私はいま、彼の運転する車の助手席に座りながら東京に向かっている。目的地は都内にある病院で、私達はこれから生まれてくる孫の顔を見に向かっているんです。
「まさか本当にウマ娘が生まれるなんて。まだ信じられませんね」
「ばあちゃんが聞いたらきっとすごく喜んだだろうさ」
「ええ」
結婚して早30年。おばあさまは玄孫を見れること叶わず、数年前に旅立ちました。ですがその代わりと言わんばかりか、おかあさまがおばあさまのようにはしゃいでいて。もちろん私もその報告は涙が出るほど嬉しかったです。
「やっぱり、自分が生みたかったって思ってるのか?」
「正直に言えばそうね。でもそれはそれ。あの子たちが私達の夢を叶えてくれて、とても嬉しいもの」
「そうだね。名前は考えたのか?」
「はい」
孫の名前を私が決めていいと、息子夫婦が言ってくださって。だから私の……メジロ家の名前を与えるつもりでいます。
「将来が楽しみだけど、その時まで生きていられるかな」
「もう何を弱気でいるんですか。イヤでも生きるつもりでしょうに」
「あはは」
ウマ娘は比較的年を取っても若く見えるといいます。だから私も歳の割にはまだまだ若い方でしょうね。
でも、彼は違う。もう60を過ぎて、もう少しで70に迫ると言ったところ。けど常日頃からトレーニングをしているから、筋肉は衰えてないしまだまだ若い方だ。
「それにしても早いわね。あの子が大きくなって、気づけば結婚して、子供ができて」
「お前も老けるわけだよな」
「あ・な・た~」
「大丈夫だよ。お前はまだ若く見える」
「褒めてますの!?」
「当然」
「もう」
結婚して年を取っても、こういうことは互いに変わらなかった。年を取るのもまた一つの楽しみなんて誰かが言うけれども、やっぱり肌の皺はちょっと気になりますもの。
こういう時は女性より男性の方が前向きで羨ましいと思ってしますわ。
それから私達は病院について、二人がいる病室に向かった。エレベーターに乗って目的の階で降りる。途中歩いていた看護師に道を尋ねてようやく病室近くまで辿り着いた。
すると、何やら赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。
「あらあら。元気な子ですね」
「さてと。誰に似てるかな」
病室の扉を開けると、泣いている赤ん坊をあやそうと必死に頑張っている息子と、それを見て笑っている彼女がいました。
「あ、おとうさんにおかあさん。来てくださったんですね」
「はい。よく頑張りましたね」
「父さんに母さん。ほ、ほら、抱いてあげてよ」
「まあなんてカワイイ子なんでしょう。あなたもこんな感じだったのよ」
「そうなの?」
「あー多分な」
「ひでぇー」
写真では知っていたけれど、生まれたばかりのウマ娘をこうして生で見るのは初めてでした。まだ小さな耳に尻尾があって、産毛も人間と比べると多く生えているほうで、綺麗な芦毛なウマ娘でした。
でも、一番驚いたのは私に抱かれるといきなり泣き止んで笑っているんです。
「キャッキャ」
「あら笑いましたわね」
「俺達の時はずっと泣いてたんぜ。なあ?」
「そうなんですよ。元気なのはいいんですけど、中々泣き止まなくて」
「そんなことないですよねー」
「アー!」
「ほら」
確かに先程とはまるで違って今はとても笑っている。言葉もなんだか伝わっているような気がしなくもない。
「父さんも抱いてあげてよ」
「お、おう……お前の時より緊張するな」
「もっと息子を可愛がってくれよ」
私から彼に赤ん坊を渡すと、この子は私の時以上にはしゃいでいた。ふと彼の顔を見ると、何かを思い出したかのように目を大きく開いて、私の方を見て言いました。
「──ゴールドシップ。この子の名前はゴールドシップだ」
「……あなた?」
「ごめんな。でも、この子にピッタリの名前だと思わないか」
そう言われてまた赤ん坊を見て……すごく嬉しそうに喜んでいた。
そして私はその名前を聞いて、ふと何かを思い出したような気がしたんです。
「え、いいの母さん? 名前は母さんが決めるって」
「いいんです。何より……ゴールドシップが一番それを望んでいるみたいだから」
彼と一緒にゴールドシップを抱きかかえながら、私はふとある言葉を口にしていた。
「やっと会えましたね」
「ああ。本当に……長かったよ」
『……?』
私達の言葉を理解できない二人は互いに首を傾げている。申し訳ないとは思ってしまうけど、こればかりは私と彼だけにしか理解できないこと。
そして彼は、
「ありがとう、ゴールドシップ」
Fin
・このゴルシ(幼)は本編のゴルシとは別の存在です(違いと言っても原案とアニメとゲームとぱかチューブの差ぐらい)
・本当はもっとホラーぽくするつもりで、トレーナーがおかしくなるエンドだった。