推しとイチャイチャするだけのお話   作:なぁくどはる

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リクエスト、ありがとうございます。


不動のスキルマ

 

「やばい!そっちで何とかできないか、燐子!?」

「うん・・・!何とか・・・頑張ってみる、ね・・・!」

 

 こちらは既に大勢の敵に囲まれてしまい抜け出すのに精一杯だ。このままではあの巨大なドラゴンが好き勝手に動けてしまう。それは避けたかったので比較的手が空いていた燐子に何とかドラゴンの動きを牽制するようにお願いする。

 

『あこも頑張ってみるよ!!』

『頼んだ!』

 

『聖堕天使あこ姫』というプレイヤーからチャットが送られてくる。

 実はこの聖堕天使あこ姫はリアルでも知り合いなのだ。名前は宇田川あこ。燐子と同じ『Roselia』という五人組のガールズバンドに所属している少女だ。

 その彼女が燐子と協力してボスを抑えてくれている。こちらも早く何とかしなければ、と思った俺はMPの大半を削って小型の敵を一掃する。そして頑張ってくれている二人のもとへ急ぐ。

 

「こっからは俺も頑張るよ」

「・・・うん!」

『これで三人揃ったね!ふっふっふ、闇よりいでし暗黒のドラゴンよ。我らの・・・我らの・・・うーん、えーと・・・』

『必殺技?』

『それだ!我らの必殺技を受けるがいい!!』

 

 そして苦労の末に何とかボスを倒すことに成功する。

 

「ふう〜・・・中々に強敵だったな」

「・・・周りの・・・小さいモンスターが、厄介だったね・・・」

「そうだな。出し惜しみせずにもう少し早く全体除去使っとけばよかったよ」

「ふふっ・・・もったいない、って・・・いつも使わないもんね・・・」

「なーんかMPって大事にしたくなっちゃうんだよなぁ・・・」

 

 そんなふうに一息ついているとあこからチャットが送られてくる。

 

『今日はありがとっ!また一緒にやろうね!』

「『おう、りょーかい』っと・・・」

 

 燐子もあこのチャットに返事をしてその日のNFOは終了となった。

 俺たちが今やっていたのは『Neo Fantasy Online』というオンラインゲームで、俺と燐子が出逢うきっかけをくれたゲームだ。

 

「・・・これから、どうしよう・・・?」

 

 前の燐子から今後の予定について尋ねられる。

 場所は彼女の部屋でゲーミングチェアに二人で座っている状況なのだ。俺が膝を立て左右に分けるようにして座り、その間に燐子が座っているという構図だ。

 目の前には燐子の艶のある黒髪が映し出されておりいい香りも漂ってくる。その上、燐子は俺にもたれかかるような体制なので彼女の肢体の柔らかさもダイレクトに伝わってくる。

 ・・・よくこんな体制でゲームやってたな、俺。

 

「そうだなぁ・・・」

 

 考えるが特に思いつくものもない。どうしたものかと頭を捻っていると・・・

 

「じゃ、じゃあ・・・その・・・一つ、やってみたいことがあって・・・いい・・・?」

 

 可愛い彼女のお願いである上に、上目遣いまでされては俺には断ることなどできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの・・・燐子さん・・・これは流石に・・・」

「──────?」

 

 燐子の顔がすごく近くにある。流石にキスができる程ではないが、それでも日常生活でこんなに近付くことなどないだろう。では何故そんなに彼女の顔が近くにあるのかと言えば・・・・・・彼女のベッドで向かい合って寝転んでいるからだ。

 燐子のお願いとは『添い寝をしてみたい』というものだった。俺も二つ返事で了承したのだが・・・

 

(これ思ったよりもやばい。燐子が近いし何かすごいいい匂いもするし・・・っていかんいかん!流石にこれ以上は───────)

 

 と思ったところで、燐子が抱きついてくる。

 

「ちょ、燐子さん!?」

「・・・だめ・・・?」

「くっ・・・!・・・だめ、じゃ・・・ない・・・です・・・」

 

 そう答えると彼女は嬉しそうにより身体を押し付けてくる。

 

(やばいやばいやばい!もうキスできるよ、これ!!いや、それどこじゃなくて・・・!)

 

 先程よりさらに燐子を近くに感じるだけではなく彼女の他の同年代よりは明らかに育った()()の感触が布何枚かを通して伝わってくる。そこだけやたら熱く感じる。

 

「・・・私・・・これ、好きかも・・・」

(これ俺、耐えられるのか?いやむしろなんで手を──────いやいや、そうじゃない!・・・・・・あっぶねー、こういう時はなんか違う事考えて・・・)

 

「・・・あなたからも抱きしめてほしい・・・な・・・?」

(これ以上!?)

 

 なんと燐子からさらなる要求が飛び出す。

 これ以上くっ付くともう二人ではなく一人になっちゃうんじゃないの?とかわけの分からない事を考えられるくらいには頭がパニックだった。

 しかし身体はどうするべきかを把握していたようで自然と燐子の背中へと腕を回していた。

 

「ん・・・」

「あ、ごめん・・・!強すぎたな・・・」

 

 何も考えずに抱きしめたせいか力が強かったのか、燐子から苦しそうな声があがる。

 

「・・・ううん。これぐらいの方が・・・いい、な・・・」

(俺明日死ぬんじゃないの?)

 

 そう思えるくらいには今が幸せに感じた。そして燐子がじっとこちらを見つめる。

 

「・・・・・・んっ・・・・・・はぁ・・・・・・」

 

 何を求められているのかはすぐに分かった。

 ここまできたら、と思い彼女の柔らかそうな唇に自身の唇を重ねた。どうやら間違いではなかったらしく、嬉しそうな笑顔を見せてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん・・・・・・あれ?寝てたのか・・・」

 

 ふと横を見ると燐子が眠っていた。

 

(自分のベッドより快適に眠れた気がする・・・単純にいいベッドなのか、それとも・・・)

 

 そこまで考えたところで改めて燐子の顔を覗き込む。紛うことなき美少女だ。落ち着いた性格をしており気配りもできる。今でこそこうやって甘えてくれる燐子だが、出逢ったばかりは人見知りな部分が出てしまい全く会話ができなかった事を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 始まりは俺が初めてNFOにログインした時の事だ。

 それまでは燐子とあこが二人で仲良く潜っていたらしいのだが、そんな二人が偶然立ち寄った旅立ちの村でNFOを始めたばっかで右も左も分からず困ってた俺に声をかけてくれたのだ。

 

『おにーさん、どうしたのっ?』

『え・・・』

 

 急に声をかけられ咄嗟にプレイヤーネームを見ると『聖堕天使あこ姫』と表示されていた。第一印象はヤバい人だと思った。

 

『あこちゃん!・・・あれ?その人は・・・?』

『なんか困ってたみたいだから声をかけたんだ!』

『えーと・・・その、あなたたちは?』

『ああ、ごめんねっ。我は聖堕天使あこ姫。地獄より参りし・・・・・・死を・・・・・・その〜』

『司る?』

『そう!死を司る者よ!』

 

 ぶっちゃけコントにしか思えなかった。しかしこれが燐子とあことのファーストコンタクトだった。

 それから、内心不安に思いつつも二人に初めのうちはどうすればいいのかを教えてもらい一緒にクエストにまで行ってもらった。操作方法やちょっとした冒険のコツなども教えてもらった。

 そうやって何回かクエストをともにしたある日だった。あこがこの3人でオフ会をしようと言いだしたのは。

 最初はリアルではどんな人かも分からないという怖さもあったから断ろうと思ったし燐子も乗り気ではなかったのだが、あこに押し切られる形になった。住んでいる場所も近いという事が拍車をかけてしまったのかもしれない。

 そして迎えたオフ会当日。

 

「ふっふっふ〜!あこは聖堕天使あこ姫だよ!よろしくね!」

「・・・その・・・は、はじめまして・・・RinRin、と・・・申します・・・」

 

 二人が自己紹介してくれたのでそれに倣い俺も自己紹介する。その時から俺は燐子の事が好きだったのかもしれない。いわゆる一目惚れってやつだ。

 

「でね〜!あそこの敵が──────」

(さっきからあこ姫さんしか喋ってない・・・)

 

 RinRinさんは俯いて一言も喋ろうとしない。俺も女の子とはあまり絡みがなかったので自分から話しかける勇気がなかった。

 結局その日は燐子と一言も喋らずに終わってしまった。

 そしてオフ会から数日が経過したある日。その日もNFOにログインしていたのだが、燐子からチャットが送られてきた。なんでもこの前の事で話があるらしい。燐子に促されて着いた場所には既に彼女が待っていた。

 

『ごめん、遅れたみたいで・・・それで、話って?』

『いいえ、私が呼び出したので・・・。その・・・この間はごめんなさい!私人見知りで・・・全然楽しくなかったですよね・・・』

『・・・俺の方こそごめん。女の子と話した事ってほとんどないから緊張しちゃって・・・』

 

 そこからはお互いに謝り合うという奇妙な光景が繰り広げられていた。そんなお互いが可笑しかったのか、どちらともなく笑い合う。

 

『じゃあお相子ってことだね』

『ふふっ、そうですね。お相子ということで』

 

 お互いに笑い合えたこの瞬間は俺の初めての燐子との思い出だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん・・・」

「お。起きたのか」

 

 頷く燐子だが、まぶたを擦っているあたりまだ眠いのだろう。

 

「そろそろいい時間だし俺は帰るよ」

「あっ・・・」

「──────?どした?」

「その・・・・・・今日は・・・お父さんもお母さんも・・・帰ってこない、から・・・泊まっていけるよ・・・?

 

 言葉を失うには十分過ぎる程のダメージだった。

 

「・・・・・・着替え取りに戻るからそれまで待っててくれ」

「・・・・・・!・・・うん・・・!」

 

 その日の俺は生きてきた中で一番早く走れた気がする。

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