ダンジョンでモンスターマスターを目指すのはきっと間違っていないはずだ。 作:珊瑚宮出身イマジン
これも全て仕事ってやつが悪いんだ…(某草加がやらかすBGM)
無事恩恵を刻むことができたベルは、アストレアからの「じゃあ次は、ギルドに冒険者登録をしに行きましょう」という一言によってアストレアとともにギルドへと向かうことになった。
父を探すという目的のためには、どうしたってダンジョンに潜らなければならない。
そのために冒険者登録が必要不可欠なことはベルも理解していたため、これに了承した。
ちなみにアリーゼたち他の団員は、全員がスライムに夢中で動こうともしなかったため動向しなかった。
「なんだかすみませんアストレア様…結果的にとはいえ、一緒に来てもらうことになるなんて」
「ふふっ、いいのいいの。それに、こうして誰かを頼るというのも大事なことだから、今のうちに覚えておきなさい。」
「誰かを頼ること…?」
「ええ」
そういったことがありギルドへ向かう最中、唐突に謝るベルにアストレアはそう言った。
どういうことですか?と首を傾げながら聞くベルにアストレアは歩みを進めつつも速度を少し落としながら丁寧に答えていく。
曰く、冒険者は恩恵をもらった後その自身の力に溺れ、なんでも1人でできると思い込んでしまう者が少なくない。
それ故、誰かに頼るということを無意識のうちに忘れてしまう。
そうしていくうちに、いつの間にかダンジョンで人知れず帰ってこなくなることもあるという。
「貴方がこうなるって決めつけているわけじゃないのよ。でも、貴方にはこれを先に教えておかなきゃいけないと思ったの」
これは私の勘なんだけどね、と先程までの淑やかなそれとはまるで違う、不安な気持ちを無理矢理自身の中に押し込めているかのようなどこかぎこちない表情でベルを見ながら、アストレアはそう言う。
そしてギルドへと向かっていた足を止め、同じく足を止めつつも突然の停止に疑問を持つベルの手を優しくそっと掴み目線をベルに合わせるように腰を落としながら、アストレアはベルに聞く。
「もし貴方が…ベルが困るようなことや辛いことがあったら、私やアリーゼ達、それか他の誰かでもいいの、とにかく1人で抱えずに頼ってくれるかしら…?」
先程よりも一層何かを懸念しているかのような憂わしげな表情で見上げるようにベルを見るアストレアの姿に、ベルは少し…いやかなりドキドキしているのか顔だけでなく胸が熱くなるのを感じていたが、心臓の鼓動を抑えつつすぐに切り替え、覚悟の決まったような引き締まった表情に変えてアストレアに宣言するようにはっきりと答える。
「…はい!困ったら周りに、アストレア様やアリーゼさん達皆を頼るようにします!」
「ええ、その調子よ」
その答えを聞きアストレアは目を見開いた後、安堵の表情を浮かべながら相槌の言葉と共に優しくベルの頭を撫でたのだった。
なおその一連の様子は大通りで行われていたこともあり、通行人を始めとしたアストレアに密かに声をかけようとしていた連中や神々に意図せずとも見せつけるような絵面になっていたため、ギルドでの登録を終えてホームに戻るまでベルは妬みや殺意の籠った視線を向けられていたのは別の話。
「久しぶりのダンジョン!ふふん!よーし、私頑張っちゃおうかな!」
「おいおい、今回はベルの付き添いだろ?目的を忘れるなよ…」
「私達も来て正解でしたね…アリーゼだけにしていたらどうなってたことか」
「一応僕もいるんだけどな〜…あ、でもガイドで以外であんまりいられないから仕方ないか…」
「え、えっと…よろしく、お願いします…」
そんなこんなで無事に冒険者登録を終えたベル。
ギルドから支給されたナイフを携えて、ホームにてなんだかあれやこれやと色々な話が進んではベルのダンジョン探索に同伴する者として着いて来ることになった
着いた途端にアリーゼのこの発言のため、ライラとリューは一緒に来てよかったと内心安堵しつつ返事をしていた。その雰囲気にまだ慣れていない1人と一匹はやや置いてけぼりだったが。
彼女たちがこうしてベルに同伴していた理由は先達冒険者として教えつつ実践するため…というわけではなく──そうであっても教えれることは少ないかもしれないが──、ダンジョンに入る前ホームでのわたぼうの発言にあった。
『そうそう、ダンジョン内でもう1つ専用のダンジョンに潜ってもらうから、念入りの準備をしておいたほうがいいよ』
これを聞いた一同は驚愕した。
それも無理ないだろう。ダンジョンの中で更に別のダンジョンに潜るなど恐らく後にも先にもない上に、そもそもそのような話を聞いたことがない。
話していた時の軽いノリから見てわたぼうにとっては然程大きな意味を持たなかったのかもしれないこの発言は、【アストレア・ファミリア】の面々にとっては決して無視できぬ言葉だった。
それを聞いたアストレアは思考し、どの程度の規模かもわからない、そもそも何があるか全くわからない、だが抗争時よりは危険が減ったとはいえ巡回をしないというわけにもいかないためファミリア全員では難しいという結論に行き着き、結果的に何かあった時の指示を行えるアリーゼ、団員の中でも特に知恵が回り機転が利くライラ、もしもの時の回復魔法とファミリア随一の敏捷を持つリューの3人を同伴させるという判断を伝えて現在に至った。
だが、1階層であってもダンジョンはダンジョン。
そうこうしていると近くの壁からボコッという音がなり、直後にそこから人型でありつつも狼のような顔や体の特徴も持つ人狼とでも言うべきモンスターが現れた。
コボルトである。
ギルドにおいてレベル1にカテゴライズされているそのモンスターは、同じく1階層から出現する最弱とされている子鬼のモンスターのゴブリンに次いで弱いとされているが、ゴブリンと違って獰猛さや鋭い爪や牙を持っているため初心者冒険者にとっては十分脅威なのだ。
そんなコボルトを見かけたアリーゼは、気づかれてないことを確認してベルに声をかける。
「ねえベル、あそこのコボルト倒せる?」
「はい!余裕です!」
問いかけられたベルはコボルトを一瞥して、アリーゼの方に向き直ってから自信満々といった様子で答えた。
おお〜、頑張れ〜!というアリーゼの気の抜けるような応援にあはは…と苦笑しつつも、ベルはナイフを鞘から抜いてそれを逆手持ちにし、そのまま真っ直ぐと向かってコボルトが気づかぬ程の瞬足で一瞬にして間合いを詰めてそのまま綺麗なまでにコボルトの首を両断した。
コボルトは声も出せぬまま、コトンと紫紺の魔石を残して体が灰になって消えていった。
初心者で、しかもつい先程まで冒険者ではなかったはずのベルのいっそ鮮やかとも言えるような狩りにアリーゼ達は目を見開く。
「す、凄いねベル…何かやってたの?」
「はい?」
コボルトを倒し終えて、これが魔石…と魔石を拾って観察していたベルにアリーゼは好奇心と驚愕を混ぜ合わせた複雑な表情でそう問いかけた。
ベルはなんのことかわからず一瞬キョトンとしていたが、少し経って理解したのかその問いかけに答えた。
「…よく、お父さんのモンスターと戦って鍛えてましたから。」
おとうさんの?とオウム返ししながら首を傾げるアリーゼ達をおいて、ベルははい、と答えてからそのまま言葉を続ける。
「やばかったですよ…鍛錬のはずなのにトゲトゲの鉄球がついた武器と剣を持った宙に浮いてる機械に徹底的に痛めつけられたり、全身が文字通り宝石で真っ白で不気味なモンスターに数え切れないくらい刺し殺されそうになったり…」
「あ、あのー…ベル?ベルさーん…?」「おーい…?」
「他にも大きな人型の瓦礫の集合体みたいなモンスターの攻撃を避け続けたり、大剣とボウガン構えてる機械に延々と追いかけられたり「も、もうわかったから!大丈夫だから!!」そ、そうですか…?」
その赤目から光を失っていきながらももはや恨み言のように述べていくベルに、このまま延々と続きそうだと察したアリーゼ達は慌てて話を中断させる。
最初はちょっとした好奇心や興味で聞いたはずのことが、気づけばもはや第一級冒険者である彼女たちですらも想像がつかない地獄なんて言葉すら生温く感じる内容が次々とベルの口から出てきてしまえばそれも無理はなかった。
(ベルのおとうさんって…実は超鬼畜なサディストだったのかしら…!?)
(ふっつーにベルが可哀想だな…ってか機械系のモンスターばっかり挙げてたが、なんか意味あるのか…?)
(クラネルさん…よく生きてこれましたね…)
こんなに純粋で良い子なベルの親なんだから、きっと似てるのね!などと密かに考えていたアリーゼの脳内での紳士の如く爽やかなイメージが、音を立てて崩れたのであった。
ライラは同情しつつも気になる部分について考え込み、リューはもはや憐情と共になんとも言えない複雑な表情を見せている始末だった。
そんなこんなで各々がそれぞれの反応をしつつも進んでいると、突然ベルがつけている指輪が光り始めた。
それ自体は以前のような然程強いものではなかったものの、今回は点滅するかのようにチカチカと光り続けていた。
「なんだろう、これ…」
「それはもう1つのダンジョンの入り口に導いてくれる光だよ」
「うおぉ!?」
疑問に思ったベルの言葉に合わせるように、どこからともなく現れたわたぼうがそう答えた。
突然の出現にベルは驚くが、わたぼうはそれを気にも留めず話し続ける。
「言ったでしょ?もう1つダンジョンに潜ってもらうって。道案内するからおいで!」
そう言いつつふわふわと先に進んでいくわたぼうに話しかける間もなく、一行は慌てて追いかけるのだった…。
書いてないとこんなに下手くそになるんですね自分…w
それはさておき、今回も新モンスター適当に出しましたけど、どれが誰かわかったらすごいです!(多分本作で出番ないのも含まれてるかも)