「なぁ、友希那」
「・・・・・・何かしら」
「これ、いつまで続けるんだ?」
「あと少し待って頂戴」
そのセリフもかれこれ7回目だ。ぶっちゃけ聞き飽きた。早く解放してほしい。
友希那の頭を膝に乗っけてから2時間程経過している。彼女のお願いだしカッコつけたくはあるのだが、俺の膝が既に限界を超えている。
いや、もうほんと早くして。これ以上は立てなくなっちゃう。
「ふう・・・」
「お、終わったのか?」
僅かな希望を求め友希那に問いかける。しかし、俺に授けられたのは10分という僅かな休憩時間だった。
・・・・・・もう無理。たしゅけて。
そもそも何故友希那に膝枕をしているのかというと、彼女は作詞をする時には横になるのだ。そのため度々俺を枕にしていたのだが、ある日膝を貸したらいたく気に入ったらしく、その日以来彼女が作詞をする時にはこうやって呼び出されて枕役を担っている、というわけだ。
「進捗はどうなんだ?」
「5割、と言ったところね」
「いつも言ってるけど無理はするなよ」
「Roseliaのメンバーがいてくれるから問題ないわ。それに・・・・・・こうやって貴方に癒してもらっているもの」
「な、ならいいんだ」
友希那はストレートに気持ちを伝えてくれるから嬉しい。嬉しいのだが・・・今のように恥ずかしさが勝ってしまうこともしばしば。
「さあ、そろそろ再開しましょう。次は頭なでなでも追加よ」
「・・・了解」
褒めてもらってすっかりその気になった俺は単純なんだろうか?
「・・・ねぇ」
「ん、どした?」
「その・・・今更だけれど・・・辛くはないの?」
ほんと今更だな。
「まあ、辛くないって言えば嘘になるけど友希那も頑張ってるしな。俺だけが辛いって言ってやめるわけにもいかないだろ」
「・・・・・・ありがとう」
「・・・おう」
最近よく思う。彼女が笑顔を見せてくれる事が増えたと。きっとRoseliaのみんなのお陰なんだろう。
ほんとは俺がやらなきゃいけないことなんだよな・・・
「・・・・・・貴方は十分私に幸せをくれているわよ」
「・・・・・・本当か?」
「ええ、貴方といる時はすごく満たされているもの。Roseliaのメンバーといる時に感じるものとは明らかに違うモノ、はっきりと理解しているわ」
「・・・・・・そっか」
不安は尽きないが友希那もこう言ってくれている事だし、とりあえずは一安心だ。
「・・・・・・ならそれを証明してみせるわ」
だが、不安な気持ちも見抜かれていたのだろう。友希那は頭を起こし、俺と対面になるように俺の膝の上に乗る。
「・・・・・・スカートでそんなことしたら───────」
「貴方にしかしないから大丈夫よ。それより・・・」
そういう問題じゃないんだよなぁ・・・。
そんなことを思っているうちに友希那の顔が目の前にあって、いつの間にか唇が重なっていた。
「ふむっ─────!?」
「んっ・・・・・・」
キスをしている間も2人とも目を離さなかった。外せなかった、の方が正しいかもしれない。それぐらい友希那の顔は他の人に
そのままどれぐらいの時間が過ぎただろう。数十秒だろうし、数分かもしれない。時間がわからなくなるぐらいその間俺たちはお互いの事しか考えていなかった。
「・・・ぷはっ!・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・どうだった?伝わったかしら、私の気持ち」
「・・・・・・長過ぎだよ。どんだけ俺の事好きなんだよ、お前」
「・・・言ったでしょう?証明する、って」
「言ったけどさぁ・・・」
やばい。ニヤニヤが止まらない。友希那にバレると恥ずかしいから口許を隠そうとするのだが、バレバレだったようだ。
「・・・ふふっ、喜んでもらえたようでよかったわ」
あの後、作業をするという気にはならなくなったという友希那のお言葉により本日の作業は終わりにし、現在は2人で彼女のベッドに並んで寝転んでいる。
しかし、さっきあんなことをしたばかりなのでどうにも落ち着かない。めっちゃいい匂いするし。友希那可愛いし。めっちゃいい匂いするし。
そんな感じでそわそわしていると、友希那から話しかけられる。
「・・・貴方からは何も無いの?」
「俺から、か・・・」
そう言われて考えるが特に何も思いつかない。彼女によって既に口付けという愛情表現は使われてしまった。となると俺にできる事は・・・
「──────!」
対面の友希那を自分の胸元に引き寄せる。
彼女の体は小さくすっぽりと俺の胸の中に収まってしまう。
「・・・・・・久しぶりにこういうことをしたけれど、やっぱりいいわね。貴方を近くに感じられる」
「・・・・・・期待に応えられたようでよかった」
やばいやばいやばい。なんかいい匂いとか友希那の体の感触とか色々な事が混ざりあって頭がパンクしそうだ。
自分からやっといてなんだが、もう終わりにしたい。いや、やっぱりこのままでいたい。そんな相反した感情がせめぎ合う。
己と戦っていると友希那が上を向く。頭上には俺の顔があるのでばっちり視線が交わる。
友希那の表情から何かを求められていることはわかる。自然に視線が彼女の唇に注がれる。
しかしここでこれ以上の事をすると俺の理性が・・・
「・・・ねぇ、してくれないの?」
彼女に上目遣いでそんなことをお願いされて断れる彼氏がいるのだろうか?
少なくとも俺には無理だったよ。
本日二度目のキスは俺からだった。
「・・・・・・寝てたか」
友希那とイチャイチャしているうちに寝落ちしてしまったようだ。
時計を確認すると夕方だった。
隣には愛しい恋人が安らかな寝息をたてている。
俺には勿体ないぐらい魅力的な彼女だ。
「んっ・・・・・・起きていたの?」
「ん。ついさっきだけどな」
「そう」
一つ伸びをして、ベッドから降りる友希那。
「・・・もうこんな時間なのね。夕飯食べていく?」
「いやでも、そんな急に言っても・・・」
「構わないわよ。お母さんも貴方がいることを知っているから」
つまり俺の分の料理も既に用意されている、ということか。
「・・・なら、ありがたくいただくよ」
「じゃあ、行きましょうか」
「ふう〜、美味かった」
友希那のお母さんの料理はいつ食べても美味しい。それなのに友希那は・・・
「何か失礼な事を考えていない?」
「いえ、なんでもないです」
一瞬だった。今まで生きてきた中で一番の反応速度だったかもしれない。それぐらい今の友希那は怖かった。
「・・・・・・私だって最近は頑張っているもの」
頬を膨らませてそっぽを向く。
何この子。超可愛い。あ、俺の彼女だったわ。
改めて思い知った友希那の魅力にバカになってしまう。
「・・・それじゃ俺はそろそろ帰るよ」
「・・・・・・そう」
えー、そんな寂しそうな顔されたら帰るに帰れないじゃん。
「友希那」
彼女の名を呼びながら手招きすると少し嬉しそうな顔でこちらへやってくる。
そして彼女を抱きしめる。するとすぐに背中に手が回される。
「・・・・・・また明日来るから」
「・・・・・・約束よ」
ああ、と答えて彼女の背中をポンッと叩いてから体を離す。視線が交わる。これが俺たちの合図になりつつあった。
本日三度目のキスは2人同時で最長だった。