ホロライブラバーズ『幸福論者』獲得RTA なんでもありチャート   作:かとしょう

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 だれか戦闘描写の仕方を教えて欲しいので初投稿です。


目指すべき場所

  場に気まずい空気が流れる。

 あれほどの大技を放ってもらっておいてなんだがあれは当たらないだろう。予備動作とチャージに時間がかかりすぎている。合計20秒はかかっていたぞ。当たれば倒せるロマン砲ってところだ。よほど弱っている相手なら当たるかもしれないが……、もしそれほど弱っているなら普通にとどめを刺せって話だ。

 

 「ロボ子さんそれ当てたことあるんですか」

 

 「いやー、えへへ」

 

 ないらしい。

 

 だが、あるいは完全な奇襲ならチャンスはある。エフェクトが激しく平地ならバレてしまうので障害物越しに位置を特定し打てば何とかなるのではないだろうか。

 

 「壁を挟んで打つとかどうですか?ロボ子さんならレーダーで相手の位置分かるでしょ?」

 

 「どうもレーダーの範囲内だと音と光でバレちゃうんだよね」

 

 「粗大ごみの日っていつですか?」

 

 「ひどい!!」

 

 奇襲性ゼロのロマン技って使えるだけの一発芸だろ。

 

 「もう先ほどの二人みたいに上から敵を強襲したらどうです?その重さで潰せば威力も上だし虚をつけますよ」

 

 「実はボクのこと嫌いなの?」

 

 「まさか。信頼してますよ」

 

 「好きか嫌いかで答えよ」

 

 若干メンヘラくさいことを言ってきた。

 

 ロボ子さんは放っておこう。まずは目の前の二人を叩かなければいけない。

 作戦を考えるがいまいちこれといった作戦が思いつかない。とりあえず一対一に持ち込みたいのだがそれを許さないだろうな。そもそもできたとして勝てるのだろうか?

 

 奇襲をかけて重い一撃を食らわせれば……。しかし獣人相手に無茶な気がする。彼女たちの五感の鋭さは自然のあらゆる不具合を見抜く。

 

 そこで気が付いたが先ほどから小声で話しているが聞こえているのだろうか?

 試してみるか。

 

 「あの白上さん、狐ではなく猫なんじゃ?」

 

 「それを言うとすごい怒るよ」

 

 反応をうかがってみるが変わりはない。なるほどな。

 これならやりようがある。

 

 「ロボ子さん作戦思いつきました」

 

 「え?なになに?」

 

 コショコショと話す俺たちを律義に待ってくれる二人はいったい何なんだろう。打倒する存在を望んでるみたいな格ゲーの世界の人ですか?

 

 話し終えるとロボ子さんは渋い顔をした。わかっている、成功するかわからない。もしかしたら俺も無事では済まないかもしれないしな。

 

 だがいましがたの強烈な光景が残っており、これしか思いつかなかったのだ。

 

 俺は心配するなとばかりに無言でうなづき、それに合わせてロボ子さんもうなづく。

 

 心配はいらない。ロボ子さんが信じてくれるなら十分だ。

 

 俺は大きく地面に穴が開きそうなほど踏み込み走りだす姿勢を取る。続いて大きく息を吸い腹の底にため込むと声に変えて解放した。

 

 「やーーーーい!!!白上さんの種族は猫ォォォォォ!!」

 

 俺は全力で駆けだした。

 

 「はぁぁぁぁぁぁ!?猫じゃないですけど!?狐じゃ……はや!?」

 

 脇目も振らず背中を見せて全力で駆けだす。

 

 「クラスにビラまいてやろ!白上さんは猫だって!」

 

 「やめて!ただでさえ弄られてるのにこれ以上誤解をばらまかないで!」

 

 しかし俺は止まらない。来た道を戻り横にずれて雑木林に姿をくらませる。ついでに隠形も使っておく。

 

 「ああああああ!速い!速いよあの子!!しかも姿消しちゃった!どどどどどうしようミオ!?」

 

 「うーん、大丈夫じゃないかな?そんなことする子には見えないし、これウチらを分断するための罠だと思うよ?知らんけど」

 

 「追って!お願いだから追って!ミオじゃないと追いつけないし探せないから!罠とかどうでもいいから追って!」

 

 「しょうがないなー」

 

 何やら話しているかと思えばミオさんが俺のほうに走りだす。

 これで作戦の第一段階は成功だ。欲を言えば白上さんに来てもらいたかったが少し飛ばし過ぎたか?

 素早く鼻の利く狼のミオさんが追いかけるのに適任なのか。そこまでを考慮していなかった。

 

 だが始まってしまったからにはもう仕方がない。最後までやり遂げなければ。

 

 俺は決意を新たに足に力を入れてさらにスピードを上げた。雑木林の道を木の根と葉に気を配りトップスピードの維持に努める。

 

 息が乱れ始めたところで生い茂った草に身を隠し隠形をまた使う。その間に息を整え万全の状態にしたい。

 

 時間を確認する。俺が駆け出してから50秒経過している。ロボ子さんとの約束の時間まで残り4分10秒。この間に仕込みを終わらせなければならない。

 最大の障害はどうやって仕込みを行うかだ。袖口に仕込んだ()()を爪で弄りながら思索に耽る。正直当てることが難しいように感じられる。あの身のこなしから体力もフィジカルも上だ。投げても当たってくれないだろう。ならば接近戦?いやいや自殺行為だろう。

 

 「うーん?あ、そこに隠れてるでしょ」

 

 息を切らさずやってきたミオさんは鼻を少し動かすと即座に俺の居場所を特定してきた。

 

 「まさかこんな美少女に追いかけられるなんて。ついに俺にも春が来たか」

 

 「後輩君を倒すために来たんだけど。君の中の春は旧暦なの?」

 

 「誰が一生独り身だってぇ!?」

 

 「言ってないけど!?」

 

 まずは出方を伺いつつ絶対に自分から攻め込まないこと。多少のダメージは覚悟してでも防戦に徹すること。そして隙を見つけたらつけ込むこと。作戦成功のためには慎重に、だが大胆に動いて相手の動きを崩さなければ勝機もないだろう。

 

  腰から短剣を引き抜き順手に持つと右手を前に、左手を後ろに構えを取る。

 

 「勇ましいねぇ、男の子だねぇ」

 

 「男の子だなんてひどい!今の時代、性別を決めつけると叩かれますわよですわ!」

 

 「とってつけた語尾でアピールされてもね」

 

 残り3分30秒。この作成は仕込みが速すぎてはいけない。むしろ遅ければ遅いほどいい。残り1分……いや30秒の時点で準備を終えたい。だが結局準備を終えられなかったら作戦そのものがダメになる。見極めて戦わなければならない。

 

 「シッ!」

 

 先制を取る。

 

 針を三本投げる。ミオさんの足を潰すべく地面に擦れるほど低い軌道で手を離れたそれは右に逸れるだけで避けられる。

 だが構わない。俺は二の弓、三の弓をつがえて倒すべく投擲を続ける。それを驚異的な動体視力と体のバネを使って躱す。ステップと周りの木を使って徐々に距離を詰める姿は完成されており、自然と調和された美しさがあった。

 

 突如大きな木に隠れると同時に出てこなくなる。気配を探るが何も感じない。数秒姿を見ないだけで場所変えられるのか。俺の周りに隠れられるような草むらはない。不意打ちできる環境ではないならどこへ?

 

 「ッ!!」

 

 そこまで考えて俺は反射的に腕を振り上げる。

 

 ガギィ!

 

 間一髪のところで俺の短刀がミオさんの爪をとらえた。

 やはりだ。木の後ろに隠れると同時に跳躍して枝を伝いながら俺の上を取ったんだ。

 

 「お!木陰で影が見えないのにわかるの?」

 

 「ただの勘ですかね」

 

 冴えている。まだ耐えられる。だが――

 

 「ぬぅぐぐぐぐ……」

 

 落下の衝撃とミオさん自身の体重、そして単純な腕力で押し込まれる。

 短刀はその形状から片手で扱うものであり、このようにつばぜり合いが起こると単純な筋力勝負で勝てない。だからこそ受け流しやカウンターが豊富だというのに馬鹿正直に受け止めてしまった。

 

 「くっそ……ガッ!」

 

 耐えきれず体のバランスを崩した隙を見逃さず、着地と同時に放たれた左足の蹴りに体をくの字に曲げながら吹き飛ばされる。

 木々の合間を縫い、土で汚れながら転がりつつも無理やり起き上がる。すぐに構えを取り敵を見据えるが――

 

 「はっや……」

 

 もう俺の目の前にいた。

 

 息つく暇もなく右から来る爪を体を低くして避けるが読まれていたのか今度は顔に踵がめり込み俺を後方へ引き飛ばす。

 

 「うっぶぅ――この……SMプレイはしかるべきところでお願いします!」

 

 「余裕あるね!」

 

 ただの強がりだ。

 

 今回はしっかりと受け身を取る。そして気が付いた。俺が起こした失敗に。

 ミオさんが木を足場に移動しているのが見えた。

 この生い茂った雑木林は彼女にとって絶好の狩場だったのだ。いやそもそも獣人相手に林で戦うこと自体が間違いだった。ここは彼女たちのホームグラウンドの一つ。地元の感覚で戦えるのだろう。

 そして経験値も全く違い過ぎる。今日は闘うのが初めての俺に対して狩りを通して経験と積んだミオさんでは差がありすぎる。体の使い方や相手の誘い方、駆け引きの技術など実際の戦闘でないと学べないことが俺にはできていない。この差はつらいな。

 

 鼻から流れる血を袖で拭き、息を吹き込み溜まった血を出す。

 これでは逃げたとしても血の匂いを追われてしまう。もし来なくてもいつ来るかわからないという心理的ストレスはパフォーマンスの低下にもつながる。やはりここで決着をつけなければ。

 

 目を閉じる。

 彼女を目で追うことは難しい。ならば耳で探る。木を蹴る音。葉を踏む音。風を切る音。これらを探り、持ち前の勘の良さで相手の攻撃に合わせてカウンターを叩きこむ。

 

 残り二分。時間が迫っている。

 

 暗闇の中で必死にその時を待つ。俺に油断する時を。

 

 ザザッ……。

 

 後ろ!

 

 心身を翻し短刀を半回転しながら振る。

 

 ガッ!

 

 見えたのは少し驚いた表情のミオさんと、爪と火花を散らす愛武器だった。

 

 「ムムム、やるね!でも!」

 

 ミオさんにまた力がこもっているのが分かる。また競り合う気なのだろう。悲しい話だが俺には彼女に単純な腕力でも勝てない。もしこのまま力比べをしたら負けるだろう。だから俺は――

 

 「え?」

 

 そのまま武器を引いて攻撃を通す。

 

 ミオさんの戸惑いの声が静かな林に響く。その反応に無理もないだろう。競り合いのために力を込めたら空振りだったのだから。

 

 だからこそ引いた価値がある。

 

 力み過ぎた爪は真っすぐ腕が伸び切るだけで見切るのは簡単だ。紙一重で爪を避けきるとミオさんの腕を支点に回転しながら近づき膝蹴りを放つ。的確にみぞおちを打ち機能不全を狙う。

 

 「これはお返しです!」

 

 「クッ!」

 

 俺の渾身の蹴りは直前で相手の上げた足で防がれてしまう。しかし数m下がらせることに成功した。

 ここから反撃開始だ!

 

 「おおおおおおおお!」

 

 両足に力を込めると一気に距離を詰める。

 

 左手で針を正確無比に人体の弱点に叩き込み行動を制限しつつも右手の短刀を青く淡く光らせながら高まらせる。ミオさんは爪で針を弾くことで着地に少し手間取りもつれる。その間に俺は一歩ごとに加速を行う。

 

 青い光が樹木を斬り割く。

 

 肉薄すると右から左、左から右へと交互に四撃叩き込む。轟く雷鳴のような激しさを含んだ斬撃を独特なステップと体さばきで繰り出す。だがミオさんは全てをいなし、躱し、受けてやり過ごす。

 

 その反応速度と体幹に舌を巻きながらも俺は動きを止めない。突きを混ぜながらさらに攻撃のスピードを上げる。だが受けながら体勢を立て直したミオさんは俺以上のスピードで加速を行い始めた。

 攻めていたはずがどんどん同等に。それどころか突きは肘関節を手の甲で叩き、振り抜きは肩を抑えることで技の出し始めを潰され思うように動けない。

 

 右上、左下、横と続く連撃を掻い潜りミオさんは俺に掌底を食らわせる。

 

 「う、げっ」

 

 肺の中身をすべて吐き出しても止まらない痛みが襲い掛かるがそれを唇を噛み軽減させる。すぐに追撃が来る。短刀を強く握り意識を強く繋ぎとめると目を見開く。ミオさんの爪がもう俺の額を貫こうとしている。

 

 「風車!」

 

 数cmというところで技が間に合う。短刀で攻撃をはじきながらその勢いを利用して、回転しながら後ろへ飛ぶ。

 

 受け流し技の『風車』。相手の技の力を使って距離を取る技だ。きびしい状況をニュートラルにすることができるのだが相手は狼。それを許すほど甘くなく、打開を閉ざす脚力がある。

 

 たった一歩で肉薄すると上から狂爪が降ってくる。左半身を後方へそらすことでそれを回避する。同時に左足を軸に回し蹴りを延髄に叩き込む。けれどそれも空振りに終わる。

 

 おたがいに決め手に欠ける状態。しかし俺は細かなダメージが蓄積しているがミオさんはいまだ息も切れていない。

 

 「まだまだいくよ!」

 

 初めてミオさんが精悍な声を出す。

 

 薄墨のような残像だけをばらまき、四方八方から爪が俺を狩り取らんと蹂躙する。深い切り傷が増えて痛むが止まれない。止まってなどくれない。バックステップを踏みながら腕を振り続けるが体勢がどんどん悪くなる。

 

 「ぐうおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 短剣をがむしゃらに、しかし冷静に見極めながら高速で動かす。

 

 (攻撃と攻撃の合間を一秒の数十分の一にまで省け!)

 

 黒い残像と青い残像が互いにぶつかり、交差し、空に揺蕩う一等星の集まりを思わせる絶佳を作り出す。だが重なり合う色の勢いはまるで違う。黒が青を飲み込んでいく。代わりに空を舞う()が色彩を豊かにしていく。

 

 (キッツイ!!キツイが……戦える!)

 

 致命傷だけを避け、他は受ける無謀な攻めと短剣独自の受け流し技がまだ俺の存在を保らせる。ミオさんの予想と外れる無茶な動きをすること。短刀の防御性能。これならこの獅子奮迅の動きに対処できる。

 

 されど無茶はいつまでも続かぬものだ。

 

 高速のステップは周りの環境を把握できているからこそ安心して行えるもの。けれどもここは整備された街中でなく雑木林。当然ぬかるんだ土に湿気た葉などがある。

 

 「え……?」

 

 繰り返すバックステップ。その出始めにかかとが露出した木の根に阻まれる。体勢を後ろに大きく傾ける。

 同時に薄くなった守りから通過した爪が俺の脇腹をえぐる。

 壊れた姿勢と痛む脇腹に集中力が霧散する。

 

 受け身を取ることもできずに見っともなく尻もちをつく俺。

 

 考える時間が与えられるわけもなく――

 

 ミオさんが俺の左胸を貫いた。

 

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