ホロライブラバーズ『幸福論者』獲得RTA なんでもありチャート   作:かとしょう

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 BFの128人対戦にワクワクしていますので初投稿です。
 でもAPEXも好きなので失踪します。


団長

 目を覚ますとそこは知らない天井だった。またかよ。

 ここ最近気絶する回数が増えてきた。このペースなら気絶王選手権とか出れそうだ。うれしくねぇ。

 

 「よ……いしょ……」

 

 痛みとだるさで体が不満の声を上げるが無視をして体を起こす。折れていたはずの右腕はギプスで固定され、指も動かすことができず日常生活にも影響が出そうだ。

 ここはどこだろうか?部屋の外見から病院ではなさそうだが……。

 

 8mはある天井は小さいシャンデリアが輝いており、人工の光ながらもそのオレンジ色が部屋中に溢れる姿は心を落ち着かせる。同様にベッド横の電球も優しく照らしており、煌々とついていながらも夢の世界へといざなう。手に届く距離にある観葉植物と匂う甘い香りは目も鼻も楽しませてくれる。

 窓はこれまた大きく、薄い白のレースだけかけられておりその一面だけで写真に収める価値がある。

 小脇のテーブルのガラス瓶には水が入っており、結露が付いている。もしかして定期的に冷たい水に変えているのか?

 立ち上がり鏡の前に立つ。いつのまにかバスローブ姿に着替えさせられており、至れり尽くせりだ。

 

 まぁ、つまりはとんでもないお金持ちの家にいるみたいだった。

 

 窓の外を見るとなかなかの高層らしく、今日も残業に苦しむビルの光が見える。俺も数年後には労働を貴ぶどこに出しても恥ずかしくない社畜になるのだろうか。なんか生きるのが嫌になってきた。

 

 それにしてもここはどこだろうか。俺はあの蝙蝠もどきと戦った後ノエルさんに介抱されてそれから……。

 これで思いつくのは一つ、というよりそれしか考えられないが。もしかするとこの家は――

 

 「こんまっする~!お!起きたんか」

 

 白銀さんの家か。

 最近気が付いたのだがロボ子さんしかり、ちょこ先生しかり独特な挨拶の人多いな。俺も作ってみようか。

 ハイサイまいど!記憶がないことは不幸じゃない!……やめとこ。

 とゆうか起きているかわからないのに挨拶しながら入ってきたの?

 

 白銀さんはどうも付き合いの短い俺から見ても分かるくらい、どうやらご機嫌なようで鼻歌を歌いながら荷物をベッドに置いた。俺の着ていた私服だ。どうやら洗濯とアイロンがけをしてくれたみたいだ。申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 

 ガチャガチャガチャ……。

 

 「うん?」

 

 扉からメイドさんが手押し車と共に現れる。お菓子とティーポットが載せられたそれを洗練された手つきで机に並べていく。どれも見たことがないがおいしそうだ。夕食を取ってから数時間たっており、運動したことも相まって小腹がすいている。もしかして頂いていいのだろうか。

 

 <ガシャアアアアアアン!!

 

 <あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛

 

 突如扉の向こう側から何かをひっくり返す音と少女の叫び声が聞こえる。

 そして妙齢の女性の怒った声と少女の叫び声が断続的に聞こえてきた。

 

 <なんでお皿運ぶこともできないの!?

 

 <だって足元にバナナの皮がぁ!

 

 <ないわよ!もうクビ!

 

 <ね゛え゛え゛え゛え゛!ここもクビになったら(あてぃし)のアイデンティティが!

 

 雇用主と従業員の関係って残酷だな。

 

 思考に耽っているとテーブルが色とりどりのお菓子であふれ、既に白銀さんは手を着けていた。エクレアやマフィン、ロールケーキなど洋菓子が並んでいる。どれもおいしそう、――おいしそうなんだが……。

 

 「モグモグ……。……?あれ?甘いもの苦手だった?」

 

 「あ、いえ……」

 

 おなかがすいているし食べるつもりだ。何よりも甘いものは好物だ。いや好物だったというのが正しいのだろうか。

 今となってはこれらの高級菓子を見ても心が躍らないことに気が付いた。

 やはり、好意、愛情が自分の中から消えたせいだろうか。

 これらを食べてもおいしいと感じることはできるのだろう。だけど、そこに興奮、楽しみというスパイスが消えたのだ。人生における楽しみが少し減ったような気分だ。

 

 ……やはり一刻も早く探し出さなくてはいけない。ちょこ先生の情報は正しいことが分かったのだ。

 

 決意を新たに俺はお菓子を一つとると口に運ぶ。

 

 紅茶を一口含むと機を見計らって俺は口を開いた。

 

 「白銀さん、聞きたいことがあるんですが」

 

 「奇遇だね。団長もたくさん聞きたいことがあるよ。それこそたくさん」

 

 それもそうだろう。彼女は俺を見張っていたように見える。だからこそ助かったのだが、それゆえに分からない。

 俺たちには対話が今何においても必要なのだ。

 

 彼女の顔はどうも緊張している面持ちだ。つられて張り詰める空間に俺も気を引き締める。

 

 たぶん彼女が言いたいことと俺の疑問は一致している。

 

 それは――

 

 「白銀さん、なぜ俺を見張って――」

 

 「颯太君とフレアってどういう関係なの!?」

 

 「あれー?」

 

 

 

 「つまり、何の関係もないの?」

 

 「そうですね。むしろちょっと苦手です」

 

 あれから30分以上、フレアさんとの関係性を根掘り葉掘り聞かれた。要約すると付き合っているのか、馴れ初めはいつとか関係性を根掘り葉掘り聞かれた。

 もちろん俺の答えはNOだ。付き合うどころか知り合ってから一日もたっていない。

 それどころか出会い頭に「お前のことは知っているぞ」と圧をかけられ、鬼を仕向けるという名の通り鬼畜の所業を行ってきたのだから。

 目の前の騎士様に告げ口してやろうか。

 

 そして白銀さんが俺に話してくれた内容は主に聞きたいと思っていたものだった。

 彼女が俺を尾行していた理由がフレアさんとの関係を暴くためだったとのことだ。なぜそこまで俺、そしてフレアさんの関係に固執するのだろう。もしかしてデキているのか?

 

 「あと匿名のタレコミがあったんだよね」

 

 「タレコミ?」

 

 「うん。一級のヴァンパイアが君のことを狙っているから護衛してほしいって。本当はそんなの信じるに値しないし、やるとしても下っ端の団員さんがやるようなことなんだけど、丁度良かったから団長が出てきちゃった」

 

 「うーん?」

 

 いくつか疑問が晴れたのだが同時に新しい疑問が生まれてきた。白銀さんが俺の尾行を買って出たのはフレアさんとの関係を不審に思ってというのはわかる。

 だが俺が襲われることを察知して護衛を依頼したのは誰だ?

 その人物はカースドの復活を誰よりも早く察知し、かつ俺が襲われることを知っていた。つまり俺の事情をある程度認知していることになる。とゆうことは――?

 

 「あ、あとこれも返しておくね?」

 

 白銀さんはテーブル端に見覚えのある物体を置く。俺の短刀だ。

 

 「道路脇に落ちていたから拾ってきたんだけど、これは……君のモノであっているかな……?」

 

 少し確証が持てないといった風に聞いてくる。

 どうも吹き飛ばされたときに落としていたようだ。

 

 「あ……どうもありがとうございます。確かに俺のモノです」

 

 匠の短刀。そこらの店で買った安物だがクセがなく使いやすい。持ち手に少し血が固まりついているのは俺の努力の証だ。

 今となってはこれが俺の相棒といっても過言じゃない。掘り出し物があったらすぐに買い替えるけど。

 

 腰にある専用のベルトに差し込む。

 

 ふと、顔を上げると視線が先ほどよりも鋭くなっている。

 

 「今度は団長が聞きたいんだけど。記憶がないって本当?」

 

 それか……。知ってもおかしいことではない。自己紹介時に俺からクラスメイト全員に伝えたのだから。

 

 「はい、本当です」

 

 そして隠すことでもない。

 

 紅茶を飲み干し熱い液体が喉を通り過ぎる感触を楽しみながら俺は目を見て話す。

 

 それから10分かけて白銀さんにすべてを話した。一週間前からの出来事を包み隠さず。

 

 白銀さんは真剣な面持ちで聞いてくれた。そして最後にはその表情が悲しそう――というのだろうか?とにかく悲壮感が漂っていた。

 

 「そっかそっか――。そうなんだ」

 

 同情なんて――とは言わない。むしろ一緒に悲しんでくれる人がいるのなら俺は少し救われた気分になる。

 

 だが白銀さんは顔を俯かせ目元が隠れ表情が見えない。彼女は納得は出来ても吐き出したいものがあるようだった。

 

 「なんで……誰にも頼らなかったの?」

 

 当然の疑問だ。魔族に襲われたのならばまずはしかるべきところに助けを求めるか、被害届を出すべきだ。それをしないのはたぶん俺が――

 

 「――てよ」

 

 「え?」

 

 聞き逃した、いや信じられなかった。

 

 バン!白銀さんが机を立ち上がりながら叩き俺をにらむ。

 

 「団長を頼ってよ!」

 

 「へ……?」

 

 「そんな大変なことになっているなら騎士団を――団長をまず頼るべきでしょ――!」

 

 「それは……」

 

 そうだ。人間界でそんな問題が起きたのならまず騎士団に駆け込むべきだったのかもしれない。

 俺はこの一人では到底成しえない大きな問題に可能な限り孤独に戦うつもりでいた。それは大切な人の記憶がなくなった反動の一つ、無意識な自衛行動だったのかもしれない。

 関わりを最低限にすることであの悪夢のような急落する感情を味わいたくなかったのだ。

 あるからつらい。ならば()()()()()()

 

 逃げて閉じこもることで避けていたのだ。

 

 泣きそうな顔で俺をにらむ白銀さん。

 

 ――やっぱり人が悲しむ姿は嫌だな。俺のために泣いてくれる嬉しさ以上に胸がつらい。

 

 見知らぬ俺も助けようとしてくれる底なしの優しさが痛いくらいに刺さる。

 

 「団長も手伝うから。だから一緒に頑張ろうよ」

 

 「あ……」

 

 「誰かのためではなく自分のためでもいい。友達を損得、貸し借り、メリットデメリットで考えず怯えずに頼ろうよ」

 

 差し出された手を握る。温かく力強い鼓動が伝わってくるくらい頼もしい。

 

 「星本――颯太――です」

 

 「白銀ノエル。改めてよろしくね」

 

 

 

 「一人で帰れるの?泊まっていってもいいんだよ?」

 

 「枕が変わると眠れないたちなんで」

 

 あれからお互いの連絡先を交換して協力関係を築くことを約束した。

 

 それと決して無茶をせず、もし旧魔王軍幹部と戦うなんてことになったときは呼ぶことを約束させられた。

 こちらとしては巻き込むことの申し訳なさに辟易としていたが、その態度に怒られ無理やり取り決められた。

 

 そしてとりあえず家に帰ろうとしている。松葉杖まで借りてしまい本当にお礼のしようがない。

 

 「利き腕が怪我しているのに大丈夫なの?」

 

 「明日悪魔の保険医が治してくれるでしょう」

 

 めんどくさがって治さないことも考えられるが。

 

 豪勢な玄関で談笑しているとふと何か不満げなことに気が付いた。

 

 「な、なんでしょう?」

 

 「それ」

 

 「……?」

 

 「なんでまだそんなに他人行儀なの?」

 

 「あー……」

 

 「ちゃんと同年代なんだからタメ口で、さん付けもいらないから」

 

 「でも聖騎士団の団長様とか雲の上の存在過ぎて正直どう接していいかわからないんだよな……」

 

 「タメ口にならないと恐ろしいことが起きます」

 

 「ほう?どんな?」

 

 「白銀家は政界にも口がきくんだけど……」

 

 「怖いよ!!」

 

 戸籍くらいは消してきそうだな。

 何が聖騎士だよ。黒いよ。黒鉄さんだよ。

 

 「わかったよ、これからもよろしくな白銀さ――」

 

 「ノエル」

 

 「――ノエル」

 

 女性を下の名前で呼び捨てにするのすごい恥ずかしんだが。世のチャラ男はよくスラスラとできるものだ。

 

 俺の一言に彼女はにっこりと微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここで終われば美談だったのになー。

 

 「うええぇぇえぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!誰か拾ってぇぇぇえぇぇぇぇ!!」

 

 目の前に段ボールに捨てられたピンク髪の女の子がいる。

 

 4月1日22時18分35秒、メイドを拾いました。

 

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