Qなんてないんだ!
本当はブライダル期間中に出すはずだった……なので途中で放置して突貫で仕上げたので、最後は雑になっちゃった。許して……。
「テレビの前の皆さんこんにちは。半月ぶり帰ってきましたよ!」
「あの人何言ってんだ。CM明けただけなのに」
「さあ? きっと大人の都合でしょ」
カメラが回り始めた途端に司会が頓珍漢なこと言うが、そんなことを知らんぷりで番組は進んでいく。
「先程はタマモクロスの話題でしたが、今度はトレーナーさんのチームに踏み込んで行きますよ!」
「……」
「あなた何か言いなさいよ」
無言なトレーナーに思わずハナがツッコミを入れる。番組的には無言というのは一番つまらない反応ということもあり、彼女はそういう所を理解しているようだ。
「いやさ……何が来ても一番被害を被るのは俺じゃん」
「だからスキャンダルなんでしょ」
「ちくしょう。ギャラに釣られて出るんじゃなかった」
「さあさあ、暗い顔はそこまでです。それでは行ってみましょう!」
ドドン!
効果音が鳴ってモニターに写真が表示された。
そこはどこかの遊園地だろうか。周りに遊具があり、多くの来場客で賑わっている。ちゃんとプライバシーに配慮しているのか、要であるトレーナーと一緒にいるウマ娘以外にはモザイクがちゃんとかかっていた。
「ふぅ~ん。カレンチャンとデートね」
「カレンチャンと言えば、ウマスタグラマーで有名な『Curren』として広く知られていますね! おっと、早速ウマッターでこの話題が盛り上がってます!」
ウマスタグラムにおいて300万のフォロワーをもつカレンだ。一瞬にしてトレンド入りすることなど造作もないこと。
しかし、その肝心のトレーナーは特に焦る様子もなく冷静であった。
「そう言えばあなた、カレンチャンをどうやってスカウトしたのよ? ウマスタで有名なのは私でも知ってたけど、学園に来た当初は誰もあの子の能力は知らないのに」
「え、スカウトしてないよ」
「は? じゃあなに。あなたの
「そうだよ。たまたま校門で会って、まあ……色々あって俺のチームに入ったわけ。そういえばカレンは俺のチームで唯一のスプリンターなんだよなあ」
「その色々の部分が気になるところですが、やっぱりこれはデートですか!?」
話しがやや脱線していたので司会が話題を戻す。写真はどうやら一枚だけではなく、腕を組んで歩いている二人や、遊具で遊んでいる写真もあった。
「デートっていえばデートなのかな。俺は毎回保護者の気分で付き添ってたけど」
「それ、本人の前で言ったら絶対に怒られるわよ……あ、これ生放送か」
「ちょっと待ってください。今、毎回って言いました?」
「え? あーうん。カレンとよく行くんだよ。なんでも思い出の場所だからーって。俺はあんまりいい思い出ないんだけど」
「と、言いますと?」
司会にそう言われて本当に嫌そうな顔をするトレーナーであるが、スタッフがカンペに『言え!』と力強く訴えていたので、彼は渋々話をすることにした。
「若い頃に付き合ってた彼女に振られたんですよ、そこの遊園地で」
「あら。あなたもそういう時代があったんだ」
「そりゃあね」
「ですが、なんで当時付き合っていた彼女に振られたんですか? トレーナーさんってモテる方ですよね」
「モテてるとは思ってないです。まあなんで振られたか本当に覚えてないんですよ。振られるちょっと前まで、迷子だった子供と一緒にその子の親御さんを探してただけなんだけど」
するとハナの眼鏡がキラーンと光ったように見え、彼女は彼に聞いた。
「その子供って女の子?」
「そうだけど、よく分かったな」
「あ、ふーん」
「女性ってそういうことでちょっとムカッとしたりするんですか?」
「まあ人それぞれじゃないかしら」
「はあ……? とりあえずトレンド1位取ったことですし、オチもそこまで面白くないので次に行きましょうか」
「やっぱりあなたってロリコンなわけ?」
「違うが!」
一方トレセン学園。
カレンチャンがトレーナーとデートしている写真が出ると、ライスシャワーが隣にいるその本人に向けて目を大きく開いていた。何となくだが、目から蒼い炎が出ているような気がしなくもない。
「たまに連絡が取れないと思ったらカレンちゃん、私を置いてお兄さまとデートしてたの……?」
「ごめんねライスちゃん! やっぱりカレンもお兄ちゃんと二人っきりでデートしたい時があるの。ごめんね、てへぺろ」
「う、裏切り者ぉおおお!」
一体どこに隠し持っていたのか。勝負服に付いている装飾である短剣を取り出し、カレンに襲い掛かるライス。しかし、それをミホノブルボンが簡単に取り押さえた。
「落ち着いてくださいライスさん」
「離してくださいブルボンさん!」
「まあまあ見てください。カレンさんはデートのようですが、マスターは違うみたいですよ」
『え?』
思わずライスだけではなくカレンも声を揃えてテレビの方を見た。
『デートっていえばデートなのかな。俺は毎回保護者の気分で付き添ってたけど』
それを聞いたライスは隠すことなく、カレンの目の前で笑って見せた。
「クスクス。滑稽だね、カレンちゃん」
「お兄ちゃんのばかぁああああ!!」
「それに……ほら、また何か言ってるよ」
「え!?」
『なんでも思い出の場所だからーって。俺はあんまりいい思い出ないんだけど』
まさかの告白にカレンはがっくしとその場に膝をついてしまう。そんな彼女を見てライスは嘲笑うように見下していた。
しかし──
『若い頃に付き合ってた彼女に振られたんですよ、そこの遊園地で』
『……え、彼女?』
これまたとんでもない新情報にライスとカレンだけではなく、その場にいた多くのウマ娘が食いついた。
ただ、昔の話なのでそこまで盛り上がる話じゃないのだが……。
「トレーナーを振るなんて、見る目がない女だね」
「本当にそうですよね。おじさま程素敵な男性はいないのに」
「やれやれ。別れてくれて助かるよ。彼の匂いに不純物が混じるのはイヤだからね」
と、一部のウマ娘達は元カノに酷い評価を与えていた。
一方、落ち込んでいるカレンの耳に重大な言葉が聞こえてきた。
『──振られるちょっと前まで、迷子だった子供と一緒にその子の親御さんを探してただけなんだけど』
『その子供って女の子?』
『そうだけど、よく分かったな』
「……え、ちょっと待って」
『はあ……? とりあえずトレンド1位取ったことですし、オチもそこまで面白くないので次に行きましょうか』
トレーナーの話しをもっと聞きたいのに、司会が切り上げてしまった。
カレンは自分のイメージなどとうに捨て、まるでひと昔のドラマのようにテレビを激しくゆすり始めた。
「ちょっと! その話をもっと詳しく聞いてよ!! お願いだからぁああああ!!!」
残念ながらカレンの願い叶わず、場面が再び切り替わった。
「さて、次はスタッフが独占入手した写真を公開したいと思います」
ドドン!
モニターに写真が表示された。それの写真にスタジオが騒然した。
そこにはウエディングドレスを身に纏ったライスシャワーと、モーニングコートを纏ったトレーナーの二人が並んだ写真だ。
つまりそれは結婚式で撮るような写真で、二人は本当に新郎新婦に見えなくもない。
しかもドンドン写真が切り替わる。二人で歩いている写真や、彼がライスを抱っこというか抱きかかえている写真が出てくる。
それを見たハナがもう何度目か分からないあの言葉を送った。
「やっぱりロリコンなんでしょ」
「違うよ。これ仕事で撮ったんだよ」
「あなた、仕事って付ければ何でも許されると思ってない?」
「だって本当のことだし。ていうかこれさ、明日発売予定のブライダル雑誌の一部だろ。怒られないのかよ」
「大丈夫です! 宣伝を兼ねてあちらから許可を頂きましたので! そうですよね、ロールバトーさん」
何故彼女に聞くのかとトレーナーは一瞬思ったが、元々その仕事はアイツの仕事だったとトレーナーは思い出してロールバトーを睨んだ。
そのロールバトーは笑顔で明日発売するであろう雑誌をポンと出した。表紙はもちろん彼女であった。
「そうなんですよ。こちら明日発売の『UMA Wedding』にあちらのライスと私を含めた数名の方と今回お仕事をさせてもらいました! 他にもおすすめの式場や流行なども特集していますよ」
「ほう。やっぱりロールバトーさんも誰かと写真を撮ったりしたのですか?」
「それは是非買っていただいてご自身の目で確かめてください。今回はなんともれなく私のサイン入りポスターを限定1名様にプレゼントする
「……ただの宣伝じゃねぇか」
「まあまあ。ところでトレーナーさん。どうしてライスさんが参加しているんですか? 決して似合っていないというわけではありませんよ」
宣伝タイムが終わったのか、司会がようやく本題に話を戻し始めた。トレーナーは呆れながらもそれに答え始めた。
「相手からの希望がライスにピッタリだったんですよ」
「と、いいますと?」
「ウマ娘で、身長が低い子で、ドレスが似合いそうな子」
「あの子の勝負服もドレスみたいなものだから適任よね」
「そうそう」
「だからってなんであなたまで着てるのよ」
「背が高くて宣材に丁度いいって言われたから」
「ほんとかなぁ」
と司会がトレーナーの顔を覗き込むように探りを入れるが、彼にそういった小細工は通用しない。
ただ内心。
(知らない男と撮るのはヤダって言ってたなんて言えねぇし……)
一方トレセン学園。
「……ライスちゃん、なんで一人だけウエディングドレスなんて着てるの? しかもお兄ちゃんとだなんて……」
先程とは一転、今度はライスがカレンの立場になって彼女にマウントを取っている。しかも今回ばかりはカレンだけではなく、他のチームのメンバーもライスに向けて漆黒の殺意を向けていた。
「別にライスじゃなくて、お兄さまが『お前がいい』って言ってくれたんだもん」
「ちょっと誇張しすぎじゃないかなってカレン思うな!」
髪を撫でながら言うその仕草は明らかに挑発あるいは彼女たちを煽っている。いつもは控えめで一歩引いたところにいる彼女であるが、ここぞとばかりに今は誰よりも先頭を走っていた。
「でもさ、結婚前にウエディングドレス着ると婚期が遅れるっていうよね」
「そうだよね」
「……でも、お兄さまと一緒に着れる機会なんてこの先きっと一人だけなんだから、別に悪いことばかりじゃないってライスは思うの」
『ぐぎぎ……』
「それにね、ライスとお兄さまが着た衣装は専用に作ってあるからって特別に貰えたの! やっぱりウエディングドレスは女の子の憧れだから嬉しいなって」
「ですが、マスターはそこまで考えてないと思いますよ」
「へ?」
ブルボンに言われてテレビを見れば、
『相手からの希望がライスにピッタリだったんですよ』
『と、いいますと?』
『ウマ娘で、身長が低い子で、ドレスが似合いそうな子』
お相手であるトレーナーは本当に深く考えていないのだが、ライスはライスで意外と余裕があった。
「ま、まあ、カレンちゃんよりはマシだから……」
「ライスちゃんさっきからカレンに当たり強くないかな!?」
「先に裏切ったのはカレンちゃんの方でしょ!」
「別に先に出たのがカレンってだけだもん!」
「ライスはつい最近だから違うもん!」
『うりゃあああ!!』
ポコポコと互いに痛くない程度に殴り合う二人。
これは彼のチームではよくあることで、特に珍しいことではない。誰が言ったか、『争いは同じレベルの者同士でしか発生しない』とはまさにこのことである。
「えー、謎の意思によりこれが最後のコーナーです。トレーナーさん覚悟はいいですか?」
「ねーなんで俺ばっかりなんだよ。ハナちゃんのスキャンダルとか出せよ」
「私は別に彼氏とかいないし」
「自分で言ってて悲しくならないんですか」
「うっさいわね!」
放送時間が終わりに近づいているのか、司会はいよいよ締めにかかっていた。話題の張本人であるトレーナーの顔は、もう早く帰りたそうにしているのが嫌でもわかる。
生放送なのだから少しぐらい我慢しろと言う所だが、こうも自分ばかりが標的にされては面白くはない。
「トレーナーさん、単刀直入に聞きますよ。ズバリ、あなたのチームで一番将来が楽しみなウマ娘は誰ですか!」
「……質問の意味がわからんのだが。それってレースでってこと?」」
「いえいえ。普通に一人の女性としてです」
「……それ言ったら絶対今日学園に帰れないパターンじゃん」
「言っちゃえば楽になりますよ~」
先程から大人しかったロールバトーがここに来て再びトレーナーを煽り始め、それに続くように司会もハナも声を合わせて言っちゃえコールを送っていた。
トレーナーは少しだけ思案していると、その口を開いて言った。
「……スペシャルウィーク?」
「ふぇ、わ、私ですか?」
まさか自分の名前が出るとは思わなかったのか、スぺは口に入れていたニンジンスティックをこぼしてしまった。
そして誰よりも早く彼女──サイレンススズカが動いた。
「スぺちゃん?ちょっと向こうでお話しよっか?」
「えぇええ!? わ、私関係ありませんよ、スズカさん!」
と、スぺは当然の反論をするが、
『なんでスペシャルウィークなんですか?』
『え? だって、一番なんかいい女になりそうな雰囲気あると思うんだけど』
『あー私わかるかも。男の子って、意外とスペシャルウィークみたいな子が好みだと思うのよね」
『そうそう。そんな感じなんだよな。いい意味でスぺはモテると思ってるのよ、俺』
自分の評価とは裏腹に、周りの評価はかなり好印象でその本人もビックリ。そして肝心のトレーナーが言うので周りのみんなもビックリ。
「スぺちゃんて意外とスタイルいいよね」
「ですわね」
テイオーとマックイーンが恨めしそうにスぺを見ながら言った。特に胸を見て。それに気づいたスぺは思わず胸を隠して顔を真っ赤にした。
「やっぱり胸なの……。私だって修正されなかったらあったんだもん……」
「うぅ……ライスも修正されないかな……」
『……(勝った)』
無いものを悲しむ者、有るものを優越している者、共通しているのはそれが直接彼にとってあまり関係ないということである。
そんな中で、テレビの向こうでは最後の質問をトレーナーは問いかけられていた。
『トレーナーさん、最後の質問です。あなたがいま一番気になっているウマ娘は誰ですか!』
『それって、俺のチーム内でってこと?』
『いえ。別に他のチームの方でも大丈夫ですよ』
『じゃあ──』
「ちょっと待って。じゃあって何よ。じゃあって」
誰が言ったか、テレビの向こうでトレーナーが言った言葉に反応した者がいた。つまりそれは、自分達以外に気になっている子がいるということを示していた。
聞きたいけど、聞きたくない。そう思っても彼女達はどうしたってテレビの画面から目を離せないでいた。
そして、それは告げられた。
『チームカノープスのマチカネタンホイザ』
「え、私? いやぁ照れますなぁ」
少し離れた所でそれを見ていたマチカネタンホイザは照れながら言うが、彼女は自身に注がれている恐ろしい視線に気づいていなかった。それに気づいたチームカノープスの面々はスッとカフェテリアの出入口まで下がっている。
「あれ?みんなどうしたの?」
後ろ後ろと言わんばかりに彼女は振り向けば、彼のチームのウマ娘に包囲されていた。
「あ、あれ? みなさんちょっと目が怖いなーって…………」
『ちなみにどうしてマチカネタンホイザなんですか?』
『なんか、すごく頑張ってる姿に目が離せないっていうか、応援したくなるっていうか。とても守ってあげたくなるんですよ。あと自分が知っている中で数少ない癒し系ってヤツですね』
「ふーん。守られ女子ってやつか」
「癒し系だってさ」
「トレーナーも贅沢だね。こんなにも近くにたくさんいるのにさ」
「いやあ、別にみなさんが思ってるほど、私トレーナーさんと関わりなんて──」
『ちなみに面識とかあるんですか』
『数回程度ですかね。怪我をしたあの子にハンカチをあげたぐらいだったかな』
「──!」
『逃げたぞ、追え!』
マチカネタンホイザは逃げた。自分がそれを認めていると分かっても逃げるしかなかった。例え、出口まで逃げきれなくてもそうするしか選択肢がなかったのだ。
恋をするのに理由なんていらない。あるのはいつだってキッカケだけで十分なのだ。
『それではみなさん、本日はこれでお終いです。またいつかお会いしましょう! トレーナーさんが生きているのを信じて!』
『ザッケンナコラァッ!』
終わり。
雑でごめんなさい。
だけどこれだけは言う。
もうカフェと喫茶店開いてマチカネタンホイザーにお店のマスコットとして働いてもらえばいいんじゃないかな。
俺さマチカネタンホイザ好きなんだけど。お前、どう?
ちなみに。
ロールバトーのポスターはトレーナーくんの家にあります。