推しとイチャイチャするだけのお話   作:なぁくどはる

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慈愛の女神

 

「はい、できたよー☆」

「おー、さんきゅ」

 

彼女の料理はいつも美味しそうだ。そう、じゃくて文句なく美味しいんだけど。

 

「・・・うん、美味い」

 

素直な気持ちを伝えると嬉しそうな顔をしてくれるから、こっちも感謝のしがいがある。

彼女は『今井リサ』。コンビニのアルバイトで知り合ったのが始まりだ。

 

「なんか今日はやたらテンション高くないか?」

「うんー?そうかな?」

「いや、俺の気のせいかもしれないんだけど」

 

そうは言ったが多分気のせいではない。さて、今日は何かの記念日だっただろうか・・・。頭をフル回転させるが一向に出てくる気配がない。

今も満面の笑みを浮かべる彼女には申し訳ないが、正直に伝えることにした。

 

「ごめんリサ、俺にはわかんないや」

「えっ?なんのこと?」

 

ん?なにやら話が食い違っているような・・・

 

「・・・いや、リサの機嫌がいいから何かの記念日だったのかと思ったんだけど何も思いつかなかったから」

「あー、なるほどね。大丈夫だよ、そんなんじゃないから」

(あれ?違ったのか。じゃあ一体・・・)

 

「・・・いつも美味しいって言ってくれるからさ。つい嬉しくなっちゃって。それに、キミに料理作ってあげるの好きだし☆」

 

・・・そういうことか。

 

「それぐらいなら何度だって言うよ。いつも助かってるんだから」

 

そう伝えると余程嬉しかったのか、んふふーと片腕を掴んで擦り寄ってくるリサ。

 

(ヤバい。感触が・・・)

 

リサが好んで着る服は露出度が高めということもあり抱きつこうものならその部位の感触というのも結構ダイレクトに伝わってくる。

 

「・・・今えっちなこと考えてるでしょ」

「・・・俺は悪くない」

「ふぅ〜ん・・・・・・えいっ!」

「ちょ、何を!?」

 

あろうことかさらに体を押し付けてくる。彼女の体型はいわゆる、出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでいると言われるものなので密着度が高まると伝わってくる感触もより濃いものになる。

 

「ふ、ふっふ〜ん。これでもまだそんな口がきけるのカナ〜?」

(自分だって恥ずかしいくせに・・・)

 

その証拠に彼女の頬には赤みがさしていた。

 

「・・・わかったよ。降参。俺が悪かった」

「わかればよろしい!」

(全く・・・変なところで負けず嫌い発揮しやがって・・・)

 

それでも憎めないどころか、そんなところさえ愛おしく思えているのだから俺は余程リサに参っているのだろう。

 

「ん?どした?」

 

一向に箸を進めようとしない俺を怪訝に思ったのか不安そうな顔でこちらを見つめるリサ。

 

「え、あ、いや・・・食べないのカナ〜って思ってさ」

(やっちゃったか・・・)

 

こういうことはしばしばある。リサはきちんと言葉や態度で愛情を示してもらわないと不安に感じてしまうことが多々あるのだ。本人はそんな重い女じゃないと否定しているが友希那からの情報もあるしこれまでの付き合いでそういったことは何回も経験している。まず間違いない。

そんな不安が少しでも晴れるように力一杯彼女を抱きしめる。

 

「んっ・・・」

「・・・悪い。不安にさせちゃったな」

「・・・んーん。もう大丈夫☆」

 

過去にどのような出来事があったのかはわからないが、リサは人一倍誰かに尽くそうとする。だがその実、人一倍誰かに愛されることを望んでいる気がする。だから俺の気持ちが少しでも伝わるように彼女が不安になったときは今みたいにスキンシップを取るようにしている。

 

「ご飯食べ終わったらどうしよっか」

 

俺の片腕を掴んだまま上目遣いでこれからの予定を尋ねてくる。

 

「そうだなぁ・・・俺は特にないんだよなぁ。・・・それより」

「うん?」

「そんなに引っ付かれると食べづらいんだけど」

「いいじゃんいいじゃん♪アタシこうやってるの好きだし☆」

 

さっきまでの暗い表情はどこへやら。俺の彼女がチョロすぎて少し心配になる。

 

「なんなら食べさせてあげよっか?」

 

からかうような顔つきで問うてくる。

 

(いつもやられっぱなしは悔しいしな・・・ここは・・・)

「んじゃ頼むよ」

「えっ!?・・・あ、うん。・・・お姉さんに任せなさいっ☆」

 

そう言って俺から箸を奪い取って一口分を差し出す。

 

「は、はいっ。あーん・・・」

(顔真っ赤にして・・・今んとこは仕返し成功だな。後は食べるだけ・・・)

 

そしてここでこの作戦の欠点に気付く。

 

(これ意外に俺の方も・・・)

 

欠点とは食べる側も存外恥ずかしさを感じるということだ。

 

「あ、あ〜ん・・・」

「ど、どう・・・?」

「美味い・・・と、思う・・・」

 

正直恥ずかしさで味なんて気にしている余裕はなかった。

 

「じゃ、じゃあ、もう一回!」

「え!?もういいんじゃ・・・」

「だって感想イマイチだったんだもん。だから、もう一回!」

 

結局最後の一口までリサに食べさせてもらう形になった。・・・今度からは後先考えて仕返しすることにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ご飯も食べ終わり一息ついていたところにリサが話しかけてくる。

 

「これからどーするの?」

「んー・・・特に何も考えてない。リサは何かしたい事とかあるのか?」

「アタシも・・・あ、春服は見ときたいカモ」

「ほんじゃショッピングモールだな」

 

元気よく返事をするリサと家を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらず人多いなぁ・・・」

 

こういう人の多いところは本当に慣れない。リサも隣で苦笑いしている。

 

「大丈夫?やっぱやめとく?」

「いや、大丈夫。まだ耐えられる範囲だし」

 

しかし納得していないのか心配げな表情だ。

 

「ほんとに辛い時はリサに癒してもらうから大丈夫だよ」

「それでなんとかなるならいいケド・・・」

「え、マジで?」

「・・・言っとくケド、外でえっちなのはダメだからね」

 

まあ、最初からそっちの期待はしていないので問題はない。

 

「とりあえず行こうぜ」

「あ、待ってよー」

 

腕を組んで2人並んで歩き出す。しかし・・・

 

(またか・・・まあ、リサのこのカッコじゃ仕方ないんだけど・・・やっぱ彼氏としてはやだなぁ)

 

リサと外でデートする時は決まってこうなのだ。リサは普段から比較的露出度が高い服を好んで着ているので当然、男からの視線は集めやすい。情けないが、できるならリサと外デートをしたくない理由の一つだ。

 

「・・・・・・大丈夫だよ。アタシはキミしか見てないんだから。それに・・・もし何かあっても守ってくれるでしょ?」

「・・・もちろん。何があっても守るよ」

 

そう伝えると食事の時と同じように嬉しそうに擦り寄ってくる。・・・俺みたいな非力な人間にどこまでできるかはわからないけどこの笑顔は、リサだけは守ってあげたい。

そう思うようになったのは、あの時からだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今井リサでーすっ。よろしくお願いします☆」

「青葉モカちゃんで〜す。よろしくどうぞ〜」

「よ、よろしく・・・」

 

第一印象は正直良くなかった。見た目からいかにもギャルって感じが伝わってきてたし。モカの方はのんびりした子だな、くらいだった。

しかし数日後には見事にそのイメージを覆された。

 

「ふむふむ、なるほど・・・」

「ここのボタンを押すとこうなるんだね・・・」

 

見た目とは裏腹に彼女は真面目だった。わからないことは訊きにくるし、忘れないようにメモもする。接客はあの見た目ゆえ、少し心配だったが持ち前のコミュニケーション能力で見事にこなしていた。

そう思った理由(わけ)だが、彼女は分け隔てなく誰にでも優しかった。たかだか数ヶ月先輩で冴えない俺にさえ。

 

「でね〜、モカってば──────────」

 

いつものようにバイトあがりに分かれ道まで彼女とおしゃべりしている時に以前からの疑問をぶつけてみた。

 

「なぁ、リサ」

「んー?」

「なんで俺なんかにもそうやって話しかけてくれるんだ?」

「・・・どしたの、急に?」

「いや、リサみたいな美人な子が俺みたいな普通のやつを気にかける理由なんかないよなぁって思ってさ」

「・・・前から思ってたケドさ、キミってすっごい自虐的だよね」

 

自覚はあったが他人にそうやって言われるとなかなかクるものがある。

 

「・・・いや、当然の疑問じゃないか?」

「そーなのかな?アタシにはわかんないや。・・・とにかく、気にし過ぎだと思うよ?」

 

俺には当たり前のことだったがリサにとっては違うみたいだ。まあ、価値観は人それぞれだしそういうこともあるか。

 

「それにアタシ、キミのこと好きだし」

「はあ〜なるほどね。そりゃ気にしないわけだ。俺のことが好きなら・・・・・・・・・・・・って、はぁ!?」

「あ、ちょっと待って!今のナシ!!」

 

まさかのカミングアウトだった。自然な流れだったから流してしまうところだった。

 

「・・・その・・・いつから?」

「うぅ・・・・・・一緒に働くようになってちょっと経ってからかな・・・」

 

顔を真っ赤にして答えてくれる彼女は間違いなく可愛かった。

 

「・・・なんでか訊いてもいい?」

「もうよくない!?これ以上は恥ずかしすぎて死にそうなんだケド!!」

 

リサにとっては追い打ちとなってしまったようだ。しかしここまで来たら俺も止まるわけにはいかない。

目をじっと合わせると諦めたようにため息をつき、続きを語り始める。

 

「その・・・アタシこういう見た目だから結構避けられたりすること多かったんだ。でも・・・キミはそんなことなかった。仕事でわからないことはどれだけ忙しくても答えてくれたし、教え方もすごく丁寧でわかりやすかった。この人、こんなに誰かに寄り添える人なんだって思った」

 

照れるように目を伏せながら話してくれるリサ。

 

「だから、アタシはキミがいいって思った」

「・・・そっか」

 

今までの彼女との日々を思い返す。俺の中でずっと前に答えは出ていたのかもしれない。

 

「えと・・・その・・・返事は・・・」

 

不安げな表情で視線を彷徨わせるリサ。

 

「・・・俺なんかでいいのか?」

「・・・うん」

「・・・ほんとにいいとこなんかないし顔だって普通だ。明らかにリサと釣り合ってない」

「顔なんて関係ない。アタシはキミじゃなきゃイヤなの」

 

さっきまでの不安げな表情はどこへいったのか、はっきりと俺の目を見つめて告げる。()()()()()()にここまでされて応えないなんて男が廃る。

 

「・・・俺の方からお願いするよ。俺と付き合ってくれ、リサ」

「〜〜〜っ!うんっ!!」

 

そうして俺とリサは恋人になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきからボーッとしてるけど、どしたの?」

「いや、昔のこと思い出しててさ」

「昔のこと?」

「リサが俺に告白してくれた日のこと」

「ちょ!!それ忘れてって言ったじゃん!!」

「え〜それはちょっとな〜」

「もう!!ほんとイジワル!!」

 

完全に俺が悪いのだがこの話題でからかうとリサは少しの間口を利いてくれなくなる。

 

(どうやって機嫌取ろうかなぁ・・・)

 

まあどうしようもなくなったら最終手段(キス)でいくか、とこれからの算段をつけながら先へ行ってしまったリサを追いかけた。

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