ホロライブラバーズ『幸福論者』獲得RTA なんでもありチャート   作:かとしょう

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 死ぬ気で書けば何とかなると分かったので初投稿です。


終わりの始まり

 ロボ子さんからのメールでやりとりした結果、別れ際の約束である『おいしいものを食べよう』を実践するため、一位おめでとうを兼ねて俺の家に招待することにした。料理はもちろん俺が作るつもりだ。コンビニの体に悪いジャンキーなのもいいがここはお祝いのために俺の料理を味わってほしい。

 内容はどうしようか。肉、魚、野菜……ロボ子さんの好みは何だろう?そもそもご飯を食べるのか、そして消化する器官があるのか謎なんだが。石油でもぶっかければおいしく食べてくれたりして。

 

 もう夜になりかけている。早くスーパーに行かなくては。

 

 カバンを担ぐと保健室を出ようとする。

 

 「ちょっと待って!」

 

 後ろからちょこ先生に呼び止められた。

 

 「何でしょうか?」

 

 「一つ……いや、二つほど言わなくてはいけないことがあるわ」

 

 こちらに駆け寄ると真剣な顔でこちらを見つめる。

 

 「一つ目は夜に出歩くのはやめたほうがいいわ。少なくとも一週間は」

 

 「一週間って……なぜです?」

 

 意味が分からない。なぜ期間限定で夜に出歩くことを禁ずるのだろうか?

 

 「意味は今度教えてあげるわ。とにかく夜間に外出するのはやめなさい」

 

 「はぁ……いいですけど」

 

 基本的に夜間に外出する予定はない。問題はないだろう。

 

 「二つ目は奪われた感情についてなんだけど……あなたこのままだと彼女を作れないと思うわ」

 

 「うん……うん!?なんで急にけなされたの俺!?」

 

 神妙な表情で俺の感情についてというからなんだと思ったら。え?本当になんでこんなこと言われたの?泣くよ俺?

 

 「ちょっと首吊ってきていいですか?」

 

 「後にしなさい後で」

 

 丈夫な縄買っておこう。

 

 「そうじゃなくてね。あなたが持っていかれた感情の一つにはおそらく好きになること、愛することも含まれているわ。これから先、あなたが付き合うことがないというのはそういうことよ」

 

 「ガチィ?」

 

 知らなかった。人物に対する記憶を持っていかれたせいでそんな感情を持っていかれていたとは気づかなかった。

 

 「でも俺、お付き合いすることくらい好きな人じゃなくてもお試しで……」

 

 「あなたの性格でそれは難しいんじゃないかしら?」

 

 そうだろうな。俺はたぶん、こんな俺に告白してもらったとしてもなんとなくで交際をするタイプじゃないと思う。しっかりと手順を踏み、しっかりとお互いのことを知ってからでないとそういうことはできない。今どきの学生としてはかなり珍しいのかもしれないが。

 

 好きという感情。愛するという感情。どちらも人生という長い旅路において必要不可欠な栄養。これを得ることができなければ人は衰退していく。何かに熱中することも、趣味で生を彩ることも。

 だからこそちょこ先生はこう言いたいんだろう。

 

 戦うのを、とられたものをあきらめる必要はないと。

 

 「ふふ」

 

 不器用な人だな。

 

 

 「牛乳はまだ家にあったよな。ニンジンと大根と……あ、卵がもうすぐ切れるな」

 

 家から歩いて5分程度にある大手のスーパーで在庫を思い出しながら店舗をぐるぐる回る。最近は食が少し細くなり、買う量は減ってきた。しかし今日は違う。

 

 「おー。意外と家庭的なんだねぇ」

 

 ロボ子さんだ。

 

 学校の正門で待ち合わせをした後、一緒にここまで来た。

 

 「家庭的ですか……。そうかもしれないですね」

 

 当たり前だろう。この日本において同年代の人たちは基本親の庇護下にいる。親とともに暮らし、温かい食事を作ってもらい、一緒に食事をとり、愛情をはぐくむ。際はあれどもそれが普通だ。

 だが俺は早くに親を亡くし、祖父母に迷惑をかけたくなくて、一人暮らしを始めた……はずだ。

 

 でも俺は、親の顔も、おふくろの味ってやつも、どんな教育を受けてきたのかもすべて消え去ってしまった。

 

 いいのだろうか?こんなことで。

 存在を忘れて、ただ流れるままに自分の身を置くというのは。

 いや、愚問だな。いいわけがない。死者の存在はいずれ忘れ去られるものだ。だけど忘れてはいけないものもあるだろう。両親のことはそうしたいからではなく、そうしなければならないから取り戻すんだ。

 

 どうすればいい?どうすれば奴らに近づける?どうすれば奴らを――

 

 「ちょっとー?もしもーし?」

 

 ロボ子さんの声で思考が現実へと戻された。

 

 「どうしたの?すごく怖い顔をしていたけど?」

 

 「いえ大丈夫です」

 

 慌てることはない。ゆっくりと着実に、一歩ずつでいいんだ。

 そもそも今はロボ子さんのためにお祝いをしようというのに、何を考えているんだか。

 

 「ロボ子さん苦手なものとかあります?」

 

 「実はアジを食べると体液が凝固して、筋肉が動かなくなるんだよね」

 

 「8000年後の機械生命体かアンタは」

 

 

 帰宅すると愛犬が飛び込んできた。しっかりと留守番をこなした褒美として撫でる。

 

 「おー久しぶりー!おいでおいで」

 

 ロボ子さんが屈みこんでスージーちゃんを撫でる。そういえば荒地で会ったことがあるんだっけか。

 相変わらず人見知りをしない我が家の番犬はさっそくお腹を見せている。少しは警戒してほしいなぁ。

 

 ロボ子さんが遊んでいる間に俺は台所に立つ。

 腰に差した短刀を机に置くとエプロンを着る。

 

 冷蔵庫から材料を取り出すとした準備をする。フライパンに油を引いて過熱している間に、野菜を食べやすいサイズにカットしていく。あらかじめカットされた野菜の詰め合わせを買っておけば時短になるんだが、俺はこの下準備の時間が好きだ。これから自分が一から始めたものがどのように変化するのか。想像しながら行うだけで毎日の繰り返しも少し色づく。

 

 今日は少しジャンキーなものにしよう。子供から大人まで人気のからあげ、甘辛く味付けした野菜炒め、その他ごはんが進む惣菜を手際よく作る。

 

 「何か手伝うことある?」

 

 キッチンと居間の境にある暖簾から顔だけ覗かせるロボ子さん。

 

 「大丈夫ですよ、主賓は座って待っててください」

 

 「ボクだけの力じゃなくてきみのおかげでもあるんだよ」

 

 謙虚な人だな。でもやはり最後まで残ったのはロボ子さんの力だ。あの後、もし俺が残っていても足手まといになっていただけだろう。

 

 個人的にはあそこで脱落するのが良かったのだ。自分がどれほどの実力なのか、どこが限界なのかが見えた。実力が分かれば足りないものを補えるし、限界が分かれば引き際を見分けることができるようになる。

 それはステップアップに必要な要素だ。

 

 俺にだって傷つくのを悲しんでくれる人がいる。悲しませないためには何よりも強く、賢くならなければ。

 

 ピピピ!

 

 「おっと!」

 

 考え事をしていたらタイマーが鳴った。急いで揚げ物を鍋から出す。

 

 あれこれ考えても仕方ない。少しづつ前に進むしかないのだから。ちょこ先生も奴らが近くに現れるのは当分先だろうと言っていた。それまで特訓をしよう。

 

 白米とおかずをお盆に乗せてロボ子さんの前に並べる。

 

 「おー!おいしそう!家庭の味って感じ!」

 

 「そうでしょうか?」

 

 いつもとは違い栄養素が少し偏っているが、まぁ味なら少し自信を持てる。

 

 「「いただきます」」

 

 二人で手を合わせて食事を始める。

 

 「ん!おいしいよこれ!」

 

 ロボ子さんからの評価は上々のようでほっと息をついた。自分が今まで培ってきた技術が認められたようで少しうれしくなった。

 

 雑談をしながら30分ほどで食事を終わらせて、食器をつけ置きし、肩を並べてテレビを眺めていた。

 

 テレビではリポーターらしき女性が魔界の名所の紹介をしていた。

 

 「魔界……か……」

 

 思わず独り言を出してしまった。

 

 するとロボ子さんは少しためらう素振りをしながら俺に言葉を投げかけた。

 

 「ねぇ。本当に君の記憶って旧魔王軍が持っているのかな?」

 

 「え?それはそうでしょう?」

 

 奴らは吸血鬼たちを使って人間をエネルギーにして計画を立ててた。そしてそれをバックについている旧魔王軍たちに流していた。なにもおかしいことではないはずだが。

 

 「そうじゃなくてね?本当に旧魔王軍が持っているのか……そもそもそんな奴らがいるの?」

 

 「え……?」

 

 「その情報はちょこ先生経由だよね?もしちょこ先生が君に嘘をついていたとしたら?」

 

 「そん……な訳……」

 

 無い――とは言い切れない。可能性の話ならば。

 

 そう、絶対にないとは言い切れないのだ。ちょこ先生が俺に何かしらの嘘をついている可能性が。

 あの時、記憶が消えていた俺は自暴自棄になり死にたいと願っていた。その俺に生きる希望を与えるために先生が壮大な作り話をしているということも?

 

 「いや――いやいやいや」

 

 そんな馬鹿な。だって先生は俺の命を救ってくれて――そうだ、その情報を教えたのは俺が立ち上がった後だ。わざわざ生きる決意をした俺にそんな作り話をする必要はないだろう。

 何のメリットがある?

 

 「もちろんボクも君の記憶が戻る方法があるならばそれにかけたいと思う。でも最悪な事態も想像しておかなければいけないんじゃないかな?」

 

 「それは……」

 

 否定できなかった。

 今の俺にとって記憶を探すことが生きる意味になっていたのかもしれない。その不安定な足場が崩れたら俺はどうなるんだろうか?

 

 じっとりと張り付くような汗が俺の髪を濡らした。

 

 

 静かな夜道、暗く閉ざされた都会を二人で歩く。ロボ子さんが帰るというので、女性をこの時間に一人で帰すわけにもいかず、送っている。

 しかし先ほどまでの雰囲気はどこえやら無言が場を支配していた。

 

 「……」

 

 「……」

 

 なんだか気まずかった。俺は自分自身の進む道の明かりが急に消えたように、心の道しるべを失ったようだ。

 だが、ロボ子さんを責める気にはなれなかった。推測は正しく、ここで攻めればただの八つ当たりになるから――などではなく。

 彼女はきっと俺のことを心配してあえて嫌な役目を受けたのだ。

 

 俺が無意識のうちに見ないふりをしていた事実。もう俺の記憶はどこにもなく、一生戻ることはないかもしれないということ。

 絶対にないとは言い切れない。いやそもそも奪われた記憶が、張本人がいなくなった後それはこの世に存在しているのか。もう消えている確率のほうが高い。

 

 だからこそ、ロボ子さんはその『覚悟』をしておくべきと言いたかったんだろう。自分から泥をかぶって、少し仲を気まずくしてまで。そうですよね、ロボ子さん?

 

 俺は同じ歩幅で歩くロボ子さんの横顔を覗く。

 街灯が照らすアスファルトの光の円の中、ロボ子さんの表情は――

 

 「――?」

 

 「な、なにかな急にそんな見つめて」

 

 オーバーヒートしたのかというくらい顔が赤かった。

 

 ……なにか……ズレているような気がした。俺とロボ子さんの違い。

 もしかして俺は何か壮大な勘違いをしているのか?

 

 「……あのね?ボクが言いたいことは――」

 

 いつの間にか閑静な住宅街に入っていたようで周りから音は消えていた。通り抜ける風がやけに大きく聞こえる。

 

 「君が記憶がないことを覚悟していたほうがいいというわけじゃなくて――」

 

 手を後ろに回し組む。

 

 「もしなにも思い出せなくて、一から始まることになっても――」

 

 髪をかき上げながら顔を上げる。

 

 「――ボクが君の拠り所になれないかな?」

 

 「……へ?」

 

 あれ?ロボ子さん今のはどういう……?

 

 「あ!そろそろ充電切れるや!じゃあここまででいいから!また明日!」

 

 「ちょ――」

 

 そのまま俺を置いて走り去ってしまった。

 

 

 ――――つまりロボ子さんは何が言いたかったんだろう?

 

 俺は記憶がもうないことについて覚悟しなくればいけなくて。でも記憶が無くてもロボ子さんが心の拠り所になってくれて。

 

 それってつまり――――

 

 

 

 

 

 

 どういうこと?

 

 

 ロボ子さんの走っていった道に目を向ける。

 うーん?分からん。何を伝えたかったんだろうか。明日面と向かって聞いてみようかな。

 

 ただひとつ理解できるのは、ロボ子さんは俺を嫌っているわけではないということだ。

 

 「帰るか……」

 

 全身筋肉痛で立ってるだけでも疲れている。今日は支度をして早く寝よう。

 

 

 

 夜の帳。光の無い世界。星の影を体現した永久(とこしえ)の黒。

 

 俺は少し浮かれていたのか、それともただバカだったのか。言いつけを忘れていた。

 

 「夜に出歩くな」

 

 そう注意深く言われていたのにこうなのは、やはりどちらも原因なのだろうか。

 

 ただ一つ言えるのは、俺の身勝手な行動のせいでたった今、多くの人を巻き込んだ戦いの火蓋を切った。

 

 この物語は自分を探す冒険ではない。ましてや英雄譚などでは決してない。

 

 もし俺がこれを言葉で表すのならば

 

 これは――――

 

 

 ――――自分よがりな俺の「贖罪」の物語だ。

 

 

 

 

 

 「待てそこのネズミよ」

 

 しわがれた老人のような弱弱しい、されど威厳を感じさせる声が背中をつつく。

 

 「――ッ!?」

 

 思わず体がすくみ動けなくなる。何かしらの超常的な力によるものではない。声の放つ威圧に負けたのでもない。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()この状況に混乱しているのだ。

 

 ありえない。これは夢だ。嘘に決まっている。それだけはあり得ないんだ。何が起きている。どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして――――?

 

 「一週間ぶりかな?」

 

 「なんで――」

 

 サビれた機械を思わせる動きで後ろを向く。

 

 「神は6日で世界を作り1日の安息日を設けたというが、今のワシたちを皮肉っているようじゃないか」

 

 「おまえが――」

 

 その存在を目でとらえる。

 

 「自己紹介はいらないね?」

 

 「生きているんだ?」

 

 いてはいけない存在がそこにいた。

 

 奴の名は――

 

 「カースド・ヴァンパイア――」

 

 森にいた二体のヴァンパイアの片割れだった。 

 




           (^o^) 三
     \     (\\ 三
     (/o^)   < \ 三 
     ( /
     / く  まずはそのふざけた
           考察をぶち殺す
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