これはDxDですか?〜いいえ、ゾンビです   作:絆蛙

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『止められなかった。止めることが、出来なかった。アユムが冥界に行ってしまった。ああ、どうしよう。アユムはきっと、私のことを、私の力を知ってしまう。真実を知ったら、私はアユムに嫌われてしまう。ずっと迷惑を掛けた。話そうと思った。でも怖かった。アユムに嫌われるのがどうしようもなく怖い。だけどもう何も出来ない。私は覚悟を決めないといけないのだろう。例え話した後に嫌われたとしても、拒まれたとしても---それが、私の抱えた運命なのだから』




第七話 脇役は脇役なりに、主役に譲ります

 

 

会場の中央に急遽作られた空間。

その周囲を悪魔たちが好奇の視線で見守ってくる。アーシアや小猫ちゃんたちも先輩とともに関係者席に座っている。魔王様も居た。

めっちゃ面白そうに見てはるやん。

 

逆の方には、ライダーの関係者らしき人達。

俺とライダーは空間の中央で対峙していた。

余裕そうな表情はぶっ飛ばしたくなるが、自重する。というか、たぶん勝てない。こいつって俺を燃やしたことから炎使うんだろ? 相性最悪だし、フェニックスみたいに復活するらしいじゃん。

そこはなんとかなったとしても、俺は空を飛べない。そう、空を飛べない!!

こんな詰んだゲームとか、クソゲーにも程があるぞ。それにもし力を使いすぎて注目されたら? やだやだ。そんなの面倒臭くなるに決まっている!

 

とりあえず腕を回し、準備体操をする。

プールでもそうだが、準備体操はやっておいて損はないだろう。

 

「おい、人間」

 

「ん?」

 

突如、ライダーに話しかけられた俺は準備体操をしながら首を傾げる。

人間って誰のこと? わたくし、人間じゃないですわよ?

 

「貴様には二度も邪魔をされた」

 

二度? なんかしたっけ? うーん・・・今日ダンボール移動して、キノコ食ってたでしょ? そして試合の時は何もしてないでしょ? その前はマシュマロ食べてただけでしょ? なんかやったっけ?

 

「だが、すぐに終わらせてしまったら盛り上がらないだろう。だからチャンスをやる。俺に接近できたご褒美として一発だ。一発だけ貴様の攻撃を受けてやろうじゃないか」

 

「ほー、じゃあ素直に受け取っときますよ。えーと欲求不満のヤリ〇ン焼き鳥さん」

 

コイツには俺を焼いたという怨みがあるので、思う存分殺らせて貰おう。

 

「貴様ッ・・・!絶対に殺してやる!」

 

『開始してください!』

 

「300%ッ!」

 

戦いの開始が告げられた瞬間、ライダーは何も動かない。

なので、容赦なく300%の力を解放して首元に飛び蹴りをぶちかまして吹き飛ばした。

間違いなく、首の骨は折ったね。

 

これで終わってくれないかな、なんて考えが浮かぶけど終わらないだろうなぁ・・・という諦めの思考が即座に出てくる。

そんな俺の思考に答えるように、ライダーは炎で瓦礫を吹き飛ばして起き上がり、両翼に炎の翼を出して宙に浮いた。

離れているのに熱い。

 

「人間の割にはやるようだが、この程度で倒せると思うな!」

 

腕から巨大な玉のような炎を出してくる。

俺はそれを避けながら、悩む。

こんなバトル漫画みたいな戦いをしているが、アレは当たったら死にかけそうだ。痛いのは勘弁したいが、空を飛ぶ相手には戦うことは出来ない。

タケコプターか何かが欲しいところだが、果たしてどうするべきか。

とりあえずは引き摺り落とさなければならない。

 

「350%ッ!」

 

炎で翼を形成したとして、どう飛んでるんだろうと思いつつ、避けられたせいで落下する俺。

やはり当たらない。反撃の炎は地面を踏み砕き、畳返しのようにして身を守る。

流石に当たりたくない。

これは早くも秘策かな?

 

「本当に人間か? 神器らしいものもないというのに、ここまでの身体能力・・・」

 

ゾンビって、レアなんですかね? 俺以外のゾンビにあったことはないけど、たぶんどこかには居ると思うぞ? まあ、でも俺は世間一般なゾンビらしさはないよね。考えることは出来るし意識もある。人間を食べたりもしないし感染力もない。人間に近いゾンビなのかな? ユーに聞かないと分からないが。

 

「どちらにせよ、退場してもらうとするか」

 

そう言ったライダーは、炎の鳥みたいな見た目になりながら突撃してくる。

翼を広げてるのもあり、速度は凄まじかった。ライダーが纏っている炎は拳に集中されたようで、反応することが出来ず、その拳は俺に---

 

「いや、避けるけど」

 

なんてもことなく、地面を蹴って飛んだ俺は距離を離した。

 

「チッ! だがこれで---ッ!?」

 

「400%っ!」

 

「右腕が・・・! いつの間に!?」

 

攻撃出来ないことに驚いてる隙に、俺はライダーに接近する。ライダーはすぐに再生している反対の腕で炎を放ってくるが、俺は受け止めて弾く。

そして胸を斬り裂き、ボディブローを食らわす。

400%の威力をモロに受けたせいか、ライザーは大量の血を吐き出した。汚いので避ける。

 

「ぐはっ!? き、貴様・・・なんだそれは!?」

 

驚くのも無理はない。これが俺の秘策その①。

炎が苦手? 無理? なら受けなければいいじゃない!

俺の秘策とは---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ギョ』

 

カジキマグロセンパイ、またの名をレイトウマグロパイセンだった。

 

「俺の武器ですけど?」

 

「ふざけているのか!」

 

失礼なッ! レイトウマグロパイセンは上位クラスなら戦えるんだぞ!

少なくともイケメンと互角に戦えるくらいには切れ味は良いんだぞ!

 

「あーはいはい。そんなの良いから早く終わらない?」

 

「人をイラつかせるのが上手いようだな・・・ッ!」

 

なんか噴火前の炎見たいな感じで炎が揺れているが、俺は早く帰りたいのである。魔王様のお願いを聞いてるんだからさ。ってか、一誠はなにしてんの? 早く来てくれないと焼かれそうなんだけど。

 

はぁ、と内心でため息を吐くと、ライダーは炎を飛ばしながら接近してくる。

レイトウマグロパイセンで炎をガードし、拳を片手で受け止めた。

 

「アァアアア! アッツ! アツイ! 離れろ!」

 

予想以上に熱くて、顔面を殴ると貫通させてしまった。

おおう、グロォイ・・・。でも再生されたし再生する前に手を引っ込ませてなかったら焼かれてたかもしれなかった。

 

「不死鳥フェニックスと称えられた一族の一人である俺をそれで倒したつもりか!」

 

「あっ、しまったッ!」

 

距離を離してなかったせいで、弾かれるレイトウマグロさん。

どっかに吹き飛んで突き刺さったのが見えた。

ちょっ、おま!? レイトウマグロさーん! こっち! こっち来てー! あなたが居なければ、俺焼かれる!

 

『ギョエ』

 

無理らしいです。

 

「燃え尽きろォ!」

 

「やだよ!」

 

全身を燃やすライダー。

俺は炎が覆う前に即座に顔面に頭突き、頭をへし折りながら殴り飛ばした。

 

「がはっ!?」

 

ふぅ、と吹き飛ぶライダーを見ながら腕で汗を拭う。

しかし、そんな動作をしているとライダーが凄まじい速度で飛んできて蹴り飛ばしてきた。

血を軽く吐きながら壁を壊して瓦礫に埋もれるが、すぐに瓦礫を退かして出る。

高層エリンギ吐いたらどうしてくれんだよと思いながら蹴られた腹を抑えていると目の前には炎があり、顔面で受けたくなかったので左腕を犠牲にした。

 

「あつっ!? ふぅー! ふぅー!」

 

燃える左腕に息を吹きかけるが、炎が治まらないので左腕で地面を殴ることで無理矢理鎮火させる。

はー? マジキレた。ゾンビに炎とか殺す気かっ!

 

「くたばれ、鶏肉野郎ッ! 焼き鳥食いたくなってきただろうがッ!!」

 

先程よりも素早い速度で蹴りを繰り出すが、避けられる。

それだけで終わらずに、俺はライダーに振り向きざまに小瓶を開けて投げた。

それをライダーが弾こうとした瞬間、小瓶に石を投げて破壊する。

するとライダーの全身に水がかかり、蒸気のようなものが出ていた。

 

「ぐおぉ・・・ッ!? こ、これは聖水か!? だが、ただの聖水など・・・!」

 

えー・・・マジ? 悪魔に聖水って相性悪いよね?

 

「じゃあ、これも追加で」

 

とりあえず最後の秘策で水の入った瓶ごと100%で殴る。

だが怯んで聖水でもなくただ濡れただけだからか、笑みを浮かべたライダーに反撃として殴られて後ろに下がってしまった。

ま、こんなもんでしょう。前座なりに頑張ったし、策も尽きたから良いかな。

なんて気軽に考えていると、炎を投げるように飛ばしてきた。

だがその程度、我が最強のレイトウマグロ---

 

「ああああああ!?」

 

慌ててしゃがむことでスレスレで躱す。

そういえばなかったんだったぁあああああ! おいゴラァ! レイトウマグロさん降りてこいや!

うわああああああん! もうやだあああああ! 帰りたーい! やめたーい! 誰か止めてー! もう仕返しも満足したから! 棄権させて!

たーすーけーてー! ほら、Cのポーズで避けたりブリッジで避けたり『く』の字で避けたりしてるけどギリギリなんですけどぉー!! せめて遠距離はやめろっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

凄い。フェニックス家の一人であるライザーと戦う神谷くんの戦いを見て、僕は拳を強く握っていた。

なんで部長の眷属である僕が戦ってないのか、なんで僕はあの場に居ないのかと。

それは僕だけじゃなくて、小猫ちゃんもそうだった。副部長だって何処か悔しそうな感じに見える。

サーゼクス様は前座と言っていたけれど、前座で収まるような戦いじゃないのはみんなわかっていると思う。

以前、修行の際に使ったマグロを盾にして炎を防ぎ、手から無くなったら今度は聖水。

そして遠距離は使えないからか、彼は遠距離攻撃を次々と避けていき、近距離になると魔力を高めたライザーと殴り合いで渡り合っていた。

 

『100%っ! ぐほっ!?』

 

『ぐっ!』

 

でも魔力関係もあって身体能力に差があるのか、互いに拳を与えても神谷くんの方がダメージが大きいようで殴り飛ばされて地面に転がる。そこから背中に炎を受け、すぐ制服の上を脱ぐことで体に行き渡る前に捨てていた。

 

「アユムさん・・・!」

 

アーシアさんが心配するように声を出すが、仕方がないだろう。

明らかに戦況は不利だった。いくらダメージを与えてもフェニックスの特性で再生されてしまう。現に今も炎で焼かれてしまい、炎をなんとか消してから起き上がっていた。

前座という意味では、確かに盛り上がっているといえば盛り上がっているけれど、イッセーくんが来る気配がない今は、彼に勝ってもらうしかもう方法がない。

 

『うおっ!? あっ! ぶなっ!』

 

神谷くんは身を捩ることでライザーの攻撃を躱す。

そして反撃に出ようとしたところで、ライザーの体から吹き出た炎で吹き飛ばされた。

 

『まさかこの俺を相手にここまで粘るとは思わなかったが、そろそろ限界のようだな』

 

『・・・』

 

神谷くんはライザーの言葉に何も返さない。

返す体力がないのか、起き上がって何処かを見つめるだけだった。彼の服はボロボロで腕の部分なんて焼かれた肌しか見えない。

 

「・・・もうこれ以上は危険です」

 

「流石に止めないと危険ですわね・・・ですけど、止めないということは終わりではないということでしょう」

 

流石にサーゼクス様も彼をここで殺すような真似はしない・・・はずだ。

彼はよく頑張ったと思う。少なくとも今の僕ではあそこまで互角に渡り合うことは出来ない。

 

『言い残したことはあるか?』

 

『・・・はぁ。まったく、時間稼ぎは大変だな。遅いんだよ---主人公(王子様)? 俺はともかく、先輩(姫様)を待たせるってのはどうかと思うけどな』

 

『・・・何?』

 

神谷くんが口元に笑みを浮かべてそんなことを言うと、突如として彼らの間に魔法陣が出現した。

あの魔法陣は、グレモリーの紋章?

 

「まさか---あれは、イッセー?」

 

部長の声が聞こえ、皆が注目する。

そこには、左腕に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を身につけたイッセーくんが立っていた。

 

前座(脇役)の出番は終わり---ここからが真打(主役)の登場だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

「あーやっと終わったー」

 

会場に来ると、グレイフィアさんの言う通りにアユムがボロボロの状態で立っていた。

・・・こいつ、見た目の割に全然余裕そうなんだけど。

 

「おい、後は勝手にやれよ? これでお願いは終わりだ」

 

「あ、あぁ。ありがとうな」

 

「別に。俺は俺のためにやっただけだよ」

 

そう言いながらアユムは俺に二つ何かを渡してくる。

 

「これは?」

 

「アーシアからもらった。無くしたらぶん殴る」

 

左手に掴まされたものを見ると、十字架と瓶だった。紐の部分を握らされているのは、悪魔の苦手なアイテムのひとつだからだろう。もうひとつは、聖水?

これを使えってことか? そう思って視線をアユムに向けると、手を振り、後頭で両手を組みながら会場から出ていっていた。

話聞けよ! とは思ったが、グレイフィアさんに聞いたことを思い出す。

アユムは俺が来るまでの間、時間稼ぎのためにライザーと戦っていると。

どうやら、アユムが条件として出したのが『一誠()がライザーを倒すこと』らしい。

何を考えているのかは分からないけど、ずっと戦ってたのであれば疲れているのかもしれない。全然余裕そうだったけど。

とにかく今は感謝しかない。

 

「さて、十分盛り上がったことでしょう! ここからが本当の催し。ドラゴン対フェニックスの戦い---その前にドラゴン使いくん。キミが勝った場合の代価は何がいい?」

 

「サーゼクスさま!?」

 

「なんということを!?」

 

あれが魔王サーゼクス・ルシファーさま。部長のお兄さま・・・!

グレイフィアさんから聞いていたが、見るのと聞くのでは全く違った。

 

「悪魔なのですから、何かをさせる以上はこちらも相応のものを払わねばならないでしょう。さあ、キミは何が欲しい? 爵位かい? それとも絶世の美女かな? なんでもあげるよ」

 

魔王さまが他の声など関係なしに問う。

確かに魅力的な提案だ。もしここで爵位やら絶世の美女を頼めば、ハーレムを作ることだって叶うかもしれない。けれど、俺の答えは既に決まっている!

 

「リアス・グレモリーさまを返してください」

 

「わかった。キミが勝てば、連れていくといい」

 

「ありがとうございます!」

 

迷いのない一言に魔王さまは満足したような笑みを見せ、俺は頭を深く下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『開始してください!』

 

すぐに対峙した俺とライザーを見てか、試合を仕切る悪魔が戦いの開始を告げる。

炎の翼を生やすライザーは俺の籠手を指差した。

 

「おまえの能力はすでに全て割れている。自分の能力を倍加していく神器(セイクリッド・ギア)、『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』。さらに倍増した力を仲間や武器に譲渡する新しい能力も発現したそうだな」

 

どうやら赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)の力も知っているらしい。

そもそも『ギフト』の力は俺一人よりも仲間と使った方が強かったりもする。

それでも俺は部長に満面の笑みを送る。

 

「部長、十秒でケリをつけます」

 

「・・・イッセー?」

 

訝しげな部長。

まぁ、仕方がないだろう。あんな情けないところを見せてしまったんだから。

 

「十秒とは大きく出たな。ならば、俺はおまえを五秒で片づけよう。以前のようにはいかないぞ、リアスの『兵士』!」

 

上等だ! ライザー・フェニックス! 俺はてめぇを思いっきりぶっ飛ばす!

 

「部長! この場所で『プロモーション』する許可を!」

 

俺の叫びに部長が頷く。

するとドクンっと胸が鳴る。

この感覚は、『プロモーション』をしていいという部長の許可が下りた証拠だった。

 

「プロモーション! 女王(クイーン)!」

 

(キング)』を除く、最強の駒に昇格すると全身から溢れるような力が漲った。

出し惜しみなんてしてる余裕はない! 最初からクライマックスだ! いくぜ、赤い龍帝! 俺の神器(セイクリッド・ギア)

 

「部長ッ! 俺は木場みたいな剣の才能はありませんッ! 朱乃さんみたいな魔力の天才でもありませんッ! 小猫ちゃんみたいなバカ力もないし、アユムみたいな変な力やアーシアの治癒の力もありませんッ! それでも最強の『兵士』になりますッ!」

 

俺は部長に向かって叫びながら、今この場で誓う。

 

「あなたのためなら、俺は神様だってぶっ倒してみせますッ! このブーステッド・ギアでッ! 俺の唯一の武器でッ! 俺はあなたを守ってみせますッ!」

 

絶対にあなたを守り---、仲間たちとともに強くなってみせる! 二度とこんなことが起こらないようにッ!

 

「輝きやがれぇぇぇぇぇぇッッ!! オーバーブーストォ!!」

 

Welsh(ウェルシュ) Drago(ドラゴン) over(オーバー) booster(ブースター)!!!!』

 

籠手の宝玉が赤い閃光を解き放つ。会場全体を覆うほどの赤い光が輝き、俺の体を真紅のオーラに包まれる。

---力。おまえの力が、確かに流れ込んでくるぜ。

 

『ああ、使ってみせろ。ただし、十秒だ。それ以上はおまえの体が保たない』

 

俺の籠手に宿る赤いドラゴンが言ってくる。

分かってるさ、赤いドラゴンさん。十秒以内に終わらせる!

 

『そうだ。だが、十秒あれば、おまえは---』

 

ああ、十秒あれば俺は---

 

「俺たちは奴を殴り飛ばせるッッ!」

 

赤いオーラを放ちながら、俺は前へ飛び出す。

俺の体は赤い鎧を身に纏っていた。ドラゴンの姿を模した全身鎧。

全体的に鋭角なフォルムだ。いつもの籠手は左だけではなく、右腕にも装着されている。

籠手にあった宝玉が両手の甲、両腕、両肩、両膝、胴体中央にも出現していた。

さらに背中にはロケットブースターのような推進装置もついている。

 

「鎧!? 赤龍帝の力を鎧に具現化させたのか!?」

 

驚愕しているライザーだが、奴の見解は概ね正しい。

ていうか、見た目は完全に小柄な赤いドラゴンみたいなものだ。顔すら鎧に包まれている。

 

「これが龍帝の力! 禁手(バランス・ブレイカー)、『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』---俺を止めたきゃ魔王さまに頼み込め! 何しろ、『禁じられた忌々しい外法』らしいからな!」

 

スケイルメイルの能力は、十秒間、爆発的な力を解放すること。

一度解放されたら、十秒間無敵になる。

だが、大いなる力にリスクは付き物というべきかリスクも大きい。

解放後の十秒後、丸三日は神器(セイクリッド・ギア)を使えなくなる。赤いドラゴン---ドライグにそう説明された。つまり、一か八かの十秒だけの無敵モードだ。

 

X(テン)

 

カウントが開始された。こいつを発動した以上、時間はない!

一気に決めさせてもらうぜ、ライザー・フェニックスッ!

 

両の手のひらを少し開けるように合わせ、手のひらの間に魔力の塊を生み出す。

それを一気にライザーの方へ放出した。

手のひらから生み出された魔力は、巨大な帯となってライザーに襲いかかる。

 

「なっ!? デカい!」

 

だだっ広い広場の半分を占めるほどの魔力砲に俺自身驚いていると、ライザーも予想に反する大きさだったのか、受け止めるのをやめて避ける体勢を作り出していた。

 

IX(ナイン)

 

カウントは容赦なく刻まれる。

俺はライザーが避けるであろう先に向かって飛び出した。

鎧の背部にある噴出口から魔力が噴き出す。刹那、爆発的な速度が生み出された!

体にかかるGの影響でまともな動きが出来ないまま、ライザーとの距離が近づく。

避けようとしている先に俺が猛スピードで迫ってきたからか、ライザーは驚き、対応も出来ないまま身構えていた。

そこで攻撃---と行きたかったが、俺は何も出来ずに会場の壁へ激突してしまった。

なんという不甲斐なさ! チャンスだったのに!

 

激突の瞬間、両腕でカードしたおかげか目立ったダメージはない。壁に大穴が出来ているが、あんなスピードで激突したのにも関わらず鎧も俺の体にもダメージがなかった。

この鎧の硬さなら、猛スピードでぶつかるだけで大ダメージを与えられるんじゃないか---?

 

VIII(エイト)

 

そんな思考をしている暇もなく、残り八秒を知らせるカウントが聞こえる。

俺は壊れた壁のかけらを払いながら立ち上がり、再びライザーと対峙する。

当のライザーは今の俺の攻撃を見たからか、さっきよりも警戒を強くしていたが、ライザーの半身が再生していた。

どうやら、攻撃は外したがさっきの魔力砲は半身だけ避けきれなかったみたいだ。

 

しかし喜ぶ暇もなく再生を終えた奴の体を虹色のオーラが覆い、凄まじい魔力をピリピリと感じる。

 

「赤龍帝のクソガキ! 悪いが手加減はしない! 認めたくないが、いまのおまえはバケモノだ! 主であるリアスの前で散れェェェェッ!」

 

咆哮をあげるライザーの背中に巨大な炎の両翼が出現した。奴の全身を炎が渦巻き、会場を激しい熱気が包み込む。

会場にいた悪魔たちも自身を守る魔力の防壁を生み出すくらいだ。

まともに食らったら、骨も残らないのかもしれない。

 

『ギャアアアアアァァッ! 燃えたあぁぁぁぁッ!?』

 

・・・知人の悲鳴が聞こえたが、気のせいだろう。アーシアは守られていたが、一人何かを口に含もうとして燃え移った友人が見えたがきっと気のせいだ。叫んで転がるくらい意外と平気そうなのも気のせいだろう。

 

「火の鳥と鳳凰! そして不死鳥フェニックスと称えられた我が一族の業火! その身で受けて燃え尽きろッッ!」

 

聞こえてきた声に一切反応することもなく、火炎に包まれたライザーが高速で迫ってくる。

眼前に広がる有り得ない質量の炎。そのシルエットは巨大な火の鳥そのものだった。翼から生み出される業火の塊。

触れれば流石にヤバいか?

 

『不死鳥フェニックスの炎はドラゴンの鱗にも傷を残す。食らい続けるのは得策じゃない』

 

そうかい、ドライグ。

でもな、俺はそういうわけにはいかないんだ。あの人が見ている。

部長が見ている前で逃げるわけにはいかない! 俺はアレを受け止める!

 

「てめぇのチンケな炎で俺が消えるわけねぇだろォォォォォッ!」

 

吼えながら俺もライザーへ背中の噴出口から魔力の火を噴かしながら突っ込んだ。

お互いの拳がお互いの顔面にぶつかり合った瞬間、力と力が生み出した波動が会場全体を震動させた。

会場のど真ん中、俺とライザーは殴り合いながら力比べを始める。

一撃一撃を食らうたびに全身へ重い衝撃が響き渡り、ライザーの拳から伝わる業火の炎熱が俺を襲う。

一撃一撃が重いし熱すぎる! この鎧がなかったら本当に骨も残らないんじゃないか!? こいつと制服姿で殴り合っていたらしいアユムはどうなってんだよ!?

怖い! この場から離れたいし死にたくない! 拳を交わせば交わすほどライザーとの本来の実力差を感じてしまう。

この鎧がなければ、俺とライザーの力関係はアリと像だ。俺は所詮下級悪魔でやつは上級悪魔だ。

 

俺が恐怖しているのに勘づいたのか、ライザーがニヤける。

 

「怖いか! 当たり前だ! いくら赤龍帝の力があろうがなかろうが、所詮おまえは下級悪魔だ! その鎧と力がなければただのクズなんだからな! 俺の拳が届く以前に、鎧がなければおまえは消失している! そう、おまえからその籠手を取ったら、なんの価値もない!」

 

言いたいことを好き勝手に言いやがって!

でもそうだ! 正論だ! 俺から籠手を取ったら、何も残らない! 魔力の才能も、剣の才能も、バカ力もないただの一般高校生だ!

 

VII(セブン)

 

本気の悪魔との戦いに、全身が恐怖を支配する。

こんな怖い思いしたくない。でも、アユムはヘラヘラとしていたんだ! 俺だって、逃げたくない! それに、それによ!

 

俺は籠手の一部に隠していたものを手のひらにセットし、俺の拳がクロスカウンターの要領でライザーの顔面に鋭く入り込んだ。

ライザーが大きく仰け反る。

 

「そんなもの! 効く---ゴハッ!?」

 

ライザーの口から大量の血が吐き出される。

俺の一撃はライザーにとって致命的だった。なぜなら、俺の手にはこいつが握られているからな。

 

俺が手のひらを開き、持っている物をライザーに見せつける。

 

「十字架! 十字架だと!?」

 

驚愕するライザーと悲鳴を上げる会場にいる悪魔たち。

当然だ。悪魔の苦手なアイテム---十字架。俺はそれを手にライザーを殴った。

先ほど、アユムから受け取ったものだ。想定して俺に渡していたんだろう。そう思うと、本当に助かった。

 

VI(シックス)

 

「十字架の効果を神器(セイクリッド・ギア)で増大させて、あんたを殴った。高めに高めた聖なる攻撃は上級悪魔にだって効果はデキメンわけさ。たとえ不死鳥のフェニックスでもこのダメージはそうそう癒せないんじゃないか?」

 

「バカな! 十字架は悪魔の身を激しく痛めつける! いかにドラゴンの鎧を身につけようと手にすること自体が愚の骨頂---」

 

そのとき、ライザーが初めて俺の左腕の変化に気づいた。

全身を包むドラゴンの一部になっているから分かりにくかっただろうが、近くでよく見れば気づくだろう。

無機質の質感に見える全身鎧と---生きているかのような脈動を続ける左腕との差を。

 

「・・・籠手に宿るドラゴンに、自分の腕を支払ったのか・・・? それがそのバカげた力の理由か・・・ッ!?」

 

「ああ、そうだ。俺はこの力を一時的に得るために、左腕を代価にくれてやった。俺の左腕は本物のドラゴンの腕だ。だから、十字架は効かない」

 

左腕をドラゴンにすることが、ドライグの絶大な力を使う代償。ライザーと互角以上に戦うために俺は自身の腕を売り払った。籠手はドラゴンの一部と化している。

十字架を渡してきたアユムはこれも読んでたのかもしれないな。もしそうなら、恐ろしい友人だ。

 

「そんなことをすれば二度と元の腕には戻らない! おまえはそれがわかっているのか!?」

 

「それがどうした!」

 

V(ファイブ)

 

くだらない話をしていても、カウントは止まることも無く容赦なく刻まれる。

 

「俺みたいな奴の腕の一本で部長が戻ってこられるんだ。こんなに安い取り引きはないだろ?」

 

俺の言葉を聞いてライザーは目元を引き攣らせた。

 

「イカレているな・・・。だからこそ迷いのない一撃を放てるのか・・・・・・。怖いな。初めておまえに心底畏怖した。だから、俺はおまえを全力で倒すッ!」

 

ライザーの両翼がいっそう強く燃え上がり、周辺を炎に包みながら俺に突っ込んでくる。

 

IV(フォー)

 

「うおおおおおおおおおおおおッ!」

 

負けじと手に握る十字架に力を込める。

全力だ! この一撃で勝負を決めるつもりで最大の一撃を十字架に込めてやる!

 

俺の拳とライザーの拳がぶつかり合う---瞬間、ライザーの動きがほんの少しだけ緩くなった。

原因は分からない。だが俺はそんなチャンスを逃すこともなくライザーの拳に鎧が掠りながらも顔面を殴り飛ばした。

 

「ぐっ!? 体が・・・上手く動かん・・・ッ!?」

 

「まだまだああああああッ!」

 

III(スリー)

 

殴り飛ばした先に噴出口から魔力を噴き出して追いついた俺は、ライザーに連撃を食らわす。十字架を握っている左腕をメインに右腕での拳も合わせてのラッシュ。

そして踵落としで地面に叩き落とす!

 

これだけ攻撃を打ち込んだんだ。流石に・・・!

 

「ぐっ・・・まだ、まだ終われん!」

 

「嘘だろ!?」

 

十字架を使った連打にすら立ってみせるライザーに俺は驚愕する。

しかし炎の両翼は消えており、服から体までボロボロなことから強化された聖なる攻撃を食らえばダメージの回復は遅くなるようだ。

 

『十字架だけでは足りないのだろう。だが既に体力と精神を激しく消耗しているからか回復が追いついていない。しかしこちらも残りの時間からして倒すのにはまだ届かん。もう一手必要だ』

 

ああ、そうかい。だったら、()()しかないよな。

俺は地面に降り立つと、立ったまま睨みつけてくるライザーを見ながら、拳に貰った聖水を振りかけた。

 

「アーシアが言っていた。十字架と聖水は悪魔が苦手だって。それを同時に強化して、同時に使ったら、悪魔には相当なダメージだよな」

 

「ぐっ・・・」

 

ダメージが残っているからか、膝を着くライザーは俺の一手を見て顔を強張らせる。

俺はライザーと周囲を見渡すと、ライザー以外何も無い。

 

「木場が言っていた。視野を広げて相手と周囲を見ろと」

 

体中に流れている魔力のオーラを一点に集中。さらにそれをドラゴンの力に変化させて十字架と聖水に譲渡する。

 

Transfer(トランスファー)!!』

 

II(ツー)

 

「朱乃さんが言っていた。魔力は体全体を覆うオーラから流れるように集める。意識を集中させて、魔力の波動を感じればいいと」

 

さらに体勢を整えて、打撃を繰り出すために拳を構える。

 

「小猫ちゃんが言っていた。打撃は体の中心線を狙って、的確かつ抉り込むように打つんだと!」

 

少し遠い距離を拳が届く範囲まで迫り、力を込める。

 

「アユムが言っていた。油断することなく最後まで相手の一挙一動を見逃すなと!」

 

全部、修行で習ったことだ。

みんな、俺は全部覚えているよ。全部役に立ってる。部員全員の力で、部長を取り返すんだ!

 

I(ワン)

 

俺が奴への拳の標準を定めた時、ライザーが慌てふためく。

 

「ま、待て! わ、わかっているのか!? この婚約は悪魔の未来のために必要で大事なものなんだぞ!? おまえのような何も知らない下級悪魔がどうこうするようなことじゃないんだ!」

 

「難しいことはわからねぇよ。でもな、おまえに負けて気絶したとき、うっすらとだけ覚えていることがある。---部長が泣いていた。部長が泣いていたんだよっ! 俺がてめぇを殴る理由はそれだけで十分だァァ---ッ!」

 

反撃するためか、膝を震わせながら立ち上がったライザーの攻撃を一挙一動も見逃すことなく見ていたおかげで躱す。

そして素早く十字架と聖水付きの俺の拳がライザーの腹に正確に抉り込んだ。

 

「ガハッ!? こ、こんなことで、俺が・・・」

 

血反吐を吐きながら、数歩だけ後退るライザーは一言漏らすと、床へ前のめりに突っ伏す。

 

0(ゼロ)

 

同時に俺を纏っていた鎧は十秒経過したせいか、消えていた。

肉体の負荷が襲ってくるが、倒れるほどではなかった俺は足でしっかりと立つ。

そして倒れ込み、立ち上がる気配のないライザーを一瞥すると、間に飛び込んでくる人影がひとつあった。

金髪でドリルロールの髪をした美少女、ライザーの妹だ。

ライザーの妹は無言で睨み、何かを訴えてこようとしてくる。

だから俺はドラゴンの左腕をライザーの妹に突き出して言ってやった。

 

「文句があるなら、俺のところへ来い。いつでも相手になってやる!」

 

迫力に気圧されたのかライザーの妹は後退りしながら道を開ける。

俺はそのまま通り過ぎて、部長の前に立った。

部長を見つめ、笑いながら俺は今度こそ言う。

 

「部長、帰りましょう」

 

「・・・イッセー」

 

俺は次に部長の隣に視線を移した。

紅色の髪をしたダンディなお方。部長のお父さまだ。

俺はそのお方の前に歩み寄り、深く頭を下げた。そしてハッキリと言い渡す。

 

「部長を、俺の主であるリアス・グレモリーさまを返してもらいます。勝手な振る舞いをしてしまい、大変申し訳ありませんでした。でも、部長は連れて帰ります」

 

俺の一方的な宣言に、部長のお父さんは何も言わず、ただ静かに目を瞑った。

その隣に座っていたはずの魔王さまのお姿はそこになく、どこかへ消えてしまっていた。

一言、お礼を言いたかったのに・・・。今度お目にかかったら、必ず---。

 

心の中でそう決断をすると、部長の手を取る。そして懐からグレイフィアさんからここに来る前、もらった魔法陣の紙を取り出した。

確か部長を奪取したら、転移魔方陣の裏側の魔方陣を使えって言ってたような、と思い、紙を裏側に向けると眩い光が発せられる。

 

『キュィィィィィッ!』

 

魔方陣から現れたのは、一匹の大きな鷹だかライオンだかわからない翼を生やした四足生物だった。

 

「グリフォン・・・」

 

会場から誰かの小さな声が聞こえ、グリフォンって名前なのかと納得する。

俺はグリフォンの背に乗り、部長の手を取って俺の前へ乗せた。

 

『キュィィィッ!』

 

グリフォンはひと鳴きすると、先ほど俺が激突して生み出した壁の穴へ向かって羽ばたき始める。

飛び立つ前、俺は木場たちに向かって言った。

 

「部室で待っているからな!」

 

俺の一言に部員全員が笑顔で手を振ってくれる。

そしてグリフォンは俺と部長を乗せて冥界の空へ飛び出していった---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グリフォンが空へ飛び出す前、俺は一つ疑問が浮かんだ。

 

---そういえば、アユムはどこに行ったんだろう?

 

部員のみんなが手を振ってくれた時、一人だけ居なかった親友のことが浮かぶ。

だけどきっと大丈夫だろう。悪魔じゃないからって殺されたり捕まったりはしてない・・・よな?

魔王さまとかお偉いさん方に無礼なことしたとか・・・やばい。アユムなら有り得そうだ。

 

 

 

 

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