ホロライブラバーズ『幸福論者』獲得RTA なんでもありチャート   作:かとしょう

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 主人公は負けを経験すべきなので初投稿です。


それぞれ

 「ほい!」

 

 「あぶなーい!」

 

 「これは?」

 

 「あぶなーい!」

 

 校庭の片隅で少女たちの声が空に響き渡る。

 一人は機械の体を持つ少女。ピンクのパーカーを爆風で揺らす。

 もう一人は狐の体を持つ少女。白を基本とした服に水色のリボンをたなびかせる。

 

 彼女たちは今雌雄を決するために己の相棒を信じ、しのぎを削っていた。

 

 ミサイルと機関銃で相手の動きを制限しながら近づいて重い一撃を食らわせる狙いのロボ子。

 遠距離攻撃を捌きながらつかず離れずの距離を保ち魔法と呪術で対抗する白上。

 

 白上はその持ち前の素早さから相手の攻撃をかわし、ロボ子はその硬さと特異性からすべて受け切っていた。

 

 「ねぇーボクのこうげきにあたってよー!」 

 

 「ロボ子さんこそ白上の攻撃効いてよ!」

 

 「ボクに呪いなんて効かないよ!ロボットだもん!」

 

 「ずるいいい!」

 

 地面には穴が開き、空間に充満する呪いで周りの生物は死に絶えていた。

 

 完全な膠着状態。お互いが反対な性質を持っていながら決め手が欠けていた。

 こうなればとれる選択肢は一つだ。パートナーと合流し二対一を行うこと。しかし目の前にいる相手はパートナーと合うために背中を見せるわけにはいかない。

 できることは一つだけ。勝利を信じてここで耐え忍ぶこと。

 

 だからか。白上は先ほどから勝利を確信したように余裕の表情を崩さない。もうすでに勝敗決したと言いたげな表情でドヤ顔を崩さない。

 

 「ロボ子さん今のうちに降参しちゃったほうがいいんじゃないのぉ?ミオが来たらただじゃすまないかもよ?」

 

 「わぁすごい自信。でもミオが来るとは限らないでしょ。彼が今闘っているんだからさ」

 

 「それはない」

 

 きっぱりと言い張る。その姿は信頼から出る言葉ではない。大神ミオならば絶対に勝つという信頼ではなく、物が落ちれば地面に引かれるような決まっている常識のように。白上フブキは大神ミオを語る。強い意志に裏打ちされた響きだ。

 

 

 「あの子はね、強いですよ。普段はのほほんとしているけどいざという時には変わる。生まれ持ったポテンシャルとそれを引き出す才能。獣人一の俊足で獲物を追い詰め、その経験で確実に息の根を止める。そして絶対に油断しない」

 

 「狩りが終わるといつもの姿に戻るけどね」と付け足しながらスマホを取り出し始める。

 

 「あれからもう3分経ちましたね」

 

 白上はスマホの電源を入れて時間を確認するとそのままパスコードを入力して指でスライドとタップを繰り返す。そして横に持ち帰ると高速で指を動かし始める。

 

 「何やってるの?」

 

 「決着つかないしソシャゲーでもしようかなって」

 

 「自由だね」

 

 「ミオがもう少しで帰ってくると思うしそれまでにスタミナ消費しておかないといけないんです」

 

 ロボ子はいったん白上から視線を外すとレーダーの出力を大幅に上げる。だが答えは沈黙だった。ずいぶんと遠くで戦っているからか戦闘音も聞こえてはこなかった。

 

 「ロボ子さんなら今のうちに離脱できるんじゃないです?」

 

 白上フブキは素朴な疑問を投げかける。

 このまま待てばもう数十秒で大神ミオがここに参戦する。その場合圧倒的に不利だろう。その状況を理解していながらなぜ逃げないのかという単純な疑問。

 

 「うーん、彼ならやってくれると思ったからかな」

 

 質問に対する答えはありきたりながらも強い信頼だった。

 ロボ子は目を閉じて出会いを思い出す。ダンジョンから怪我無くとぼけた顔で出てきたあの時。おちょくりながらも決して自分は楽しんでいないあの心持ちがどうしても星本颯太という人物に壁ができる。初日はただ明るい人だと思った。

 だが今日、改めて「初めまして」をして分かった。彼は変わろうとしていた。記憶がないから違和感があるのではない。人としてもっとその先の輝かしい何かになろうという気概。考え方そのものが変わり、彼自身も変わろうとあがいている。

 ロボ子はこれを言語化することができなった。必死に頑張る姿を見て到来した気持ちに。

 

 だから胸にしまい込み二つ目の理由を伝える。

 

 「彼ね、荒地のダンジョンの宝物を取っていったの。それはボクの知り合いの人に命令されて大事に保管していたんだ。結構長い間預かっていたんだけどいつかこう思ったの。なんでずーーっとこんなものをボクは見っているんだろうって。その人に命令されたからロボットであるボクはこれを第一に考えなくちゃいけない。

 でもね急に彼が現れて全部持って行っちゃたんだ。魔物も倒さず、トラップも発動してなかったのが入ってみてわかったよ。それで思ったんだ。あれは彼のためにあってボクは彼に会うために守ってたのかなって」

 

 白上の背中にある林に目線を向けながらしんみりとした表情で髪をいじるロボ子。その姿に面白いものを見たと言わんばかりに表情を輝かせて尻尾を揺らす白上。

 

 「あれあれあれぇ~?ロボ子さんそれってぇ」

 

 「ないよ」

 

 話の腰を折りながら白上を中心に円を描くように歩く。

 

 「つまり彼がミオを倒して王子様みたいに駆けつけてくれるかもってこと?」

 

 「それもないね」

 

 「ありゃ?」

 

 足を止め、自信満々に言い放つロボ子。

 

 「彼じゃミオを倒せないでしょ。スピードが武器なのに相手はそれを超えているからね」

 

 笑顔で手をパン!と合わせて腕を変形させていく。かわいらしい見た目とは裏腹に無骨な刺々しい鉄の塊を露出させる。

 

 「つまり?」

 

 白上フブキは理解していなかった。そもそも可能性として考えもしていなかった。前提のとらえ方を。

 

 「忘れたの?これは二対二の戦いなんだよ?」

 

 腕は大きく形を変えて地面に大きな柱を立ててそれを支える。

 

 「相手を倒したらパートナーを助けに行けるよね?」

 

 それは白上と大神に最初に見せた巨大な砲台。すべてを飲み込む赤い閃光の土台は音を立てながら破壊を目論む。

 

 「え!?うそ!?」

 

 目を見開きながらあからさまに狼狽える白上。それもそうだろう。あれの破壊力は間近で見た自分がよく知っている。しかしそれ以上に気がかりなのは――

 

 (わざわざ消耗してまで避けられる技を放つの!?)

 

 そうこの技は一度照準を合わせたら動かせない。しかしチャージにかかる時間は莫大で避けることはたやすい。これほどのエネルギーを自分だけで補っているのにわざわざ捨てるのかという疑問。

 生まれるのは猜疑心。はったりか?本当に打つのか?何か罠があるのか?

 

 考えるほどに深まる思考の迷路の罠に陥る。

 

 (まさか発射中に向きを変えられるとか?それとも避ける方向にあらかじめ予測して細工をした?)

 

 一度頭を振ると射程外へ思いっきりダッシュをする。

 白上の出した答えは一つ。セオリー通り動きつつアドリブで最善を尽くすというもの。

 

 (まずは避けなくちゃ……)

 

 白上が射程外に出るとほぼ同時に

 

 「ファイアー―――――――!!」

 

 放たれた。

 

 空の青さに反発するように地を削りながら進む赤はおよそ視認するのも難しい速度で白上のいた場所を焼いた。

 

 そのまま突き進み木々を焦がし林を線の更地を作る。

 

 光が収まり白上は恐る恐る目を開ける。

 

 「……なにもない?」

 

 とっておきの秘策も、用意されていた罠もない。二の矢も用意されていたわけでもない。

 

 (本当にただ撃っただけなの?)

 

 肩を弾ませながら息をするロボ子の姿を見て確信する。やはり何もなかったみたいだ。考えすぎだったのか。白上は確信して大きく溜息をつく。

 ロボ子は体を薄赤くさせて息を整えている。周囲の熱も高まっているところからオーバーヒートをしたのだろう。近づけば熱で体に不調をきたすレベルで空気が揺らめいている。動くには体の熱を飛ばす必要があるだろう。

 

 (動けないならミオが来るのと冷却されるのを待ったほうがいいかな)

 

 たっぷりと5分ほど様子を窺うが結局何事もなさそうだ。

 

 余裕は十分ある。焦らず行動をしたほうが良いと考えて周囲に警戒網を張った矢先に事は動いた。

 

 ガサガサ!

 

 突然草むらが大きく動く。すわ何事かと目を向けるとそこには人影を見つけられた。

 

 もう一つの戦場で激闘を終えた勝者だ。

 

 黒い衣装をまとったその人の名前は――

 

 

 「遅いよ――――」

 

 

 ――――――――――――

 

 

 長くそれでいて一つの目的に揃え、統一されたそれはある種の機能美を感じさせる。

 自分の左胸を貫く爪を眺めながらぼんやりと回らない頭で場違いなことを考える。白い戦闘用の服が赤く染まってるな。

 

 背中を木に預けて手を伸ばす。目の前の仇敵に震えながら先ほどまでとは比べられない速度で短剣を突き出す。

 

 あと少し。あともう少しなんだ。お願いだからもうすこしだけ――――

 

 だが眼前に迫った短剣を手首を風のような素早さでつかみ落とされる。凛とした立ち振る舞いで、されどほんのりと優しくそれでいて怖いものを触るように丁寧に俺の手を握る。

 

 腕の切り傷から滴り落ち、掌にたまり固まり始めている血も気にせず撫で上げた。

 

 「すごかったよ。あそこまで追い込まれたのは本当に久しぶり。だから絶好のチャンスに手加減できなったの。ごめんね」

 

 敵の心臓を潰したことにそこまで気にかけるのか。

 

 きっと根はまじめで自分を疲労する性格なのだろうな。別にこのホロライブ学園で行われるバトルロワイヤルは安全にしつこいくらい配慮した元で行われている。怪我もすぐ直るし、ましてや死ぬことなんて絶対にありえない。

 だから今やっていることはすべて無意味なんだ。

 

 たぶんただたくさん痛い思いをさせたことを憂いているのだ。自分がしたことから目を背けないために。

 

 ずいぶんと不器用な生き方をするんだなと思った。

 ここにいる時点で覚悟しているんだろうと存在を忘れるわけでもなく。

 その性合から世話を焼くのでもなく。

 一歩引いて線上のうえで曖昧に行ったり来たりしながら悲喜こもごもを受ける。

 どちらかに傾ければもっと楽だろうになぜここまで頑ななのだろうか?

 

 カーネリアンを思わせるオレンジ色の瞳をのぞき込む。逢魔が時にのぞかせる太陽よりも美しいそれに吸い込まれそうだ。

 

 この人は何を思い、想ったんだろうな。なんで俺を貫く時あんなに悲しそうだったのかな。

 あの顔を見ていると俺も脇に空洞が掘られたようなガランとした寂しさと所かまわず当たり散らしたような(むな)しさが圧し掛かってくる。

 考えても仕方ないか。

 

 ミオさんが胸から手を抜き去る。ミオさんの爪の先端から1㎝という目を凝らさなければ気づかないくらいだったが血にぬれていた。

 

 「ウッ……」

 

 太い針を抜かれる鋭い痛みに似ていた。思わず目を閉じてそのまま力なく項垂れた。

 

 完敗だった。

 

 飛び道具を見切る動体視力。不意打ちを許さない五感のレーダーの広さ。逃げを許さないスピード。徹底的に追い詰める覚悟の完成度。潜ってきた修羅場の数から来る経験。そして才能。

 どれもが俺の数段上を言っており、磨き上げられていた。小手先を抜きにして俺が特訓してもこの領域に足を踏み込めるのは何年後だろうか。

 

 全く嫌になる。外法を使わず真正面から戦った俺の実力など所詮はこんなものだ。事実がこうして現実に現れるのは苦いな。

 歯と歯を強く、ただ強くかみしめた。死んでいくかのように重苦しい心が足掻くのを止めて甚い沼に沈んでいく。

 

 なにが魔王軍と戦うだ。奴らはきっとこれ以上に強くてそれ以上に容赦がない。自分の大言壮語っぷりに対する怒りが湧いてくる。ちょこ先生が俺をああまでして縛り付けるわけだ。奴らが別次元に強いとしても、それ以前に俺が弱い。

 

 「今度はちゃんとした場で会おうね後輩君」

 

 俺の脇を通り抜けて歩いていく。このまま白上さんとロボ子さんのもとへ向かうのだろう。

 滲んでよく見えない。それが額から流れる血か、瞼から流れたのかはわからない。

 

 本当は華麗に倒してロボ子さんのところへ帰りたかった。そしてロボ子さんに一位を取らせてあげたかった。ちょこ先生に俺の実力を認めてもらいたかった。

 

 だが現実はどうだ?信じて送り出してもらっておいてこのザマだ。記憶が消えてもわかる。信頼を裏切ることは俺がずっと嫌いだったことだ。

 

 一度築いた繋がりは自然に消えはしない。ただ自ら裏切らない(切らない)限りは。俺は――

 

 「ごめ……ん……なさ……い……」

 

 ポツリと誰にも聞こえないくらいか細く呟いた。

 

 「ごめんなさい」

 

 また呟いた。

 

 その相手は他でもないロボ子さんに。俺の不甲斐なさで苦労を掛けることに。

 

 「ごめんなさい」

 

 そしてミオさんに。

 本当はもっと動けるはずだったのにあんなミスで終わらせてしまったことに。

 あのまま潰れるとしても勝ちたかった。今回のバトルロワイヤルは全てをあそこで使い切ってもよかった。

 でも、もうそういう訳にはいかなくなった。

 

 だからごめんなさい。

 

 こんな形で終わってしまうことに。

 

 こんな――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こんな勝ち方で申し訳ない。

 

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