これはDxDですか?〜いいえ、ゾンビです   作:絆蛙

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第九話 長年の恨みを晴らす一撃

---神が死んだ。

そんな真実を聞いても、俺の心は動揺することも動くこともなかった。

それはきっと、どうでもいいからだ。元々俺は、神なんて信じていない。興味すらない。

ガイアやツクヨミ様といった神は実在するかどうか分からないし、ふざけて言うことはあっても本気で信じてなどいない。

なぜなら神が居たら、ユーがあんな力を持つことはなかった。泣くことはなかった。感情を殺すことはなかった。嫌な思いをすることはなかった。喋れなくなることはなかった。

命を狙われることも無く、冥界で過ごして、きっと幸せな日々を送っていたはずだ。

アーシアだって同じだろう。

神が居れば、アーシアがこの街に来ることなんてなかった。辛い思いをすることなんてなかった。教会から追放されることも、魔女の烙印を押されることもなかった。

聖女として生きて、年相応な、普通の夢を叶えて、幸せに生きれたはずだった。

そう考えると、もし神が居たら、俺は彼女たちと出会うことはなかったのだろう。

それもいい。彼女たちのような優しい子は幸せになるべきなんだ。

---だというのに、なんだこいつは?

ああ、こんなの久しぶりだよ。俺のキャラじゃねぇ。

だけど、我慢出来るものでもなかった。

つまりは自分たちのプライドが傷つくからって戦争を続けて、自分たちこそが最強だと、頂点だと知らしめたいってことだろ。

くだらなすぎる。やるならどっか適当なところでやれ。

結局のところ、こいつは俺たちを巻き込んでるだけ。

三大勢力の戦争だがなんだが知らんが、勝手に巻き込まれる方の気持ちを、大切な人たちを奪われる気持ちを考えたことはあるのか?

いいや、ないだろう。所詮人間だと見下すようなやつだ。

だいたい悪魔も堕天使も天使も、人間を巻き込みすぎだろ、やめろよ。俺にも人間としての心はあるから普通に迷惑だと感じる。

俺も死んでるけど、分類上は人間だからな?たぶん、きっと。

 

まぁ、だから許せなくてさっき、ぶん殴ったわけだが。

そもそもこのクソ堕天使は戦争を起こすつもりってことはユーに被害が行くってことだろ。

ざけんな、久しぶりに頭が冷静のままグツグツとした煮えたぎるマグマのような怒り---プッツンが来たね。

しかし今はアーシアの涙を消してあげたい。彼女にはいつもの可愛らしく優しい綺麗な笑顔が似合ってる。

 

「アユ、ム・・・さん・・・?」

 

「たとえ神が居なかろうが、アーシアはひとりじゃない!友達だっている、()()()だって居る!アーシアを泣かせるやつは、俺がどんなやつだって今みたいにぶん殴ってやる!

だから---俺を信じろッ!

どんな苦しいことがあっても、辛いことが起きても、アーシアが俺を信じてくれるなら、俺が全て受け止めてやるッ!ずっと守ってやるッ!どれほど辛い現実があったとしても、絶望があってもいくらでも慰めてやるッ!希望を与えてやるッ!

だから、過去じゃなくて、これからを! 未来を見据えろ!」

 

「ッ・・・!」

 

流石に名前は出せないが、神が居なくたってアーシアには出来た友人もいるし、俺もいる。ユーだっているんだ。

あの時、友達になるといったときの言葉はいくら俺でも忘れてないしね。

 

「はぃ・・・はい・・・! 私は、私はずっと、()()()からアユムさんを信じてます! だから、無事に・・・無事に帰ってきてください!」

 

「ああ---任せろ。

みんなを傷つけた。大切な人たちに危害を加えようとした。友に手を出したッ!

コイツは大勢の人を傷つけた。ここから先は、俺の喧嘩だッ!」

 

辛い顔ではなく、目尻に小さく涙を浮かべながら淡く天使のような笑顔を浮かべてくれたアーシアに応えるために、俺は拳を構える。

あぁ、でもほんと---俺のキャラじゃねーな。

俺はいつもみたいにこう、はっちゃけたい人・・・ゾンビなのだ。あれが平常運転なのだから、こういうのは似合ってないと思う。

まぁ、流石に今回ばかりは俺の素晴らしく大空のように広くて素晴らしいほどに輝くキラメキの俺の堪忍袋の緒も切れたからな・・・うちのユーに被害が被る可能性だけじゃなくてアーシアも泣かせた時点で死罪案件だろ。

 

「くっ・・・」

 

「・・・あぁ?」

 

「クックック・・・ハハハ、フハハハハハハ!!」

 

あれで倒せたと思ってなかったため、何かが聞こえてガン飛ばしてしまうが、そこには校舎の瓦礫に潰されて出てきたコカビエルが笑っていた。

・・・やべ、学校の校舎ちょっと壊れたんだけど。大丈夫かな、あれ。

 

「俺としたことが、貴様のような存在に気づかなかったとはッ! 何者だ?貴様はあの時、確かに殺したはずだが?」

 

「興味ないね」

 

俺としては学校を壊したことによって途方もない額の請求が来ないか不安だが、コカビエルの言葉に吐き捨てて背中に担いでいたカジキマグロ先輩、またの名をレイトウマグロパイセンの上顎を掴んで引き抜き、コカビエルに向ける。

 

「ふん、まあいい。この街が崩壊するまで時間はあまり残されていないが、サーゼクスかセラフォルーが来るまで貴様で楽しませてもらおうか!」

 

「・・・!」

 

光の槍を作り出したコカビエルが俺の目前に迫ってきた。

普通サイズの光の槍の割には込められた濃度は凄まじく、当たればやけどでは済まないだろう。

正直受けたくない。

それにしても速いな・・・まぁ、可愛い幼女の見た目をしてるくせに拳すら見えなかったやつに比べたら全然見えるんだが

 

冷静にレイトウマグロパイセンを構え、槍を避けては逸らしていくが、コカビエルの速度は徐々に上がっていく。

縦横無尽、ありとあらゆる箇所から休み暇もなく畳み掛けてくる力は、コカビエルがかつて戦った経験が活かされているのだろう。

 

「うざい、500%」

 

「!」

 

となると、流石に100%では捌けなくなったため、俺は一気に力を解放することで槍を上に弾き、コカビエルの体を仰け反らされた。

ああ、だろうな---いくら人外でも急激に力が上がって予想もしない力に弾かれると、そうやって隙が出来るよな!

 

「くら・・・ッ!?」

 

左拳を握りしめ、俺はそれを追撃するために突き出そうとしたところで、コカビエルの翼が動いたのが見えてレイトウマグロパイセンを横にすることで防いだが、足が地面から離れて吹っ飛ばされる。

 

「神谷くん!」

 

「アユム!」

 

「来るな!」

 

駆け寄ろうとする木場と一誠に言いながらくるりと回転し、地面に手を着いて着地しながら俺は手に持っているのを投げ捨てた。

 

「うっ・・・ぐ、ぐぅっ!? き、貴様、よくも俺の翼を・・・!」

 

そう、飛ばれたら勝ち目がないので、翼を一つ斬らせてもらった。

流石に10個あるから悩んだが、まあ真ん中を取ったら飛べないかなと思って斬った。

けど多分これ、飛べるしこいつできるな。

普通は仰け反ったらそのまま喰らうはずなんだが、あの翼卑怯すぎる。

俺にはないんだぞ。

 

「・・・どうやら甘く見すぎたようだな! それほどの実力があるというのに、勿体ないものだ。どうだ、俺と一緒に来ないか?」

 

「やだよ、メリットないし」

 

「メリットか・・・なら行く先々で女を見繕ってやる。どうだ、抱き放題だぞ。貴様も男ならば興味はあろう?」

 

コカビエルが仲間にならないかと勧誘してくるが、その言葉を聞いて、一誠がピクっと反応したのが目の端で見えた。

しかし俺はため息を零す。

なんでこいつはそれでついていくと思ったんだろうか。俺にはユーがいるし、そもそも俺はユーの所有物だ。

ついでにユーが居なきゃ俺の心が荒れ狂うから却下。ユーは俺の癒しなんだよ。

 

「いらん、お前はアーシアを泣かせた。そんなやつについて行かねぇよ・・・なぁ、一誠?」

 

「お、おおう、もちろんだ! てめぇ、コカビエル! ふざけたことを抜かすんじゃねぇよ!」

 

俺が一誠に聞けば、一誠は文句を言いつつも少し残念そうではある---うん、隠そうね。

まぁハーレムって単語に弱いんだろうな・・・仕方がない。

 

「そうか、それは残念だ。惜しいが---俺の翼を一つ奪った貴様は生きて帰させないがな」

 

「安心しろ、俺は死なないからな」

 

「ならば、試してやる。

これで消し飛べ!」

 

コカビエルが木場に向けて放った時と同じ、巨大な光の球を放ってくる。

俺はそれをレイトウマグロパイセンを横に振るうことでスイングして逸らした。

そして反撃しようと前を見た瞬間、いつの間にか片手に作られていた光の剣が振り下ろされるのを見てレイトウマグロパイセンを上空に投げるように手を離し、バク転で避けてから跳躍する。

 

「600%ッ!」

 

今まで500%までしか使わなかったが、負けることはなくとも勝てなさそうなのでさらに上昇させ、俺は空中でさっき投げたレイトウマグロパイセンを掴んで一気に叩きつける。

 

「ぐおっ・・・力が上がっただと?」

 

「ちっ、面倒な」

 

凄まじい音ともにコカビエルの足元が没落するが、両手の剣と槍をクロスして受け止められたということを知った俺はレイトウマグロパイセンを軸に回転し、コカビエルの背後に着地するのと同時に回し蹴りを放つ。

その攻撃はあっさりと避けられ、投げてきた槍をしゃがむことで回避した。

しかし互いに決着が着くような一撃が入らない。

ふーむ、どうするか・・・俺の能力はあくまで筋力増加だし、槍に触れられないのが痛いな。

レイトウマグロパイセンじゃなきゃ弾けないし。

 

「しかしながら妙な武器や力を使う。魔力のある攻撃でもなければ、神器でもない。となれば仙術・・・いや、闘気でもないか」

 

「?」

 

何やらコカビエルが言っているが、俺には分からない。

改めてレイトウマグロパイセンの上顎を握り直すと、地面を蹴って加速する。

 

「!」

 

全身に600%の力を纏うイメージで力を固定化させ、一瞬で近づいた俺はレイトウマグロパイセンを振り下ろす。

反応したコカビエルが剣で受け止めるが、俺は即座にレイトウマグロパイセンを振りまわし、遠心力を活かして回転斬りを行う。

するとコカビエルは翼を広げながら下がり、俺は瞬時に懐へ入ってはレイトウマグロパイセンを振るっていく。

 

「ほうっ・・・! さっきよりも速いとは! 一部部分だけではなく、全身に纏ったということか! いいぞ、もっと俺を楽しませろォ!!」

 

「勝手に楽しんどきやがれッ!!」

 

コカビエルの速度も上がり、重たい一撃を振るう俺に対してコカビエルは逸らす。

そのため、逸らされた一撃を修正しなければならないので速度が落ちるのだが、二刀流となったコカビエルと互角に打ち合う。

 

「くっ・・・僕ですら近づけない・・・!」

 

「ああ、私が前戦った時とは比べ物にならない。夜だからというのもあるだろうが---」

 

「これが神谷くんの本気ってことなの・・・?」

 

「・・・凄い」

 

果たして、何回打ち合ったか。

決め手に欠けていると、俺の大振りの一撃を下がって回避したコカビエルが散弾銃のように光の球を連射してくる。

それをレイトウマグロさんでガードし、即座に横に転がると木を走りながら蹴り、空中でひと回転しながらボレーキックを叩き込む。

 

「やったか!?」

 

「・・・ッ!?」

 

言ってはいけないセリフを呟いた一誠だが、やっていない。

俺の一撃を間違いなく避けたコカビエルが土埃に包まれて姿が見えなくなっただけで、俺はなんだか嫌な予感がしたのでブリッジした。

するとスレスレで槍が通り過ぎ、片手を地面から離して組体操のように片手だけ地面に手を突きながら体を逸らせば、刃となった翼が体があった場所へと突き刺さっていた。

 

「今のを避けるかッ!力だけではなく、その戦闘センス、気配の察知や培われてきた勘と技術---本当に人間か、貴様ッ!?」

 

「なんだっていいだろ」

 

レイトウマグロパイセンを投げつけ、それをコカビエルは身を逸らして避ける。

しかし俺はその間に接近しており、こちらを見ても防御の間に合わないコカビエルを打ち上げ---地面に直撃した、光球の爆風によって転がった。

 

「いってぇ・・・流石に光は効くなぁ」

 

転がった先にあったレイトウマグロパイセンに触れながら、維持していた力が解除されたため、300%の力を纏って起き上がると、服に着いた砂を落とす。

そして上空を見上げると、コカビエルがいなくなっていた。

 

「・・・ん? あれ、どこいった!? あれれー!?」

 

「お、おい、アユムッ!」

 

「違う、コカビエルは上空ではない! 後ろだ!」

 

さっきまで上空に居たはずなんだけどなーと思っていると、一誠とゼノヴィアの声を聞いて、俺は振り返った。

その瞬間、反転した俺の腹に凄まじい痛みと生暖かさを感じ---コカビエルが俺の腹に、剣を突き刺して貫いていた。

 

「・・・ゴホッ・・・!」

 

「人間にしては強いどころか、この場にいる誰よりも強かった---だが、飛べないことが敗因だったな。終わらせるのは名残惜しいものだが、楽しい時間というのは呆気ないものだ」

 

「アユムさん・・・!」

 

ぐしゃり、と腹の中で剣を捻りこまれる感覚があり、さらに押し込まれることで逆流してきた血を口から吐いてしまう。

手にあるレイトウマグロパイセンに至っては、落としてしまった。

そしてコカビエルは楽しそうに、それでいて終わりだということに関して残念そうにしていた。

 

「・・・ぁ」

 

「・・・ん?」

 

コカビエルが剣を抜こうとするが、俺は逃がさなかった。

自ら刺している腕を掴み、動かさせない。

それどころか、自ら根元まで押し込ませる。

固定させるように。

 

「引っかかったなって言ったんだよ、クソ堕天使ッ!」

 

「・・・!? 馬鹿な、致命傷のはず。何故---」

 

「600%ッ!」

 

この距離ならば避けられないと分かっていたため、再び600%に引き上げた俺は握り拳を作ってコカビエルの顎をアッパーで打ち上げた。

さらに体が僅かに浮いた瞬間に足を上げ、真っ直ぐ突き出すことでコカビエルの胸を足裏で蹴り飛ばす。

 

「よっと、熱い、痛い」

 

それと、ついでに刺さったまま邪魔な光の剣を抜いて捨てる。

その際に手が焼かれたが、少しずつ再生が始まったので問題ない。

というか問題はコカビエルだな。

俺は悪魔や一誠やイケメンに比べて決め手がなさすぎる。純粋にぶん殴るか叩くしかないし。

その点小猫ちゃんは仲間だな!

 

「そうか・・・そういうことか!貴様の正体、ようやく掴んだぞ」

 

「ん?」

 

どうしようかと悩んでいると、斜め上に吹っ飛ばしたコカビエルが翼を広げながら理解したらしく、なにやら言っていた。

ちなみに俺の腹は傷口が塞がっているし、コカビエルは痛いのか胸を抑えていた。

 

「その再生力、人間に限りなく近い気配に他でもない力と引き出し方---クックック、まさかこんなところに戦争を起こすに手っ取り早い奴が存在していたなんてな。あまりにもの人間に近いからそういう力だと思っていたが、そういうことか」

 

「はぁ?」

 

「貴様は人間じゃない、しかし()()()()()()じゃないな?吸血鬼・・・いや、その不死性に理性があることから()()()()()か。こんな町にこれほどの実力を持つ不死者(アンデッド)が存在するのも頷ける」

 

いや、ただのゾンビなんだけども・・・。

だがコカビエルは何かを知っているらしく、心底面白そうというか、楽しみが出来たというような笑みを浮かべていた。

 

「さぁ貴様の主を呼んでもらおうかッ!」

 

「主ですって・・・?」

 

「神谷くんの? それは一体どういうことなのでしょう・・・?」

 

先輩方二人が疑問を口にしていたが、俺は理解した。

こいつ、ユーのこと知ってやがる。

確かにユーは裏の世界では有名人で、狙ってくるやつらはアホほど居たが。

 

「いくら不死者(アンデッド)でもこれなら効果が高かろう?」

 

そう言ったコカビエルは空中に鎮座しながら手を空へ向けると、凄まじくでかい光の槍が形成された。

しかもその中に凝縮されている光の濃度は今までの比ではなく、生半可な実力の悪魔程度なら触れただけで消し飛びそうだった。

俺はそれを目を細めながら見ると、背後へ視線を一度向ける。

みんなあまりにもの込められた光の強さに驚いているらしく、俺が避けたら不味そうだった。

それに爆風でここら辺一帯は全部吹き飛ぶし、アーシアもやばい。

恐らく、あれがコカビエルの全力ってことだ。触れられるなら対処出来るが・・・やるしかないな。

 

「来るならさっさと来い」

 

レイトウマグロパイセンを握り直し、突きつけながら睨みつける。

そんな俺に対して、コカビエルはただ嬉しそうに嬉々と笑った。

 

「フハハハハハハ、見事だ!であるならば、受けてみせろ!」

 

俺が避ける気がないことに気づいたらしく、コカビエルは一回り槍を巨大化した後に放ってくる。

迫ってくる度にピリピリとしたものを感じる。

俺は地面に足をつけながら、迎撃体勢へと入った。

 

「朱乃ッ! 神谷くん、避けなさい!」

 

「ええ、わかってますわ!」

 

姫島先輩が皆を守るように魔法陣を貼る---結界とやらだろう。

しかし俺には分かる。アレじゃこんな光の込められた一撃、受け止められないと。

仕方がない、あまり力を行使するのは疲れるからやりたくないのだがここは600%を超えた力でレイトウマグロパイセンで弾き返すしか---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう決断した時には、俺はもはや避けることが出来なかった。

 

「あ、アユムさんっ!」

 

「アユムッ!」

 

「神谷くん!」

 

「神谷せんぱい・・・」

 

関わりのある皆が名前を呼んでくるが、目前に迫る槍に対して俺が出来るのは、素直に受けるか迎撃のみ。

避けようとしても間に合わないし、避ければ皆がやられる。

しかも流石の俺でもこの一撃を受ければ、凄まじく痛いし一瞬で再生するのは難しいだろう。

光以外の一撃ならともかく、光の影響で再生力は落ちる。

ならば、ここで俺がやるべきなのは・・・。

 

「700---ッ!?」

 

さらに力を引き出して迎撃しようとした俺だが、ここに来て初めて驚愕する。

なんと、迫ってきた槍が目の前で消失したのだ。

コカビエルがわざとフェイントでもしてきたのかと思って見るが、コカビエルもまた驚愕している。

俺も驚愕している。

まるで初めからそこになかったかのように、何も無かったかのように、消えていた。

 

「何が、起きた・・・ッ!?貴様、何をした!?」

 

俺が聞きたい。

そう思っていると、ふと、ふわり、そういった優しい風が吹き、俺の視界には()()()()()が映っていた。

誰よりも、何よりも見たことのある髪で、綺麗で、見惚れてしまうくらいに儚げで美しい。

優しく女の子らしい良い匂いが鼻を突き抜け、俺の胸が僅かに高鳴る。

まさかと思って、視線を少し動かせば、ガントレットにプレートアーマーといった、この場には相応しい装備のようなものを着用しながらも、可愛らしい紫色のドレスを着た、俺が守りたいと願う少女---

 

「・・・ユー?」

 

「・・・・・・」

 

そう、いつもと何ら変わらない無表情で声を出さない、ただ儚げで美しい少女がいつの間にか俺の前方で佇んで、コカビエルを見上げていた。

いつの間にか、居たのだ。

 

「ようやく来たか、ユークリウッド・ヘルサイズゥ!!」

 

コカビエルが、喜々としてユーのことを叫ぶ。

それが、目的だった---いや、俺の正体を知って、目的となった者が現れたことに喜びを現しているのだろう。

すると、1テンポ遅れてコカビエルが呼んだ名前に一誠とアーシアを除くみんなが驚愕する気配が感じられた。

 

「ユークリウッド・ヘルサイズ・・・!? 今の聞き間違いじゃ・・・」

 

「いえ、確かに言っておりましたわ。ですが、あのお方が何故この街に・・・!?」

 

「私でも聞いたことがある。教会のものどころか、悪魔や天使、堕天使すらも恐れ、魔王ですら、神ですら頭の上がらなかった存在が実在すると。

その者の名はユークリウッド・ヘルサイズ。またの名を、死を呼ぶ者と・・・!」

 

「死を、呼ぶ者・・・?」

 

「・・・それほどの力」

 

「その通り、彼女の力は凄まじいようだよ。

・・・それにしても、あの子がそうだったのか・・・」

 

やはりユーは有名人らしく、裏の世界で生きて居たものはみんな知っていたようだ。

こうなるとわかって居たから俺はユーに留守番を頼んだのに、何故・・・?

 

「ヘルサイズさんはそんな人じゃありません・・・! とてもお優しい方です!」

 

そう思っていると、アーシアが嬉しいことを言ってくれる。

ユーの能力は確かに死を呼ぶ力かもしれない---まあ俺は死んでるんだけど?

それでもユーが優しくて可愛くて天使なのに変わりはないし、死なんて呼ばない。

なんたって、ユーの脅威は全部俺が打ち払うって決めてるからな。

 

「・・・・・・」

 

「フフフ、まさか本当に出てくるとは。よほどそこの不死者(アンデッド)が大事ということかッ!」

 

ユーに向かって、コカビエルは全力であろう巨大な光の槍を投げつける。

それは物凄い速度でユーに向かっていた---

・・・は?

は?

は?

はー?

 

「700ぱー・・・ッ!」

 

全力で心の底から殺意が溢れたので、俺は槍を迎撃するためにユーの前に出ようとしたら、ユーは腕で俺を遮る。

俺がそのことに理解出来ずに視線を向ければ、ユーは可愛らしく小さく首を横に振る。

しかしユーに迫る槍は、このままでは刺さってしまう。

 

「んでっ!? ユー・・・!」

 

『大丈夫』

 

俺なら迎撃出来るのだが、ユーはそれをさせてくれず、思わず叫ぶ俺に対してユーはそのひとつのメモを見せ、槍がユーに刺さる---()()した。

 

「!? なんだと・・・!?」

 

「これは・・・」

 

間違いなく刺さるはずのコースだったのだが、俺ですら初めて見る---いや、俺が一緒に過ごすようになってからユーをずっと庇ってたから見たことないだけだった。

 

「なら、これはどうだ!」

 

巨大な光球を放つコカビエルだが、その攻撃ですらユーの体に当たる直前に消滅し、ユーはただ無表情でコカビエルを見ていた。

なんだ、ただの天使か・・・。

いや待て。待ちやがれ。

お前待ってろよ。ユーに攻撃したな?許さねぇわ。ぶっ潰す。

 

「ユー」

 

もしユーに傷が付いたらどうしてくれるんだ、とガチギレ寸前でユーの肩をそっと掴む。

すると、ユーは顔をこちらに向けて無表情で見つめてくる。

ちなみにコカビエルの攻撃は相変わらずあるのだが、やはりユーに直撃する前に消えていた。

 

「・・・」

 

ユーと視線が合う。

もう負ける気がしなくなった。

なので俺は首を横に振り、近接攻撃ならばと向かってくるコカビエルを見据えて、拳を握りしめるとユーを下がらせて立ちはだかる。

 

「ユー、守ってくれたのは助かったし、来てくれたのは嬉しい。でも---」

 

「貴様が来るか!いいだろう、全力で応えてやる!」

 

コカビエルが何かを言っているが、無視。

ただ翼による加速と同時に剣を突き出してくるコカビエルの攻撃を身を逸らすことで避け、俺は力を一気に解放する。

 

「これは俺の喧嘩なんだ---800パーセントォッ!!」

 

「ッ!? この力ッ・・・!?」

 

俺の攻撃に反応したコカビエルはかなり光の込められている槍を横にして盾にするが、俺は槍を砕きながらコカビエルの顔面を真正面から殴り飛ばす。

 

「ここまで力を使うのは久しぶりだけど、ユーが見てる中で負ける訳にはいかない」

 

腕を回しながら、俺は片手でレイトウマグロパイセンを持つ。

そしてそのまま歩いていこうとしたところで、後ろから服が摘まれる。

思わず振り向けば、ユーがひとつのメモを向けていた。

 

『かんばって』=【がんばって、おにいちゃん。おわったら、なんでもしてあげるよっ!】

 

「・・・・・・」

 

やばい、可愛すぎる。頬緩む。鼻血出てくる。死ぬ。

てか死んでもいい? あっ、死んでたわ。

ユーの応援という最強の補正(バフ)でやる気全開+体力スタミナ共に完全回復した俺はコカビエルに向かって駆け出した。

 

「カジキマグロセンパイ! ユーが応援してくれたんだ!

だったらこんなやつ倒せる力なんてひとつふたつ簡単に出せるだろ!いや、引き出せ、あんたならいける!俺とあんたならどんな壁だって、世界の流れを覆すことが出来る!こんなやつなんかに負けることなんてない!ドラゴンどころか魔王や()()すら超えられるだろ!俺は信じる!だからあんたも信じろ!

行くぞ、何がなんでも引き出せええぇぇ!! うぉらああああぁぁぁぁ!」

 

『ギョエー!』

 

俺の叫びに呼応するようにレイトウマグロパイセンが光輝く。

地面に着地し、すぐに刃と化した翼をコカビエルが放ってくるが、俺はその翼全てをカジキマグロセンパイで叩き、一気に潜り抜けた。

 

「速い・・・!だが、バカめっ!自ら死地に飛び込むか!? このまま俺の翼と槍で貴様を貫いて---」

 

「バカはお前だ! いいか、お前に一つだけ言ってやる!

コカビエル、お前の敗因はただ一つ、お前は俺を、怒らせた・・・ッ!」

 

「ッ!? 動か---」

 

そう、コカビエルはもう負けだ。

なぜならコカビエルの翼は全て()()()()()

俺が全て叩いた時から、徐々に凍っていたのだ。

さらにそれだけではなく、俺はもう片方の手でもうひとつの秘密兵器であり、隠しアイテム---

 

「お前の野望もここまでだッ!!」

 

「ぐっ・・・まだだ! 俺は戦争を続ける!ようやくここまで来たのだ!貴様などに止められてたまるかぁああああ!」

 

バールの形をしたなにか、名状しがたいバールのようなものを取り出し、バールのようなものでコカビエルの槍を吹き飛ばす。

だがコカビエルは動けないはずなのに強引に高密度の剣を作り出して振り下ろしてきた。

その事実に、執念深さに驚くが、俺はカジキマグロセンパイ---いや、本来の武器名が脳裏に流れてきていた。

これはただのレイトウマグロじゃなく、その一段階強くなったレイトウ本マグロだ。

俺はそのレイトウ本マグロで受け止め、800%の力で頭突きをすると、鼻血を出しながらコカビエルが後退した。

即座にバールのようなものとレイトウ本マグロを横にしながらコカビエルの腹に宛てがうと、俺は一気に切り裂き、脳天にバールのようなものを突き刺してから、さらにレイトウ本マグロで背中を叩き、通り抜けて止まる。

 

「決して弱くはなかった。でも、アーシアを泣かせたこと、俺を真剣にさせたこと、ユーに攻撃したこと---それらがなければ、少なくとも先輩たちは負けていただろうな」

 

レイトウ本マグロに血は着いてないが、血を払うようにブンっと振ると俺はレイトウ本マグロをくるりと右手で時計回りに回転させつつ背中に収めた。

 

「ば、馬鹿な・・・見事だ・・・。これが、 死霊使い(ネクロマンサー)の、下僕・・・か。楽しませて・・・もらった、ぞ。不死者(アンデッド)・・・」

 

その瞬間、コカビエルが血を噴き出しながら地面へと倒れただけではなく、全身が氷に覆われたのが後ろ目で見ていて分かった。

そして魔法陣のようなものが浮かび上がり、消失する。

 

「コカビエルか・・・一応言っておいてやる。俺の名前は神谷アユムだ。お前は人間からすればクソだが、実力はあった。それに武器を通じて、()()()()()()()()ように感じた。

普段は面倒で覚えないが、名前くらいは覚えとく」

 

聞こえてるか分からないがそれだけ言った俺はふぅ、と一息付き、コカビエルの死体---いや殺してないけど、踏まないように通り過ぎて、みんなの元へ戻ろうとする。

ユーのことは・・・まあ、説明するしかないよなあ・・・魔王様呼んだら解決してくれねえかなあ・・・。てか、さっきの魔法陣なんだよ。

よく分からないまま、やれやれ、とちょっと先の未来を見据え---

 

「やはり、面白いな」

 

ものっっすごく聞きたくない声が、聞こえた。その声の抑揚は心底楽しそうで、喜びに溢れている。

俺は声の先、空を見上げると校舎を覆っていた結界が割れ、空には本来の夜の世界が映し出される。

しかしそんな暗闇な空へ、一つの青い光が存在していた。

月をバックに、ラン○ロット・アル○オンみたいな白い全身鎧を纏い、各所に宝玉らしきものが埋め込まれていて、エナジーウィングのようにかっこいい光る八つの翼を広げる姿からは、コカビエルと同等か、それ以上の力を感じさせる。

 

『ヴァーリ。

白い龍、バニシング・ドラゴン』

 

「800%ッ!」

 

「ッ!?」

 

ユーのメモを見て、一誠やアーシアを除いて驚愕を顕にするが、俺はそんなことよりも心からの誓いに従い、跳躍と同時にヴァーリを一瞬で吹っ飛ばした。

 

「よし、すっきりッ!」

 

ゾンビ歴一年目くらいの頃に俺の腹に風穴空けやがって!

いつかやり返そうとは思っていたんだよ! 長年の恨みを思い知れ、俺はやられたことだけは忘れないんだ。

思わず着地してからガッツポーズをした。

 

「ハハハ---凄いな。我が神器(セイクリッド・ギア)白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)の能力のひとつは触れた者の力を十秒ごとに半分にさせ我が糧にする力だが---」

 

あー、なんか力が弱まった気がする。

まあゾンビだからこれくらい引き上げたら元に戻るんだけど。

 

「フッ、あの時よりも格段に強くなっている。

まさかコカビエルを倒すどころか、開幕俺が殴られてこれほどの一撃を受けるなんてな」

 

そう言いながら出てきたヴァーリの鎧は、砕けていた。

顔面を狙ったのだが、避けられたみたいで胸辺りの鎧が砕けていたが、再生した。

キレそう。このイケメンがッ・・・!

 

「是非とも戦いたいところだが、今日の目的は戦うことじゃなくてね」

 

「戦闘狂のくせに珍しいもんだな」

 

「そう言うな。俺はアザゼルに頼まれてコカビエルの回収に来ただけさ。なに、心配せずとも神谷アユム。

君の傍にユークリッド・ヘルサイズが居る限り、俺のライバルである赤龍帝が居る限り、俺たちは再び会える。

楽しみはその時に取っておくさ」

 

皮肉で言った発言なのだが、分かってなかったようで、俺としては出会いたくはなかったし男に興味はないから困る。

てか、来んな。こいつ相手するのクソ面倒なんだよな・・・ゾンビ歴一年目の時に散々経験したわちくしょう。

やばい、またイライラしてきた。イケメン顔が不細工になるまで殴りたい・・・!!

もしユーに近づいたらハゲにしてやろう。

 

「ああ、そうだった。フリードも回収しなければならないか。聞き出さないといけないこともある」

 

体が薄い氷の膜に覆われているコカビエルを肩に担ぎ、ヴァーリは思い出したかのようにフリードを腕に抱え込む。

どうやら本当に戦うつもりは無いらしく、俺も今回は見逃してやることにした。

 

「また会おう、神谷アユム」

 

「嫌だ」

 

「フッ」

 

全力で嫌そうな表情を浮かべたのだが、ヴァーリは気にしてないようで、ただ笑うと光の翼を展開して空へ飛び立とうとしていた。

 

『---無視か、白いの』

 

その時、一誠の腕にあるぶーすと!となる籠手の宝玉が点滅し、声が聞こえる。

 

『起きていたか、赤いの』

『せっかく出会ったのにこの状況ではな』

『いいさ、いずれ戦う運命だ。こういうこともある』

『しかし、白いの。以前のような敵意が伝わってこないが?』

『赤いの、そちらも敵意が段違いに低いじゃないか』

『お互い、戦い以外の興味対象があるということか』

『そういうことだ。こちらはしばらく独自に楽しませてもらうよ。たまには悪くないだろう? また会おう、ドライグ』

『それもまた一興か。じゃあな、アルビオン』

 

ヴァーリの翼もうっすらと点滅し、何やら翼と籠手が喋る魔界不思議空間が形成されていたが、俺はどういうことかと首を傾げると、いつの間にか俺の頭に乗ったウサギさんも首を傾げていた。

とりあえず知ってるかなと傍にいるユーに聞けば、神滅具(ロンギヌス)とかいうものに封印されたドラゴンの二匹が会話しているらしい。

へー。思ったよりどうでもいいや、俺に関係なさそう。

というかろんぬぎすってなんか聞いたことあるような・・・分からん。いっぱい戦ってたしそん時にでも聞いたのかな。

興味なさすぎて覚えてない。

 

「お、おい! お前は一体何者で、何をやってんだよ!?」

 

「全てを理解するには力が必要だ。俺の興味は今は別にあるが---強くなってくれよ、いずれ戦う俺の宿敵くん」

 

一瞬だけ俺に視線を送るような行動をしたヴァーリだが、俺は気の所為かと思い、目を合わせてはいけないと目を逸らした。

そしてヴァーリは白き閃光と化して、今度こそ何処かへと消えていった。

さて、とりあえず・・・ユーのことは後日ってことで帰らせてもらおう。うん、疲れたって言ったらいけるだろう。

だって俺がコカビエル倒したんだぜ?流石に文句はないだろう、うん。

ほら、お腹から(再生してるけど)血も出てる(付着してるだけ)し、うん、許してくれるよね!

言われたら逃げる。

 

「・・・終わったのか。いや、あの男の研究を引き継いだものがまだいる。まだ僕の戦いは---」

 

ゾンビ耳から聞こえ、俺は聖魔剣とやらを持つ木場を見る。

何か思うことでもあるのか、悩むように聖魔剣を見ていた。

 

「やったじゃねぇか、イケメン!」

 

「! イッセーくん・・・」

 

「へーそれが聖魔剣か。綺麗なもんだな」

 

「確かに白と黒とは、光と闇って感じで過去の記憶というかトラウマを抉られるな・・・」

 

「神谷くんまで・・・」

 

封印した記憶を打ち消し、俺はそそくさと気になっていた木場の聖魔剣を指で突くが、やはり聖剣と同じらしく、俺の指が焼けた。

アッツゥイ!

 

「イッセーくん、神谷くん、僕は---」

 

「ああ、何も言わなくていいよ。お前は目的を果たした、みんな無事だった、じゃあそれでいいじゃん。経緯なんてどうだっていいんだよ」

 

長くなりそうだし。

そんな話聞きたくないね、勝手にやってろ。

俺は一日中ずっと磔にされてたし流石に家に帰りたい。風呂にも入りたい。

臭いとか言われたら自害しかねん。死なんけど。

 

「そうそう、今は細かいのは言いっこなしだ。とりあえず一旦終了ってことでいいだろ? 聖剣もお前の同志たちのこともさ」

 

どうやら一誠も俺と同じらしいな・・・しかし一誠も一誠で何か思うところがあるような表情をしていた。

多分あれだろ、ヴァーリのことだろう。

分かるぞ、あいつに付きまとわれるととんでもなく厄介だからな・・・。

 

「・・・木場さん、また一緒に部活できますよね?」

 

「アーシアさん・・・」

 

そんなことを考えていたら、アーシアが心配そうに木場に訊いていた。

未だにショックは残ってるだろうに、本当に優しい子だ。

 

「それに、お怪我は大丈夫ですか?」

 

「ああ、大丈夫だよ」

 

アーシアの言葉にそう返す木場は前までとは違って、態度が柔らかくなった気がする。

もう復讐に囚われてないってことかな、と俺はユーの傍に戻ってその姿を見ながら思った。

そういえば、ウサギさんにも感謝しないとな。

アーシアを守ってくれたみたいだし、帰ったら人参をやろう。

 

「祐斗」

 

「部長・・・」

 

ウサギさんの頭を軽く撫でると、俺は無表情のユーを見て、僅かに表情を緩める。

うーんかわいい、間違いなく癒し成分出ていて、俺を回復してくれる。

そう思いながら木場の名前を呼ぶ先輩を見る。

 

「祐斗、よく帰ってきてくれたわ。それに禁手(バランス・ブレイカー)だなんて、主として誇らしい限りだわ」

 

「・・・部長、僕は・・・部員の皆に・・・。何よりも、一度命を救ってくれたあなたを裏切ってしまいました・・・。お詫びする言葉が見つかりません・・・」

 

優しく迎え入れるかのように笑顔で木場に声をかける先輩に対して、木場は騎士のようにひざまついて頭を垂れていた。

 

「でも、あなたは帰ってきてくれた。もう、それだけで十分。彼らの想いを無駄にしてはダメよ」

 

「部長・・・僕はここに改めて誓います。僕、木場祐斗はリアス・グレモリーの眷属---『騎士(ナイト)』として、あなたと仲間たちを終生お守りします」

 

「祐斗・・・ありがとう」  

 

先輩は木場を抱きしめるが、木場の誓いを立てる姿は、本当に騎士と主のような光景で、ルックスが高い二人がやると本当に物語にでも出てきそうな光景に見えた。

 

「こら、部長から離れろイケメン!俺だって、『騎士(ナイト)』になって部長を守りたかったんだぞ! でも、おまえ以外に部長の『騎士(ナイト)』を務まるやつがいねぇんだ。責任を持って、任務を完遂しやがれ!」

 

「うん、分かってるよ、イッセーくん」

 

嫉妬はしているようだが、木場のことを認めているようで、照れくさそうに言っていた。

俺はこういうところを見られたらホモ疑惑が増えるんだろうなーと他人事のように思っていると、僅かに目眩を感じる。

 

「・・・あ」

 

なんかやばいなーとやはり他人事のように思っていると、力が抜けて俺の体は前方に倒れる。

痛そうだなーと思いながら力の入らない体を察して諦めた。

 

「あ、アユムさん!?」

 

そのことに視界の近くに居たからか、アーシアが気づいたようで急いで駆け寄ってくるが、俺の体は地面に倒れる前に、受け止められていた。

 

『大丈夫?』

 

「うー・・・ん。これは、流石にキツイかな・・・」

 

「神谷くん・・・!まさか、あの時、コカビエルに刺された傷が・・・!?」

 

「い、今すぐ治療を!」

 

ユーが俺の体を受け止めてくれたらしいが、残念ながら力は入らない。

アーシアが傍に来て、その次に木場も来てからみんなが駆け寄ってくる。

どうやら原因を探って、その結果に行き着いたようだ。

アーシアは怪我が原因かと思って手を翳してくるが、俺は首を横に振る。

 

「いや・・・」

 

そして俺が木場の言葉を完全に否定する前に、ぐぅーっと俺の腹が鳴る。

さらに喉も乾きも凄まじく---ただの空腹と純粋な脱水症状だった。

そりゃ一日中何も食してないし飲んでもないからなぁ・・・結局全部吐いたせいで空腹の方が酷かったし。

くそっ、この状態で戦闘はキツかった。だから500%までしか使いたくなかったんだ、力を上げすぎると疲れるしその分腹が減る。

自分自身で原因を理解していると、みんなが目を点とさせ、復帰した一誠が口を開く。

 

「いや、ただの空腹かよ!?」

 

「ピザの宅配を頼む」

 

「なんでだよっ!」

 

流石ツッコミ要員。

俺の真剣な言葉にすらツッコミを入れるとは・・・でも割とガチめに何か食べたいんだけど。

今回はいつも一個はどこにでも持っていってるキノコがないんだよな・・・。

おのれよくも俺のキノコを。

 

「驚いたよ・・・君に何かあったのかと思ったじゃないか。君になにかあったら僕は・・・」

 

「おいバカ、やめろ」

 

凄い悪寒の感じるセリフを吐かれ、俺は頬を引き攣らせた。

しかし最悪だな、動けん。マジで腹減ったというか吐いたのが原因だった。

腹も痛いし、これ生肉食ったせいかもしれん。焼いたらいけるんじゃないかと吐気収まった後にも食ったら吐いたし。

傷は再生したんだけどね。てか、コカビエルにやられた傷なんてゾンビの俺からしたら大したことは無い---太陽がなければ。

 

「全く、貴方には驚かされることばかりね。まさかコカビエルを倒せるほど強かったなんて。

だからこそ聞きたいことがあるのだけど---特に、ユークリウッド・ヘルサイズ様について」

 

「・・・・・・」

 

来たかーと心の中でため息を俺は吐きながら沈黙を貫く。

しかし、俺に言われても分からない。そもそも俺ですら能力とか知ったの最近だからな・・・いや、聞かなかっただけだけど。

聞く必要がなかったし、学校が終わって、家に帰ったらユーがいる。

それだけで満足していたのだ。

 

『心配せずとも別に私は何もしない。それに近いうちにまた会うだろう。

ただ予め言っておくならば、私に目的はなく、この街に普通に滞在してるだけ。

信じるかはあなた次第。サーゼクスの妹』

 

「あー先輩。ユーのことどれだけ知ってるかは分かりませんけど、今日は帰らせてくれません?別にほら、何かするってわけでもないしそのつもりならもうしてるでしょう?」

 

ユーが肩を貸してくれるようで、俺の体を抱きながらユーは手を回してくれる---のはいいのだが、身長が合ってないので、猫背にしながら、リアス先輩にそう伝える。

しかしそうなるとユーと少し密着することになり、ドキッとしてしまう。

正面からだと俺が死んでた・・・。

 

「・・・そうね、それで大丈夫。危険がないかだけ聞けたら問題ないから。

第一、私なんかが口を出せるようなお方でもないわ。あなたに至っては正直私たちでは勝てなかったコカビエルを倒してくれたし、そのお礼とでも思って」

 

『私のことはいずれ話す時が来る。

その時には、話すかもしれない。少なくとも私とアユムのことを近々話せる場が出来るはず』

 

「そう・・・ですか、分かりました」

 

敬語を使うという珍しい先輩の姿を見てると、やはりユーは凄い人物なのだと実感させられる。

流石、魔王様相手にすら全ての中心と言われただけあるし、天使のように可愛すぎるぜ・・・。

 

『じゃあ、これで。

アーシア、手伝ってくれる?』

 

「あ、も、もちろんです! アユムさん、痛かったら言ってくださいね」

 

「あ、うん」

 

駆け寄ってくれたアーシアにもう片方の腕も回され、完全に両手が塞がってしまった。

めっちゃいい匂いするんだけど。

それに美少女二人に肩を借りる俺・・・うーん絵面的にはモブではない。

主人公のライバル役というか親友ポジだな。

そう思いながら、俺はウサギさんを頭に乗せながら帰ることを選ぶ。

 

「そうだわ、小猫。祐斗にはやらないと行けないことがあるし、ユークリウッド・ヘルサイズ様だけじゃなくてコカビエルを倒して消耗した神谷くんを狙う者もいるかもしれない。護衛してあげて」

 

「はい」

 

あ、雰囲気的に何か叱られるんだろうなーとまたまた他人事で考え、他人事でずっと考えてるな。

それはともかく、空腹で鳴る音に遠い目をしながら小猫ちゃんが後ろからついてきてるのが見え、俺はゆっくりとだがユーとアーシアの肩を借りながら帰るのだった---そういえば、俺の買った肉まん消えてね? あれ、俺の晩飯予定だったんだが。

 

『ギョ』

 

・・・どうやらいつの間にかレイトウ本マグロパイセンが食ったらしい。

俺の空腹はあんたのせいじゃん!いや、元はと言えばあの犬っころが悪いな!!

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに俺が壊した校舎は生徒会メンバーが登校時間になるまでには修復したらしく、俺は全然寝てない匙に壊してごめんね♪ドンマイ!と言ったら普通に一発殴られた。

解せぬ---それとどうやら俺のカジキマグロセンパイ、レイトウマグロパイセンだったのはレイトウ本マグロパイセンに進化したらしく、見た目は変わってないのだが性能が格段に上がっていた。

やったぜ。でも秘密兵器がコカビエルと一緒に回収されたのを思い出して、俺は後悔した。

あれ、唯一無二の何があっても壊れない武器だったんだけど。

俺の体が衝撃波だけで分解されたのに幼女の拳すら耐えたからな、アレ。

そのとき、幼女も驚いてたし。

 

 





他が苦労して覚醒させたり禁手に至るのに応援ただひとつでコカビエルとかいう普通なら序盤に出ない強さのやつをKOさせたり武器を進化させる変態がいるらしい

(前書き)いる?

  • いる
  • いらない
  • ユー可愛いし出番欲しいからいる
  • (本作の)他のキャラも欲しい
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