「す、すごい人混みだね・・・」
「ほんとな。みんな夏祭り好き過ぎでしょ」
隣の彼女は『倉田ましろ』。『Morfonica』のボーカルであり俺の恋人でもある。
そのましろと手を繋ぎながら半端ない人混みをかき分けながら進んでいく。
「その浴衣、似合ってるよ」
「え!?あ、ありがとう・・・」
そういえばまだ感想を伝えてなかったと思い素直な気持ちを伝える。
その感想にましろは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
(相変わらずこういうのに弱いなぁ・・・)
付き合ってもう半年ほどになるが未だにこういう話にはめっぽう弱いましろだ。変わらず初心な反応をしてくれるましろが好きで堪らないから一向に構わないのだが。
「で、どこから回ろっか」
「そ、その前に!」
「──────────?」
「キミも・・・その、いつも以上にかっこいいよ・・・?」
「え、あ、ありがと・・・」
え、やばいこれ。めっちゃ恥ずかしいんだけど。俺こんな事してたの?うわぁ・・・そりゃましろもああなるよなぁ・・・。
にしても、服装のチョイスもいつもとさほど変わらないはずなのだが・・・。やはりこの季節には人を素敵に魅せる特別な何かがあるのだろうか。
夏という季節がもたらす何かを探ろうとしたのだが、隣のましろに呼びかけられる。
「あっ!あんなところにたこ焼き売ってるよ!!」
「えっ、ちょ──────────」
何やらすごい勢いで腕を引っ張られる。
え、え!?なんでこんな力強いの!?腕!!腕取れちゃうから!!ま、ましろさ〜ん!!!
俺の腕が無事守られた後、たこ焼きを購入したのだが・・・なんとロシアンたこ焼きだったのだ。しかも一風変わっておりハズレはなんとピーマン味になっているらしい。
たこ焼きにピーマン・・・。合わないことはないだろうができるなら口にしたくはない。さらに都合が悪い事にましろはピーマンが苦手なのだ。というより、子どもが好まないものはほとんど食べたがらない。いわゆる子ども舌なのだ。
「うぅ・・・ピーマン・・・」
「まあ、残すなんてできないからな」
「だ、だったらキミが全部食べてくれれば・・・!」
「う〜ん、美味しそうなたこ焼きだな〜。いい匂いが・・・あ、お腹空いてきた」
「う〜!!わ、私も食べるよ!!」
ふっ、かかった。
「よーし、じゃあどっちから食べるかじゃんけんで決めよう」
「う、うん・・・!」
「じゃーんけーん」「じゃーんけーん」
「「ぽんっ!」」
「うぅ・・・苦いよぉ・・・」
「ふふふ、ましろよ。人生はそう甘くはないのだよ」
「・・・・・・・・・イジワル」
イタズラが過ぎたのかそっぽを向いてしまうましろ。
「ま、ましろさん?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あ、あの〜」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・悪かった。ちょっと悪ふざけがすぎたよ」
「ふふっ、冗談だよ。ちょっとしたお返し♪」
「・・・・・・・・・心臓に悪いからやめてください」
そんなやりとりもしつつ次にましろが目をつけたのがかき氷だった。
「キミは何味にする?」
「そうだな・・・レモン、かな」
「じゃあ私は・・・イチゴにするよ」
「りょーかい」
二人の注文が決まったので店主を呼ぶ。
「おう!どしたい?」
「イチゴ味とレモン味を一つずつお願いします」
「はいよ!・・・・・・・・・可愛い彼女さんだね〜!そんなお嬢ちゃんにサービスだ!ちょいと大盛りにしといてやるよ!」
「あ、ありがとうございます・・・」
「もちろん、兄ちゃんの分もな!」
「そ、そんな・・・俺の分まで・・・」
「気にすんな!もらえるもんはもらっとけ!」
「・・・ありがとうございます」
「おうよ!」
こうして少しボリュームアップされたかき氷を気前のいい店主から受け取った。
「いやいや、これは多すぎでしょ・・・」
「う、うん・・・」
あの後、落ち着いて食べるために移動した俺たちなのだがあまりの量に呆然としていた。
だってめっちゃ山できてんだもん。こんなに盛るんならシロップもっとほしかったよ・・・。
割合としては氷:シロップ=9:1だよ。申し訳程度のシロップだよ・・・。一面真っ白だよ・・・。
ふと、隣のましろのかき氷を見るがそちらも氷が山のように積まれているがその分のシロップもしっかりとかけられていた。・・・・・・・・・この違いはなんなんだ。
「キミのかき氷・・・真っ白だね・・・」
「・・・・・・・・・いいんだよ。俺は氷だけでご飯3杯は食べられるんだから」
「えっ、嘘!?」
「嘘にきまってるだろ」
唸りながらこちらを睨むましろ。正直全く怖くない。むしろ可愛い。
「ふんだ!」
そのままそっぽを向いてかき氷を食べ始めるましろ。
そんな彼女を微笑ましく見つめていたのだが、ふと彼女の首元に目線が引っ張られる。そこにあるのは彼女の白い首筋。もっと言えばうなじである。一度目についてしまえばそこから目を離すのは難しかった。そんなましろのうなじをガン見していると彼女が振り返る。
「そういえば・・・・・・・・・どうしたの?」
「・・・・・・・・・なんでもない」
「─────?まあ、いいや。それより花火の時間って────────」
そこまで言いかけたところで何か大きい音ともに夜空に一輪の花びらが咲く。
どうやら花火の時間が始まったようだ。
「わぁ・・・!」
「おお・・・」
一発、また一発と無数の花火が夜空に咲き誇る。
花火など久しく見ていなかったが、やはり綺麗だと思った。
「すごいね・・・!」
しかし、俺の眼は瞳をキラキラさせながら夜空を見上げる彼女に釘付けだった。
静かにベンチに置かれた彼女の片手に自身の手をのせる。
「──────────!」
一瞬ビクッとなったが、やがて彼女の手のひらが返され俺の手のひらと重なる。
指と指の間にお互いの指が通される。
「ましろ・・・」
俺は彼女の美しい顔にゆっくりと自身の顔を近付いていく。
しかし、彼女から待ったがかけられる。
「・・・・・・・・・こ、ここじゃ恥ずかしいから家に戻ってから、ね?」
頬を染めながら上目遣いでそう言う彼女。
こんなに綺麗な花火なのに早く終わってほしいと願うのは俺のワガママなんだろうか?