近い。

 正義の味方の発言は、ウタネを正確に表現していた。

 

「そうだね。私は人間社会に向いてない。私の能力で人間社会を破壊することはできても、人間社会に適合はできない。そういうのも……あるんだ。同じ種族に生まれたのに、私だけは仲間外れ。何の能力も持たない役立たず。だから私は、人間と関わらない。私が変わらない以上、何も話す事はない。今すぐ死ぬのも、別にどうとも思わない。それが社会に有益なら、私は死ぬ。親兄弟が不要なら、殺した後に死ぬ」

「……そんな事は無い。どんな人だって居場所はある。なければならない」

「無い。知性であるが故に、決して交わることの無い軸がある。どう足掻いても私は人間社会に居られない」

 

 ウタネの孤独は埋まらない。根本的な思想、思考回路が人間、生命とは食い違っている。

 どれだけ近づいても、共存はあり得ない。

 

「……でもね、私は意味が見たかった。生物が生き続けたその先、無限の時間と成長、進化の先に滅びる生命。その最後、最期は……何か、意味があるのかどうかって。でもきっと……無いんだよね」

 

 生命には終わりがある。

 それは個体の死では無い。数えきれない種類と繁殖による進化を続け、無限に生存した先にある終わり。戦争によるもの、惑星破壊、宇宙の消滅、何がどうなるかはわからない。だが確実に死ぬ。

 その死までの生命に意味は無い。

 

「だから私はシオンに逃げた。あなたたち側に極めて近くなれば、その意味が感じられるかもしれないと思った。けどそのシオンも消えた。残ったのは、私。殺したかった私。壊したかった、私。正義の味方……残念だ。私は、もう自分に耐えられない。けど社会のために死んでやりたくもない。だからみんな死のう。誰も何も考えなくて済む」

「っ……!やめろ!」

「ギルガメッシュもバカだよね。弾数制限無いなら、無限に落とせば良かったのに……」

【さぁ、終わろうか】

 

 終わりの時。

 天空は炎に燃え、段々と高度を下げる。

 

「ぐ……ウタネ!考え直せ!く、お前にも人間性をやる!シオンに新たな身体を用意しようじゃないか!俺たち人間をもっとよく見ろ!救世主に相応しいのは誰か!?お前の居場所なら俺が作ってやる!」

「シオンは私だ……私が切り替えればすぐにもこの体に復活する……救世主というなら、人の悲しみを取り除け……つまりそれは、幸福の断絶だ。私の居場所はここ……全ての生命を殲滅する」

 

 空は既に高層ビルを捉え、上から順に蒸発させている。

 タイムリミットはもはや数秒程度。

 

「ふざけるな!幸福を望むこと!それが生きる事だ!」

「……尚更、相互理解が不能だ。幸福を望むって事は不幸だって事だ……幸福であると感じることは、日常が不幸であると感じていると言う事だ。全ての幸不幸を平等に……ゼロにしないと。じゃないと誰かは不幸になる。誰かの幸福を妬むことになる。全て、全て、親兄弟も自身でさえも虚無に帰れ!それが最大幸福だ!」

 

【滅べ!】

 

 空の落ちる速度が増す。

 地上の気温はギルガメッシュの宝具同様、3桁を数えるほどにまで。

 

「ぐ……くぅ……!クソ……無理か……ヴィーナス……!」

「ヴィーナス……そうだね。この世界が滅んだ後、ヴィーナスについても調べてみよう。私達に対して何かしらあるんだろうし……まぁそれはそれだ。じゃあね」

 

【チャオ】




私の気力が尽きない限りウタネさんの転生も続く……
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