これはDxDですか?〜いいえ、ゾンビです   作:絆蛙

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『いつの間にか、ウサギまでも家に住むようになっていた。いくら私の力がアユムに影響を与えてるとはいえ、可笑しい。・・・そういえば、アユムがドラゴンを宿す悪魔と一緒に居ると聞いたことがある気がする。・・・それだと、アユムにも他の異性の子が集まってくるかもしれない』

ユーの膝で丸まるウサギとそのウサギを無表情で撫でるユーの姿。






第二話 球技大会と聖剣?

 

 

球技大会。

スポーツが好きな人間や得意な人間にとっては活躍する場でもあり、アピールする場でもある。

太陽の下で汗をかきながらやるスポーツは青春の一ページとして刻みつけられるだろう。

そんな中、凄まじいラリーを繰り広げているテニスは異質だった。

先輩と生徒会長による、互角の戦い。もはや人間技じゃない・・・これは名付けるならばテニヌだろう。俺も手塚ゾーンやりたい。

俺の必殺技を披露したいところだが、日陰で見ていた俺はテニスは参加しないので先輩と生徒会長のラケットが壊れたところを見ながら呑気にウサギと戯れていた。一方的に頭に乗られてるだけだけど。

 

 

 

 

 

そんなこんなで、時間を潰していると部活対抗戦の時間となった。

一応これでも部活に入っていることになっているので、参加しなければならない。俺を含めてほぼ人外しかいない部活だが、みんな手加減をしている。俺に至っては人間と変わらない。

 

「あ、あのっ。ど、どうでしょうか・・・?」

 

これから死地に行くような覚悟で太陽を睨む俺の背後から声が聞こえて振り向くと、驚いた。

そこには学校指定の運動着---ではなく、ブルマの格好をしたアーシアが居たのだから。

三馬鹿変態共曰く、絶滅危惧種になりかけているブルマだと・・・!? 白い肌に綺麗な生足、太もも。金色の長髪と立っているアホ毛が調和していて控えめにいって素晴らしい。特にアーシアのような美少女にはベストマッチだった。

 

「・・・え、えっと桐生さんから聞いたんです。ドッジボールの正装はブルマだって・・・。そ、それにアユムさんも喜ぶと・・・!」

 

アーシアが顔を真っ赤にしながらもじもじと足を擦り合わせている。

一方で、俺は犯人について諦めていた。

あんにゃろう。またアーシアに余計な知識を植え付けやがって・・・! しかも若干良いと思ってるのが否定出来ねぇ!

 

「ダメですか?」

 

アーシアが上目遣いで見つめてくる。ついでにウサギさんも何か言え、というように頭を何度も踏んでくる。

 

「いや、可愛いと思うよ。うん似合ってる」

 

とりあえず踏みつけてくるのがウザイので、サムズアップしながら答えたらアーシアが俯いていた。

ウサギさんは頭の上でぴょんぴょん跳ねてくる。

・・・どうしろと?

 

「皆! これを巻いてチーム一丸になろうぜ!」

 

俺が理不尽な攻撃を受けてる間に、一誠がハチマキを取り出した。『オカルト研究部』と刺繍されているものだ。

 

「あら、準備がいいのね。それに意外に器用ね。上手くできているわ」

 

「へへへ、実はこっそり練習してたんです」

 

「一誠にしてはよく出来てるな」

 

「何様のつもりだよ!?」

 

手に取ってハチマキを観察すると、これはお手製だ。決して完璧ってほどやプロほど上手いとは言いきれないが、努力をしたという過程が垣間見える。ある程度の技量がなければ出来ない領域にはなってるらしい。

エロさえなければ少しはモテるだろうな・・・ほんと。

 

「イッセーさん、凄いです!」

 

「・・・予想外の出来栄え」

 

「ありがとう! アユムのやつとは大違いだぜ・・・」

 

言われてるぞ、アユム。

なんか言ってやれ、アユム。

 

「あらあら、確かに他の部活動ではチーム一丸になるためのアイテムを着用してますわね」

 

「そうです! そんなわけで俺も作ってみました!」

 

みんながハチマキを巻いてるが、俺はウサギさんが邪魔で巻けない。落とすのは流石に可哀想だからなぁ・・・。

仕方がないから腕に巻いとこう。

 

「ほら、木場」

 

「・・・う、うん。ありがとう」

 

「・・・今は勝つことに集中しろよ」

 

「・・・勝つか。そうだね・・・。勝つことが大事だ」

 

『オカルト研究部の皆さんと野球部の皆さんはグラウンドへお集まりください』

 

俺が腕に巻き終わった後には、アナウンスによる呼び出しを受けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「狙え! 兵藤と神谷を徹底的に潰すんだ!」

 

「一誠だけでよくない?」

 

「ふざけんなぁぁぁ! お前もちゃんとやれよ!」

 

飛んでくる豪速球を一誠が必死に避ける姿を見ながら、俺は欠伸をしていた。

開始された部活対抗の球技大会。種目はドッジボールで初戦は野球部なわけだが、開始早々俺と一誠が標的になった。

先輩と姫島先輩---駒王学園の二大お姉さま。大人気のアイドルだけあって、狙えない。

アーシア---癒し系天然金髪美少女。運動神経が良いとはいえないだけあって、狙えない。

小猫ちゃん---学園のマスコット的な少女。当てたら可哀想。つまり狙えない。

イケメン---当てたら女子に殺される。当てれない。

一誠---変態だし覗き魔だし女子に囲まれて意味がわからない。殺れ! ということだろう。

そして俺---ただの一般ゾンビ。アーシアと同居してる。間違いなく処刑対象。さらに学園の奴らは知らないが、ユーとずっと暮らしていた。永遠にこの世からアデュー確定。

うーん、理解出来るから何も言えないんだよなぁ。素晴らしい消去法だ。でも既に太陽にやられかけてる俺は外してくれても良くない? 頭にずっとウサギさん乗ってて力も抜けてきてるからしんどいんです。

 

「イッセーとアユムを殺せぇぇぇぇ!」

 

「兵藤を始末しろ! やつは罪深いッ!」

 

「兵藤はお姉さまがたに手を出してるのよ! ここで殺らなきゃダメよ!」

 

「兵藤はよく覗きもするしここで処刑するべきだ!」

 

「アーシアちゃぁぁぁぁん! ブルマ最高ぉぉぉぉぉ! 神谷ぁぁあぁ、死ねぇえぇぇぇ!」

 

「お願い! 神谷くん---はまだ良いとして兵藤だけは何があっても倒して! リアスお姉さまのために! 朱乃お姉さまのために!」

 

「神谷の野郎をぶっ倒してアーシアさんを取り戻すんだ!」

 

「神谷くんは良いけど頭の上に乗ってるウサギだけには気をつけて!」

 

「ウサギは無視して神谷とイッセーだけは殺せぇぇぇぇ! ロリコンは俺だけでいいんだ! 出てきた奴らが悪い!」

 

ギャラリーから悪意をぶつけられる俺たち。しかし、どうやら俺よりも一誠の方が殺意の量は大きいらしい。

 

「二人に集中しているわ! これは『犠牲(サクリファイス)』ね! チャンスよ!」

 

「部長ぉぉぉ! がんばりますぅぅ!」

 

「おー頑張れー!」

 

「お前もやるんだよ!!」

 

俺が逃げ回る一誠を眺めながら応援していると、怒られた。

何となく笑みを浮かべると、余裕の笑みとでも受け取られたのかボールを持つ野球部の男が俺に標準を定めていた。

 

「余裕そうにしやがって! これで最後だ! エターナルインパクトォォォ!」

 

「え、なにその技名!? そんな競技だっけ!?」

 

凄まじい速度で飛んでくる球。俺はそれを避けようとするが、後ろにアーシアが居たために避けるのをやめ---顔面で受けた。

 

「グハァ!?」

 

一回転して綺麗に倒れる俺。ウサギさんは見事着地していた。

自陣に落ちたボールを先輩が拾う。

 

「顔面セーフよ! ここは任せなさい!」

 

「は、はい・・・」

 

技名があるだけあってエースなのか、投げる威力が高いらしい。鼻から鼻血が流れてきやがるぜ。

 

『キュ?』

 

「大丈夫大丈夫。だが、さっきのやつ・・・殺るしかない・・・ッ!」

 

鼻血を腕で拭った俺は、立ち上がる。

今は相手の方にボールがあるらしく、立ち上がった俺を狙うつもりのようだ。

俺は両足を開き、腕に巻いていたハチマキを解いて額に巻く。

 

「ここからが本気だ! やろうか、究極の吐尽血暴流(ドッジボール)をな・・・!!」

 

「何が本気だ! 確実に殺す! 殺人式、アルティメットディストラクションッ・・・!!」

 

「250%ォ!」

 

「え、ちょ、アユム!?」

 

一誠が何やら俺を呼ぶが、無視して両手を前に突き出してボールを受け止める。多少地面を削ったが、しっかりと受け止めれた。

そのボールを突き出すと、相手は驚愕の表情を浮かべる。

 

「ば、バカなッ! 運動音痴でヘタクソだと思っていた神谷が俺の必殺球を受け止めただと!?」

 

破滅(はめつ)への輪舞曲(ろんど)だ! 踊って貰うぜ!」

 

即座に筋肉操作を解除して人間と同じ力に戻すと、跳躍と同時にボールを投げる俺。

投げたボールは男の手首に当たるが、上空に弾かれる。

 

「くっ・・・! これをキャッチすればいいだけだ!」

 

「見せてやるぜ」

 

こちら側に入った瞬間、ボールをキャッチしてもう一度全力で叩きつける。

男はキャッチしようとするが、傷みが走ったのか手首を抑えるとボールを背中に受ける。

そして地面に叩きつけられた。

俺は着地と同時に腕を突き上げて勝利したことを示す。

 

「俺の・・・勝ちだッ・・・!」

 

「クソォォォォォォ!!」

 

悔しがるエースくんと勝利に酔いしれる俺。

その後、エースくんは気絶した。

なんだこの中二病合戦・・・!

 

「後は任せろ! 恨まれてもいい! チームの為にも、イケメンめぇぇぇぇ!」

 

イケメンに対する憎悪が強かったのか、エースくんの傍に落ちていたボールを野球少年が取り、俺の隣にいたイケメンに撃ち出していた。

これくらいなら避けることは容易いだろう、と思ってスルーするが、遠い目でボーッとしているのか気づいてる様子がない。

ウサギさんが頭に乗ってきて足で踏んでくる。

助けろ、ということだろう。仕方がない。

 

「バッキャロー! これはただの試合じゃねぇ! 生きるか死ぬかの戦いだ! 集中出来ねぇなら引っ込んでろ!! 何を考えてるか知らんが、時と場合を見極めやがれッ!!」

 

舌打ちをして木場を後ろへ投げ飛ばした俺は、イケメンを庇うように尻餅を着いたイケメンの前に出た。

 

「・・・あ、神谷くん?」

 

左? 右? 正面? 上?

迫るボールにあらゆる箇所に対応出来るように目を凝らすが、何を思ったのか俺は背後を見てしまった。

その時の木場の目は、何処かここを見ていない。まるで何かに囚われるように、別の感情に支配されてるかのようだった。

こいつ、何かあったのか?

 

「おい、アユム! 前! 前を見ろ!」

 

「へ?」

 

一誠の声に反応すると、ボールが正面から消えていた。

何処に行った? と呆然とした瞬間---下腹部に凄まじい痛みが走り、バウンドしたボールが再び当たった。

ふぉ、フォークボールに、二回攻撃・・・だと・・・!?

 

「これが・・・吐尽血暴流(ドッジボール)か・・・うっ」

 

あまりにもの痛みに股間を抑えながらその場に倒れる俺。

 

「あらあら・・・大変なことになりましたわね」

 

「あ、アユムゥゥゥゥ!!」

 

一誠が駆け寄ってきて抱きかかえてくる。

 

「い、一誠・・・。玉が・・・」

 

「大丈夫か!? 分かる、分かるぞ、お前の痛み! 男なら誰しも分かるッ! 投げた本人すら、申し訳なさそうに顔を真っ青にしてるから!」

 

「あぁ・・・お、お前は俺のようには、なるな・・・!」

 

一誠に向かって手を伸ばしていた俺の手が、地面に落ちる。

太陽に照らされ、じわじわと焼けて少しずつ干からびていく感覚を感じながら俺は力尽きた。

 

「あ、アユムゥゥゥゥゥゥ! お、おい・・・嘘だろ・・・? くそっ! お前の仇は、俺が討ってやるからな・・・!! 部長! アユムの治療を!」

 

「そうね。アーシア、頼めるかしら?」

 

「は、はい! アユムさんが怪我を・・・?」

 

「どうやら大事な所をね・・・。ついでに物陰に行く必要もありそうだしそこで回復してあげてちょうだい」

 

「大事なところ? よく分かりませんが、分かりました!」

 

ち、ちく・・・しょう・・・。油断した・・・! この俺が、この俺が、吐尽血暴流(ドッジボール)で退場だと・・・! まだ必殺球パート2を見せていないのに・・・! 破滅への輪舞曲だけで終わりだと・・・!

 

「小猫、人の見えないところまで神谷くんを連れて行ってあげて」

 

「・・・了解」

 

『キュー・・・』

 

ウサギさんが心配するように頬擦りしてくるが、悶絶中なので返事出来る余裕がなかった。ゾンビでも、そこは弱点なんだ・・・。

だって俺、男だもん。

 

「せ、先輩。この勝負・・・任せました・・・」

 

「ええ、よくやってくれたわ。あとは私たちに任せなさい」

 

自信満々に宣言する先輩にゆっくりと頷くと、体が浮いた気がする。

きょとんと首を傾げると、小猫ちゃんが俺を抱えていた---お姫様抱っこで。

 

「ちょっ」

 

「・・・行きますよ」

 

なるほど、お姫様抱っこ・・・お姫様抱っこかぁ・・・。

今度やり返そう。

密かに決断した俺は、小猫ちゃんによって体育館裏に連れていかれた。

戦線離脱である。

 

 

 

 

 

 

 

親切なことに、影があるお陰で干からびる前に太陽から抜け出せた俺は降ろしてもらった瞬間に倒れた。

さ、再生能力が太陽に当たってたせいで全然機能しねぇ・・・!

 

「アユムさん、ケガした部分を見せてください」

 

「・・・無理ぽ」

 

「で、でも患部を見せてもらわないとちゃんとした治療が出来ません!」

 

あっはは・・・前提として絶対に出来ないが、そもそもの問題として脱げる訳ないだろ? 二回攻撃を受けた俺は立ち上がることすら出来ないんだからな・・・!

ウサギさん、なんとかして・・・。

 

『キュ! キュァー!』

 

俺の心からの言葉にウサギさんが俺の腰を軽く蹴る。

やめて! ダメージが響くぅ!

 

「この辺りということでしょうか・・・? ・・・分かりました、すぐに治療します」

 

どうやら意思疎通出来たらしく、何だか残念そうな口調だったがアーシアの手から暖かい光が発せられ、それと同時に痛みが引いていく。

流石アーシアだ。昼だとガチでお世話になってます。

 

「・・・なんとも言えない場面」

 

嘆息する小猫ちゃんの気持ちが分かるので、俺も頷いた。

 

「アユムさん、今は休んでください」

 

そう言ったアーシアが俺の頭部を持ち上げたかと思えば、柔らかい感触を感じる。

これは膝枕だろうか。治療がやりやすいのかな・・・でもブルマでそれは流石にちょっとやばいので、煩悩を消し去るようにイメージを---ユーが出てきたので考えるのをやめて無心となった。

 

『オカルト研究部の勝利です!』

 

俺が戦っている合間に、向こうは戦いを終えたらしい。

吉報のアナウンスが俺たちの耳にもしっかりと届いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

良い天気だと思う。球技大会が無事に終わり、外はすっかり曇天が広がっていて雨がザーッと落ちる。

ウサギさんを頭に乗せ、アーシアと再生能力のお陰で局部が完全に再生した俺は窓から外を眺めて思い耽ていた。

今日の出来事を、少し思い出す。

 

『じゃあ、そろそろ行ってくる』

 

『ヘルサイズさん、行ってきますね』

 

『行ってらっしゃい』

 

家を出る前、学校に行く時にはいつも言う言葉。

 

『アユム 気をつけて』

 

『・・・? おう』

 

アーシアじゃなく、俺だけに言われたこの言葉は、球技大会のことを示していたのだろうか。

そうだとしたら、ユーの警告を守れなかった俺はなんて無力なんだ・・・。自分の股間を守れないとは・・・! 不覚ッ!

 

なんてことを思い出して無力感に支配されていると、雨音に混ざって乾いた音が部室に響いた。

 

「どう? 少しは目が覚めたかしら」

 

お怒りの様子の先輩。

どうやらイケメンが叩かれたらしい。

俺が死んでる中、一誠たちが頑張って勝ったらしいのだが、イケメンだけは何度か貢献することはあっても非協力的だったらしい。

先輩に怒られても終始ボケっとしてどうでも良さそうにしてたとか。

そんなイケメンだが、頬を叩かれても無表情で無言だった。

 

「もういいですか? 球技大会も終わりました。球技の練習もしなくていいでしょうし、夜の時間まで休ませてもらってもいいですよね? 少し疲れましたので普段の部活は休ませてください。昼間は申し訳ございませんでした。どうにも調子が悪かった見たいです」

 

「木場、おまえマジで最近変だぞ?」

 

「キミには関係ないよ」

 

一誠の問いにイケメンが作ったような笑顔で冷たく返しているが、関わると面倒だと理解した俺は欠伸をしながら音楽のように右の耳から左の耳へ流していた。

 

『キュ』

 

ウサギさんが頭の上で丸まって鳴き声を漏らす。

コイツ、やけに可愛いし器用だな。いや、俺が愛着を持ったのかもしれない。

とりあえず小さいニンジンを頭の上にいるウサギさんに差し出すと、可愛いらしく小さな口で食べ始める。

癒されるなぁ。

・・・小猫ちゃんから視線を感じる気がするが、見てみたら逸らされる。

一体なんなんだ。

 

「俺だって心配しちまうよ」

 

「心配? 誰が誰をだい? 基本、利己的なのが悪魔の生き方だと思うけど? まあ、主に従わなかった僕が今回は悪かったと思っているよ」

 

「お前、何を・・・?」

 

『キュ〜』

 

はいどうぞ、と物欲しそうに鳴くウサギさんにもうひとつ渡す俺。

一方で俺は、アオキノコを食べて一応回復していた。

 

「僕は一つ、基本的な事を思い出したんだ。僕の生きる本当の意味を・・・」

 

「基本的なこと? 生きる意味? 部長のためじゃないのか?」

 

「違うよ。僕が何のために戦っているのか、生きているのか・・・。聖剣エクスカリバー。---それを破壊する事で復讐を果たす。これこそが僕の生きる意味で戦う理由だ」

 

『キュッ』

 

眠たいなぁ・・・。って、あれ? 話終わった?

教えてくれてありがとう、ウサギさん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆

 

どしゃ降りの中、僕は傘もささずに歩いていた。

熱の上がった頭にはちょうどいいぐらいだと思う。

自分を救ってくれた主とケンカをしてしまった。初めて反抗してしまったのは『木場祐斗』としては失格だろう。

けれど、聖剣エクスカリバーへの復讐心を忘れたことなんてなかった。

ちょっと学園の空気に呆けていただけだ。

仲間もできて、生活も得て、名前も与えられた。生き甲斐も主であるリアス・グレモリーに貰った。

これ以上の幸せを願うのは悪いに決まっている。想いを果たすまで、僕を逃がしてくれた同志たちの分を生きていいなんて思ったことなど---

 

「ッ?」

 

その時、雨とは違う水の音を僕の耳が捉える。

眼前に神父が居た。十字架を胸につけ、憎き神の名のもとに聖を語る者。僕の大嫌いなものひとつ、エクソシストならここで牽制してもかまわないとさえ思った。

 

「・・・ッ!!」

 

神父は腹部から血を滲ませ、口から血反吐を吐き出すとその場に倒れ伏した。

誰かにやられた? 敵? 

 

「ッ!」

 

警戒していると異常な気配を察して魔剣を創りだした。

雨の中で銀光が走り、火花が散る。

殺気の方へ体を向けると、長剣を振るう何者かが襲いかかってくる。

相手は眼前で死んだ聖職者と同じ格好---だけど明確なほど強烈な殺意を飛ばしてきている。

 

「やっほ、おひさだね」

 

嫌な笑みを見せる少年神父を僕は知っていた。

白髪のイカれた少年神父---フリード・セルゼン。先日の堕天使との一戦で僕らとやり合った輩だ。

堕天使の本拠地には居なかったが、逃げたのだろう。

 

「・・・まだこの町に潜伏していたんだね。悪いけど、今の僕は至極機嫌が悪いんだ」

 

「そりゃまた都合がいいねぇ。 すんばらしいよ! 俺っちのほうはキミとの再会劇に涙涙でございますよ!」

 

怒気を含んだ口調で言ってみるが、彼は嘲笑ってくる。

腹が立つが、左手にも魔剣を創ろうとしたとき、彼の振るう長剣が聖なるオーラを発し始めた。

 

あの光は、あのオーラは、あの輝きは・・・!

誰が忘れるものか! 忘れられるはずがない! あれは---

 

「神父狩りも飽きてきたところでさ。ちょうどいいや。ナイスタイミング。おまえさんの魔剣と俺さまのエクスカリバー、どちらが上か試させてくれないかね? ヒャハハハ! お礼は殺してから返すからさ!」

 

そう、彼の持つ剣は聖剣エクスカリバー、そのものだった。

ふざけた言動をしながら斬りかかってくる彼の聖剣を僕の魔剣で鍔迫り合いに持っていく。

光喰剣(ホーリーレイザー)の力が彼の聖剣に纏わりつこうとするが、エクスカリバーが光り輝くと消失した。

 

「それ無駄っすから。残念!」

 

「試しただけさ。その剣が本物かどうかね。これで思う存分剣諸共八つ裂きに出来るわけだ!」

 

フリードに対して斬りかかるが、防がれる。

しかし僕は何度も何度も斬りつけようと攻撃を続け少しずつ押していく。

しかし剣を弾かれたかと思えば、腕の部分を斬られる。凄まじい痛みが腕に走り、傷口を抑えながら力技でフリードを大きく弾く。

 

「言ってなかったっけ? この聖剣はクソ悪魔キラー用の剣なんだよ?」

 

「知ってるよ、忘れたこともない!」

 

即座にフリードに対して迫った僕は蹴りを放つ。

それが避けられるが、新たに創り出した剣で斬りつけていく。

だが読まれていたのか、今度は足を斬られた。

 

「くそっ・・・!」

 

「残念でしたー。その程度の剣が届くはずねぇだろうが!」

 

仕返しと言わんばかりに蹴りを受けた僕は軽く吹き飛ばされ、膝を着きながら睨みつける。

フリードは腹が立つ笑みを浮かべながらこちらを見ていた。

こうなったら、別の属性の魔剣で---

 

 

 

 

 

 

 

「俺様の美技に酔いな!」

 

その瞬間、凄まじい速度でボールがフリードに迫り、フリードはそれを斬り裂いた。

そして聞こえてきた方向に僕とフリードが顔を向けると、そこには---神谷くんが濡れながら居た。

 

「どうして、ここに・・・!?」

 

僕は来るとは思わなかった存在に驚きを顕にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆

 

部活が解散となった俺は、アーシアと一緒に帰っていた。

今日は雨を降るみたいなことは言われてなかったが、普段から傘を持つ俺は問題なかったのである。

アーシアはないため、俺が傘を持ちながら濡れないように一緒に帰っている。

なお、ウサギさんは相変わらず頭の上にいるけど。

 

「アーシア、嬉しそうだな」

 

「そ、そうでしょうか?」

 

「そう思う」

 

何だかいつもと違って機嫌が良さそうに一緒に帰宅するアーシアを見て、思った。

さっきまではイケメンの姿を見て暗い顔していたのに・・・え? 俺はもちろん何も聞いてませんけど? ウサギさんと窓眺めてたし。いつの間にか話終わってたし。

 

「桐生さんから聞いたんです。そ、その・・・相合傘は恋人同士や好きな人とやることが多かったり、関係を深めるチャンスにもなるものだと・・・! だから・・・悪いとは分かっているんですけど、傘を忘れたのをラッキーだなって思っちゃいました」

 

「お、おう・・・? そういうもんなのか」

 

何だか気合いの入った言い方に押され気味に頷いておく。

アイツ、いっつもアーシアに何か教えてるな? 相合傘って普通に帰るもんじゃないのか?

というか、それはいつかの将来のために予行練習出来て良かったってことなのか?

・・・なんだと? 予行練習? おい、つまりはアーシアに好きな人が居るということか・・・!? 誰だ、うちのアーシアを誑かしたやつは! アーシアの純粋な所を騙して娶ろうとしてるやつなら許さねぇぞ! 本当に愛して、幸せにするようなやつなら考えるが---とにかく、直ちに計画を進めなければ。

まず、アーシアの好きな人と会うことを前提として考えるなら、どんな手段が良いだろうか。ドキドキノコさんを食わせる? それとも毒殺? 大タル爆弾で爆殺するか? それともレイトウマグロパイセンで刻む? ふふふ・・・さぁ、どれにしようか。楽しみだぜ。待っていろよ、アーシアの好きな人!

 

俺が密かに計画を立てて笑みを浮かべると、ウサギさんがとてつもない力で踏んできた。

頭から血が流れる感覚を感じながら、すぐに再生した感覚も感じる。

太陽がないと再生能力は高いのである。

 

「って、アーシア?」

 

「・・・なんでもありません」

 

俺が視線を向けると、今度はため息を吐いていた。

疲れてるのかな? 雨だもんね、仕方がないね。

 

そう思いながら俺が車道側なのもあって足が濡れたり、右肩が濡れて程よい冷たさを感じていた。

アーシアの肩を見ると、濡れていない。ならば、良し。

対策出来る所は濡らさないようにさせたいからね。アーシアは人間だし。

 

「・・・あ、アユムさん」

 

「ん?」

 

うんうん、と自分で納得して頷いていると俺の方が背が高いので、アーシアが必然的に上目遣いになりながら見つめてくる。

俺は首を傾げた。ウサギさんも首を傾げた。

真似しないで。

 

「も、もう少し寄ってもいいでしょうか・・・?」

 

「あ、濡れた?」

 

「い、いえっ。その・・・アユムさんが濡れてるので寄れば問題ないかと思って・・・」

 

な、なんていい子なんだ・・・!!

やっぱりアーシアの好きな人とやらは暗殺しておこうかな・・・いや、でも彼女の幸せを願うならしちゃダメか・・・。よし、やめよう。いい子には幸せになって欲しい。出来れば俺やユーのことは覚えていて欲しいけど。

 

「そうだな。じゃあ---」

 

肩がぶつかる寸前まで近づこうとした所で、俺は足を止めた。アーシアも足を止めたが、首を傾げて此方を見つめてくる。

ウサギさんは耳をピーンっと立たせていた。

 

「アーシア、先に帰ってて。ついでにウサギさんもお願い」

 

傘をアーシアに持たせ、ウサギさんをアーシアの肩に乗せる。

 

「え? アユムさんは・・・?」

 

「んー、ちょっと用事。じゃあね、ウサギさん頼んだ」

 

『キュッ!』

 

任せろと言わんばかりに頷くウサギさんに笑みを浮かべると、アーシアに手を振りながら俺は走っていく。

アーシアは迷うように家の方向と俺が走っている方向を見ているようだが、ウサギさんが何やら指を差していた。

どうやら、アーシアを家に帰るように指示してくれたらしい。

まぁ、あれでも俺の100%以上とも戦えるウサギさんだからな。護衛としても強いし心配はないだろう。

 

そして俺は耳に入ってくる剣戟、すなわち金属音に惹かれるように音が聞こえてくる方角へ走っていた。

この音からして、誰かが戦っているのだろう。見捨てても良いのだが、アーシアの方に来られたら困るし、ユーを狙う者なら倒さなきゃいけないからね。

ゾンビイヤー()を舐めないで欲しい。

 

「おん?」

 

剣戟の音が発生していた場所にようやく辿り着くと、イケメンと見た事のある神父らしきやつが居た。

とりあえずイケメンが膝を着いてることから押されていると察した俺は周囲を見渡し、偶然あったドッジボールに使うようなボールを持った。

ボールを持つと、200%を解放する。

 

「俺様の美技に酔いな!」

 

力を込め、走りながら一気にスピンをかけて放り投げる。

そのボールは一直線に神父らしきやつの弱点に---入る前に斬られた。

チッ! 同じ痛みを味わせてやろうと思ったのに!

 

「どうして、ここに・・・!?」

 

驚くイケメンを無視して、俺は目を細める。

やはり、どこかで会ったことのあるような・・・?

 

「誰だと思ったらあん時の化け物じゃないですか! 会えて光栄だぜ! 今度こそ死にやがれやァァァァ!」

 

「あぁ! 饅頭のデリバリーに文句言ってた人!」

 

似たようなセリフを聞いた事あるなと思って思い出すと、ポンっと手を打った後に指差す俺を気にせずに斬りかかってきた。

なんか見た事ある光景!

 

「あん時の俺っちと思ったら痛い目に遭うぜ! ヒャッハー!」

 

「ほう、向かってくるか・・・」

 

「近づかなきゃてめぇを殺せないだろうが!」

 

ごもっともと納得しつつ、前回同様100%で砕こうと剣を避けてから剣の中心部目掛けて掌底を放つが、壊せない。そして蹴り飛ばされた。

---俺も飛ばされる前に蹴り飛ばした。

 

「イテッ!? あれ? おかしいな・・・前回はこれでも壊せたかと思うんだが」

 

「アイテテテ・・・残念だが、この剣はこの前の物とは次元が違うんだよなぁ! 聖剣、それもエクスカリバー! ゲームでも聞いたことがあるでしょ? 最高で最強な剣!」

 

「ふーん、で?」

 

エクスカリバーって、なんですか?

アーサー王が持つ剣だっけ? 残念ながらでんで知識にないんだよなぁ・・・。

 

「なんだと・・・?」

 

「エクスカリバー? それを持ってるからなに? 最強とでも? だったらさっきので俺を殺せてない時点で、二流・・・三流だな」

 

煽るように言う俺に神父らしきやつはプルプルと手を震わせていた。

エクスカリバーとやらからは凄まじい聖なるオーラを感じるから触れたくないんだけど、仕方があるまい。

 

「あー、そうですか! だったらエクスカリバーの錆にしてやりますよぉ!」

 

「500%」

 

迫ってくる神父らしきやつを見据え、両足を広げて構える。

次に軌道を読む。横? 上? 下? それとも正面? 別の手段? 様々な可能性を加味して集中し、上段からの振り下ろしを半身をずらして避ける。

次に横薙ぎしてきた攻撃を剣の腹目掛けて蹴り上げた。聖なる力による痛みが僅かに走るが、エクスカリバーとやらは上空に弾け飛び、神父らしきやつの顔面を鷲掴みして地面へと叩きつける。

 

「命までは取らない。早く帰れ」

 

地面が砕けてしまったが、俺は手を叩いてイケメンへと近寄った。

 

「大丈夫か?」

 

「余計なお世話だよ。僕はエクスカリバーを・・・ッ!」

 

「そんなあれが好きなのか?」

 

美味しくないと思うけど。

 

「違う! 僕はあれを破壊しなくちゃならないんだ・・・! 同志たちのためにも・・・!」

 

「ふーん。お前がどんな過去を辿ったか知らないけど、同志たちとやらはそんなの望んてないと思うけどな」

 

「・・・キミには分からないさ」

 

「当たり前じゃん。お前の過去はお前にしかないんだし、出会ってそれほど経ってない俺が知るわけないだろ。分からないって言うなら話せよ。何の事情か説明なく分かるわけねぇだろうが」

 

こっちは万能でもないただのゾンビなんだよ。魔力うんたらかんたら持つお前らと一緒にしないで欲しい。ただでさえセイクリッドギア?とやらも分かってねぇんだから。

 

「不意打ち!」

 

「重要な話の途中に攻撃は御法度だろ!」

 

殺意を飛ばして向かってきた神父らしきやつの攻撃を手で受け止め、回し蹴りで神父らしきやつの横っ腹を蹴り飛ばすことで吹き飛ばした。

ただエクスカリバーとやらは本当に強いのか、傷つけられると再生が遅れるようだ。面倒臭い。

 

「チッ! 相変わらずバケモノみたいな強さをしやがって! 次に会った時は殺す! そこの悪魔もな!」

 

「ッ!? 待て!」

 

「お前が待て!」

 

今にも走ろうとする木場の首襟を掴み、閃光弾らしきものが眩い光を発して視界を奪われる。

視界が晴れると、神父らしきやつが消えていたが、木場は悔しそうに唇を噛み締めていた。

うーん、話が全く読めん。説明しろよ。

 

「とりあえずお前、家に来い」

 

「・・・は?」

 

「濡れてる。風邪引く。心配かける。放っておけない。俺もびしょびしょ。事情把握したい。説明しろ。OK? ちなみに選択肢はないからな。逃げたら地の果てまでも追いかけてやる」

 

「・・・キミには関係ないはずだろう? 確かにキミは過去に教会の奴らに何かされたかもしれないけど、僕とは別のはずだ」

 

え? マジで? 俺って教会の連中に何かされていたのか・・・。

そうだったのかぁ・・・いや、なわけないだろ。初耳だわ。教会の奴らになにかされてたらアーシアの過去知った時に間違いなく世界中旅して教会破壊してるわ。

しかしこいつめんどくせぇな。気絶させて連れていくか?

 

「あのな、俺も今狙われたの。次に会った時は殺すとか殺害予告されたわけ。この時点で無関係じゃないんだよ。お前だって、大勢の人に囲まれてるんだから誰かを頼れ。何のためにしてるかは知らないけどな、少なくとも事情を話してくれるんだったら協力はしてやる。お前が無理をする度に誰かが傷つくのをしっかり頭に入れろよ。なんのための頭だ? 先輩や姫島先輩、一誠、アーシアや小猫ちゃん、みんなが心配してんだよ。復讐だが何だか知らないが、生きろよ。どんな手段を選んでも、取っても、どれを犠牲にしても死んだら復讐なんて出来ないだろうがッ! だから生きるためにも、目的を果たすためにも、誰かを()()()()復讐すればいいんだよ!」

 

正面を向かせ、首元を両手で掴みながら文句を言う。

それになぁ! お前のせいで俺は吐尽血暴流(ドッジボール)で退場になったんだよ! 痛かったんだよ! 泣くぞ、ゴラ! 

 

「わ、分かったよ・・・。---キミがそんな熱くなるなんて意外だった」

 

「分かればよろしい。とっとと行くぞ」

 

それと熱くなってないよ。ドッジボールのストレスがちょっとあっただけだよ。それにしてもウサギさんが頭に居ないと、少し寂しく感じるのは・・・呪いか?

こう、ずっと被っていた帽子がなくなったみたいな感覚だ。あのもふもふ、人をダメにするのかもしれない。それに心が落ち着くし。

とりあえず俺は、イケメンを引き摺りながら自身の家へと向かうのだった。

 

「か、神谷くん。自分で歩けるから」

 

「はいはい」

 

逃がさないように離さず行くのは当然なんだよなぁ。

コイツ、面倒臭いことが分かったし。

 





とりあえず作者がウサギの名前思いつくまではウサギさんかな・・・悩み中。

そしてこの主人公、主人公視点じゃなかったらやってることは基本的にかっこいいし庇ってるし紳士的行動してるし仲間のピンチに駆けつけるイケメソ主人公なんだよなぁ・・・。
木場くんから見たら自分の為に怒ってくれる主人公・・・。主人公からしたら吐尽血暴流(ドッジボール)の文句・・・!
あっ、今回も前書きにこれゾンの小説で予告時にキャラのセリフがあるみたいにユーを書いてみました。どうですかね? アンケ取るか・・・。

ヒロイン数

  • ユーとアーシアのみ
  • うるせぇ!増やすんだよあくしろよ
  • 投稿日数増やせ、ハゲ
  • 戦闘シーンはやく♡
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