推しとイチャイチャするだけのお話   作:なぁくどはる

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狂い咲く紫炎の薔薇③

 

「友希那ダメだよ、コイツは何しでかすかわかんないんだから」

「はぁ・・・」

「ひどい言い草だな・・・」

 

俺と友希那の間に立ち塞がるは『今井リサ』。

俺の恋人である友希那の幼馴染兼親友なのだが、困った事にこいつ友希那の事が大好きなのだ。付き合う前も付き合ってからも俺と友希那の関係に何かと口うるさく茶々を入れてくる。

 

「この間なんか2人で猫カフェなんて行っちゃって・・・!アタシだって友希那と行きたいのに・・・!」

 

普段はコミュ力抜群で家事もできるハイスペックギャルなのだが、友希那が絡むと、どうしてこうポンコツになるのか・・・

 

「てことで、今日はアタシが友希那をもらうから!」

「どういうわけで『てこと』なんだよ・・・」

「だって昨日も2人でどっか出掛けてたじゃん!今日はアタシの番なの!」

「番なの、って言われてもなぁ・・・どう思う?友希那・・・・・・ってどうした?」

「・・・・・・何もないわよ」

 

どこか不機嫌そうに見えたのだが、気のせいだったのだろうか?

 

「じゃあ、三人で行こう。それなら文句ないだろ?」

「ん〜・・・ホントはキミがいない方がいいんだケド・・・」

「おい」

「・・・まあ、仕方ないか。いいよ、それで」

 

何やら良からぬ事を考えていそうな顔だが、まあいいだろう。

 

「てことだ、それでいいか?友希那」

「・・・・・・ええ」

「──────?」

「ヨシ、それじゃしゅっぱーつ!」

 

早速友希那にべったりのリサ。

あいつ・・・これが狙いだったのか・・・あ、こっち見て笑ってやがる。あんにゃろ・・・

 

「・・・出発たってどこ行くんだよ?」

「ん〜?友希那はどこか行きたい場所ある?」

「いきなり人任せかよ」

 

しかし、リサの問いに答えようとしない友希那。どこか上の空だ。

 

「友希那?・・・友希那ってば!」

「──────!・・・ごめんなさい、何の話だったかしら?」

「友希那はどこ行きたい、って話だったんだけど・・・」

「そうね・・・・・・にゃーん──────特にないわ」

 

もう無理だよ・・・それは10割答え出してるよ。あまりの愛情に無意識に出ちゃってるじゃん。

リサも友希那に聞こえないように笑いながら、友希那可愛すぎでしょと言っている。・・・やりすぎると聞こえるぞ。まあ、可愛いのは同感だが。

 

「んじゃ、とりあえず公園にでも行くか」

「そうだね。行こっ、友希那」

「・・・・・・ええ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にゃーん、にゃーんちゃん。可愛いでしゅね〜」

「やばい、俺の彼女が可愛い。いや、可愛いなんて言葉じゃ足りない。この感情を表現できる言葉がこの世に存在しないのが・・・くそっ!」

「ふっふっふ、キミもまだまだだね〜。そういう時はこうやるんだよ!」

「しまった!?その手があったか・・・!」

 

リサが取り出したのはスマホだった。手当たり次第に友希那を撮りまくっている。リサに遅れるものかと俺もスマホを取り出し撮影を開始する。

ちなみに友希那は全く気付いていない。猫を愛でるのに集中しているからだ。・・・・・・猫への愛情強すぎない?

 

「ほら見てこの友希那!普段は滅多に笑わないのに、この笑った顔!めっちゃ可愛いんだケド!」

「甘いな、リサ。俺の友希那を見ろ!」

「──────!?」

 

俺がリサに見せたのは数匹の猫に押し寄せられ困った風な顔をしているが、その実嬉しさが隠しきれていない友希那だ。

すごく欲しそうな顔をしているリサだが、俺に頭を下げるのはプライドが許さないと言ったところか。・・・仕方ない。

 

「・・・リサにも送ってやろうか?このベスト友希那を」

「ホ、ホント・・・!?」

「ああ、今だけは全てを忘れて一緒に友希那を愛でよう」

「アタシ、初めてキミがカッコいいと思ったよ・・・」

「おい」

 

そんな風にリサと友希那の写真について感想を述べあっていると、

 

「ちょっと」

「ん?」

「どしたの、ゆき・・・な・・・」

 

先程まで猫と戯れていたはずの友希那がいつの間にかこちらまで来ており、俺たちに声をかける。その表情は何かを言いたげにしている。

 

「その・・・貴方は私の恋人なのだから、いくらリサと言えど他の女性と仲良くするのは・・・」

 

頬を赤らめ、私すごく不満ですとその顔で表していた。衝撃だった。友希那がそんな事を言うのもそうだし、そこまで俺を好いているということに。

 

「リサも、その・・・あまり彼に近付かないで頂戴」

 

友希那にそう告げられ固まってしまうリサ。その後、少しずつ瞳が潤み始め、足早に去ってしまった。

 

「うわーん!!!ごめん、友希那ー!!!」

「ちょ、リサ!?・・・・・・行っちゃった」

「・・・・・・言い方が良くなかったかしら」

「・・・リサがどう受け取ったかわからないけど、俺は嬉しかったよ。友希那の想いが聴けて」

「・・・・・・掘り返さないで頂戴」

 

不満げな表情を露わにし、そっぽを向いてしまう。

しかし俺はそんな友希那の頬を左右から両手で包み込み、無理矢理こちらへ向かせる。

 

「な、何を───────」

「ごめん、友希那。不安にさせちゃったな」

「・・・・・・本当よ。私がいるのにずっとリサと話しているのだもの」

「ほ、ほんと悪かった・・・・・・どうすれば許してくれる?」

 

怒っているのを隠そうともしない友希那だったが、やがて表情を緩め口を開く。

 

「・・・さあ?自分で考えなさい」

「厳しいなぁ・・・」

 

だが、ヒントはくれた。

目の前にはこちらの瞳を真っ直ぐに見つめる友希那。そして、首の後ろまで回された両腕。近付いた両者の顔。

 

(相変わらず綺麗な顔だ・・・・・・こんな綺麗な子が俺の恋人なんだ・・・)

 

そして、目線は自然と彼女の口許へ引き寄せられる。いつも彼女が観客の心に火をつけるような歌声を発している唇。今から俺はそこへ踏み込もうとしている。

しかし、気の小さいところが出てしまったのか友希那に最後の決断を委ねてしまう。

 

「・・・・・・本当にいいんだな?」

「・・・構わないわ。貴方なら・・・」

 

もう迷いはなかった。もう止まれなかった。

2人の顔が段々近付いていき、お昼の公園で俺たちは人知れず唇を重ねたのだった。

 


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