ホロライブラバーズ『幸福論者』獲得RTA なんでもありチャート 作:かとしょう
ロボ子さんの姿を見つけて安堵したからか力が抜けて膝から崩れ落ちてしまった。
「おっとっと」
「大丈夫!?傷だらけじゃん!?」
駆け寄ってくれたロボ子さんが体を支えてくれる。
「ありがと――あちゃちゃちゃちゃ!!??」
「あっ……オーバーヒートしてたんだった。ごめんね」
「死にますって!全身傷だらけなのに焼けたらもう死にますって!」
「全身切り傷ばっかで……おいしくなりたいの?」
「隠し包丁じゃねぇんだぞこれ!」
死闘を繰り広げた仲間にあまりにもあんまりだった。
「いや待てよ?ロボ子さんが食べてくれるならありか?」
「やだよ。お腹壊しそう」
ロボットにそんな不調あるのだろうか?そもそも食事するの?
「だったら性的n――」
「傷口塞いであげる」
「あちゃちゃちゃちゃ!?焼灼止血法はまずいって!」
そもそも傷口を焼くのは四肢切断レベルの重症の時のものだよ。
そんな馬鹿をやっていると小さく10月のセミの様に覇気のない声が聞こえてきた。
「……なんで?まさかミオを倒したの?」
これはどうしたものだろうか。本当のことを言うべきか。嘘を言うべきか。
白上――フブキさんだったか。彼女は少し話していてミオさんに絶大な信頼を寄せていたのはなんとなく読める。それを俺が倒したといったならどうなるだろうか。
個人的には驚き、そして棄権してくれるんじゃないだろうか。戦闘の激しさを周りの状況から察せられる。だがロボ子さんもフブキさんも大したけがをしていないことから膠着状態だったのだろうな。そこにミオさんが倒した俺の参戦。二対一かつそのうちの一人は仲間を倒した人。
いけるのでは?
正直ここからはできるだけ戦闘を避けて戦いたい。ロボ子さんはオーバーヒートを直してもらいたいし、俺は見栄を張っているだけで今すぐ膝を折って横になりたい。バトルロワイヤルが始まってから体感的に3分の一はもう落ちているだろう。彼女も上に行くなら態勢を整えて上に行く準備をしたいだろう。
俺は前上を掻き上げると角度をつけて決め顔で言い放った。
「ええ。他愛もなかったですよ」
「全身傷だらけで何言ってんの。あと倒したのボク」
後ろから小突かれた。ははははやめてくださいロボ子さん熱い熱い。
「どうでしょうか?ここは双方矛を収めて痛み分けとしては?」
落としどころはここだろう。フブキさんとしてもここで二対一は嫌だろう。
「……フフ」
突如フブキさんが肩を震わせて笑みを吐き出す。
なんだろうか、この嫌な感じ。べたりと感じる終わった後にやらかしたことに気が付くあの独特の焦りに似ている。何か見落としている?
「あ、そうだ。これで二対一だと思ったら間違いだよ」
ロボ子さんが後ろから突如訳の分からないことを言ってくる。
「いやいやいや、何言ってるんですか。二対一でしょ。それともまさかセンサーに反応あるんですか?」
「ないよ。今はね」
……?話が見えてこない。
「まさかロボ子さん機械なのにスピリチュアルな存在が見えるとか?もう一人のボク!的な?」
「決闘者でもないし、解くのに千年かかるパズルを持っているわけないでしょ。そうじゃなくて――あ、きた」
問い詰めていると後ろから今までに経験がない力の本流を感じる。慌てて反転するとフブキさんを中心に何らかの力が外に漏れ出していた。フブキさんの周りからではなく、フブキさんの中から。
「……え?」
さすがに勘弁してほしいんだが。今最悪の展開が頭に浮かんだんだが、違うよね?
フブキさんの力の本流がどんどん黒く変色していく。そしてついにフブキさん本人を飲み込む。
「来て!クロちゃん!」
黒い靄の中から高らかに声が響く。
カッ!
光が空間を支配し、思わず目を瞑る。落ち着いたのを見計らって目を開けるとそこには――
「ったく、なんでいつもいつもこんなに煩わしいところに呼び出すんだよ」
白上さんそっくりの人物がもう一人いた。
「棄権しまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁす!!!!!」
勘弁してくれ。
「これだから亜人系は!もっと物理法則に基づいて生を謳歌してほしいですね!人が二人に分かれていいのはTo L〇veるのヒロインのみである。これを三次元で再現したものは即刻死刑という法律知らないんですか!?」
「えぇ!?そうなの!?白上前科一犯!?」
「んなバカげた法律あるわけないだろ、常識でモノを言え」
「俺に常識を説くなら一人に戻ってからにしてほしいですかね!」
本当に勘弁してほしい。全身血だらけにしながら倒して有利状況にしたと思ったらそんなことなかったとかなんだそれ。しかも尋常じゃない力が渦巻いている。二人に分かれたのに二分の一じゃなく二倍になるとかどういうこと?キレそう。
「もういいじゃん!痛み分けでいいじゃん!ここで解散しようよ!」
「あのうるさいのに同意だな。眠いんだよ」
黒い白上さん……黒上さんが俺の意見を後押しする。そうだよ(便乗)いけ!争いからは何も生まれない!ただスッキリするだけだよ!
「それがねクロちゃん。あの後輩君がミオを倒したんだって」
「へぇ……」
あ、だめですわこれ。完全にロックオンされたわこれ。もう逃げられませんわこれ。
「俺がミオさんを倒したァ!?滅相もありません!ミオさんを倒したのはこのターミネーターもどきですよ、ねぇロボ子さん!」
「さっきあんなにドヤ顔で『俺がやりました』って言ったじゃん!こういう時だけ謙虚にならないで!」
「うるせぇぇ!倒したのはあなたでしょ!早く責任もってアレに突っ込んでスクラップにしてもらってください!」
「本当に最低だなキミ!」
ギャイギャイと喧嘩していると笑い声が聞こえてきた。
「フフフハハハハハ!面白いなお前。ミオをやったのはそこのお前だろ?匂いで分かる」
バレテーラ。
しかしここで黒上さんは腕を組んで俺に提案をする。
「まぁ、そんなに戦いたくないなら考えなくもないがな」
「ふーん?靴を舐めさせていただきますね?」
「プライドってものがないのキミ?」
「ロボ子さんシャラップ!」
ロボ子さんはわかっていない。上に行くためなら何でもしなくればならないということに。その為なら俺はどんな要求でものむぞ。
「簡単なことだ。お前、俺たち側に着け」
「えッ!」
「……なるほどな」
なんとも魅力的かつ有意義な提案であろうか。
要は俺という戦力が欲しいんだろう。彼女たちは前線に切り込めるスピード役が欲しいんだろう。ミオさんの抜けた穴を俺で補いたいと。
そして俺は白上さんたちについていけばさらに上に行ける可能性があると。
だがそれは――
「ロボ子さんは?」
「いらない」
「鈍足1tお姉さんはいらないって」
「そこまでいってなかったじゃん!」
ロボ子さんの突っ込みをガン無視する。
今の俺たちの状況は何度も言うがあまりよろしくない。ロボ子さんはオーバーヒートして出力が落ちている。俺は血を流し過ぎてフラフラだ。さらにミオさんとの戦いで最後に見せた超速90度ターンで酷使した右足が痛む。このバトロワではもうミオさん戦のようなスピードは出せないだろう。
「お前の座右の銘、勝馬に乗るだろ」
「なんでわかるんですか!?」
「顔に書いてある」
これから洗顔しっかりしよう。
「こっちに着いとけって。悪いようにしないって」
「……」
悪い話には見えない。ここで寝返るのは消耗したこの状況をリセットできるかもしれない。そして俺は別に勝つためなら手段を択ばない。
だから俺は――
「その話――」
――『ボクまた一人ボッチなのかな』
「――全力でお断りします」
空気が張り詰めた音がした。獰猛な肉食獣のような笑みを見せながら黒上さんは臨戦態勢を取った。
「交渉決裂か。うれしいねぇ」
「クロちゃん、勝手に仕切らないでよ」
それに合わせて腰の短刀を抜き構えを取る。そして呆けて動かないロボ子さんに檄を飛ばす。
「なにしてんですか。早く準備してくださいよ、口をぽっかり空けてる暇ありませんよ」
「……行っちゃうかと思っていた」
「心外ですね」
俺のことを勘違いしてないか?一番付き合い長いと思うんだが。
「俺は確かに勝つためなら裏切り、人質何でもやりますけどね。でも一度結んだ約束は絶対に破りませんよ」
結局、勝たなくてはいけない。生き残らなければいけない。でなければもう終わりなんだから。それは怖い。
だが。一度結んだ繋がりは決して切れない。自分から
俺は一度できた繋がりが、時間とともに太く強くなったそれが切れてなくなるほうがもっと怖い。
それは決して簡単に手放していいものではない。
「俺は別に関わりのない隣人が不幸な事故で死んだところでどうでもいいです。でも、知り合って、一緒に笑って、関係を結んでしまったなら、どんな小さな不幸でも見過ごせません。ただ身内に甘いだけなんですよ」
それに、と付け加える。
「あんな未練たらしくつぶやかれたら行くに行けないでしょ。分かったら――オット!」
黒上さんが突っ込んできた。
速さはあるがミオさんほどではない。これなら見てから対応できる。しかし足がまだ痛む。追撃や高威力の技のための踏み込みができない。やはり利き足が使えないのは大きなハンデだ。
「オラ!」
逆に相手は持ち前の動体視力からの体術と時々狙ってくる呪術がうっとうしい。体調面を顧みると一撃でも食らうとやばいだろう。
できるのは防戦程度だ。火力が欲しい、数人程度が一斉にかかってきても蹴散らせる大火力が。
「ロボ子さん!いつまでそこで震えているんですか?俺のかっこよさにクラッとくるのはわかりましたから早く来てくださいよ!」
今は猫の手でも借りたいくらいなんだが。
黒上さんの顎を狙った拳をカチあげてすらしながら左足を軸に蹴りを放つ。だが慣れない左軸と痛んだ右足では威力も出ず簡単に受け止められる。
「ロボ子さん!早く!」
何か琴線に触れるようなことがあったのだろうか。個人的な感情は無視して助けて欲しいんだが。
急にうつむいた顔をゆっくりと上げるとロボ子さんは困ったような笑みを浮かべた。
「あのね。あの……言いにくいんだけど。
まだオーバーヒートが収まらなくてうまく動けない」
「今すぐ俺に寝返っていいと許可を出すかそこの噴水に飛び込んで冷却するか二つに一つだ早く行動しろこのポンコツ!!」