これはDxDですか?〜いいえ、ゾンビです   作:絆蛙

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『---今日は静か。
アユムもアーシアもいない。
でも、感じられる。私とアユムは、いつも繋がってる。だから、私は今日も平常でいられる。感情を抑えることが出来る。
大丈夫、アユムは無事---けれど、きっと彼はコカビエルと戦うために学校へ向かうのだろう。
だから、私は---』

ぴょんぴょんと跳ねるドキドキノコがうずうずと何処かに行きたそうにしており、無表情で緑茶を飲みながらそれを見ているユーの姿。




第七話 地獄の番犬

 

 

 

 

 

 

 

あの日の夜。部長のお仕置を受けた俺は痛い尻を抑えながらアーシアと話していた。

普段はアユムも居るのだが、今日は学校にも居ない。

 

「え? アユムが電話にも出ない?」

 

「はい・・・昨日お出かけしに行ってから一度も帰ってきてないんです。少し心配になってお電話をおかけしても出ることもなくて、代わりにウサギさんだけは帰ってきました。これを持って・・・」

 

アーシアが心配といった表情を浮かべながら紙を差し出してくる。

きっとアユムの気遣いで言わなかったのかもしれないが、逆効果になってるかもしれないな・・・。

それはそうとして、紙を読んでみたら『暫く帰れない』と書いてある。

木場たちを追っていったから・・・か?

 

「でもアユムなら大丈夫じゃないか?」

 

確かにアユムはゾンビだから朝になる前に帰って来ないのは少し不安だろうけど、アユムは正直強い。

あのライザー相手に何処か余裕を残しながら戦えたレベルだ。

ただアーシアの傍に居ないのは珍しいけど・・・。

 

「えっと・・・それが、裏面に書いてるものが問題だと思うんです」

 

「・・・裏?」

 

事情を知っている身からして何と答えたらいいか分からないが心の中で考えていると、アーシアに言われて俺は紙を裏にしてみる。

すると、裏面にも何かが書かれていた。

 

「えっと・・・なになに。『ラスボスを倒してきます。堕天使か何か知らないけど面倒なこと起きそうなので』、か・・・ってはぁ!?」

 

読み上げて俺は驚愕する。

ラスボスって・・・まさか一人でコカビエルを探しに行ったのかアイツ!? いくらなんでも無茶だ! コカビエルの実力は知らないけど、部長や生徒会長も険しい表情で警戒する相手だぞ・・・!? 相変わらず行動が読めねぇ!

 

「もしかしたらアユムさんに何かあったんじゃないかと・・・」

 

「それは分からないけど・・・部長に言ってみよう」

 

こうなると、俺だけで解決出来る問題ではない。

もしまた勝手に行動しようものならお尻叩き1000回を再び受けるかもしれないし、既にバレてしまったのだから言った方が良いだろう。

流石に今すぐは授業があるから言えないが、放課後にでも報告するべきか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業を終え、松田と元浜に語った俺は放課後になるとオカルト研究部の部室へアーシアと共に向かい、木場からの連絡がまだないことを聞かされた。

 

「・・・そう。やはりイッセー達にも祐斗からの連絡は無かったのね?」

 

「はい俺たちの方も・・・」

 

「あの手練れの二人も一緒だし、アユムも行ったのでしょう? はぐれ神父の一人位ならと思っていたのだけれど・・・聞いたところによるとそのはぐれ神父は聖剣の影響なのか、かなり強化されていたみたいね」

 

「あっ、それなんですけど部長。これ・・・」

 

「・・・紙? 誰から?」

 

「ウサギさんが届けてくれたんです。アユムさんからのですけど・・・」

 

俺はアユムの名前が話に出てくると思い出してアーシアに貸してもらった紙を差し出す。

するとアーシアが補足するように説明してくれた。

そう、あのコカビエルに挑んでくるとかいうものが書かれている紙である。

 

「・・・なっ!? これって・・・!」

 

「木場だけじゃなくてアユムも急いで探さないと・・・って思ったんですけど、部長にまずは報告が必要かなと思いまして」

 

「確かに、これは少しマズイかもしれないわね・・・」

 

「一応、私たちの方で使い魔を飛ばして探していますわ。姿を見せない堕天使の件もありますので、あの後から町中に使い魔を放って捜索させているのですけど、発見には・・・」

 

悩み事が増えたと言わんばかりに部長が顳かみを抑えている姿を見ていると、朱乃さんがどうやら探していたことを教えてくれた。

でも見つかってないってことは無事なのかすら分からない。

一番良いのはそれぞれ隠れているだけってことを願いたいが・・・。

そんな風に噂をすればと言うべきか、部長の耳元に魔法陣が展開された。

おそらく、部長の使い魔が何かを見つけたのだろう。

アユムか、木場か、ゼノヴィアかイリナか、それとも堕天使か神父なのか・・・。

 

「・・・・・・そう、直ぐに向かうわ。皆、私の使い魔が高台の公園で聖剣使いの一人が倒れている所を発見したわ。朱乃はソーナに連絡を入れて、その間に私は転移陣の用意をするわ」

 

「はい、部長」

 

部長の指示に朱乃さんがソーナ会長に連絡を取り、聖剣使いということはゼノヴィアかイリナのどちらかなのだが、それを聞く前に目で見た方が早いとすぐさま全員で転移していった。

ちなみにアーシアは悪魔ではないが、転移出来るらしい。

魔力かアユムも使っていたらしい魔法陣あれば行けるし、転移方法は意外とあるとか。

あといつの間にかアーシアに抱かれてるアユムのウサギが原因かもしれない。

 

 

 

 

夜の帳が落ちかけた高台の公園に転移して、まず目に入ったのはボロボロの服に全身を切り裂かれた栗色の髪のツインテールの女の子だった。

彼女を支えるように後ろから抱えているのは部長の使い魔だろう。

 

「イリナ!」

 

だが、俺はその倒れている人物が誰なのかすぐに理解すると、すぐさま駆け寄っていた。

服もボロボロで、傷も酷い。

 

「誰がこんな・・・アーシア!」

 

「は、はい!」

 

お願いするようにアーシアを呼ぶと、彼女はすぐに駆け寄ってイリナを治療してくれる。

それに感謝しながら俺はイリナに何があったのか聞く。

 

「イリナ、イリナ! 何があった!? 木場やゼノヴィアは? それにアユムのやつはどうなったんだ!?」

 

あの場で向かった四人は俺なんかより強い実力者だ。

特にアユムは底が見えない強さだし問題はないと思うけど、それでも心配だった。

 

「ふ・・・二人は逃げ・・・て、あの・・・ゾンビの子は、逃げ遅れた私を庇って・・・一人で・・・」

 

「ゾンビって・・・まさかアユム!?」

 

「・・・! 今は喋っちゃダメです!」

 

それを聞いて、アーシアは少し不安そうな表情をしたが、治療を優先して我慢しているようだ。

本当は心配だろうに。

 

「わ・・・わからな、い・・・。でも・・・アイツ、半端な強さ・・・じゃ、なかった。もし、かしたら・・・も、う・・・」

 

「あいつ・・・? イリナッ!」

 

アイツというのは誰か分からないが、イリナは気を失ったようで喋らなくなった。

するとそのタイミングで魔法陣が出てきて、そこから生徒会のメンバーたちが来た。

 

「ソーナ、来てくれたのね」

 

「連絡をもらって来ない訳にはいかないでしょう---ダメージが酷そうですね」

 

「は、はい。私の聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)は消耗した体力までは回復出来ませんので・・・」

 

「私の家なら治療施設があります。椿」

 

「はい」

 

アーシアの言葉を聞いて生徒会長は隣に居たメガネを掛けているロングの黒髪の女性---副会長に声をかけ、副会長はイリナを抱えていた。

 

「頼みましたよ」

 

「はい」

 

すると副会長は転移したようでこの場から居なくなり、さっきイリナから聞いたことを俺は生徒会のメンバーにも伝えるためにも口を開く。

 

「とりあえず木場とゼノヴィアは無事みたいだな。アユムのやつは分からないけど・・・アイツのことだから大丈夫なはずだ」

 

「はい・・・きっと、大丈夫です」

 

「お前のお尻も無事か?」

 

「俺は治療してもらったから。それより匙、色々悪かったな」

 

アーシアは祈るように手 両手を胸もとで組んでいたが、アイツはライザーとも殴りあったんだ。

そんなやつが簡単に負けるはずがない。

俺は空気を変えるためか、知らない人が聞いたら変な心配にしか見えない匙に言葉を返しつつ、色々と巻き込んだ申し訳なさを改めて感じていた。

 

「いいって。それよりこれはどういうことだよ?」

 

「俺らも来たばかりで全然---ッ!?」

 

「なんだ、この悪寒・・・!」

 

「まさか・・・!?」

 

突然感じた悪寒。

似たようなものを何度か感じたことがある俺は、ある人物を頭に浮かべながら振り向く。

すると木の影から誰かがでてきた。

 

「やあやあ、ご機嫌麗しゅう。撒いた餌に群がるクソ悪魔ども。

おや、おやぁ? アーシアたん、いつもの彼はどこに行ったのかなー?」

 

「てめぇ、やっぱりフリード!

またアーシアに何かする気か!? アユムがいないからって何かしようってならぶっ飛ばすぞ!」

 

本当はアユムの方がいいんだろうが、アユムが居ない時は俺が守るって決めてるんだ!

即座に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を出現させて戦闘態勢に入ると、他のみんなは既に入っていて、俺の背後から生徒会長が頭上を超えて部長と並ぶといつでも攻撃出来るように魔法陣を出現させていた。

 

「ちょ、ちょい待ち! 今日はそっちの赤毛のお嬢様さんにお話があるんだって」

 

「・・・話?」

 

「ああ、うちのボスがさ!」

 

どうやらこの場で一戦交える気はないようで、二人が手を降ろすとフリードは上空を見つめる。

すると、空が急に夕焼けの空から紫色に染まり、釣られるように俺達も上空を見たら、何かがいた。

翼を生やす、一人の男性だ。

つまり---

 

「・・・堕天使」

 

「それも翼が十枚・・・幹部クラスですわ」

 

こいつがゼノヴィアたちが言っていた黒幕か!

幹部クラス・・・ということはこいつの名前は・・・!

 

「初めてましてかな。グレモリー家の娘よ。我が名はコカビエル」

 

その名乗りと共に皆の緊張が一気に高まる。

 

「御機嫌よう、堕ちた天使の幹部さん。私はリアス・グレモリー、以後お見知りおきを」

 

「紅髪が麗しいものだな。紅髪の魔王、サーゼクス。

お前の兄にそっくりだ。忌々しくて反吐が出そうだがな」

 

「・・・それで、私との接触はなんの目的なのかしら? それも幹部が直々に来るなんて」

 

挨拶も程々に部長は本題へと入った。

まぁ、このまま挨拶して終わりって様子でもないからな。

 

「お前の根城である駒王学園を中心にして、この町で暴れさせて貰おうと思ってね」

 

「私たちの学園を!?」

 

「そうすれば、あのサーゼクスの事だ。間違いなくお前を助けに現れるだろう---グレモリー家の者は情愛が深い事で有名だからな」

 

「そんな事をすれば、三大勢力の均衡が崩れて再び戦争が勃発するわよ!」

 

「フッフッフ! それこそが俺の目的でね。初めはエクスカリバーを奪えばミカエルが動くと思ったのだが、寄越したのは雑魚ばかり---つまらん。あまりにものつまらなすぎて、今度はお前らに標的を移しただけの事だ」

 

つまりなんだ、こいつは戦争をするためだけに、つまらないって理由でみんなを巻き込む気なのかよ!?

 

「・・・随分と戦争にご執心みたいだけど、そんな事をして何に成るって言うの?」

 

「・・・暇つぶしだよ。三つ巴の戦争が終わってからというもの、俺は退屈で退屈で仕方なかったんだ! アザゼルもシェムハザも二度目の戦争には消極的でな---挙句の果てには神器なんてもんを集めて研究に没頭し始める始末だ。俺にはそんなもの興味はない

まぁ、そこのガキが持つ赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)クラスのものなら戦力になるだろうが、そうそう見つかる訳でもないだろう。

アザゼルなら欲しがるだろうがな、アイツのコレクター趣味は異常だ」

 

アザゼル、シェムハザ・・・そうか、思い出した。

レイナーレたち堕天使の親玉だったか・・・! アザゼルは堕天使の総督だっけ・・・か。

神器を集めているのか・・・。

 

「三大勢力はギリギリのところで均衡を保っているだけだ。

ならば、この手で戦争を引き起こしてやればいい」

 

「完全な戦争狂ね」

 

「だから今度は貴様ら悪魔に仕掛けさせてもらう。ルシファーの妹にレヴィアタンの妹、それらが通う学び舎ならばさぞや魔の波動が立ち込めていて混沌を楽しめるだろう。戦場としては悪く無い」

 

「無茶苦茶だ・・・」

 

匙の言う通りだ。

マジでイカれてやがる! 頭のネジをどこかに置いてきたんじゃないか!?

 

「ひゃはははは! うちのボス、このイカレ具合が最高でしょ? 俺もついつい張り切っちゃうわけさ---こんなご褒美まで貰えちゃうしさ!」

 

「・・・エクスカリバー」

 

フリードが見せびらかすようにコートを開くと、そこにはエクスカリバーがあった。

それも三本も持ってやがる!

 

「無論全部使えるハイパー状態なんでざます。俺って最強ー!

ああ、この擬態の聖剣、エクスカリバーミミックもツインテールのお姉さんからゲットさせていただいたんで。ついでにもう一人の女の子が持っている破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)も頂いちゃいたいものですなぁ」

 

フリードは心底おもしろおかしそうに哄笑をあげる。

 

「戦争をしよう! リアス・グレモリーよ!!」

 

コカビエルがそう言いながら光の槍を複数放ってきた。

光の槍が地面に当たり粉塵が立ち込め、粉塵が消えるとそこには誰もいなかった。

 

「野郎!何処に消えやがった!?」

 

「あの二人は学校に向かいました」

 

「学校に!? あいつらマジで俺たちの学校を破壊する気かよ!!」

 

「いえ、学園を中心にと言ってましたから、あのクラスの堕天使ならばこの地方都市程度滅ぼすのは容易いでしょう」

 

それを聞いて、俺の脳裏には父さんや母さん、学校のみんな。

この街の人々が死ぬ光景がイメージされ、胸の中から怒りが浮かび上がってくる。

 

「ふざけんな・・・ふざけるなよ、クソ堕天使!」

 

「皆、直ぐに学園に向かうわよ!」

 

「「「「はい!」」」」

 

そうして俺たちは急いで学園に向かう。

・・・そういえばフリードのあの感じ、アユムのこと知ってそうな煽り方だったな。

聞くのを忘れてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから駒王学園の門の前に転移した。

今回ばかりは流石にダメージは受ける可能性の方が高く、悪魔ではないアーシアも支援係として連れてきている。

その他にもすぐさま生徒会長が残りの眷属全員をその場に招集し、被害を減らすために役割分担として部長や俺たちが学園の中へ、シトリー眷属が結界を維持する役目になった。

どうやら朱乃さんがサーゼクス様に打診したらしく、一時間後には来るらしい。

つまり、それまで俺たちは時間稼ぎ、またはコカビエルを倒さなければならない。

俺は匙と拳を合わせて互いの健闘を願った後、今回の役目はサポートで、ギフトの力でみんなを支援する役目を俺は部長から受けていた。

みんなで生きて帰って、またここに通うために。

覚悟を決めて俺はプロモーションで女王(クイーン)へ昇格してから、俺たちはコカビエルが待つであろう場所へ向かった。

校舎を抜けてグラウンドまで歩いて行くと濃密な聖なる波動を放つ魔法陣が鎮座していた。

 

「あの光は一体何なんだ!?」

 

思わず声に出してしまう。

そこには自分たちの学び舎にある得体の知れない魔法陣があり、それに答えたのは俺たちの上空に浮かんでいる巨大な椅子に座ったコカビエルだった。

 

「4本のエクスカリバーを一つにするのだそうだ。あの男の宿願らしくてな。エクスカリバーが統合される時に生じる莫大なエネルギーを使ってこの町を崩壊させる術を掛けるのさ」

 

「コカビエル!」

 

「先ほどぶりだな、それでいったい誰が来るんだ? サーゼクスか? それともセラフォルーか?」

 

「お兄様たちに代わって私たちが・・・」

 

部長がそこまで言った所でコカビエルが無造作に光の槍を体育館に投げつけ跡形も無く消滅させた。

俺は部長を守るために前に出たが、その余波だけで尻もちを着いてしまう。

 

「詰まらんな。まぁ余興にはなるか、それにお前とセラフォルーの妹を殺せば遠く無いうちに出てくるだろうしな」

 

コカビエルは余裕そうに言っているが、それどころじゃない。

投げた光の槍の威力を見て俺だけじゃなくて、皆冷や汗を流していた。

 

「嘘だろ・・・!」

 

『ビビってるのか、相棒』

 

あまりにもの威力に呆然としていると、俺の左手からドライグの声が聞こえてきた。

 

「あんなでけぇ光の槍見たことねぇぞ! 次元が違うじゃねぇか!」

 

『ああ、次元が違うさ。あいつは過去の魔王たちと神相手に戦い、生き残った者だからな』

 

「そんなやつに勝てるのか?」

 

『いざとなればお前の体の大半をドラゴンにしてでも勝たせてやるさ』

 

俺の言葉にドライグはそう返してくる。

俺の体の大半を捧げなきゃ相手にならねぇレベルってことかよ・・・!

 

「しかしせっかく来てくれたんだ。丁寧におもてなししてやらないとな---まずは、俺様のペットと遊んで貰おうか!」

 

コカビエルの座っている椅子の下から光が打ち出されそれが当たった地面から天に向かって噴き出る炎が渦巻く。

すると十メートルはあるであろう、黒い巨体。

四足は一つ一つが太く、そこから生えている見ているだけで背筋が凍るような鋭すぎる爪に闇夜にギラギラと輝く血のような真紅の双眸。

突き出た口から覗かせるのは凶悪極まりない牙だ。ずらりと並び、牙と牙の隙間から白い息が吐き出されていた。

犬のようだが、首が三つもある。

しかも二匹居た。

 

「あれは・・・! 冥界の門の付近に生息する地獄の番犬、ケルベロスですわ!」

 

「人間界に連れてくるなんて・・・!」

 

「地獄の、番犬・・・」

 

部長と朱乃さんは知っているようだが、俺も名前くらいは聞いたことがある。

ゲームでもよく出てくるやつだが、まさか本当に見ることになるな

な・・・!

アーシアは怖がっているようだし、本当にこういう時になんでアイツは居ねぇんだよ!

 

「みんな、気を引き締めて行くわよ! 一誠はパワーの強化を!」

 

「はい部長!」

 

部長と朱乃さんは悪魔の翼を広げ、小猫ちゃんは地面を蹴って飛び出していた。

俺は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を呼び出し、力の強化を。

朱乃さんは例の巫女服へと変わっていた。

 

「アーシア、下がってろ! あんな犬ころ、すぐ部長たちが躾てくれるから!」

 

「は、はい!」

 

戦えないアーシアを俺は下がらせると、戦況は動いていた。

ケルベロスが炎を吐き、部長は華麗にその攻撃を避けると朱乃さんが炎を凍らせる。

そして部長が滅びの力でダメージを与え、倒れたケルベロスに変わってもう一匹が前に出てくるが、跳んできた小猫ちゃんがケルベロスの頭のひとつにかかと落としを決め、怯んだそこに朱乃さんが雷撃を与える。

 

「なんてタフなやつなんだ・・・!」

 

『Boost!』

 

それを見て、見ているだけなのがどこかむず痒かった。

さっきから俺の力が溜まる証として何回か鳴っているが、まだまだ全然足りない。

俺がもっと強ければあっという間にみんなを強化出来るのに!

アユムみたいに力があれば、みんなと戦えるのに!

 

「きゃあぁああああ!」

 

「っ、アーシア!?」

 

悔しく思いながら戦闘を見ていると、後ろに居るはずのアーシアの悲鳴が聞こえ、即座に振り向いた。

するとそこにはケルベロスがもう一匹居て、既に炎を吐こうとした。

やばい、間に合わない!

 

『---キュイー!!』

 

俺がすぐに飛び出そうとすると、アーシアにずっと抱かれていた焦げ茶色のウサギが尻もちを着いたアーシアを見て飛び出し、物凄い速度でケルベロスを勢いよく蹴っ飛ばして吹き飛ばした。

 

「んなっ!?」

 

それに俺は驚く。

なんだあのウサギ!? 部長たちが苦戦してるケルベロスをあんな簡単に吹き飛ばすとか・・・あの威力、アユムと同等くらいにはあるんじゃないのか!?

ということは、もしかしてあのウサギってアユムの使い魔か!?

ずっと頭に乗せてるし懐いてるんだなーとは思ってたけど!

でも、これでアーシアの問題はなくなった!

俺はこのままパワーを---

 

「イッセーさん、後ろです!」

 

「ッ!?」

 

貯めようと思っていたところで、アーシアの声に反応した俺は()()()()()()ケルベロスに反応して、ギリギリで避けた。

四体目!? どうなってるんだ!?

 

『きゅー!』

 

俺が避けるので精一杯な中、焦げ茶色のウサギは体に合わず、ケルベロスの爪と足で打ち合っていた!

いやいや、あのウサギは本当になんだよ! めっちゃ強いじゃん! 俺より強くないか、アレ!?

 

「って、やばい! もう殴るしか---ッ!?」

 

何とか避けていたが、ウサギに気を取られて近くにいたケルベロスが俺に飛びかかってくる。

避けることが出来ない俺は貯めた力は失われるが、もう殴ろうと拳を引き絞ったところで、突如として斬撃音と共にケルベロスの首が落とされた。

俺がそのことに驚いてると、上から知っている声が聞こえた。

 

「加勢に来たぞ」

 

「ゼノヴィア!?」

 

そう、それは今まで行方が分からなかったゼノヴィアだった。

彼女はそういうや否や、駆け出してさっき切り落としたケルベロスの胴体に斬りかかった。

流石エクスカリバーと言うべきか、ゼノヴィアの一撃はケルベロスの胴体をあっさり二つに割り、煙が立ちこむとケルベロスが消失していく。

 

「流石、魔物に無類のダメージを与える聖剣ですわね」

 

「悔しいけど、来てくれたのは有難いわ」

 

聖剣の効果は魔物には有効で、それはさっきのゼノヴィアの一撃を見ていれば分かることだ。

けれど、俺も見てるだけじゃないぜ!

今ようやく溜まった合図があった!

 

「部長、朱乃さん! 行きます!」

 

「イッセー!」

 

「イッセーくん!」

 

赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)!」

 

『Transfer!』

 

俺はすぐに駆け出し、跳躍すると二人に譲渡した。

そして着地に失敗して情けなく倒れてしまった。

 

「兵藤一誠、あのようなことも出来るのか」

 

「行けるわ、朱乃!」

 

「はい。天雷よ、鳴り響け!」

 

俺の譲渡によって強化された朱乃さんは天に指を翳し、雷光を支配する。

そしてその指の標準がケルベロスに向けられた。

魔物としての本能なのか、ケルベロスはその場から逃げようとする。

しかしそんなケルベロスの足元から大量の剣が生え、ケルベロスの動きを止める。

この剣はまさか!?

 

「逃がさないよ」

 

そこに現れたのは、俺たちの『騎士(ナイト)』だった。

木場のやつ、相変わらずグッドタイミングで駆けつけてくれたのか!

 

そして、木場の剣によって身動きが出来なくなったケルベロスに対して極太の雷撃が落ちて無に還し、小猫ちゃんはあの巨体を持ち上げて地面に叩きつけていた。

ウサギに至ってはケルベロスをまた吹っ飛ばしていた。

 

「よし、これで・・・ってまだ居る!? アーシア!」

 

周りを見渡すと、もう居ないと思われていたケルベロスは五匹目居たようで、アーシアに向かっていくのが見えた。

くそっ、離れすぎた! そもそも五匹も居たのかよ!

あのやけに強いウサギは圧倒してるとはいえケルベロスとまだ戦ってるから行けず、俺は駆けつける。

 

「っ・・・! あ、アユムさん・・・ッ!」

 

迫るケルベロスに対して、アーシアは少し体を震わせながらも、祈るように目を閉じて、助けを求めるようにアユムの名前を呟いていた。

これは間違いなく戦う力を持たないアーシアから離れた俺の責任だ。

あくまでアーシアの力は後方支援だ。傷つける力ではなく、癒す力。

悪魔ですら癒すことの出来る力で、アーシアは俺たちの仲間だ。

だからきっと、アーシアは怖くてもここに来ることを選んだのだろう。

だというのに、俺は何してたんだ!

アイツが居ない分、俺が守ってあげなきゃならないのに、既に譲渡してしまった俺は力を上げることが出来ず、到底間に合わない。

嘆いたところで、何も変わらない。

 

「アーシアァァァ!」

 

『ギャオァアアアア!』

 

手を伸ばすが、ケルベロスのほうが速かった。

ケルベロスはアーシアに向かって飛びかかり、木場たちも俺の声で気づいたのか駆けつけようとして---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、そこ邪魔」

 

軽い声が響くと、ケルベロスが物凄い速度で吹き飛び、その腹には風穴が空いていた。

思わず立ち止まり、俺たち全員はケルベロスを吹っ飛ばしたであろう人物を見た。

 

「アーシア、大丈夫だったか?」

 

「ぁ・・・。あゆ、むさん・・・」

 

そう、そこにはラスボスを倒してくるとかいう置き手紙だけを置いていったアユムが、アーシアに手を差し伸べていた。

---何故か、血まみれになった服でカジキマグロを背中に背負いながら。

 

 





待たせたな、お久しぶりです。
書きたくなったので久しぶりに投稿しました。ついでに過去の話気にいらなかったので文ちょっと変えました(展開は変わってない)

それにしてもハイスクールDxDの二次創作減りましたね、ほんと・・・ほぼ毎日新しい作品があった昔が懐かしいわ。なんで、俺が投稿再開して一個増やしてやるよ・・・!

(前書き)いる?

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  • ユー可愛いし出番欲しいからいる
  • (本作の)他のキャラも欲しい
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