「ふう・・・今回のダンジョンはちょっと難しかったな」
「・・・うん・・・あこちゃんに助けられちゃった・・・」
燐子と俺、それに彼女の親友であり俺とも友人である『宇田川あこ』ちゃんとNFOに潜り別れの挨拶を済ませた後、俺たちは自室で寛いでいた。
「お、もうこんな時間か。晩飯何に・・・・・・ていうか冷蔵庫に何かあったっけ?」
横で首を傾げている燐子に一声かけ、リビングに設置されている冷蔵庫へと向かう。
「うん、なんにもないな」
「・・・そう・・・だね・・・」
冷蔵庫を開き中を確認したが、見事なまでに何も入ってなかった。精々飲み物くらいのものだ。
ていうか俺、これで晩飯どうするつもりだったんだよ。
いつの間にやら隣まで来ていた燐子に俺は告げた。
「・・・何か買いに行くか」
何がそんなに嬉しいのかわからなかったが、そう告げた途端笑顔になる燐子がただただ可愛かった。
「と言っても何にするか・・・燐子は何か希望ある?」
「・・・私は・・・特に、ないかな・・・」
となると俺が考えないといけないわけだが、一向に案が出ない。頭を悩ませながらとりあえず店内歩いて考えるか、と決めたところで二人引っ付いて歩きだす。
物色を始めて数分後、『広告の商品!』と売り出されたカレールーが目に入る。
「お、これなんかどうだ?」
「・・・甘口なら・・・」
「よし、ほんじゃ今日はカレーって事で」
そうと決まれば、あとは早かった。カレーに必要な材料を見繕い、次々にカゴへと放り込んでいく。・・・時たま目利きが甘く、燐子に注意される事もあったが。
お会計も済ませ、二人揃って店を出たところで燐子に声をかけられる。
「・・・今日の晩御飯・・・私が・・・作るよ・・・!」
「え、いやカレーぐらいなら俺でも───────」
「・・・だって、私の料理・・・食べてほしい、から・・・」
頬を染めながら愛しい恋人にそんな事を言われてしまえば、俺に断れるはずもなかった。
「ふう・・・ご馳走様でした。すげぇ美味かった。ありがと、燐子」
「・・・ふふ、お粗末様でした・・・」
何なの、俺の彼女。優しくて、家事できて、ゲームできるとか最強すぎない?
「なんなら結婚したいまであるな」
「えっ・・・」
「ん?」
何やら目の前の燐子がもじもじしながら顔を真っ赤にして、それはまだ早いんじゃ・・・でも、私も・・・とか言ってる。・・・これは何やらやらかしてしまった感があるな。
確認を急ぐべく、愛しい彼女の名を呼ぶ。
「・・・今すぐは無理だから、大学卒業したら・・・」
だめだ。完全に自分の世界に入ってしまわれている。この様子を見るにやっぱりやらかしたのは気のせいではなかったようだ。
・・・どうすっかなぁ。
あの後きっちりと話し合ってうっかり口が滑った事を謝罪し、きちんと結婚の約束をした。
・・・いや、なんでだよ。俺は嬉しいからいいんだけどさ。燐子はそれでいいんだろうか?
「・・・私は・・・その・・・貴方しか・・・考えられない、から・・・」
ほんとにこの子もらっちゃっていいの?こんな可愛い子を俺がもらっちゃっていいの?幸せすぎない?この後の人生で何か不幸があるんだろうか。
そんなバカな事を考えながら、食休みという体でソファーに二人並んで沈み込む。テレビをつけると、バラエティ番組が放送されていた。そこには五人組のアイドルグループが映し出されている。
ボーッとテレビを眺めていると、右肩に柔らかな重みを感じる。こういう時は大抵、燐子が何かを求めている時だ。彼女は何かを求める時、無言のスキンシップが多くなる。
「どした?」
「・・・・・・・・・」
黙ったまま何も答えようとしない。しかし、求めているものはわかった。
「んっ・・・」
彼女の顔を正面から見えるようにし、彼女の艶やかな唇に自身の唇を重ねる。どうやら正解だったようで、彼女の瞳が胡乱げになる。
肺活量の限界が訪れたので唇を離そうとするのだが、今度は彼女の方から口付けをされる。
「・・・まだ・・・」
お互いに火がついてしまい、30分ほどは続けていた。
久しぶりのキスの味はカレー味だった。
一旦ついてしまった火を冷ますために風呂へと向かった。ここは二の舞にならないように別々に入る事を提案した。燐子も久しぶりの
気分を落ち着けるためにゆっくりめに風呂を済ませて、リビングの燐子に声をかける。
「お風呂空いたぞ」
「・・・うん・・・行ってくるね・・・」
先程までの狼狽は息を潜めており、燐子は風呂場へと向かっていった。
それから数十分後、燐子が風呂からあがってきたのだが・・・
「・・・お待たせ・・・」
「いや、そんなに───────」
リビングに現れた燐子の服装を見て、思わず固まってしまう。
彼女の服装は白のワンピースと普通の部屋着だった。しかし、部屋着用なのかいかんせん生地が薄いように感じた。なので、彼女の豊満なボディラインがはっきりと浮き出ていた。
・・・・・・今日、寝れるんだろうか。
その後、特に何事も起こらず(欲望との戦いはあったが)就寝の準備を整えた俺たちは、二人してベッドに入った。
「・・・・・・・・・」
しかし、眠れる気がしない。なぜなら、燐子が身を寄せて俺の片腕を抱き枕にしているからだ。
腕に全血液が集中している気がする。だってめっちゃ熱いもん。今の俺の腕触ったら火傷するよ?ほんとに。
そんなくだらない事を考えるくらいにはテンパっていた。
(そもそもこのボリューム・・・・・・我慢できてる俺、すごくない?)
今、この状況で襲いかかっていない俺を誰か褒めてほしい。むしろ俺が、幸せな感覚に襲われている。・・・あれ?てことは、俺は襲い返していいって事なのか?だめだ、思考回路はショート寸前だ。
「・・・どうしたの?」
「あ、いや、なんでも」
心中の動揺ぶりが表にも出ていたのか、燐子に心配されてしまう。
「・・・・・・いいんだよ?」
あ、やばい。これはだめだ。みんなごめ──────────
「・・・ん、朝か・・・」
隣を見ると既に燐子の姿はない。帰宅したのだろうかと思い、リビングを覗くと朝ごはんを作っている彼女がそこにいた。
結婚したらこんな感じなんだろうか。だとしたら、幸せすぎない?毎朝この光景が見られるとか何時間でも仕事頑張っちゃう。あ、いや、やっぱり一日八時間でお願いします。
「・・・あ・・・おはよう・・・」
「ん、おはよう」
「・・・朝ごはん・・・もうちょっとで、できるから・・・」
「ありがと。じゃあ、その前に顔洗ってくるよ」
「・・・うん・・・いってらっしゃい・・・」
やばい、あと三回ぐらい言われたい。
そんなしょうもない事を考える朝だった。