これはDxDですか?〜いいえ、ゾンビです   作:絆蛙

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『会談の日。今日はアユムとアーシアが通う学校へ行く。私は学校で過ごすアユムを知らない。私の知らないアユムが居て、私の知るアユムも居る。でも今日、ひとつだけ私の知らないアユムを知ることができる。会談の心配は必要ないだろう。私は彼らを知っている。何より私の傍には---』







第五話 トップ会談

 

 

 

 

翌日。

アユムたちとは別で朱乃さんに呼ばれた俺は神社に行くことになり、天使の幹部からあるものを譲り受けたり朱乃さんの家庭環境を知ったあと、ちょっと俺的に得なことが起きたが、今は帰ってきてアユムたちに相談していた。

 

「あ?剣を貰った?え、お前銃刀法違反って知ってる?」

 

どうしてコイツはテストの点数は俺とどっこいどっこいなのにそんなことを知ってるのだろうかと思ったが、ひとまず無視することにする。

 

「それがこれなんだ。来い、アスカロン!」

「スルーされたんだけど!」

 

アユムがまだ何か言ってるが、俺は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を呼び出すと籠手の先から刃が飛び出る。それに真っ先に反応したのはゼノヴィアだった。

 

「『アスカロン』だと!?かの聖ジョージが扱ったとされる龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)の聖剣じゃないか!何故イッセーがこれを!?」

「実は今日朱乃さんに連れられて行った先で天使長のミカエルさんに出会ってな。そこでこの剣を貰ったんだよ。何でも過去に一度三大勢力が手を結んだ切っ掛けとなった二天龍の俺への願掛けとか言ってたな」

 

何でも各陣営のトップが術式を施してくれたお陰で聖剣であり龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)という明らかに俺と相性最悪な武器もドラゴンの力があれば触れられるようにしてくれたらしい。

 

「それで?結局どうして欲しいんだよ」

「ああ、俺は剣を貰ったのはいいけど剣術なんてさっぱりだ。だから剣術を身につけるなら剣を扱うお前らに聞いた方がいいんじゃないかって思ったんだ」

 

木場は当然ながら得意だしゼノヴィアも聖剣を得意とする。

アユムは基本的には武器を使うより拳で戦うタイプみたいだけど、剣の扱いは素人目から見ても上手いと思う。

 

「いや、お前さ・・・無理だろ。俺の武器をなんだと思ってるんだよ」

「あ・・・そういやお前って・・・」

 

そうだった。

言われて気づいたが、こいつって剣じゃなくて魚。

カジキマグロで戦ってるんだよな。

・・・いや、だからカジキマグロで戦うってなんだよ。なんでそれで相手を斬れるんだよ。しかも何故か尖ってるところじゃなくて尾で攻撃してるし。それで斬れてるし。なんならコカビエルと普通に渡り合ってたし。

ずっと疑問だったけど、マジでこいつ意味不明すぎるだろ。

アユムの強さは目の当たりにして少しは知ったつもりだったけど、本当にそれだけはよく分からない。

 

「まあ普通の剣も使えないことは無いが俺は我流だし、教えるのは向いてないぞ。お前とは戦い方が違うしな」

「ふむ・・・鍛錬か。私から言わせてもらうと只管素振りと実戦あるのみだ!」

 

・・・俺、教えを乞う相手を間違えたのかもしれない。

アユムはまぁ、事実だから仕方がないにしても。まさか教会の戦士としてやってきたはずのゼノヴィアがこうなのはさすがに予想外だった。

教会で指導を受けたりしてるもんだと思ってたんだけど・・・。

 

「えっと・・・基礎なら僕が教えて上げられるよ」

「木場、本当か!?助かる! 」

 

指導役を頼んだはずなのに誰も居ないということに絶望しかけたが、まともな剣士がいてくれて良かったと俺は心から思った。

今日ほど木場が居てくれて良かったと思う日はないぜ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後はギャスパーの神器の特訓を行い、多少はマシになってきた次の日。

正直俺からすれば俺の目的のために早く扱えるようになって欲しいが、焦ったって仕方がない。地道に付き合って制御出来るようになってもらうしかないんだ。

 

「---さて、行くわよ」

 

そして今日は三大勢力の会談の日。会場となるのは駒王学園の新校舎にある職員会議室だ。

部室に集まるオカルト研究部の面々は部長の言葉に頷いた。

今日は休日で時間帯は深夜。普通の人間はもう校舎には残っていない時間帯で既に各陣営のトップたちは新校舎の休憩室で待機しているらしい。

そして、何よりもこの学園全体が強力な結界に囲まれ、誰もなかへ入れなくなっていた。もちろん、会談が終わるまで外にも出られない。

結界の外には、天使、堕天使、悪魔の軍勢がぐるりと囲んでいる。一触即発の空気だと木場は言っていた。

ちなみにだが、今この場にアユムとアーシアはいない。

なんでも人間のアーシアは悪魔としてカウントするわけには行かないし、アユムは別に悪魔に所属してるわけでもなく協力者としての立場だから三大勢力とは別として参加するとか。

そのため自身の主を連れてくると言って部室に来る前に去っていた。

けどアイツ、なんか妙に嬉しそうだったんだよな。やっぱり普段は掴みどころがないアイツも主に対する想いは強いのだろうか。

アユムの主・・・俺は話を多少聞いた程度でどんな人物かは知らない。ただコカビエルと戦ったときに現れた少女はなんというか、儚さを感じるというか・・・そう、まるで幻想的という言葉が誰よりも似合う感じがした。

 

「あ、あの・・・アユム先輩は・・・?」

 

ダンボールの中に入っているギャスパーが僅かに顔を出しながら周りを見渡すと、居ないことに気づいた時にはまたダンボールの中に隠れていた。

ギャスパーは神器が発動しても唯一動ける存在だからか、アユムが居ればダンボールから出てくるけど普段はこれだ。

共通点も多いからか、誰よりも懐いているらしい。

 

「彼は今別行動中なの。御免なさいねギャスパー。本当は連れていきたいけど、まだ力を制御できていない貴方がもし神器を発動させてしまったら大変な事になるから連れていけないのよ」

 

そう、ギャスパーは神器の扱いは最初に比べてマシにはなったが、完全に制御出来るようになったわけではない。

もしなんらかの拍子で邪魔をしたら大変なことになるから留守番だ。

 

「ギャスパー、携帯ゲーム機は置いておくからそれで遊んでもいいし、お菓子もあるから好きに食べていい。紙袋もここに置いとくからな。寂しくなったら何時でも被れ!」

「はいぃぃ!有難うございますイッセー先輩!」

 

ギャスパーの返事に頷いた俺は部屋を出ていった部長に続き、俺たちは新校舎の会議室に向かって歩いて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコン、と部長が会議室の扉をノックする。

 

「失礼します」

 

部長が扉を開け、続くように中に入る。

するとそこには、今回のトップ会談の為に持ち込んだであろう豪華な円卓と椅子が部屋の中央にあり、そこには既に見知った人たちが座っていた。

空気は静寂に包まれており、全員が真剣な面持ちだった。

あまりにもの緊張感に生唾を飲み込んでしまう。

 

悪魔側にはサーゼクスさま。レヴィアタンさま。それと給仕係のグレイフィアさんもいた。

天使側には頭の上に金色の輪を漂わせ、金色の羽を持つミカエルさんと知らない女の子の天使さん。ミカエルさんだけが違うのか、翼は真っ白だしすごい美少女だった。

堕天使側には黒い翼を十二枚生やしたアザゼル。そして---白い龍(バニシング・ドラゴン)ヴァーリ。

アザゼルは俺を視線に捉えると、愉快そうに口の端をあげていた。

てっきりヴァーリもなにかの反応があるかと思ったが、ヴァーリは目を閉じたまま俺の事など眼中になさそうだった。

余裕の現れだろう。悔しいが、今は気にすることが出来る状況ではない。

俺はそれより浴衣姿ではなく装飾の凝った黒いローブに視線が行く。

さすがにこの場ではいつもの浴衣ではないらしい。

サーゼクスさまも装飾が施された衣装だしレヴィアタンさまも以前と違ってちゃんとした服装だった。

 

「紹介しよう。私の妹と、その眷属達だ。先日のコカビエル襲撃で彼女達も活躍してくれた」

 

サーゼクス様が他の陣営の方に紹介してくれる。

部長も会釈していた。

 

「報告は受けています。コカビエル襲撃の件はありがとうございます」

「悪かったな、うちのもんが迷惑をかけた」

 

ミカエルさんが部長にお礼を告げ、アザゼルはあまり悪びれた様子もなく謝罪を告げるが、部長は冷静に振る舞って再度会釈するだけだ。

ただ何処か複雑そうなのは、どちらかと言えばそのお礼を受け取るべき相手はアユムだからなのかもしれない。

アザゼルの態度には口元をひくつさせていたけど。

でも結局俺たちはアユムが来るまで時間稼ぎしか出来なかった。倒せたのはアイツのお陰だったし、アイツの言葉がなければ神の死を知って全員が立ち上がれたかなんて分からなかっただろう。

 

「そこの席に座りなさい」

 

サーゼクス様の指示を受け、グレイフィアさんが俺たちを壁側に設置された椅子に促してくれる。

その席には先に座っていたソーナ会長がいて、その隣に部長が座る。その横に俺を座らせ、その後は朱乃さん、木場、ゼノヴィア、小猫ちゃんと続いて座った。

場所が壁際なのもあって見渡せたが、空いている席はまだ一つ残っている。

それにアユムやアーシアもまだ来てないようだった。

全員が集まらないと会談は始められない。

誰も話さないからか割と張り詰めた空気の中が漂うが、長時間いるのは辛い。

俺は早く来てくれとひたすら願うしかなく、十分くらい経った頃だろう。

トップたちが視線を扉の方へ移し、ずっと興味がなさそうだったヴァーリも口元を上げながら視線を向けていた。

俺達も釣られるように見るのと同時に、ノックする音が---

 

「しっつれいしまーす!」

 

聞こえず、勢いよく蹴り開けられた。

って、ぉおおおおい!?

俺たちが驚く中、開けられた扉にはアユムが右足を上げた状態で首を傾げており、僅かに背中にカジキマグロを背負ってるのが見える。

 

「あれ、遅刻?全員揃ってね?最後かぁ・・・いやセーフだな!」

 

色々とツッコミ満載だが、何やってんだよ!?

大事な会談でそんなことすれば---と思ったら、アザゼルの野郎はニヤニヤしてるしサーゼクスさまは笑ってるしレヴィアタンさまはにこやかだしミカエルさんは目を見開くだけで気にした様子はない。

それどころか張り詰めた空気が霧散している。

誰も取り乱したり動揺することもない。

これがトップ・・・!

 

「やあ」

「数日ぶりだね☆」

「お、魔王様とレヴィアたんじゃん。今回はちゃんとした服装なんだな」

「うん☆今回は私用じゃないからね」

「確かに似合ってはいたけど浮きそうだしな」

 

入ってきて早々、魔王さま相手に友人に接するかのように軽い様子で雑談するアユムに戦慄する。

こ、こいつの中に緊張感は存在するのか・・・?そもそもお前が既に浮いてんだよ!

 

「それでアユムくん。連れてきてくれたのかな?」

「あ、はい。ちょっと待ってください」

 

流石にいつまでも話す訳には行かないからか、サーゼクス様が話を切るとアユムは扉の外に戻り、一言二言話しているようだった。

何を言ってるかまでは聞こえなかったけど、何かを話したのは分かる。

そして再びアユムが入ってくると---

 

 

 

 

 

 

 

銀色の髪が靡く。

アユムの手にその人物は手を乗せ、エスコートをされるように入ってきたのは紫色のドレスに鋼色の兜とガントレット、アーマープレートを着用した人形のような少女だった。

表情は無表情だが瞳は引き込まれるほどに綺麗な青い瞳を持つ、物凄い美少女だ。

何かがあるわけでもないのに、この場の誰もが視線を奪われていた。

全員の視線が集中しているというのに、その少女はアユムに案内され、唯一空いていた椅子を机から出すようにアユムが引くと座っていた。

そしてアユムは少女の背後へ立ち、アーシアは緊張した面持ちでアユムの隣に立つ。

 

「さて、知らない者も居るだろう。まずそこにいる彼が私の友人であり、コカビエル襲撃の事件に終止符を打ってくれた者だ」

「え?俺が自己紹介する形?・・・神谷アユムっす」

 

サーゼクス様が代表して紹介すると、好奇心の目を向けられたアユムはやる気のなさそうな覇気のない声で自己紹介した。

 

「その隣に居るのがアーシア・アルジェント。そして---」

 

気にしていないのか流れるようにアーシアの紹介をし、アーシアは軽く頭を下げていた。

それから再び、この場にいる一人の少女に収束する。

 

「ユークリウッド・ヘルサイズ」

 

それがアユムの主の名前なのだろう。

トップの者たちは知っているようで、何処か懐かしそうな視線を向けている。

視線を集めてる少女は何処吹く風といった様子で、表情も無表情のままだった。

 

「久しぶりだね〜ヘルサイズちゃん☆」

「お久しぶりです」

「よう」

 

笑顔を浮かべるレヴィアタン様と、頭を下げるミカエルさん。アザゼルは片手を挙げるだけ。

そのように投げかけられた言葉に対し、ユークリウッド・ヘルサイズ様という方は何処からかメモを取り出していた。

なんでメモ?と一瞬思ったが、そういえば初めて会った時もメモだった。

 

『久しぶり』

 

そんなことを考えていたら、待つ暇すらなく魔法のように一瞬で言葉がメモに書かれており、突き出して見せている。

 

「では、全員が集まったところで此処に居る者たち全員は秘匿事項である『神の不在』を認知しているものとする。異論のある者は?」

 

サーゼクス様の言葉に当然と言うべきか誰も口を挟まない。

全員が理解して納得して、この場にいる。ただ会長も知っていたのは予想外だったけど、部長か姉のレヴィアタン様に聞いたのだろう。

 

「さて、このまま会談・・・へと行きたいところだが、気になってる者も多いだろう。彼女について軽く説明しておこうか」

 

いよいも会談が始まるかと思われたが、先に疑問を解消してくれるらしい。

確かに気になる。部長たちも知ってる情報は少ないらしいし、アユムとの関係性だってそうだ。

 

「ユー、いいのか?」

『かまわない』

 

すぐに確認を取るようにアユムが聞くと、即座にメモで返事が返ってくる。

珍しく複雑そうな表情でアユムが押し黙り、見守ることにしたのか一言も話すことはなくなった。

 

「彼女について簡単に説明するならば---」

 

そうして語られる、ユークリウッド・ヘルサイズ様の存在。

なんでも冥界出身ではあるが、悪魔の勢力としてではなく中立を貫いている。

権力的には魔王様以上で彼女の力がそれを認めさせるほどのものらしく、誰もそのことに異議を唱えることが出来なかったらしい。

そしてその正体は、『死霊使い』、『屍術師 』と呼ばれる、いわゆる死霊術士(ネクロマンサー)

悪魔や天使、堕天使、魔王や神ですら恐れるほどの力があり、裏の世界では『死を呼ぶ者』と呼ばれているとか。

何よりもこの世界において、()()()()()となるお方だと。

アユムは彼女の力で生き返り、今はゾンビとして生きている・・・と。

 

しかし・・・魔王様や神様ですら恐れる力ってなんだ?

そんなに強力ものなのか?

でもユークリウッド・ヘルサイズ様が居なきゃアユムは死んでいて俺たちとは会うことはなかったのか・・・。

 

「彼女は色々と特殊でね・・・彼女が彼女を足らしめる力として存在するのは、彼女の中にある()()()()()だ」

 

無限の魔力。

言葉で聞けば、それほど凄いと分かるものはない。

無限とは言葉の通り限りがないこと。つまり、限界がないことだと。

そしてその魔力は感情や言葉で運命の糸に干渉する能力を持っていると。

 

運命の糸に干渉・・・どういうことだ?

 

「分かるように言ってしまえばユークリウッドの力は現実を改変することが出来るってわけだ。言霊の力と感情が揺らぐと発動する力でな」

「もし彼女がここで私たちに対して消えるようにと口にしてしまえば私たちは消える、ということです。その他にも彼女が怒れば、それ相応の事象が起きるでしょう。それは嵐だろうと雷だろうと。隕石が落ちてくる可能性だってあります」

 

理解が出来なかったのは俺以外にも居たからか、アザゼルとミカエルさんが補足するように教えてくれる。

知っている者は何とも思ってないようだが、俺たちはそのことに驚愕する。

 

つまりやろうとすれば、この場の全員を殺すことが出来るほどに強い力があるということだ。

それどころか世界、次元といったものだって壊せるのかもしれない。

しかも言葉にするだけで。感情が動くだけで。

それは確かに・・・頭が上がらないよな。神や魔王ですら恐れる理由も分かる。アユムはそんな凄いお方の下僕なのか・・・。

そしてメモで話す理由はそれが原因ってことなんだな。感情を出さないのもそういうわけだったのか・・・。

 

「もう良くないですか、それ以上話す必要はないでしょ」

 

黙っていたアユムが割り込むようにして喋る。

無表情で、何の感情も乗せてない声で。

あまりにも別人のようで、不思議と体の芯が冷えるような錯覚すら覚えてしまう。

アユムの目は誰もが敵と識別しているみたいに冷たい。

 

「うんうん、今の説明でヘルサイズちゃんの凄さは十分伝わっただろうしね☆」

「ああ、彼女の話を全てやるには時間が少なすぎる。本題が逸れてしまうからね。改めて会談を始めよう」

 

それが原因か、それともいつまでも会談に入れないからか魔王様は会談の開始を告げると同時についに始まる。

けれど俺は、さっきのアユムの様子が妙に頭から離れず、正直ユークリウッド・ヘルサイズ様の話だけで頭がパンクしそうなほどに大きすぎるスケールだったので、その後に小難しい話をされても全くついて行けなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・以上が私、リアス・グレモリーとその眷属が関与した事件の全容です」

「私、ソーナ・シトリーも彼女の説明に偽りが無い事を証言いたします」

「ご苦労。下がってくれ」

 

部長と生徒会長によってあらましが語られ、会談が本格的に動いていく。

質問を答えている間、部長は緊張しているようだった。

当たり前だ、歴史に残るかも知らないと言われるほどの会談。

緊張してるのはだれもが同じ---じゃないか。

唯一、アユムだけが退屈そうに欠伸している。こいつもういらないんじゃないだろうか。そもそも緊張って存在してるのか?

 

「それでは、今の報告を受けて堕天使総督殿の意見を伺いたい」

「意見も何も先日の事件はコカビエルが単独で行ったものだ。だから最悪の事態が起きないように白龍皇に頼んだわけだが---その前にそこで退屈そうにしてる神谷アユムが片付けちまったわけさ。その後は組織の軍法会議でコカビエルの刑は執行された。『地獄の最下層(コキュートス)』で永久冷凍の刑だ。その辺りの説明はこの間転送した資料に全て書いてあったろう?それで全部だ」

「説明としては最低の部類ですね。しかしあなた個人が我々と大きな事を構えたくないという話は知っています。それは本当なのでしょう?」

 

ミカエルさんの問いに、アザゼルが当然だとばかりに答える。

 

「ああ、俺は戦争になんて全く興味ねぇよ。コカビエルも散々俺の事こきおろしてくれてたみたいだしな」

 

それは確かに、と聞いていて思った。

コカビエルは自分たちのボスだろうに、かなり悪く言っていた。

すると今度はサーゼクス様がアザゼルに訊く。

 

「アザゼル。ひとつ訊きたいのだが、ここ数十年の間、神器所有者をかき集めている? 我々や天界に戦争をけしかけるための戦力増強を図ってるのかと予想していたのだが・・・」

「そうですね。『白い龍』までも手に入れたと聞いた時は強い警戒心を抱いたのですが、あなたはいつまで経っても仕掛けて来なかった」

 

ミカエルさんもサーゼクス様と同様の意見だったようだが、二人の意見を聞いたアザゼルは苦笑する。

 

「神器の研究のためさ。なんだったら研究の資料も一部くらいくれてやろうか?  ってか、研究していても戦争なんざしかけねぇよ。俺は今の世界に十分満足している。部下に『人間界の政治にまで手を出すな』と強く言い渡してるくらいだぜ?宗教にも介入するつもりはねえし、悪魔の業界にも影響を及ぼすつもりはねえよ---ったく、俺の信用は三すくみの中でも最低かよ」

「それはそうだ」

「そうですね」

「その通りね☆」

 

サーゼクス様、ミカエルさん、レヴィアタン様の意見が見事一致していた。

あまりにも信用されてなさすぎて流石に同情の念が湧いてくる。

でも正直起きた問題は堕天使ばかりだったからな・・・。

 

「チッ、神や先代ルシファー達よりもマシかとかと思ったが、おまえらもおまえらで面倒くさいやつらだ。コソコソと研究するのもこれ以上性に合わねぇか。なら和平を結ぼうじゃねえか。元々そのつもりで来たんだろう?お前らもよ」

 

和平って、平和を共に願うってことだよな。

アザゼルの一言によって各陣営は少しの間、驚きに包まれていた。

隣の部長やその隣の生徒会まで相当驚愕している。なんの反応も示していないのは変わらず無表情で緑茶を飲んでいるユークリウッド・ヘルサイズ様とアユムとアーシアくらいだ。

ただみんなが驚いていたのはこいつから提示されるとは・・・みたいな感じだった。

あんまり情勢に詳しくない俺でも1つの勢力のボスがそう発言するということがどれだけ大きい意味を持つのかぐらいは分かるつもりだ。

 

「ええ、私も悪魔側と堕天使側に和平を持ちかける予定でした。このまま三すくみの関係を続けても、何の得も無い。天使の長である私が言うのもなんですが---戦争の大本である神と魔王は消滅したのですから」

 

アザゼルの一言に驚いていたミカエルがそう告げると、アザゼルがその言葉に噴き出して笑う。

 

「言う様になったじゃねぇか。あの堅物なミカエルさまがよ。神、神、神と、狂信していたのにな」

「・・・失ったものは大きくとも、悲しんだから戻ってくる訳ではありません。過去ではなく今を見据え、信者達を導いていくのが我らの使命です。

神の子らを見守り、先導するのが一番大事なことだと、私は思います。セラフの者たちも同じ意見です」

「おいおい、その発言は『堕ちる』ぜ? ---と、思ったが、システムはお前が受け継いだんだったな。俺らが『堕ちた』頃とは違う。全く羨ましいぜ」

 

専門用語ばかりがあまり分からないが、サーゼクス様も同調する様に頷く。

 

「我ら悪魔も同じだ。魔王がいなくとも、種を存続させる為には先へと進む必要がある。我らは戦争を望まない---次の戦争が始まれば、悪魔は滅ぶ」

「そうだ。次に戦争をすれば、三すくみは仲良く共倒れになっちまう。そして、人間界へと多大な影響を及ぼし、世界は滅ぶ。俺らはもう、戦争を起こせない」

 

おちゃらけた雰囲気だったアザゼルが、真剣な様子で話し出す。

 

「神がいない世界は間違いだと思うか? 神がいない世界は衰退すると思うか? 残念ながら世界はそうじゃなかった。俺もお前達も、今こうやって元気に生きている」

 

アザゼルはステージ上に役者が視線を集めるように大袈裟に腕を広げながら、言った。

 

「---神がいなくても、世界は回るのさ」

 

その言葉だけは、俺も何となくわかった。

神がいなくても俺はこの世界で生きていた。ほかの人たちだって同じだろう。

その後、会談は各勢力の戦力や勢力図の事を話しあっていた。

先ほどよりも緊張が若干弱まっていて、だれも戦争を起こす気がないと分かったからなのかもしれない。

 

「---と、こんなところだろうか?」

 

サーゼクス様の一言で、三大勢力のお偉い方々が大きく息を吐いていた。

どうやら一通り終わったらしい。だいたい一時間くらいだが、もっと長く感じる。

俺はこういうの苦手だし、動いてる方がマシだ。

あと聞く気すらなく立ちながら寝てるアユムの度胸が凄い。途中から理解出来ずに見てたけど、校長先生の話を聞いてる時みたいな感じだったんだけど。

 

 

「さて、と。そろそろ俺達以外の世界へ影響を及ぼしそうな奴らの意見を聞こうか。無敵のドラゴン様にな。まずはヴァーリ、お前はどうしたい?」

「俺は強い奴と戦えればそれで良い」

 

アザゼルの問いに、ヴァーリはにべも無く答える。本当にそれ以外には望んでいないといった様子だ。

ただその瞳がアユムに向いていたのは、気のせいではないだろう。

今度はアザゼルの視線が俺に向いて、僅かに緊張が走る。

「戦争はしなくたって強いやつはごまんといるだろうさ---次はお前だ、赤龍帝。お前はどうしたい?」

 

やはりと言うべきか、俺にも訊かれた。

でもあまり分からない俺は頬を掻きながら答える。

 

「正直いきなりそんな小難しいことを言われても分からないというか、実感が沸かないというか・・・」

「だったら恐ろしいほど噛み砕いて説明してやるよ。兵藤一誠、俺らが戦争してたらリアス・グレモリーは抱けないぞ?」

 

なん・・・だと・・・ッ!?

 

「だが、和平を結べばその後大事になるのは種の繁栄と存続だ」

「種の・・・繁栄!?」

「おうよ、毎日リアス・グレモリーと子作りに励むことができるかもしれん。和平なら毎日子作り。戦争なら子作りなし。どうだ? わかりやすいだろう?」

 

俺は会談に参加して初めて、アザゼルの言語が心の底から理解出来た。

そうか、平和なら部長とエッチしまくれるんだ!いや、俺って出来る立場なのか?そんな関係じゃないよな?

でも!でも平和が続けばいつかはできるかもしれない!

 

「和平!和平最高!和平でお願いします! ええ!平和が一番です! 部長とエッチしたいです!」

 

俺は欲望のままに叫んだ。

部長が隣に居ようがお構いなく叫ぶと、隣の部長が顔を真っ赤に上気させていた。

 

「イッセーくん、サーゼクス様がおられるんだよ?」

 

木場が苦笑しながら言ってきて、遅れて気づく。

し、しまった!反射して答えてしまった!

サーゼクス様は小さく笑っていたが、空気も凍ってる気がする!

ま、真面目な話を・・・!

 

「と、とにかく俺の力は部長や仲間たちの為にしか使いません! これは絶対です!」

 

今更意味があるかまでは分からないが、これだけは俺の本音だった。

ドラゴンの力がどれほど強力かなんて、散々言われてきたからよく分かっているつもりだ。

だからこそアザゼルも二天龍を宿す俺とヴァーリに聞いたのだろう。

 

「そうかい。そんじゃ、最後はお前さん方だ。ユークリウッド、そして神谷アユム。お前らは世界をどうしたい?」

 

退屈そうにしていたアユムや先程から何も変わってないユークリウッド・ヘルサイズ様に視線が集う。

いや、関係の無いアーシアが緊張ではらはらしているんだけど・・・。

 

「あ?ユーは分かるが、俺もか?」

「自分がやったことを考えれば当然だろう?それに俺らが和平を結ぼうと、お前らの影響力は大きすぎる。 もしお前らが和平を断ればどうなるかなんて一目同然だ」

 

確かに、ユークリウッド・ヘルサイズ様のことはあんまり知らないけど、聞いていただけでもその力は最強だと思った。

ゲームなら完全にチートだろう。

魔王様や神ですら恐れていたのだから、ドラゴン以上に影響があるのかも。

 

今まで以上に緊張が走る中アザゼルの問いかけに、ユークリウッド・ヘルサイズ様は湯呑みを置くと、メモ用紙を突き出していた。

 

『どの勢力にも肩入れするつもりはない』

「だろうな」

「それは私たちも理解しているよ」

「うん、それがヘルサイズちゃんの意志だしね」

「簡単に均衡が崩れるでしょうから、そう判断したというのは皆分かっております」

 

悪魔や天使や堕天使・・・といった三大勢力の中には入らないってことだろうか。

ただそれはトップの方たちも分かっていたらしい。

正直こればかりは俺も分かる。均衡を保っていた勢力のひとつが大きな力を持つ者を持てば、簡単に崩れ去る。

ただもし、ここで和平を結ぶのも拒否されれば---白紙になるかも。

 

『でも和平は賛成する。迷惑をかけないなら、後は好きにすればいい』

 

が、そんなのは杞憂だったらしい。

そのひとつのメモだけで、緊張が一気に晴れた気がする。

だがまだ一人、答えを出てない者がいて、アユムに視線が集まる。

 

「となると・・・後はお前だけだな」

「待て、なんで俺が最後なんだよ、緊張するだろ。俺は正直どうなろうとユーの日常を壊さないならどうだっていい。そんなわへーなんて興味ないし・・・ただ一つだけ、条件はあるけど。あーでもユーが賛成してるのにトップでもなんでもない俺が言っていいのか?」

 

緊張感も欠けらも無い態度で言っても説得力は皆無なのだが、アユムが言う条件が、もしかしたら全てを変える可能性がある・・・。

でも流石にアユムでも発言していいのか分からずに、困った様子だった。

 

「条件だと?」

「今は君も会談に参加しているようなものだ」

「ええ、納得せず結んでも崩れてしまう可能性があります」

「そうだよ。アユムくんも言いたいことがあるなら言っちゃって!」

 

そんなアユムにトップの方々は許可をしていて、アユムが最後にユークリウッド・ヘルサイズ様を見ると、彼女は頷いていた。

全員に許可を貰ったからか、アユムはだらしない態度から真剣な様子へ変わり、口を開く。

 

「無関係な一般人や人間を巻き込まないでください。それだけです」

 

さっきと違って、敬語を使ってアユムが発言していた。

もっと別のことだと思っていたのか、一本取られたように目を瞬きさせている。

正直、俺もびっくりした。

 

「実際被害は出た。そこの一誠も元々は無関係な・・・普通を生きるはずだった人間だ。いくら神器が宿っていたとしても、自ら突っ込んだわけじゃあない。過ぎたことはどうしようもないけど、和平を結ぶってんならこれから先は別だろ。それにこっちにはアーシアがいるんだ。もし傷つけようものなら---」

 

一度区切りを置いたアユムが、殺意に近いものをこの場で全員に向けていた。

 

「俺は三大勢力が相手だろうと敵に回してぶちのめす。無論、ユーに手を出せば問答無用だけどな」

「ちょっ---」

 

その発言に、だれもが鋭い目を向ける。

流石の放っておけない発言に、部長が声を出そうとして、何とか抑え込んでいた。

一触触発な雰囲気でなければ口を開いていただろう。

これに関してはアーシアも知らなかったようで、驚いてアユムを見ている。

和平を結ぶっていう場なのに、それとは真逆のようなことを言ったんだ。

俺も焦った、今も焦ってる。

おいおい、何考えてるんだ・・・!?戦争でもする気か!?

 

まさか敵意すら剥き出しにする予想外の姿に、俺たちは冷や汗を掻く。

それどころかアユムの発言を聞いてトップの方々から威圧、とも敵意とも言えるのか。それらが発せられていて、まとめて引き受けても、アユムは身を竦むこともなく変わらない様子だ。

もしこれがきっかけで和平が成り立たずに無駄になったら---

 

「---ぷっ」

「・・・おん?」

 

今まで以上の緊張が場を占めていると、突如噴き出すような声と同時に、笑い声が挙がった。

怪訝そうにアユムが視線を送ると---アザゼルが笑っていた。

 

「アザゼル・・・」

「く、ははははは!いやー悪い悪い」

「ああ?やる気か、おん?やる気か、ああん!?ひあぶらっ!?」

 

---流石にやりすぎだったのか。

ユークリウッド・ヘルサイズ様にアユムが頬を引っ張られていた。

変な声を挙げるアユムはともかく、笑い出したアザゼルにサーゼクス様は呆れたように呼んで、ミカエルさんとレヴィアタン様は苦笑していた。

一瞬で緊張が消えている。

 

「ったく、面白いやつだ。なるほどな、レイナーレが言っていたのはやはりお前のことか。まさかこの場で、そんなことを抜かすなんてな。本当に敵に回すかもしれねぇんだぞ?」

「ふぁったらふっほばすだへは」

「すまん、何言ってるか分からん」

 

なんだか久しぶりに名前を聞いた人物がアザゼルの口から出てきたような気がするが、こっちは気にする余裕がなさすぎる。

胃がキリキリするとはこのことか・・・と思いつつ注目していると、そこまで強くはされてなかったらしく、抜け出したアユムが気を取り直して、頭を搔くと再び口を開く。

 

「まあ敵に回すってのは冗談・・・半分、いや一割、いや0%くらいはそうですけど。その覚悟はあるってことです」

「それ結局本気ってことだからな?・・・まぁ、俺としては反対する理由はねぇよ」

「それは我々天使も同様です。教会を管理するものとしても」

「無論私たちもね。妹の学友を傷つけるなんて以ての外さ」

「うんうん!でもアユムくん。そうするとヘルサイズちゃんを困らせるような立場にしちゃうんだからね。気をつけなきゃダメだぞ☆」

「あ、確かに・・・あざっす、レヴィアたん!」

「分かればいいの、いい子いい子☆」

「ふっ、ユーが困るならするわけにはいかないからな!!!」

 

多分それが、ここに来て一番感情の籠った発言だったと思う。

とにかく危機が去ったのもあって、息を吐く俺たち---なんで俺らがこんな気苦労しているのだろうか。

 

「あ、魔王さま。まだ発言いいですか?」

「ん?何かな?」

 

おい、まだ何かあるのかよ!?

余計なこと言わないのか危惧する中、許可を貰ったアユムがサーゼクス様やアザゼル---ではなくミカエルさんを見ていた。

 

「すみません、えーと名前覚えるの苦手なんで名前知らないんですが・・・天使の人に聞きたいことあるんですけど」

「おや、私ですか?」

 

何をしでかすか分からないのがアユムだ。

いや歴史上の人物とか覚えるの得意じゃない俺ですらトップの方々の名前を覚えてるんだから名前くらいは覚えろよ、とは思ったけど。

 

「なんでアーシアを追放したんですか?アーシアは神を信仰していた。追放された後も」

「っ!?」

 

アーシアを追放したのは教会だ。

つまり天使側、だからアユムはその事を聞いたのだろう。

やっぱりこいつ、何を考えてるか分からないけど・・・こういうところはちゃんとするんだな。

 

「それに関しては申し訳ありませんとしか言えません。神が消滅した後『システム』だけが残りました。加護と慈悲と奇跡を司る力と言い換えてもいいでしょう。この“システム”は悪魔祓いや十字架などの聖具に効果をもたらす力があります。ですが、今は私を中心にかろうじて起動させている状況です。故に、『システム』に悪影響を与えるものは遠ざける必要があったのです」

「それが、アーシアの持つ悪魔や堕天使---俺のような不死ですら癒す力か」

「はい。信徒の中に悪魔や堕天使を回復できる者がいると周囲に知られれば、信仰に影響を与えます。信仰は我ら天界に住まう者の源。信仰に悪影響を与える要素は極力排除するしかありませんでした。それと、信仰に影響を及ぼす例は他にもあり---」

「予期せず神の不在を知る者も、システムに悪影響を及ぼす恐れがあるから、排除の必要があったのですね」

 

今まで聞いていただけのゼノヴィアが、言葉を遮って問いかけていた。

一方で話を聞いていたアユムは何処か引っかかったのか不満そうな表情ではあるが、事情があると分かったからか口出しする様子は無い。

 

「ええ。デュランダル使いであるゼノヴィアを失うことはこちらとしても痛手ですが、熾天使(セラフ)と一部の上級天使以外で神の不在を知ってしまった者がシステムに近づけば悪影響を及ぼし、維持が出来なくなってしまう。

だからこそアーシア・アルジェントもゼノヴィアも異端とするしかなかったのです。私の力不足で彼女達には辛い目に遭わせてしまい、申し訳ございません」

 

そう言いながら、ミカエルさんはアーシアとゼノヴィアに頭を下げる。

その行動に全員が驚愕していた。天使のトップが下級悪魔と人間に頭を下げているんだから、当然か。

当の二人も目を丸くしており、反応に困っているようだ。アユムですら何も言えなくなっている。

しかし、ゼノヴィアは首を横に振って微笑む。

 

「頭をお上げください、ミカエル様。長年、教会に育てられた身。理不尽も感じましたが、理由を知ればどうということはありません。多少の後悔もありましたが、教会に仕えていた頃にはできなかったこと、封じていたことが現在私の日常を彩ってくれたのです。他の信徒には申し訳ないですが、私は悪魔としての生活に満足しています」

 

ゼノヴィアは俺たちとの生活をそんなふうに感じてくれたのか。

普段は天然というか、世間知らずというか、かなり浮世離れしすぎてるところもあるけど、やっぱり悪い子じゃないよな。

ゼノヴィアに続き、アーシアも手を組みながら言う。

 

「ミカエルさま。私も今が幸せだと感じております。追放されてなければ私はアユムさんやヘルサイズさんに出会えなかったかもしれません。大切なものは全部、アユムさんや皆さんがくださいました。教会を離れてアユムさんや皆さんに出会えたからこそ、私はこうしてアユムさんのお傍に居られますから」

 

それはきっと気休めでもなくアーシアの本音なのだろう。

実際にアーシアはアユムと一緒にいることに幸せを感じているようだ。傍から見てても分かるくらい好意を向けてるくらいで、それを分かってないのはアユムくらいだ。

しかしミカエルさんはアーシアとゼノヴィアの言葉に安堵の表情を見せていた。

 

「あなた達の寛大な心に感謝します。デュランダルもゼノヴィアにお任せしましょう。そして神谷アユム、貴方に感謝を」

「いや俺は別に。まぁ、そっちにも事情があるって分かったんで・・・今回は引いておきます」

「そういえばうちの部下も騙して殺そうとしてたんだったか。許せとは言わないが、反省していたよ」

「レイナーレだったか・・・よく分からんけど、力を欲してたみたいだった。今思えばさ、人間ですら特訓するんだから堕天使だけで訓練とかすれば良かったのでは?あと謝るなら一誠・・・はいいや。アーシアにしてくれ」

 

おい、俺はいいってなんだよ!?

た、確かに悪魔になったからこそ、ってのはあるけど、俺も同じく殺されたんだけど!?

こいつ俺に対する扱いだけ酷すぎるだろ!

 

「力を欲するものはどこにもいるもんだ。ああ、でも安心しろ。あいつは罪を償うために自ら進んで無償で奉仕活動をしていた。やったことは消せないから、それ以上に誰かのためになることをするってよ。しかも俺に対して躊躇い無く額を地面に擦りつけたんだぜ?大した実力もなくプライドだけが無駄に高いやつだと事前に報告を受けていたんだがな。

その理由を聞いてみたら果たしたい約束があるから、それを果たすまでどんな罰も受けるから命だけは助けて欲しい、とさ」

「へえ、やっぱりやり直せるタイプだったか」

「みたいだな。元々神器には興味はあったようだから今は助手をさせているが、いい働きをしてくれている。

聞いたときは驚いたぜ、簡単に人の在り方を変えちまうような『魔法』を使えるやつがいるとはな」

「・・・?そんなやつもいるのか。世界は広いな」

 

それは間違いなくアユムのことだと思うんだけど、なんで分かってないのか不思議でしかねぇよ。

でもそうか、もう俺が知るレイナーレとは違うのか?正直今もたまに夢で見るけど・・・向き合う時が来るのかもしれない。

でもアユムの本当の強さは実力なんかじゃなくて、その心。誰かに手を伸ばそうとする力なのかもな。

コカビエル戦で見せた実力ならばアーシアを助ける時だって余裕だったはずだ。でも本気でやれば相手を殺すから加減していた・・・ コカビエル相手にも戦闘不能にしただけで殺そうとはしてなかったし、むしろ敬意を払っていた。

敵ですら手を伸ばせる、強さ。

そして時に必要な時があれば、躊躇なく倒す強さ。

遥かに高みにいるということを改めて知らされたようで、俺は無意識に拳を強く握っていた。

俺はこいつのような強さが、無い。倒そうとするので精一杯で、相手の心まで気遣う余裕なんてないのに。

こいつはきっと、自分がやられた相手でも手を伸ばそうとするんだろう。

俺にはそんな強さは持てないと思うけど、せめて仲間を守れる強さを。アユムの隣に並べるような強さは持ちたいと、思った---

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそんなことを考えていた俺は妙な感覚を感じた。

 





(投稿)おっひさ〜!
原作、いつ読んでもガバガバすぎないですかね、会談。多分魔王とか集まるとか大丈夫やろ、みたいな感じでしょうけど、なぜ護衛も残さずに置いていくのか。アニメでは小猫ちゃん居た気がするけど。
にしても相変わらず一誠視点だと真面目になる。

レイナーレは多分もうすぐ出る。多分セラみたいな感じの立場になるんじゃないでしょうか。
なんというか、あんまり違和感なさそうだし。昔の俺は何考えて生存させたのだろう、いやアユムが勝手にやったから悪い(理不尽)

ちなみに主人公は元々が人間なのでどちらかと言えば人間の味方です。サーゼクス様やアザゼル、ミカエルさんたちの返答次第ではマジで三大勢力敵に回す可能性もありました。
というか(周囲の主人公に対する評価)高くなぁい?トップ会談にすらカジキマグロ背負ってるゾンビだぞ・・・?

語る程度ですが、主人公の(ユーと出会う前と出会った後の)過去

  • ちょうだい
  • いらない
  • 女装しろ
  • それよりはよイチャイチャしろ
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