これはDxDですか?〜いいえ、ゾンビです   作:絆蛙

20 / 32

※久しぶりなので前回の三つの出来事!
①アユムは遊んでいて、犯人はグリゴリの幹部であるコカビエルなのにグ○コだと勘違い
②聖剣使いがアーシアを魔女呼ばわりした挙句、断罪しようとか抜かしたのでプッツンと来たアユムが喧嘩に。
③一誠に投げようみたいなこと考えてたくせになんだかんだアユムが主人公していたが、強者ムーブ(演技)で命を賭けた。





第五話 聖剣計画

 

「俺が負けたら、俺が差し出すものは---俺の命だ」

 

「なっ!?」

 

「アユムさん!?」

 

「ちょっと!? 流石にそこまでの勝手を私が許容することは・・・!」

 

ニヤリと口元を歪ませながら、言って見せた俺に対して、結界の外にいる、一誠とアーシア、先輩が驚きながらそんなことを言ってくる。

というか、俺以外全員驚いていた。ちょっと面白いよね、自分以外が驚く光景って。

 

「・・・本気か?」

 

「本気だ。その代わり、負けたら謝れ。信じられないなら、俺が負けた時点で斬り落とせばいいからな」

 

「・・・面白い。明らかに釣り合っていないだろうに。良いだろう・・・私が勝ったらアーシア・アルジェントに先程のことを謝罪する」

 

「俺が負けたら、あんたに命をやる。シンプルでわかりやすいと思わないか?」

 

「同感だ」

 

俺が同意を求めると、不敵な笑みを浮かべながら同意してくれた。

意外と良い奴なのでは? アーシアを侮辱したことは許さんけどな! 

 

「さて、外野は無視して始めようか。一対一の勝負を」

 

「それは良いが、キミに武器はないのか?」

 

「俺は空手徒拳なんだよ」

 

イケメンと栗毛の女性が戦闘を始める中、俺は脱力して相手を見据えていた。

誰も彼もが武器を持ってると思うんじゃねーよ。まぁ、武器はあるけどね?

 

「そうか。ならば早速行かせてもらおう。受けるといい、私の聖剣、『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』の威力を!」

 

「やだよ」

 

200%の力を解放し、大きく飛び退く。

すると凄まじい音とともに土煙が舞った。しばらく見つめていると、煙が晴れた後にはクレーターが作られていた。

 

「避けたか。だがこれを見ても分かる通り、私のエクスカリバーは有象無象の全てを破壊する。『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』の名は伊達じゃない!」

 

確かに破壊力は高そうだ。視界の端ではイケメンが動きを止めて栗毛の女性が尻もち着いてるし。

いやー、でもこれって結局のところは---

 

「当たらなければどうということはない!」

 

「ならば当てるだけだ!」

 

「500%っ!」

 

油断せず、相手の剣筋を一瞬でも逃さないように避けていく。

500%まで引き上げたのは、俺の体力消費を減らすためだ。昔は常に維持し続けるのは体力消耗が激しかったのだが、今の俺は問題ないのである。

 

「素早いな・・・!」

 

重そうな剣を、かなりの速度で連続で向けてくる相手。

口だけではない強さを持つのは理解出来たが、俺は次々と掠ることもなく避けていく。そして上段からの振り下ろしを、後方にでんぐり返しして避けた。

俺からすると特殊能力を持つ相手より、一撃でも喰らえば負ける相手の方が実は得意なのである。

特殊能力系はマジ無理。わからん。一直線の軌道なら読めてもどんな威力か、どんな効果か、曲がるのか、どんな攻撃かすら分からない。

そう考えると変形自在に操る向こうの相手の方が俺は弱いかもしれない。イケメンは苦戦してるし。

 

「逃げてばかりでは私には勝てない! 約束を忘れた訳ではあるまいな!?」

 

「じゃあ遠慮なく」

 

「ッ!?」

 

拳を握り締め、目の前に移動した俺は500%の力を保ったまま剣腹をぶん殴る。

すると地面を削りながら、かなりの距離まで後退したのが見えた。

 

「あー、終わらないか」

 

「ッ・・・! たったの一撃で、私の腕が痺れただと・・・?」

 

「うーん、よし! アレだ。俺もアレを出そう」

 

目付きが悪い女性が何かを言っていたが、無理そうだと判断した俺は作戦を思いついた。

 

「す、すごいわね・・・相変わらず」

 

「えぇ。神器(セイクリッド・ギア)がないとは思えませんわ」

 

「よし、良いぞ! そのまま押し切れぇ!」

 

「が、頑張ってください・・・!」

 

「ファイトです」

 

めっちゃ応援してくれるじゃん・・・。これで負けたら恥ずかしくて二度と顔合わせられないんだけど! あ、負けたら死ぬから結局無理じゃん。

 

「すまない、どうやら侮っていたようだ。私の本気を持って、倒させて貰う・・・!」

 

「ん?」

 

余所見して応援してくれるアーシアたちを見てると、何やら言ってから相手が剣を握り直した。

瞬間、重たい剣を持ってるとは思えない速さで迫ってくる。それを見ながら、俺は何もしない。

 

「なんのつもりだ・・・? いいや、何をしようが斬り伏せればいい!」

 

「おい、避けろ!」

 

「アユムさん!」

 

一誠とアーシアの声が聞こえるが、諦めたりしたわけじゃないから平気だって。

 

そう思いながら、相手が持つ剣は俺の胸に---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ギョエ』

 

「よっこらせぇ!」

 

レイトウマグロパイセンが防ぐことで当たることはなく、下段から上段に斬りあげることで打ち上げるように相手の剣を弾く。

驚愕の表情を浮かべる相手を無視し、俺は250%の力で横腹を蹴り飛ばした。

 

「ぐはっ!?」

 

それでもただの人間・・・? には効果的なのか、凄まじい勢いで転がっていった。

剣を離さなかったのは残念だが、よく重そうな剣相手に弾けたね、レイトウマグロパイセン。

 

『ギョギョ!』

 

ふふん、当然だろう? と言うように口角を上げて見つめてくるレイトウマグロパイセン。

おい、やっぱり生きてるだろ? あんた。

 

「ッ・・・! 終わったつもりか!?」

 

「うわ、うそぉ・・・」

 

50%くらいでもプロボクシング選手以上の一撃ということで人間なら普通意識を失うか動けなくなるはずの威力。

それなのに、斬りかかってきた相手に俺は驚いたが、即座にレイトウマグロパイセンで防いで逸らし、自身の体を回転させるのと同時に回し蹴りで吹き飛ばす。

足りないなら300%だ。

 

「がぁ・・・!? ば、バカな・・・破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)を軽々と防ぐものがあるだと・・・!? その神器(セイクリッド・ギア)はなんだ!? そんなふざけた見た目をしている物が存在しているというのか!?」

 

「いや、そうじゃないけど。これ、ただのカジキマグロを冷凍したやつだよ?」

 

そんなせいくりなんたらな訳がないだろう。怖くなって調べてもらったら、ユーも言ってたもん。

あー、でも紛れ込んできた異世界の武器とか言ってたっけ? 覚えてねぇや。なんか私の魔力のせいとか言っていたユーを必死に慰めてた記憶しかない。

もしかしたら、レイトウマグロパイセンは何らかの魂でも宿ってんのかな。

 

「手は教えないということか・・・。くっ、まさか聖剣、それもエクスカリバーに対抗出来る物がこのような辺境に存在していたとは・・・。だが、私は負けない!」

 

「え? え?」

 

なんか勝手に誤解していらっしゃる!? いやいや、本当だよ!? これ! ただのカジキマグロセンパイを凍らせたやつ! マジで! 俺、それしかわかんない! 後は異世界の武器ってことくらいしか!

 

「ねぇ、マジで何なの?」

 

『ギョ?』

 

「・・・ダメだこりゃ」

 

どうやらレイトウマグロパイセンも分からないらしく、『え?』と返してきたから落胆したようにため息を吐くと、相手が怒りの形相を浮かべながら斬りかかってくる。

 

「私を馬鹿にするか!?」

 

「は!?」

 

意味が分からなかったことに驚く俺に対し、相手は正面から来る。

慌てて俺はレイトウマグロパイセンを構えるが、突如として剣筋が変わってレイトウマグロパイセンが上空に吹き飛んだ。

思わず俺は飛んで行った上空を見るが、距離的に()()()()頭に落ちてこないことを理解すると慌てて相手の横薙ぎをしゃがむことで回避する。

そして隙だらけとなった胸に322%の力で打つ。

 

「・・・ぐぉ!? ゲホッ、ゲホッ!?」

 

「勝負ありだ」

 

軽く吹き飛んだ相手は上手く呼吸が出来ないのか、酸素を取り入れようとする姿がある。俺をそれ見ながら勝負の結果を言い渡す。

でも剣がさっきから怖いので、ドキドキノコさんとアオキノコを取り出して挟むことで剣を投げ飛ばした。

しかし貫通してか、聖なる光が俺の手と腕を焼いていた。

 

キノコさんたちは無事なのに、可笑しくない? 俺がゾンビだからだろうけどさぁ。なんか太陽を浴びてる時見たいに再生は遅くなってるし力は抜けるようだが、再生されるようだから問題ないな。

たぶん、マトモに受けたらやばいかも? 実験したら分かるかな。やらないけど。

 

「ほらほら! その程度の魔剣じゃ、私の擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)には通用しないよ〜!」

 

「くそっ! だったら破壊力で勝負だ・・・!」

 

明るい声が聞こえ、視線を向けるとイケメンはこれ以上耐えられないと言わんばかりに苛立ちを表し、巨大な剣を取り出していた。

 

「でっかっ」

 

俺の身長を優に超えるほどの大きさと禍々しさに驚いてる俺を他所に、イケメンは勢いよく振り下ろす。

しかし栗毛の女性は軽い身のこなしが特徴なのか軽々と避けて峰打ちを指で数えれるくらいには連続でイケメンに叩きつけていた。

 

「ぐっ!?」

 

「斬ってはいないけど、聖剣の刃に触れるだけで相当なダメージでしょ? 念の為に三回ほどやらせてもらったけど、終わりよ」

 

「く、そぉ・・・!」

 

剣を紐状態に戻した栗毛の女性は、俺と目付きが怖い女性に近づいてくる。

ついでに、周囲を覆っていた結界とやらは消えていた。

 

「えっと・・・貴方が勝ったってことで、いいのよね?」

 

「あぁ」

 

「そ、そう・・・。その・・・大丈夫?」

 

「大丈夫大丈夫。それより斬らないでくれてありがとうな」

 

彼女が何故か哀れるような視線を向けてくるが、俺はニヒルな笑みを浮かべながらイケメンに関してお礼を言っておく。

すると栗毛の女性は元々そういうルールだから、と言ってから目付きが怖い女性の傍に寄り、顔を覗き込んだ。

俯いているから分からないが、栗毛の女性は苦笑すると俺に頭を下げてくる。それに対し、首を傾げる俺だった。

 

「それじゃあ、ご迷惑をお掛けしました〜」

 

そう言って目付きが怖い女性に剣を拾ってから持たせた後、引っ張っていく栗毛の女性を終始笑みを浮かべながら見届けた。

そして先輩がイケメンに近づくのが見え---

 

 

 

 

「・・・しぬ」

 

『ギョォ・・・』

 

俺は倒れた。

ブシャーと溢れるように血が流れる頭。俺が倒れたの同時に、俺の()()()()()()()レイトウマグロパイセンは地面にぶつかった。

『なんかごめん』というような声が聞こえるが、ドバドバ溢れる血は止まってくれない。さらに太陽に焼かれてるせいでますます肌が干からびていく始末。

勝ったのにこれっておかしくない?

 

「あ、アユムさん。大丈夫ですか!?」

 

「えい」

 

「ぎゃあああぁぁぁぁ!?」

 

近寄ってきたアーシアと小猫ちゃんだが、小猫ちゃんが容赦なくレイトウマグロパイセンを引き抜いてきた!

その影響で、先程よりも凄まじく感じる痛みと流れる血を見てか、慌ててトワイライトなんたらで治そうとしてくれるアーシア。

 

「やっぱりアユムはすげぇな・・・」

 

「ぐ・・・あぐ・・・こ、これが凄いとは、一誠もクソバカちびっこエロガキになったものだな・・・。幼稚園児の方が頭が良いぜ・・・」

 

「なんだよその罵倒!? そっちじゃねぇから! さっきの戦いだよ! 聖剣の、エクスカリバー相手に余裕を感じさせる戦いをしてたことだよ!」

 

何言ってんだ、こいつ。余裕なわけないじゃん。

色々と驚いてたしレイトウマグロパイセンが飛んで行ったのは慌てたわ。多分あれだな、あの目付きが怖い女性、剣の性能だけじゃなくて技術力は俺を超えてるわ。あんな無理な軌道修正は来るとは思わねぇわ。

あと怖かった!

 

「命を差し出すって言った時、本当に心配したんですよ・・・? 無茶しないでください・・・」

 

アーシアに泣きそうな表情で見つめられると、俺は何とも言えなくなったが、すぐに思い出せた。

アイツ・・・! 約束守ってねぇ! おのれ目付きが怖い女性! 次会った時は謝らせてやるからな!!

 

「アーシアせんぱい。大丈夫です。心配かけたお詫びに何でもしてくれますから」

 

「えっ」

 

さらっと変な条件を追加してくる小猫ちゃん。

別に良いんだけど、俺に出来ることって少ないよ。

 

「ですけど、流石です。神谷先輩」

 

小さく、ほんの小さくだが、口角が上がって笑みを浮かべてる小猫ちゃんを見れたら、何だかどうでも良くなった。

 

「祐斗! 待ちなさい!」

 

俺がそんなことを思いながらアーシアによる回復が終えると、先輩の静止するような声が聞こえてきた。

そちらへ顔を向けると、その場を立ち去ろうとしているイケメンと激昂している先輩の姿。

 

「私のもとを去ろうなんて許さないわ! あなたはグレモリー眷属の『騎士(ナイト)』なのよ」

 

「部長・・・。すみません」

 

「祐斗・・・!」

 

「・・・」

 

イケメンは部長の言葉に、止まることなく言ってしまった。その様子は、以前の姿に近い。

・・・はぁ。これは、一誠に投げるなんてふざけたこと言ってる場合じゃあないな。

---俺は覚悟を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

木場とイリナが戦い、ゼノヴィアとアユムが戦った次の日。

勝敗の結果は木場が負け、アユムが勝った。

今はそれは問題じゃない。

 

「で、俺を呼び出した理由は?」

 

そう、俺の前には生徒会長である『ソーナ・シトリー』さまの眷属である『匙』を駅前に呼び出していた。

気だるそうな匙だが、部長を介してなんとか呼び出したわけである。

 

「・・・そうです。二人で何をするつもりだったんですか?」

 

そしてもう一人、小猫ちゃんだ。

待ち合わせに向かう途中に偶然鉢合わせとなって逃げ出したら、呆気なく捕まってしまった。

相変わらず身体能力でロリロリ少女に劣る俺・・・。

ともかく、俺が匙を呼び出した理由は一つ---

 

「聖剣エクスカリバーの破壊許可を紫藤イリナとゼノヴィアから貰うんだ」

 

俺の告白に匙どころか、小猫ちゃんまで目を丸くして驚いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嫌だぁぁぁぁぁぁ! 俺は帰るんだぁぁぁぁ!」

 

悲鳴をあげて逃げようとしている匙を小猫ちゃんが掴んで離さないでいた。

俺がエクスカリバー破壊作戦を提案したら小猫ちゃんはしばし考え込んで木場の為だと察してくれたわけである。

 

「兵藤! なんで俺なんだよ!? 俺はシトリー眷属だぞ!? お前ら眷属の問題じゃないか!」

 

「俺が知ってる悪魔で協力してくれそうだったのがおまえぐらいなもんでさ」

 

「ふざけんなぁぁぁぁ! ただでさえ聖剣なんて関わるだけで会長からどんなお仕置きされるか分からないってのに、それを破壊しようだと!? それこそ会長に殺されるわ!」

 

会長への恐怖が顔に出ている。

そこまで怖いのか・・・会長って。

 

「おまえんとこのリアス先輩は厳しいながらもやさしいだろうよ! でもな! 俺んとこの会長は厳しくて厳しいんだぞ!」

 

うん、まあ部長は厳しいけど優しいな。会長は厳しくて厳しいのか。良かったな、匙。部長と同じく眷属想いってことじゃないか。

 

「なるほどなるほど・・・良いな。それ、乗った」

 

すると、何処からか声が聞こえてきた。

・・・ん?

 

「うおっ!? 神谷、お前何処から生えてきた!?」

 

「アユム!?」

 

「神谷先輩・・・どうしてここに?」

 

俺と小猫ちゃん、匙が座っている所に、いつの間にか椅子を追加してテーブルに肘を着きながら頬杖をついているアユムが居た。しかも、何故か最近乗せているウサギが頭に居る。

そして片手には、日傘ではなく雨傘。

 

おいおい、匙の言う通り何処から来たんだ、コイツ!?

・・・どうなってんだよ。俺もかなり強くなったと思うけど、コイツの気配とか読めないぞ。小猫ちゃんだって驚いてるじゃねぇか。

ゾンビなのに昼に出てきて平気なのかよ? だから傘なのか・・・? なんで日傘じゃないんだろう。

 

「アイツのために動くんだろ? ちょうど俺も何とかしようと動いてたら、三人が集まってるのが見えてな。話を聞いてみたら良さげな一誠の提案に乗ろうと思った訳だ」

 

そうか・・・普段は何処か飄々としていて掴みどころがないけど、コイツも木場のこと思ってくれてるんだな。聖剣使い相手に勝ったアユムが居るのは、心強い。

俺はアユムにお礼を言い、一つの決意を持ってアユム、小猫ちゃん、匙とともにゼノヴィアと紫藤イリナを街中で捜していた。

 

「なぁ、小猫ちゃん。木場が聖剣計画の犠牲者で、エクスカリバーに恨みを持っているのは知っているよね?」

 

俺の問いかけに、小猫ちゃんが頷く。

 

「イリナとゼノヴィアが俺たちのところへ訪れたとき、あいつらは堕天使に利用されるくらいなら消滅させるとか言ってただろ?」

 

「最悪、破壊してでも回収したいようですね」

 

「木場はエクスカリバーに打ち勝って破壊したい。あいつらはエクスカリバーを破壊してでも回収したい。目的は違っても、結果は同じ。だからこっちから協力を願い出るんだ」

 

「素直に受け入れるとは思いませんが・・・」

 

「その時はその時で別の手段を取ればいい。そもそもの問題、俺たちはこれ以上人員を増やせないからな」

 

そう、問題はそれだ。

アユムの言う通り、俺たちの行動を部長や朱乃さんの耳に入れる訳には行かない。上級悪魔だから厳しいはずだ。そもそも俺がアーシアを助けに行こうとした時もかなり反対されたし、バレたら絶対止められる。

たぶんアーシアはアユムが何も言わずに出てきたから知らないから大丈夫だと思うが。

 

「ますはあの二人を探しましょう。部長たちに内緒で動くのは心が痛みますが、仲間のためです」

 

小猫ちゃんがハッキリと、強い眼差しで言う。

この子、フェニックスの時もだけど仲間意識が相当強いよね。良いことだけど。

 

「・・・なぁ、俺が居なくても良くないか? 無敵の戦車(ルーク)がいるんだしさ」

 

「匙、そんなんだからダメなんだよ。一誠みたく仲間のために頑張れ」

 

「いや、俺はあまり話したこともないんだが!?」

 

「俺の仲間なんだからお前の仲間でもあるだろ」

 

「なんだその理論!?」

 

「まぁ、戦力は多いに越したことはないんだ」

 

アユムの言葉に苦笑いするが、匙が一人でも居てくれるだけで助かるので居なくなられるのは困る。

 

「・・・それにしてもこのような繁華街で白いローブを着た女性なんて見つかるのでしょうか」

 

「アレでは?」

 

小猫ちゃんの疑問に、アユムが目を細める。

その視線の先を追うと---

 

「えー、迷える子羊にお恵みを〜」

 

「どうか、天の父に代わって哀れな私たちにお慈悲を〜」

 

簡単に見つかった。

いや、もう想像以上に目立つ。何やら困っているようで、路頭で祈りを捧げる白ローブの女の子二人。

通り過ぎる人々も奇異な視線を向けている。

 

「なんてことだ。これが超先進国であり経済大国日本の現実か。これだから信仰の匂いもしない国は嫌なんだ」

 

「毒づかないでゼノヴィア。路銀の尽きた私たちはこうやって、異教徒どもの慈悲なしでは食事も摂れないのよ? ああ、パンひとつさえ買えない私たち!」

 

「ふん。もとはといえば、おまえが詐欺まがいのその変な絵画を購入するからだ」

 

話を聞いていると、ゼノヴィアが指差すほうには聖人らしき者が描かれたお世辞にも上手とは言えない下手な絵があった。

もしかしなくとも、騙されたのでは?

 

「何を言うの! この絵には聖なるお方が描かれているのよ! 展示会の関係者もそんなことを言っていたわ!」

 

確かにそれっぽい外国風のお方が貧相な服装をして、頭の輪っかがあるだけだ。

背景では赤ちゃん天使がラッパを持って宙を舞ってる。

 

「じゃあ、誰かわかるのか? 私には誰一人脳裏に浮かばない」

 

「えっと・・・。たぶん・・・ペトロさま?」

 

「ふざけるな。聖ペトロがこんなわけないだろう」

 

「いいえ、こんなのよ! 私にはわかるもん!」

 

「ああ、どうしてこんなのが私のパートナーなんだ・・・。主よ、これも試練ですか?」

 

「ちょっと、頭を抱えないでよ。あなたって、沈む時はとことん沈むわよね」

 

「うるさい! これだからプロテスタントは異教徒だというんだ! 我々カトリックと価値観が違う! 聖人をもっと敬え!」

 

「何よ! 古臭いしきたりに縛られているカトリックのほうがおかしいのよ!」

 

「なんだと、異教徒め」

 

「何よ、異教徒!」

 

ついには顔をぶつけながら喧嘩を始め出した二人。

しかし、少し離れて様子を窺っている俺たちにも届くほどの腹の虫が鳴るとなんとも言えない空気が漂う。

これは・・・どうするべきなんだ?

 

「まぁまぁ、落ち着こう。腹が減っては戦は出来ないし、争ってる場合ではないだろ? ウサギさんでも見て癒されるか?」

 

「ちょっ・・・」

 

そんな時、いつの間にか傍に居なくなっていたアユムが二人に話しかけていた。

あいつ、怖いもの知らずかよ!? お前、一度戦って負かせたんだから一番近づいたら危険だろ!

 

「お前は、あの時の・・・。お前と話すことなど---」

 

慌てて俺たちも近づくが、ゼノヴィアの口からは強気な言葉が出ていた。しかし途中で鳴る腹の音。

 

「そ、そうよ。ゾンビや悪魔に魂を売るなんて---」

 

俺たちを見て、イリナまでも拒否しようとするが、さらに鳴る腹の虫。

 

「あーそうか。残念だなぁ。これから食事に行くところだったんだけどなー。二人くらいなら特別に奢ろうと思ってたのになー! 知ってる人に奢られる方が、安全だと思うのになー! あー、一誠! この二人はいらないらしいし、早く行こうか」

 

「あ、あぁ。そうだな! 俺たちは行くか」

 

わざとらしく言うアユムにアイコンタクトを送られ、俺はそれに従うように乗った。

しかも、何が本気かを表しているかというとアユムが本当に歩を進めているところだ。

 

「ま、待て! 誰も行かないとは行っていない!」

 

「そ、その通りよ! 行かないなんて一言も言ってないわ!」

 

その言葉を聞くと、アユムは頷いて足を止めた。

そして振り向き、二人に視線を向ける。

 

「じゃあ行くか」

 

「え?」

 

「・・・へ?」

 

いくらわざとらしいとはいえ、あっさりアユムがそう口を開くと、呆然とする二人。

コイツ、何だかんだで優しいんだよなぁ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うまい! 日本の食事はうまいぞ!」

 

「うんうん、これよ! これが故郷の味なのよ!」

 

ガツガツとファミレスで注文したメニューを腹に収めていくゼノヴィアとイリナ。

アユムは頬を引き攣らせていたが、俺もお金が心配になってきた。

最初は小猫ちゃんも払うと言っていたのだが、男の意地があるということで俺とアユムが二人で払うことになったんだ。

本当は巻き込んだ俺が悪いのだから払うと言ったのだが、誘ったのは俺だからという理由で引き下がらないアユムに交渉した結果である。

ま、まぁ・・・これは部活のためでもある。眷属のためでも!

---おのれ、木場めぇぇぇぇ! 俺、おまえのために奔走しているんだぞ! 絶対あいつの契約のお得意さまであるお姉さま方を紹介してもらうんだ!

 

「悪魔どもに救われるなんて、世も末だ・・・」

 

「私たちは悪魔に魂を売ったのよ・・・!」

 

「おい、奢ってもらっといてそれかよ!」

 

「イッセー先輩」

 

口の端を引き攣らせながら言う俺に、小猫ちゃんの注意が飛んでくる。

分かってる、分かってるよ小猫ちゃん。交渉するのはこっちだから怒らせたら不味いもんね・・・。

 

「主よ、心やさしき悪魔たちにご慈悲を」

 

『うっ!』

 

「うわ、大丈夫か?」

 

イリナが胸を十字で切った瞬間、俺たちに襲う頭痛。

小猫ちゃんと匙も俺同様、頭へ手を当てていた。ダメージがないのはアユムだけらしい。ゾンビなのにねぇのかよ。

 

「あー、ゴメンなさい。ついクセで」

 

てへっとイリナは可愛らしく笑うが、こっちは悪魔なんだからダメージがあることは覚えておいて欲しい。

そして水を飲み、息をついたゼノヴィアは改めて俺たちに訊く。

 

「で、私たちに接触した理由は?」

 

いきなり切り出されるが、明らかに偶然じゃなかったからな。でも敵意を出してこないのは、わざわざファミレスで戦闘する必要がないからだろう。エクスカリバーがあるからか、俺たちを圧勝出来る自信があるからかもしれないが。

いくら勝てたアユムが居ても、殺し合いとなると分からないし二対一になると分からないからな。とにかく、そうならないためにもここからが勝負だ。

 

「エクスカリバーの破壊に協力したい」

 

俺の告白に二人は目を丸くさせ、互いに顔を見合わせるほど驚いている様子だった。

俺は事情を話すと、ごくり、と生唾を飲み込んで二人の決断を待つ。

下手すりゃ悪魔、堕天使、天使の争いになるんだから、緊張するのは当然だ。緊張感がないのは俺の隣にいるアユムくらいだぞ。

コイツの中に緊張という辞書がないんじゃないかとか思ってきたよ・・・。

 

そんな風に心中で冷や冷やものの俺にゼノヴィアが口を開く。

 

「話は分かった。聖剣の一本くらいなら任せてもいい」

 

「ちょっと、ゼノヴィア?」

 

意外とすんなり許可を貰ったことに喜ぶが、まだ早い。

ここで許可貰っても、次は木場のこともある。

 

「向こうは堕天使の幹部、コカビエルを控えている。正直、私たちだけで聖剣の三本を回収するのは辛い」

 

「それは分かるわ! けれど・・・」

 

「無事帰れる確率は()()()を使っても三割程度だ」

 

「それでも高い確率だって覚悟を決めて、私たちはやってきたはずよ」

 

「あぁ、私たちは端から自己犠牲覚悟で上から送り出されたのだからな」

 

「それこそ、信徒の本懐じゃないの」

 

二人が何やら話し合っているようだが、口を出すべきか出さないべきか判断が付かずに見守るしかなかったが、とりあえずもう一人呼んでいいかどうかの許可を貰ってから場所を変えることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・なるほど、話は分かったよ」

 

場所は変わってファミレスから外に行き、俺たちは公園の噴水がある場所にて集まっていた。

流石にこれだけの人数でファミレスに長時間居たら邪魔になるし、詳しく聞かれてもダメだ。

 

「正直、エクスカリバー使いに破壊を承認されるのは遺憾だね」

 

「ずいぶんな言いようだね。そちらが『はぐれ』だったら、問答無用で斬り捨てているところだ」

 

「・・・そういう考えもあるね」

 

「待て待て。そんなことしたら話が進まないだろ。戦闘するなら最後まで話し合ってからにしろ」

 

「どっちでも戦闘はダメです」

 

今にでも聖剣を抜きそうなゼノヴィアと剣を創り出そうとする木場の間に入ってアユムが止めるが、小猫ちゃんの言う通りどんな結果でも戦闘はダメだ。

間違いなくどちらかに犠牲者が出るだろう。

 

「やはり、『聖剣計画』のことで恨みを持っているのね? エクスカリバーと---教会に」

 

「当然だよ」

 

それぞれ戦闘準備を解くとイリナの問いに木場が目を細めながら冷たい声音で肯定した。

 

「でもね、木場くん。あの計画のおかげて聖剣使いの研究は飛躍的に伸びたわ。だからこそ、私やゼノヴィアみたいに聖剣と呼応できる使い手が誕生したの」

 

「だが、計画失敗と断じて被験者のほぼ全員を始末するのが許されると思っているのか?」

 

木場は憎悪の視線をイリナに向けると、イリナも思うところはあるのか反応に困っているようだ。

確かに神の信徒とやらがやるにはあまりにも非道的だし、処分は酷い。飛躍的に伸びたからといって、処分までする必要性はなかったはずだ。

 

「キミが『聖剣計画』を憎む気持ちは理解しているつもりだよ。その事件は、私たちの間でも最大級に嫌悪されたものだ。当時、処分を決定した責任者は信仰に問題があるとされて異端の烙印を押された。今では堕天使側の住人だ」

 

「堕天使側に? その者の名は?」

 

ゼノヴィアの言葉に興味を惹かれた木場が、彼女に訊く。

 

「---バルパー・ガリレイ。『皆殺しの大司教』と呼ばれた男だ」

 

木場の瞳には新たな決意のようなものが生まれていた。

バルパー。そいつが木場の仇敵ってわけか。

 

「僕も情報を提供した方が良さそうだね。先日、エクスカリバーを持った者に襲撃された。その際、神父を一人殺害していたよ。やられたのはそちらの者だろうね」

 

「あぁ、そういえば死んでた気がする。なんかあれだよな、アーシアの時にも居た神父。名前は確か---m」

 

「フリード・セルゼンだ。この名に覚えは?」

 

この場の全員が驚いた。

あいつ、クソ神父! フリードの野郎! 先日のアーシアの件で敵対したイカレ白髪野郎じゃないか! まだ居やがったのか!? というか木場はともかくアユムは接触したなら話せよ! 木場には思うところがあったんだろうが、お前は話せたじゃねぇか! 

 

「なるほど、奴か」

 

木場の言葉に、ゼノヴィアとイリナは知っているのか目を細める。

 

「フリード・セルゼン。元ヴァチカン法王庁直属のエクソシスト。十三歳でエクソシストになった天才。悪魔や魔獣を次々と滅していく功績は大きかったわ」

 

「だが奴はあまりにもやりすぎた。同胞すら手にかけたのだからね。フリードに信仰心なんてものは最初からなかった。あったのはバケモノへの敵対心と殺意。そして、異常までの戦闘執着。異端にかけられるのも時間の問題だった」

 

やっぱりそっちでも手に余っていたのか。だろうね、あんなやつ手に余らないやつなんて居るのか?

 

「まあいい。とりあえず、エクスカリバー破壊の共同戦線といこう。何かあったらそこへ連絡してくれ」

 

ゼノヴィアがそう言うと、ペンを取り出してメモ用紙にペンを走らせる。そして連絡先を寄越してきたので受け取った。

 

「サンキュー。じゃあ、俺たちのほうも---」

 

「イッセーくんのケータイ番号はおばさまからいただいてるわ」

 

「マジかよ! 母さん、勝手なことを!」

 

息子の電話番号を勝手に教えるってどういうことだよ! たぶん幼馴染が現れたから電話でもしてみれば? みたいな感じなんだろうけど! まあ、手間が省けたから今回はいいけどさ。

 

「では、そういうことで。食事の礼はいつかするぞ」

 

「食事ありがとうね。助かったわ」

 

そう言う二人を見送り、俺たちはたまらずに息を大きく吐いた。

かなり無茶だったからな・・・とにかく何はともあれ---

 

「良かったな・・・無事に済んでさ」

 

「良かったじゃねぇよ! 本当に無事に済んだから良かったものの、下手したら悪魔と神側の争いに発展してもおかしくなかったんだぞ!?」

 

「イッセーくん。どうして、こんなことを?」

 

思わず安堵の息を吐いた俺は近くにいた匙の肩を掴みながら呟いたら物凄い剣幕で言われて驚く。

その間に木場が疑問をぶつけてきた。

 

「お前には何度も助けられてるし、俺たち同じ眷属で仲間だろ? 大事な仲間を『はぐれ』なんてさせられないからな。それに部長だって、みんなだって悲しむ」

 

「・・・だけど、これは僕の個人的な復讐で」

 

「前にも言ったが、お前が『はぐれ』やら最悪死んだら悲しむやつがいるんだよ。破壊の協力くらいさせろ」

 

俺やアユムの言葉を聞いてもなお、まだ少し納得の言っていないような様子。

そんな木場に対して、小猫ちゃんが口を開く。

 

「・・・裕斗先輩。私は、先輩がいなくなるのは・・・寂しいです」

 

少しだけ寂しげな表情を小猫ちゃんが浮かべる。

その変化は普段が無表情だったのもあって、この場の男子陣全員に衝撃を与えていた。

 

「・・・お手伝いします。だから、いなくならないで・・・」

 

小猫ちゃんの訴え。

凄い威力だ! 木場じゃないのに、俺にまで来たくらいだ。俺、後輩の女の子にこんなことを言われたら反逆なんてできやしないぜ!

 

木場もそんな小猫ちゃんに困惑しながら、苦笑いする。

 

「ははは。まいったね。小猫ちゃんにまでそんなことを言われてしまえば、僕一人で無茶なんて出来ないよ。分かった、イッセーくんたちのお陰で真の敵も分かったし、みんなの好意に甘えさせてもらうよ。ただし、やるからにはエクスカリバーは破壊する」

 

小猫ちゃんのお陰でか、一緒にやる気になってくれた木場に安堵する。

小猫ちゃんも安堵したのか、小さく微笑んだ。

 

「よし! 俺らエクスカリバー破壊団結成だ! がんばって、奪われたエクスカリバーとフリードの野郎をぶっ飛ばそうぜ!」

 

「・・・ダサいな」

 

アユムがなんか言ってるが、俺は気合が入った!

この調子で必ずエクスカリバーとフリードを倒す! というか、このメンツなら行ける気がする! いや、絶対にいける!

 

「・・・こんな中言うのはアレだけど、俺も?」

 

手を挙げながら一人だけ乗り気じゃなかった匙が訊いてくる。

 

「つーか、結構蚊帳の外なんだけどさ、結局何がどうなって木場とエクスカリバーが関係あるんだ?」

 

ああ、そういえば匙は木場の過去を知らないんだったか。ぶっちゃけ忘れてたな。匙からすると断片的で理解出来なかっただろう。

 

「・・・そうだね。神谷くんにだけは言ったけど、少し話そうか」

 

匙の言葉に木場が暗い面持ちで自身の過去を話し始めた。

この際、なんでアユムはいつの間にか聞いていたんだ? と聞きたいが、やめておこう。

 

 

 

 

 

---カトリック教会が秘密裏に計画した『聖剣計画』。

聖剣に対応した者を輩出するための実験が、とある施設で執り行われていた。

被験者は剣に関する才能と神器を有した少年少女。

来る日も来る日も辛く非人道的な実験を繰り返すばかり。散々実験を繰り返され、自由を奪われ、人間として扱われず、木場たちは生を無視された。

当然、人間であった彼らにも夢があった。生きていたかった。神に愛されていると信じ込まされ、ひたすら『その日』が来るのを待ち焦がれた。

三百六十五日、毎日毎日何度も何度も聖歌を口ずさみながら、過酷な実験に耐えたその結果が『処分』だった。

木場たちは誰一人聖剣に適応できなかったんだ。

 

「・・・皆、死んだ。殺された。神に、神に仕える者に。誰も救ってはくれなかった。『聖剣に適応できなかった』、たったそれだけの理由で、少年少女たちは生きながら毒ガスを浴びたのさ。彼らは『アーメン』と言いながら僕らに毒ガスを撒いた。血反吐を吐きながら、床でもがき苦しみながら、僕たちはそれでも神に救いを求めた」

 

木場は語る。俺たちは無言でそれを聞いていた。

 

---そして研究施設からなんとか逃げだせた木場だが、毒ガスはすでに彼の体を蝕んでいた。

一部の者を除いて、能力が平均値以下の被験者は用無しと処分されたのだった。

なんとか同志たちのお陰で逃げ遂せた木場は、死ぬ寸前でイタリア視察に来ていた部長と出会い、眷属となってここに至る。

 

「同志たちの無念を晴らしたい。彼らの死を無駄にしたくないんだ。僕は彼らの分まで生きて、エクスカリバーより強いと証明しなくちゃならない。これは一人だけ生き伸びた唯一の贖罪であり義務なんだ」

 

・・・凄まじい過去だ。アーシアも悲しい過去を持っていたが、木場は想像を遥かに超えた過去を抱えて生きてきたんだろう。

正直、俺には木場ほどの過去もないから深く苦しみを理解することは出来ないけど、復讐心だけで生きるのは辛いだろう。

部長だって聖剣打倒以外で才能を生かしてもらいたくて眷属悪魔にした、と言っていた。

 

「ぅぅぅぅぅ・・・うぉぉおおおおぉぉ!」

 

沈痛な面持ちで聞いていた俺たちだったが、啜り泣く声の後に匙が号泣し出した。

 

「木場! 辛かっただろ! 苦しかっただろ! ちくしょう! 正直イケメンのお前がいけ好かなかったが、そういう話なら別だ! 会長のお仕置がなんだ! それよりもエクスカリバーの破壊だ! 俺も頑張るから、お前も強く生きろよ! そして兵藤、俺も全面的に協力させてもらうぜ!」

 

木場の過去を聞いた瞬間、匙が凄まじい勢いで捲し立てて俺の手を握って振ってくる。

こいつも熱いな!? ていうか、良い奴だ! 言っていることはアレだけど!

無理矢理連れてきたのは悪かったと思ってたけど、連れてきて良かったかもしれない。最初の印象は正直悪かったし!

 

「よっし! いい機会だ! ちょっと俺の話も聞いてくれよ! 共同戦線を張るなら俺のことも知ってくれ! 俺の目標は---ソーナ会長とできちゃった結婚することだ!」

 

そう言った匙は、気恥しそうにしながらもランランと瞳を輝かせて宣言してみせた。

匙の告白に、俺は心の奥底から込み上げくるものがあった。そして俺の双眸から大量の涙が溢れ始めた。

 

こいつは同じだったんだ! 匙は、俺と同じだったんだ! 同類だったんだ!

 

「匙! 聞け! 俺の目標は部長の乳を揉み---吸うことだ!」

 

感動で嗚咽を洩らしそうになった俺はなんとか我慢し、匙の手を力強く取って言った。

一泊あげ、匙の目から大量の涙が溢れ始めた。

 

「兵藤ッッ! おまえ、わかっているのか!? 上級悪魔---それもご主人さまのお乳に触れることがどれほど大きな目標なのかを!」

 

「匙、触れるんだよ。上級悪魔の、ご主人さまのおっぱいに俺らは触れることが出来るんだよ! 実際に俺はこの手で部長の胸を揉んだことがある!」

 

「なん・・・だと・・・!? バカな、可能なのか!? そんなことが実現可能なのか!? 嘘じゃないよな!?」

 

わなわなと手を震わせながら言った俺に匙は驚愕の眼差しで俺の手を見ながら聞いてくる。

 

「嘘じゃない。ご主人さまのおっぱいともなれば、確かに遠くて道は険しい・・・でも追いつけない距離じゃない!」

 

「す、吸えるのか! ・・・か、会長の乳をす、吸える・・・。ち、乳首なんだよな? 吸う場所は乳首なんだよな!?」

 

悠然と答えて見せた俺に、さらに匙が疑問をぶつけてくる。だからこそ、俺も応えなければならない。

 

「バカ野郎! おっぱいで吸えるところなんて乳首以外にあるものかよ! そうだよ、乳首に吸い付くんだ! 匙、俺たちは一人ではダメな『兵士』かもしれない。だけど二人なら違うだろ! 二人なら飛べる! 二人なら戦える! 二人ならやれる! 一人で出来なかったことでも二人なら可能なんだ! いつかできちゃった結婚だって、出来るかもしれない! ご主人さまとエッチしようぜ!」

 

「うん。うんッ・・・!!」

 

俺の力強い言葉に、匙は何度も頷きながら男泣きした。

こいつは同志。戦友。言葉で並べてみてもこの関係を明確に表せるものはないだろう。だが間違いなく、この時の俺と匙は魂で何かを通じ合い、感じ合い、繋がり合った。

 

『キュ〜?』

 

「あはは・・・」

 

「・・・やっぱり最低です」

 

「はは、まあいいんじゃないかなぁ。暗い話よか明るい気持ちの方が戦いやすいだろ」

 

号泣しあう俺たちの横で、三人と一匹が何かを言っていたが気にしない。

 

「・・・神谷せんぱいも好きなんですか?」

 

「後輩に凄まじい誤解されるのは勘弁願いたいんだが・・・悪いけど俺にはあんま分からないんだよ。少なくとも一誠ほどではないし・・・生まれてこの方、食材を除いて()()()()()()()()()()『好き』になったことはないからな。ま、人間関係に至っては俺なんか好きになるやつすら居ないだろうし・・・って痛え! ウサギさんやめてっ!?」

 

「・・・これは苦労しそうだね」

 

「・・・アーシアせんぱいが大変ですね」

 

急に騒がしくなったが、匙と気持ちを確かめ合っていた俺には聞こえなかったし、どうだっていい!

それよりも、こうして『エクスカリバー破壊団』が結成された---。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

ある場所の堤防で一人の男性が釣りの準備をしていた。

 

『急用じゃ仕方ない。いやいや、気にする事はない。また改めて指名させてもらうよ』

 

電話をしていた男性は通話を切ると、ため息を一度つく。

 

「悪魔がドタキャンね・・・」

 

特に気にした様子はないが、本来は二人で魚釣りでもする予定だったのか一株の寂しさを男性は覚えていた。

そんな時、男性は突如として現れた()()()()()に顔を向けた。

 

「よぉ、一人寂しい俺に付き合ってくれるのか?」

 

「フッ、寂しがるタマか? あんたが?」

 

ロットを振って魚釣りを始める男性に白髪の少年が不敵な笑みで返す。

そんな少年に男性は笑みを浮かべ、海面に浮かぶルアーを見つめていた。

 

「それにしても、何だか嬉しそうじゃないか。良いことでもあったのか?」

 

「・・・面白い存在を見つけたんだ。()()()()会える日が楽しみで仕方がないだけさ」

 

「・・・お前のような存在に目を付けられるとは、ソイツは大変だな」

 

「あんたも気に入るような存在だろう。・・・会えば、な」

 

何処か親しい雰囲気で何かを話す二人だが、嬉しそうに笑みを浮かべながら話す少年の言葉に僅かな興味を抱きつつヒットしたことに気づいた男性は魚釣りに集中した---

 

 

 

 

 

 






いやぁ、お待たせしました! 内定の結果待って貰ってから、やったー!ってなったけどやる気が焼失していたり眠かったりバイトが忙しかったりして書けてなかったんですけど、復活です!
代わりに今回長かったから許して・・・。
そして本編ですが、ようやく明かされたレイトウマグロパイセン(作者も異世界の武器になるとは思わなかった)でした。
木場に関しては結局原作と変わらないようにしました。本来は主人公一人だけで動く予定だったんですけど、原作勢が空気になるから仕方がないね。
あとは・・・ふざけた言動の割には割と他者視点だと主人公も重いんやで(なお自分視点)と最後の白髪はダレナンダー。
ではまた次回ーいつになるかは未定

(前書き)いる?

  • いる
  • いらない
  • ユー可愛いし出番欲しいからいる
  • (本作の)他のキャラも欲しい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。