ホロライブラバーズ『幸福論者』獲得RTA なんでもありチャート   作:かとしょう

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 キャラが増えてきたので初投稿です。


会合

 「ハッ……ハッ……」

 

 荒く繰り返す息。胸を素早く、されど苦しくないくらいに上下に動かす。

 状況がつかめない。電柱に衝突してからどうも背中から落ちたらしく、息を吐くことは出来ても吸うことができない。前後不覚の視界と、足りない酸素と、痛みというノイズが俺の五感を邪魔する。

 もう少しで消え去る俺の命の火が、場違いな声と乱入者が生き存えさせている。

 

 前を向く。ボロく擦り切れながらも上質さを感じさせる紫と黒の外套に身を包む老人。その表情は苦虫をかみしめたようにしわが寄っている。

 後ろを向く。その少女は肩まで伸ばした髪が緩くカールしておりその緑色の目は翡翠を思わせる輝きを放っている。肘より体側の部分から手首までを紺色の装飾された防具が重厚な雰囲気を思わせる。膝から下も同様だ。しかしそれ以上に目を引くのは眩しく、賢覧で美しい彼女の――

 

 「聖騎士か……」

 

 銀髪だった。

 

 

 

 「団長、もしかして大変な時にいなかった?」

 

 彼女のことは知っている。名前は白銀ノエル。理由は彼女が俺らの世代のカリスマ的存在とか、テレビで見ない日は存在しない――とかではなくクラスで一緒、要はクラスメイトだ。

 ではなぜ白銀ノエルを初登校であり、他人の自己紹介も碌に聞いていなかった俺が覚えているのかというと二つある。

 一つはその外見のドラマチックさとでもいえばよいのだろうか。なかなかお目にかかれない銀髪、それもその自然さから地毛であることがうかがえる。色白の肌からは儚さと可憐さを醸し出している。記憶を失ってからロボ子さんやちょこ先生など一度見たら忘れられないレベルの美人と会ってきたが、人間種の中でこれほどのモノは無いと断言できる。記憶を失う前からお目にかかったことはないだろう。

 二つ目はその行動だろうか。

 彼女はあの憎き不知火フレアと登校前からの親しい中のようで席も近く記憶の限り、磁石のSとNが引かれあうように常に一緒にいた。また俺が自己紹介をしているとき不知火フレアと共に俺に信じられないものを見たというか、そんな表情をしていた。

 

 とにかくそんなどうしようもなく偶然で日常的な理由で彼女のことはクラスで一番覚えている。それにしてもなぜここにいるんだ?偶然か必然か?だがどちらにしろ俺にとっては都合がよかった。

 

 「白銀――白銀ノエルさん!お願いがあるんだ!今すぐここから逃げて学校の養護教諭の癒月ちょこ先生に伝えて欲しい!カースドが――ヴァンパイアの片割れが生きていたと!」

 

 肺にわずかに残っている酸素を使い切り、何とか彼女にメッセージを伝える。

 俺にできる最後の抵抗。最悪を避ける手段。こいつの存在を世間に、そして一番信頼できる人に伝えること。これは最低条件だが今となっては勝ちに等しい。

 

 「……その腕と足はどうしたの?」

 

 だが帰ってきたのは肯定でも否定でもなく、疑問だった。

 

「腕も足もバキバキになっているけど()()にやられたの?」

 

 「あ、あぁ……」

 

 「ふーん……」

 

 途端に鋭く、のほほんとした雰囲気が研ぎ澄まされたナイフのように剣呑かつ重い圧が空気を潰す。

 

 「う……」

 

 離れていても感じるその本流に思わずうめいてしまった。

 それはカースドも同じようで初めて一歩引いた。

 

 ……勝てるのか?彼女は俺と同じ人間種。その威風堂々としたただ住まいに疑問が尽きない。

 いや、待て。カースドはなんと呟いていたか。たしか――聖騎士――

 

 聖騎士だと?

 

 もはや人間における現代の首相や物が地面に向かって落ちるというくらいに常識の存在――聖騎士。人間の中から生まれてくる魔に対抗できる「退魔」の力を有する存在。

 現代日本とは文化も時代も似つかないが誰からも尊敬され、また驚歎される。一種の警察的な役割も持っているなど法規的権限もある我々庶民からすると雲の上の存在に等しい。

 

 その聖騎士だというのか?あの少女が?

 まさか。

 

 白銀さんは左腰に差しているメイスを抜くとこちらに迫ってくる。

 身長は160cmあるかどうか、体重だって50kg台だろうにその歩く姿は大きく強く見える。ずんずん、という擬音も聞こえてきそうだ。

 

 「怖ぁ……」

 

 表情から察するにマジギレしているよあの人。何かそんな琴線に触れるようなことありましたっけ?

 

 そんな心境も知らず、俺のもとにやってくる白銀さん。手前で止まり俺を一瞥するとそのままさらに速足で前へ進む。

 

 ついにカースドの前に立った。

 

 「聖騎士がこんなところで何をしている」

 

 「無辜の民を傷つける蚊トンボとお喋りする口は持ち合わせてません」

 

 「おぉ……!」

 

 なんて切れた煽り……!少し見習いたいと思ってしまった。吸血鬼に蚊と煽るその姿はかっこいいぞ!

 

 「ワシはそこのネズミに用があるだけだ。そもそも先に仕掛けてきたのは彼方のほうだぞ?ただ報復に及んでいるだけなんだがね?」

 

 「あなたたち第一級のお尋ね者に貸す耳もない。団長はここで生け捕りではなく処刑する権限もありますけど?」

 

 「ほう、それは怖いなぁ。怖いから思わず逃げたくなる」

 

 話し終えると同時にカースドの姿が霞み、薄くなっていく。

 

 逃げる気か!

 

 だが白銀さんの様子は余裕綽々と言った感じだ。むしろいいことを思いついたという顔をしている。

 

 「ふーん?団長に会った瞬間即退散なんて上位種族の名が聞いてあきれちゃうね。まさにVamp of ch――(臆病な吸――)

 

 「あ、その煽り(ネタ)もう俺がやりました」

 

 「……」

 

 「……」

 

 「…………」

 

 「…………」

 

 「ウグゥ!」

 

 「それなんのダメージ!?」

 

 味方にクリティカルが飛んで行った。

 

 「さ、さすがだね颯太君……!団長にここまでのダメージを与えるとは……!」

 

 「豆腐メンタルとギャグセンスだけでこの世は回っていませんよ?」

 

 とゆうかこんなことしている暇はないんだが。カースドがどんどん薄く、拡散していっている。

 このまま逃がすことになるかなんて考えていた時だった。

 

 白銀さんの周りに魔法陣が大量に展開される。その数34。書かれている文字の古さ、量からこれから起こる未来の壮絶さが分かる。

 

 「避けろ!」

 

 注意もむなしく、回避が間に合わず光の本流に白銀さんは飲み込まれた。

 

 が、――

 

 無傷でドヤ顔の白銀さんが爆心地にいた。

 

 今何かしましたか?という顔だ。

 

 「今何かした?」

 

 言っちゃったよ。

 

 それにしても目の前の光景が信じられない――そんな言葉では片づけられない程にめちゃくちゃだ。

 コンクリートが抉れ、下の下水道が見えている。爆風で俺も数m転がったというのにまさかの無傷って……。

 ひょっとするとロボ子さんより硬いのか?

 人間かアレ?

 

 「ふふーんそんな攻撃じゃ団長には傷一つ付けられんぜ」

 

 怖いよ。救世主に見えたのは一瞬で、もはや超合金ロボットって言われたほうが現実味あるよ。

 

 空気になった(文字通り)カースドが焦っているのがなんとなく伝わってきた。

 分かるよ。目の前にこんなのが現れたらそうなるよ。

 もはや俺に対してカースドにある感情は憎しみでもなく、ただただ可哀そうという一言だった。

 

 白銀さんが空へ向かって手を向ける。そして探るようにあたりを彷徨うと急にグッ!と力を込めて空間を握りつぶした。

 

 「ぎゃあああああああああああああああああ!!!?????」

 

 すると叫び声があたりに響く。

 

 白銀さんの握り拳からブスブスと音を立てながら焦げた匂いが立ち込める。カースドが手に合わせて実体化する。

 

 ようやくそこで気が付いた。

 

 「聖」騎士。それは「退魔」の力を有し、そこにいるだけで魔を打倒する。

 彼女は存在そのものが魔族に対する激毒なのかもしれない。

 

 「白銀」ノエル。銀とは5000年前にはすでに人間の歴史に入り込んでいたらしい。その長い歴史では毒を検知するなどの特異性から時代とともに悪しきものを遠ざける――魔を払うとされてきたが。「聖」騎士の「白銀」ノエルとは出来過ぎではないか?

 

 上がる黒煙の量が増えてきた。同時に完全に実体化したカースドだが、腕を白銀さんにつかまれており、逃げられそうにはない。

 

 「この――売女がぁぁぁあ!!」

 

 今までにない声を上げながら肥大化した腕が白銀さんに振られる。一目でわかるその威力は俺が食らった時よりも強い。

 だが――

 

 「ほい」

 

 片腕で止められていた。

 

 ……相性以前の話な気がしてきた。

 

 そして攻撃してきた右腕もつかむと、

 

 「せい!」

 

 という掛け声とともにへし折った。というか腕が肩から抜けていた。

 

 蟹を剥くんじゃないんだからさ。

 

 「ああああぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!」

 

 おびただしい血液があたり一帯に舞う。赤い水たまりが出来上がる。

 

 今の叫びで力を使い果たしたのかカースドは両ひざをついたまま項垂れていた。

 

 白銀さんは見下ろしながらメイスを持ち直ししっかりとグリップを握る。

 

 そして――

 

 「たりゃーーー!!」

 

 かわいらしい掛け声とは裏腹に振り降ろされたメイスは――

 

 ボッ!!

 

 一切の抵抗を感じさせずに頭を()()()()()()

 

 砕いたのではなく消えたのだ。肉片も骨も残らなかった。

 

 「うわぁ……」

 

 もはやドン引きしていた。

 

 コンクリートにメイスが埋まっているよ……。

 もしかして俺たちは普段バター並みに柔い物の上で生活していたのか?

 

 残った首から下は煙を立てながら砂とも灰とも取れないザラザラしたものになった。

 

 「あ……」

 

 そこで自分の犯したことを気づいた。白銀さんの戦いっぷりにドン引きして忘れていたが奴から情報を引き出すのを忘れていた。

 最後の時は心が完全に折れていたし、答えてくれたかもしれない。記憶のありか、旧魔王軍の所在地、そしてどうやって復活したのかも。

 値千金の情報を無にしてしまった。

 

 まぁ、命が助かっただけでも儲けものか。

 

 戦いが終わったことに安堵したのか、急激に体の疲れの波が押し寄せてきた。

 

 「大丈夫!!怪我の具合はどう!?」

 

 小走りで俺の隣に来てくれた白銀さんが安否の確認をしてくれる。

 それと同時に限界が来た。

 やはり心細かったのだろう。自分が死ぬかもしれない状況と他人が死ぬかもしれない地獄に耐えられなかった。誰か仲間がいるというだけでここまで楽になるとは思わなかった。

 

 「大丈夫だ」

 

 この足で帰れるのだろうか?そもそも学校どうしようか?いやいやちょこ先生への連絡を――

 

 ダメだ頭がまとまらない。今日一日でいろいろなことが起き過ぎた。

 意識が――

 

 あと10秒で消えるという時に俺は信じられないものを見た。世界の真理と宇宙の姿を紐解いてしまった。

 

 「今から救急車、いや我が家で治療を――」

 

 「凄いおっぱい……」

 

 「……はい?」

 

 目の前にあるおっぱい(真理)に釘付けだった。

 

 わたしがあなたがたに命じておいたすべてのことを守るように、彼らを教えなさい。見よ。わたしは、世の終わりまで、いつも、あなたがたとともにいます。(マタイ28:20)

 

 そうかおっぱいは人類と()にあったのですね……!

 

 「――そうだ。

  私は本当に、美しいおっぱい(もの)を見た。

  整形に頼らずとも至れる大きさはあり、恥じないからこそ隠さない今があった。

  おめでとう、世界の善き紳士達。

  理性は、君たちによって倒された」

 

 俺はついに真理に至った。

 

 

 薄れゆく意識の中ポツリとつぶやかれた気がする。

 

 「エ、エロガキ……!」

 




 そういえば活動報告としてお勧めのホロラバなどを書いています。これから不定期に更新しますので暇つぶしに見てもらえれば。

 https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=262216&uid=125986
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