ご忠告くださった方本当にありがとうございます。
既に送っていただいた方は大変申し訳ございません。
リクエストなのですが、私『なぁくどはる』という名前で『転校生とバンド少女たち』という作品も書かせていただいているのでそちらの活動報告へ『コメント』という形でよろしくお願いします。
「おっはよー!」
「・・・・・・もうちょい寝かせてくれ」
「えー、でももう9時だよ?」
「・・・・・・全然早いじゃねーか」
布団を剥ぎ取られ覚醒を強制される。さらに何時だと訊けばまだ9時だと言うではないか。
「・・・香澄は朝から元気だな」
「当たり前だよー!今日は一日デートなんだしっ」
満面の笑みで今日という日を楽しみにしていたと話す。相変わらず喜怒哀楽がはっきりしていて可愛らしい。そうやって全身で自分の気持ちを伝えてくれる彼女は『戸山香澄』。Poppin'Partyという五人組バンドのギターボーカルでありバンドリーダーでもある。
(まあ、香澄が怒ったりするとこあんま見ないんだけど)
なので正確に表現するなら喜哀楽になるのかもしれない、なんてくだらない事を考えているうちに頭も冴えてきた。
「わかったわかった。今起きるから」
「早くっ、早くっ」
「そんなに急かさなくてもデートは逃げないんだから大丈夫だって」
「えー!もう待てないよー!ずーっとこの日を楽しみにしてたんだもん!」
俺の腕を引いて待ちきれないと伝えてくる。とりあえず着替えるべく洋服を収納しているタンスに近づく。
「それはわかったから・・・・・・って何でこっちを見てる」
「ちゃんと準備するかチェックしようと思って」
むむむ、と眉間に皺を寄せながら俺の動向をチェックする香澄。
「あの・・・香澄さん?俺着替えたいんですけど・・・」
「むむむ・・・え?着替えたらいいと思うよ?」
「え?」
「え?」
(これは俺が間違ってるのか?)
香澄が当然のように居座るものだから自信が無くなってくる。
(いや、俺は間違ってないはずだ)
「いや、その・・・恥ずかしいんだけど・・・」
「あ、そっか!ごめんね・・・えへへ・・・」
(可愛い)
改めて俺の恋人は可愛いということを認識していると、香澄がじゃあ下で待ってるねと俺の部屋から出ていく。
それを見届けた俺はいそいそと着替え始め香澄の後を追った。
「お待たせ」
「ううん!じゃ、行こっ!」
一階のリビングで母さんと談笑していた香澄に声をかけ、行ってきますと二人で家を出る。歩き始めるとどちらともなく手を繋ぐ。
「楽しみだな〜!遊園地!」
「俺も行くの久々だからちょっと楽しみ」
本日は香澄の要望で遊園地に繰り出す事になっていた。俺自身、小学生ぐらいの頃から行っていないので楽しみだ。香澄も先程から笑顔で鼻歌を歌っている。
「それ新曲?」
「ううん。今思い浮かんだやつ!」
彼女たちが演奏する曲の中でも聴き覚えがないものだったので新曲なのかと思ったがどうやら違うようで今適当に口ずさんでいただけのようだ。それでも聴き惚れてしまうのだからやはり彼女の歌はすごいと思う。
実は香澄は高校に入学してから音楽に関わり始めたのだ。だからまだギターに触っている時間は多いとは言えない。けれど彼女たちPoppin'Partyは他のガールズバンドたちと並んで人気のバンドとなっている。そこには香澄の並々ならない努力とそれを傍で支えてくれた仲間たちの尽力が大きいのでは、と個人的には思っている。
「あ、そうだ。今度のお休みなんだけどまたライブするんだっ。・・・来てくれる?」
「もちろん。Poppin'Partyのファンの一人としては行かないわけにはいかないしね」
「じゃあ『取り置き』しとくね!」
取り置きをやたら強調して言う。なんでも彼女のお気に入りらしい。
(誰に教えてもらったんだか・・・)
そんなやり取りに心を和ませていると辺りが騒がしくなってくる。どうやらもうすぐのようだ。
「う〜!楽しみ〜!ほら、早く行こっ!」
「今日それしか言ってな───────ちょ、そんな引っ張るなって!」
香澄に腕を引かれあっという間に目の前に到着する。
「・・・・・・今度からはやる前に一声かけてくれ」
「──────?うん、わかった!」
(本当にわかってんのか・・・?)
危うく腕がちぎれるところだった。こういう活発なところも彼女らしいが。
そしてパスを買い二人で中に入る。
まずはどんなものがあるのか調べようと思ったのだが、そうは問屋が卸さない。
「最初はジェットコースターにしよ!」
「え、最初にそれはちょっと──────」
「しゅっぱーつ!!!」
「だから一声かけろってーーー!!!」
ある少年の絶叫が園内に響き渡るのだった。
「案外いけるもんだな」
「楽しかったねー!もう一回いっちゃう?」
「望むところだ。先にへばるなよ」
「だいじょーぶ!」
初っ端ジェットコースターはマズいと思ったが案外平気だった。そして香澄の挑発に促されるまま二回、三回と乗っていると・・・
「・・・・・・もう無理。参りました・・・」
「ふっふー、キミもまだまだだね」
(ちくしょう・・・なんでこんなに平気そうなんだ・・・)
五回目で俺がギブアップする形となった。普段の香澄のイメージからして強いのはわかっていたが想像以上だった。
「ちょっと飲みもん買ってくるけど一緒に来るか?」
「行く!」
二人で近くの自動販売機まで歩いていく。
「どれがいい?」
「えっでも・・・」
「いーよ。さっきの分って事で」
「・・・じゃあ、これ!」
ジェットコースターの件では俺が負けてしまったので安いものだが香澄に何かしてあげたかった。もちろん、あれが無くてもお金は俺が出していたのだが。
「ありがと!」
いつものように全身で感情を俺に伝えてくれる。それに俺は笑顔で頷いた。
「次はどうしよっか?」
「・・・そうだな・・・お化け屋敷なんてどうだ?」
「えっ!?い、いや〜・・・それはちょっと・・・」
香澄の顔が明らかに曇り始める。実は彼女、ホラーがあまり得意ではない。Poppin'Partyのメンバーであるりみがそっち方面が好きな事もあり一緒に映画を観たりはするらしいのだが、終始怖がっているらしい。
(ふっふっふ、ここでさっきの仕返しをさせてもらうぜ)
我ながら大人気ないとは思うが、それとは別に怖がっているらしい香澄を見たいという下心もあった。
「そっか・・・残念だな・・・香澄とお化け屋敷、入ってみたかったんだけどなぁ・・・」
香澄が乗り気ではないのでわざとらしく落ち込んでみせる。
「うぅ〜・・・じゃ、じゃあその・・・が、頑張るよ・・・」
「ほんとか!?」
「う、うん・・・」
「さんきゅー!」
そしてお化け屋敷に向かう俺と香澄。
「あ、そうだ。ここのお化け屋敷日本で三本の指に入るくらい怖いらしいぞ」
「えぇ〜!!!先に言ってよ〜!!!」
「うぅ・・・」
「まだ入ったばっかだぞ?」
「だってぇ・・・」
あれからお化け屋敷へと足を踏み入れた俺たちだが、入って早々香澄が俺に引っ付いて離れない。
(これ歩きにくいし・・・・・・その・・・当たるんだよなぁ・・・)
香澄は能動的なので体つきも健康体そのものだ。しかし、高校生ということもあり出るところは出ている。
(俺の勘違いじゃなかったら他の子よりも・・・)
「・・・・・・うん?どうしたの?」
「えっ!?あ、いや、なんでもない」
首を傾げる香澄。
(危なかった・・・危うく変態認定されるところだった・・・)
腕に当たる感触については不審がられない程度に楽しむ事にし奥へ進んでいく。
しかし、作りはかなり複雑になっておりまるで迷路のようだ。
(これなんか目印決めとかないと迷うな・・・)
ところどころにリタイア用の出口があるので最悪はそちらを使う事も頭に入れつつ足を進める。
香澄はぎゅっと目を瞑り俺にしがみついている。
「香澄、それじゃ見えな───────」
そんな香澄を窘めようとしたその瞬間、脇から何か飛び出してくる。
「うおっ!」
「え、何!?どうしたの!?」
俺が驚いて声をあげてしまったものだから引っ付いていた香澄にまで動揺が伝わりパニックになってしまう。
とりあえずお化けの方を何とかしようと思ったらいつの間にか音もなく消えていた。
(え?どこ行ったの?まさか・・・・・・)
速攻でギブアップしました。
(あれはだめだ。あんなの怖すぎる。マジのお化けじゃねーか)
正直舐めていた。あそこまでクオリティが高いだなんて思わなかった。香澄も心做しか元気がなくなっているような気がする。
「・・・とりあえず昼飯食べるか」
「──────!うん!!」
(え、回復早くない?)
香澄の驚異の回復ぶりに面食らいつつ食事スペースへと向かった。
「何にしようかな〜!」
(確かにこれは迷うな)
カレーライスやたこ焼き、焼きそば。オムライスなんてものもある。香澄が目移りするのもわかる。
結局俺はカレーライス、香澄はオムライスを選択した。
「ん〜!美味しい〜!」
「・・・ん、こりゃ美味い」
お腹が減ってた事やこういうシチュエーションだからなのかいつもより美味しく感じられた。
「ねぇねぇ!キミのも食べてみていいっ?」
「ん?はい、どーぞ」
お皿を香澄に差し出すが彼女は受け取ろうとしない。それどころか頬を膨らませて不機嫌そうだ。
「え、なに。どしたの?」
訊いても答えてくれずやがて口を開く。
(・・・あ〜んしてほしいってことなんだろうか)
そう思い一口分をよそい彼女の口元へ持っていく。すると彼女はそれを口に含み咀嚼し始める。
「ん〜!こっちも美味しい〜!」
(最初から言えばいいのに・・・)
こういう面倒臭いところも可愛く思えてしまうのだから自身がどれだけ香澄を好いているのか思い知らされる。
「じゃあ、はい!」
「おお・・・んっ・・・美味い」
「でしょ!」
彼女のオムライスも文句なく絶品だった。
「あ〜楽しかった!」
「そうだな」
日も沈み始めた頃閉園の時間も差し迫っているということで俺たちは帰路に着いていた。
「次はもっといっぱい乗ろうね!」
「ジェットコースターは勘弁だけどな・・・」
「え〜楽しいのに〜」
概ね同意だが流石に五回も乗りたくない。
「・・・また来ようね」
「・・・ん」
楽しい時間はあっという間ですぐに過ぎ去ってしまう。
「そして今日はこのままお泊まり!」
「お、覚えてたんだな」
「当たり前だよっ!?」
香澄から珍しいツッコミが入る。
「そっちも楽しみだったんだからっ。お母さんどんな料理作ってくれてるんだろうな〜」
「それご飯が楽しみなってるじゃねーか」
「そ、そんなことないよ〜・・・」
そんな他愛ない事を話してるうちに帰ってきていたようだ。
「・・・ねぇ」
「ん?」
振り向いた俺はすぐに香澄が今何を求めているのかを察する。
「ほら・・・」
「えへへ・・・」
香澄を胸元へ抱き寄せ彼女の
それが合図になったのか二人の唇が重なるまでそう時間はかからなかった。