遅くなってしまい申し訳ございません。
「わぁ・・・!」
瞳をキラキラさせ彼女が感嘆の声をあげる。眼前は一面青色だった。
「ふぅ・・・やっと着いたな」
「うん!!ほら、早く行こ!!」
着いて早々ハイテンションな彼女に腕を引かれる。
「おい、ちょっと待て!ねぇ、待って!お願い!」
そこまで懇願してようやく彼女は停止する。
「ん?」
「いや、ん?じゃなくて・・・このまま海に入るのかよ・・・」
「・・・・・・あっ」
どうやらおわかりいただけたらしい。彼女の顔が少しずつ紅く染まっていく。
こういう少しおっちょこちょいなところも可愛らしい。ただ、これをライブの時とかテレビの時にも発揮してしまうのが少々残念というか・・・。まあ、そこも彼女が多くのファンに愛される魅力の一つなのだろうが。
そんな多くのファンを抱えるアイドルグループの一人である『Pastel*Palettes』のボーカルでありリーダーでもある『丸山彩』が俺の目の前にいる。さらにはそんな彼女と恋人同士で海デートなのだ。・・・ファンに知られたら死ぬんじゃないの、俺。
「じゃあ、着替えて・・・どこ集合にするか・・・・・・あ、あそこの海の家の前でいいか?」
「えっ、あっ、うん!」
どうやら今の今まで己と格闘していたようだ。そんな彼女と着替えるため一旦別れ、俺は手早く着替えて荷物を持ち集合場所である海の家に向かう。案の定、彩はまだだった。
(まあ、女の子にはいろいろ準備があるって言うしな・・・・・・それにしても、彩はどんな水着を選んだんだろうか?結局最後まで教えてはくれなかったが)
今回海に行くにあたって俺の水着の新調を行うために買い物に二人で出掛けたのだが何故か彩も新しい水着を買うと言い出し、さらには水着は当日まで秘密というお預けを食らっていた。
(ワンピース・・・いや、ビキニとか・・・)
少しイケナイ妄想をしていると、背後から名を呼ばれる。振り向くとそこには彩がいた。
「お待たせ♪・・・・・・ど、どう・・・かな・・・?」
「・・・・・・・・・」
おっとやばい、今意識が飛んでたぞ。何のリアクションもしない俺を彩が心配して声をかけてくれる。が、その顔は少し不安そうだった。
「・・・もしかして似合ってない?」
「い、いや!めちゃくちゃ似合ってる!ちょっと見惚れてただけだから!」
「そ、そっか・・・・・・えへへ・・・」
え、何この子。めっちゃ可愛いんですけど。もらっていいですか?あ、俺の彼女だったわ。
彩の水着は
様々な花柄がプリントされておりデザインもすごく可愛く彩の健康的な肢体と相まって適度な色気も感じられる最高の水着なのだが、一つ懸念事項がある。ぶっちゃけ似合い過ぎているのだ。さっきから周りの男たちがチラチラとこちらを見ている。帽子とサングラスを付けているためまだ彩とはバレていないようだがこの注目度合いでは時間の問題だろう。そこで俺は一旦その場を離れる事にした。
「彩」
「似合ってる、かぁ・・・・・・ふふっ♪・・・・・・」
「あの〜彩さん?」
ダメだ。完全に自分の世界にお入りになられている。・・・仕方ない。ここは強行突破だ。
「悪い、彩」
「んふふ・・・・・・えっ?何か言っ──────────」
何かを言いかけた彩の女性らしい柔らかさを感じる腕を掴み、その場を離れるべく人気の少ない方に足を進める。
「ど、どうしたの?」
「・・・・・・・・・周りを見なさい」
「周り・・・?あっ・・・」
ようやく気付いてくれたみたいだ。
「まさかあんなに見られてるなんて・・・」
いや、あれは見ちゃうでしょ。もうやばかったもん。可愛さの中に確かに感じるエr──────────色気が素晴らしかった。可愛いとエロいを両立してる俺の彼女やばすぎない?
幸せ過ぎてたまに怖くなってしまう。彩のことを今以上に好きになってしまったらどうなるのだろう、と・・・。ああ、どうか頑張ってくれ未来の俺。
そんな贅沢でどうでもいい悩みを未来の俺に放り投げつつ、先程よりは若干人が少ないエリアに移動してきた俺たちは早速海へと繰り出そうとしたのだが、彩から待ったがかかる。
「どしたの」
「んっ」
彼女が突き出す手の中にあるものは日焼け止めだった。
・・・え、塗れと?これを?俺に?マジで言ってんの?
彩の方は砂浜に敷いたシートにうつ伏せになっており準備は万端なようだ。
(ええい!ままよ!)
なるようになれと手のひらに軽く馴染ませてから彩の背中に触れる。
結論から言うとすごくえっちかったです。
その後は波に水着が攫われるというお約束もなく、海で泳いだり砂浜で砂山を作ったり、海の家で焼きそばやかき氷を食べて頭を痛めたりした。
しかし彩は一体何の作品を作っていたのだろう。どう考えても俺にはゴミ屋敷にしか見えなかったのだが・・・。本人曰く、首里城らしい。
「ん〜!楽しかった〜!」
「そりゃよかった」
現在は帰路の途中だ。
「向こうでもシャワーは浴びたけど早くお風呂に入りたいよ・・・」
「汗やらなんやらでベトベトだもんな。俺も早く風呂に入りたい」
「先に入る?」
「んー、彩が先でもいいよ。なんなら一緒に入るか?」
少しからかってみる。いつもなら顔を真っ赤にして否定の言葉が飛んでくる。しかし、今日は何かが違った。
「・・・・・・・・・うん」
「え」
まさかのYESだった。
「・・・・・・・・・ほんとにいいのか?」
「・・・・・・・・・今日だけ特別だからね」
そう言って夕陽に照らされて微笑む彼女は今日で1、2を争うぐらい綺麗だった。