推しとイチャイチャするだけのお話   作:なぁくどはる

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ゴーマイウェイ

 

「ふふ〜ん、パン〜♪パンがあたしを待っている〜♪」

「なんなんだ、その変な歌・・・」

「え〜、ひどいな〜。モカちゃん作、パンの歌だよ〜」

「初耳なんですけど」

 

 隣でルンルン気分でパンの歌(本人命名)を口ずさんでいるのは『青葉モカ』。一つ年下の後輩兼恋人だ。馴れ初めとしては、モカが俺に告白してくれた形になる。

 

「そりゃ、今作りましたからな〜」

「やっぱそうかよ・・・」

 

 どおりで聞いた事ないと思ったわ。

 俺たちは現在どこに向かっているのかというと、『やまぶきベーカリー』という名のこの辺りでは名の知れたパン屋さんだ。そして、そこの看板娘の『山吹沙綾』はモカと同学年である。モカが楽しげに話しているのを見るに、それなりに仲が良いようだ。

 そんなことを考えているうちに、やまぶきベーカリーに到着する。カランコロンと音をたて扉が開かれる。

 

「いらっしゃ──────モカに先輩!いらっしゃいませ!」

「やっほ〜、さーや」

「こんにちは、山吹さん」

「今日も買いに来てくれたんだ」

「いや〜、折角のお休みだしね〜。さーやの家のパンは格別だし〜」

「いや、お前休みだろうとそうでなかろうと毎日食ってんじゃねぇか」

「あれ〜、そうだっけ〜?」

 

 こんにゃろ・・・

 山吹さんも思わず苦笑い。

 

「で、さーや。例の物は───────」

「ん。あるよ。はい、チョココロネ」

 

 山吹さんはこうして取り置きしてくれているのだ。チョココロネはこの店でも特に人気らしくすぐに売り切れるのだそう。なんでもチョココロネだけを山のように買っていくお客さんもいるらしい。

 ・・・どんな人なんだろうか。

 

「いつもありがとね、山吹さん」

「いえいえ。こちらこそモカにはいつも良くしてもらっているので」

 

 笑顔で気にしなくていいと言ってくれる。彼女のこういう優しさは素直に尊敬できる。

 

「って、痛い痛い!」

「浮気は禁止〜」

「してないわ!」

「嘘つき〜。さーやに見蕩れてデレデレしてたもーん」

 

 ほんとにそんな事はなかったのだが、モカにはそう見えたらしい。横から耳を引っ張られてしまう。

 ・・・めっちゃ痛かったんだけど。

 

「え、先輩そうだったんですか?でも、先輩にはモカが──────」

「だから違うっての!」

 

 モカだけではなく山吹さんにまでからかわれてしまう。イタズラが成功して気を良くしたのか山吹さんはいい笑顔だ。

 ・・・勘弁してくれ。

 

「それじゃ、さーや。また今度ね〜」

「うん、待ってるよ。先輩もまた来てくださいね」

「・・・・・・了解」

 

 普通にしてたらとてもいい子なのだが、いかんせんああいうイタズラ好きな子どもっぽいところもある。それは彼女の美点でもあるのだが、俺に対しては普通にしててほしい。・・・割とマジで。

 

「それにしても、よくポイントそんなに貯まるよな」

「えへへ〜、それほどでも〜」

「いや、褒めてないけどな」

 

 先程の支払いでも何枚あるかわからない数のポイントカードで支払いを行っていた。つまり、それぐらい通っているということだ。

 ・・・まあ、一回の会計であんだけ買ってりゃそりゃ貯まるか。

 俺の両手を見る。そこには右と左合わせて四つの袋がぶら下がっていた。

 いや、普通に買いすぎでしょ。どんだけパン好きなんだよ。

 彼女のパン好きは付き合う前から知っていた事だが、こればかりは慣れない。

 

「で、これからどうするんだ?」

「うーん・・・先輩ん家でパン食べるとか〜?」

「またかよ・・・まあ、いいんだけどさ・・・」

 

 こうしてやまぶきベーカリーでパンを買った日は俺の家でパンを食べるというのが習慣のようになっていた。

 

「それじゃ、れっつごー♪」

「へいへい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、もうそんだけ食べたの?」

「え〜、これぐらいふつーだよ〜」

 

 絶対普通じゃない。

 俺が席を外しているほんの数分の間に四袋あったパンは残り一袋になっていた。

 ちゃんと噛んでんだろうな・・・

 

「先輩にもあげよっか〜?」

「お、いいのか。さんきゅ」

 

 モカから差し出されたメロンパンの一部を食べる。

 

「ん、美味い」

「だよね〜。やっぱりさーやの家のパンは最高だよ〜」

「目の前でそんだけ食べられると俺も腹減ってきたな・・・なんか作るか」

 

 思い立ったらすぐ、と思ったのだが何やらモカがこちらを見ている。

 

「どした?」

「・・・・・・んーん、なんでも〜」

「───────?」

 

 まあ、いいかと思い台所へ移動して調理を開始する。しかし、その間もモカはジーッと見つめてくる。

 ・・・マジでなんなんだ?

 不審に思い、モカの方へ向くがすぐにパンを食べる作業に戻ってしまう。

 てか、食べんのはえぇな。今の時間だけでもう二つ食べてんじゃん。

 そんなこんなであっという間に炒飯が完成し、リビングに戻る。

 

「・・・え、まだ食べる気なの?」

「違うよ〜、ひどいな〜もう〜」

 

 腰を下ろしていざ、実食とスプーンを持ったところでモカがこちらを凝視してくるので食べたいのかと思ったが、どうやら違うようだ。

 ちなみにパンはきれいさっぱりなくなっている。

 だから、食べるの早いんだって。

 

「・・・そんなに見られると食べづらいんだけど」

「あ、ごめんごめん〜」

 

 何だか違和感を感じたので、直接訊いてみる事にした。

 

「なんかあったのか?」

「・・・・・・んー?なんにもないよ〜?」

 

 ふむ、何かはあるようだ。それが何なのかはさっぱりわからんが。まあ、おいおい探ればいいか。

 そう思った俺は炒飯を完食するべく、食べる速度を上げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう〜、食った食った」

「美味しそうに食べてたね〜」

「モカ程じゃないけどな」

 

 こいつのパン食ってる時の顔はマジで幸せ!って感じだからな。こう・・・ふにゃあとなるというか。

 

「・・・食べたら眠たくなってきた。ちょっと寝ていいか?」

「───────!う、うん。いいよ〜」

 

 まただ。やっぱり何か変だ。ん〜、やっぱり直接訊くしかないか。

 

「やっぱり何かあっただろ」

「・・・・・・え〜、なんにも──────」

「嘘つけ。さっきからちょくちょく挙動不審だぞ。具体的には家に帰ってきてから。もっと細かく言えば、昼飯の時あたりから」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 黙ってしまうモカ。

 うーん・・・まだ喋らないか・・・どうしたものか・・・

 

「・・・・・・はぁ。先輩には敵わないな〜」

「ん?」

「そんなにわかりやすかった〜?」

「んー、まあそれなりに長い付き合いだしな」

「そっか・・・」

 

 それだけ言いまた黙ってしまうが、やがて意を決したのか、

 

「・・・・・・たまにはあたしも先輩を甘やかしてあげたいな〜って」

「どういう事だ?」

「普段から先輩には支えられてるからさ〜。蘭たちのこともそうだし・・・」

 

 なるほど、そういう事か。俺としては愛する恋人の力になりたいだけだったのだが、モカは貰ってばかりでは申し訳ないと思ったわけか。

 そういう事なら遠慮なく───────

 

「───────!・・・・・・先輩、いきなりこういうのはセクハラになっちゃうよ?」

「え、この流れでそういう事言うの?」

 

 ちょうど足を崩して座っていたモカの太ももに自身の頭を載せる。

 

「・・・でも、あたしこれ結構好きかも〜」

「・・・そりゃよかった。足、しんどくないか?」

「うん」

 

 そんなに嬉しいのかと思う程に、ニコニコしながら俺の頭を撫で始めるモカ。

 思いの外、心地よくあっという間に眠気が襲ってくる。

 

「・・・ちょっと・・・それ、やばい・・・かも・・・」

「んー?眠たかったら寝てもいいよ〜」

「いや、でも・・・」

「だいじょーぶ。モカちゃんにお任せ〜」

「・・・疲れたら・・・起こしてくれ・・・」

 

 モカの返事を意識半分で聴きながら、眠りに落ちた。

 

「おやすみ、先輩」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ん」

 

 ふと目を覚ます。視界には愛しい恋人の眠っている顔。モカもあのまま眠ってしまったようだ。

 時計を見ると短針が三つ程進んでいる。かなり長い間、この状態だったようだ。・・・辛かっただろうに。

 彼女に悪いと思い、体を起こして自室から何か羽織るものを持ってきて、彼女にかける。

 

「・・・んー」

「・・・悪い、起こしちゃったか」

 

 なるべく起こさないように、かけたつもりだったのだが彼女が目を覚ましてしまう。

 

「辛くなかったか?」

「・・・うん。先輩に甘えてもらえるの幸せだったし」

 

 モカの言葉に思わず、顔の温度が上昇してしまう。

 

「あれ〜?先輩、顔赤いよ〜?」

「うるさい・・・ほら、送ってくから帰るぞ」

「え〜、泊まっちゃだめ〜?」

「俺はいいけど着替えとかどうすんだよ」

「んー、着替えは先輩の借りるからいいとして〜・・・・・・」

「まあ、乾燥機かけたらいけるか」

「おお〜、ナイスアイディア〜」

「ほんじゃ、まずは風呂だな」

「一緒に入る〜?」

「入るわけねぇだろ!」

 

 そんな感じでいつものように一日が過ぎていくのだった。

 

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