ホロライブラバーズ『幸福論者』獲得RTA なんでもありチャート   作:かとしょう

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 昨日投稿したものを2000文字ほど加筆しました。さすがに終わり方とか伏線の張り方が不出来すぎるので。


亜人と日常

 天気は晴天、春の陽気を感じさせる陽は頭上にあり時刻がお昼時であると知らせてくれる。ぽかぽかとした陽気は始まりの息吹を感じさせる。

 ――俺の周りを覗いてだが。

 

 「は?」

 

 「え?」

 

 「ん?」

 

 氷点下の三角形の中心で冷たい汗をかいていた。何だろう、今すぐこの場から離れたい。

 前には黒髪の、右後ろに紫髪の、左後ろには銀髪の少女が俺を見据えながらにらみ合っている。

 

 「え、何この二人?ボクの高性能な介護を邪魔するの?」

 

 「スーーーーーッ、ロボ子さんが高性能かどうかはともかく、お世話なら専属メイドの(あてぃし)がやるべきなんじゃない?」

 

 「いったいいつの間に颯太君にメイドが就いたのかわからないけど、この怪我は団長が関わっているし、ここは団長がお詫びを兼ねてやらなきゃいけないのでは?」

 

 「は?」

 

 「え?」

 

 「ん?」

 

 うーん、お腹が痛いぞう!

 

 「ちょちょちょ、ちょっと待って御三方!」

 

 「颯太

 「ご主人   は黙ってて!  」

 「颯太君

 

 女の子は怖いなぁ。しかしここは折れてはいられない。なぜなら三人が三人とも自分の武器(エモノ)を取り出したからだ。

 

 「別に弁当はフォークを入れているから左手一本で食べられるし、誰かに食べるのを手伝ってもらう必要はないのですが」

 

 「「「……」」」

 

 なんでそんなに不服そうなのですか?

 散った散ったとばかりに手を振るが、なお納得がいってないようなので無視して弁当を取り出し先に食べ始めた。

 ノエルは元の席に戻り、ロボ子さんは廊下へ出ていく。

 

 「さーご主人!食べよ食べよ!」

 

 「いや帰らんのかい」

 

 なんか一人残った。我が家の誇るキングオブ駄メイドこと湊あくあだ。

 学校でそのご主人呼びはやめて欲しいのだが。まだ学校始まってから二日目なのにクラスの人から奇異の目で見られている。友達出来るかな?

 

 目の前の少女を見やる。

 笑顔で弁当の中身を頬張る少女は一歩も引かなったが、あの人外少女達とタメを張れるのだろうか?ノエルとかすごいぞ、たぶんスイカとか握りつぶせる。

 

 「……?」

 

 口をもぐもぐ動かしながら首をかしげるあくあ。

 

 「あくあはさ、何か将来の夢ってあるの?」

 

 話題に困って聞いてみた。

 

 「夢?うーん夢かぁ。つよつよなメイドかな!」

 

 「家事出来ないのに?」

 

 「ゲ、ゲームのお手伝いならできるから……」

 

 「金持ちの道楽でもそんなの雇わねぇよ」

 

 ビジョンどころか現実が見えてなかった。

 

 だが夢があるというのは悪いことではない。それが実現可能か不可能化は重要ではなく、あるかないかが人生の質を上下する。

 

 「ご主人は何か将来の夢とかあるの?」

 

 唐突にそんなことを聞いてきた。

 考えたことがなかった。生まれ変わる前も、生まれ変わった後も「今」を生きるのに必死で「未来」に目を向けたことがなかった。前ではなく下を向き続けた。

 そんな俺が考えられる夢。自由になってやりたいことは――

 

 「――幸福になりたいかな」

 

 「……何それ」

 

 あくあがクスリと笑った。

 

 

 

 放課後ホームルームが終わるとすぐに飛び出し家に帰ると特訓を始めた。内容は町内のジョギングだ。

 そろそろ休憩をしようかと思っているときに、出会いたくない人物ぶっちぎりナンバーワンに出会ってしまった。

 

 「あ……!」

 

 「ヒッ!」

 

 赤と白の混ざった和服と紙を揺らし、その存在感を現したような角の持ち主。

 

 「あの時の親切な人間様じゃないか!」

 

 百鬼あやめその人である。

 

 「これはこれは百鬼様本日もお日柄がよくご機嫌が麗しく」

 

 「ううん、余あまり今ご機嫌じゃない」

 

 オイオイオイ、死んだわオレ。

 まさかの不機嫌な鬼に出会ってしまうとか運尽きましたわ、遺産はあくあに譲ろう。父さん母さん今そっちに行きます。

 

 「死ぬときは安楽死と決めていたのであまり痛くしないでくださいね?」

 

 「余を何だと思ってるの?」

 

 まだ殺さないでいてくれるらしい。ッぺ、アマちゃんが(震え声)

 一刻も早くここから逃げ去りたいのだがこの鬼に背中を見せたくない。といううか蛇に睨まれた蛙の様に足が動かなった。

 

 「それであやめ様はいったいここで何を?」

 

 「うん、ちょっと落とし物を探しにな?」

 

 「落とし前をつけに!?」

 

 「だから言ってませんけど!?」

 

 やべぇよやべぇよ、彼女に何かしたっけ?

 あ!ロボ子さんをアシストしたせいでバトルロワイヤルで一位取れなかったことか!もう嗅ぎつけて来たとか鬼やべぇ!

 

 「あの……ロボ子さんをここに呼び出しますから俺だけは許してください」

 

 「そろそろ察したけど余のこと何か勘違いしてないか?」

 

 「ちゃんと理解していますよ。洋服の黒と赤の部分は人間の血で色を入れているんですよね?」

 

 「怖すぎでしょ!」

 

 「落とし物とは情けという感情を探しているんですよね?」

 

 「余、そんな悪人面している!?」

 

 「毎日人間の男を連れ去って殺し合わせて、生き残ったほうを絶望させながら食べてそう」

 

 「そんなことしたら普通に鬼のコミュニティ追い出されますけど!?」

 

 「地震を大地を殴ることによって止めてそう」

 

 「自然現象には太刀打ちできませんが!?」

 

 「溶岩を暖房器具にしてそう」

 

 「そ――れはしてるけど……」

 

 してるんだ。

 

 「なんか怖がられてて余すごいショックなんだが」

 

 言の葉の応酬が終わると肩を落としながらしゅんと覇気のない姿に変わった。

 さすがに偏見というか、見た目で判断しすぎたのだろうか。少し自分の固定観念というか視野の狭さを恥じなければならないだろうか。

 そもそも攻撃をされたわけでもないのに怖がっていたら何も見えてこないではないか。

 これからは自分の視野を広くしよう。

 スケールの大きな人間にならろう。

 

 「落とし物探し手伝いますよ。何を落としたんです?」

 

 「大太刀と太刀!」

 

 鬼のスケールはでっけえなぁ。

 

 

 

 「そこでロボ子さんがバーーーーン!とな?余、もう目の前真っ赤」

 

 雑談しながらあやめさんが今日通った道を逆走し太刀を探す。

 道すがらバトルロワイヤルの話を聞いていたんだが暴れっぷりがやばい。軽く50人は一人で倒したそうだ。

 なぜこの人が一位じゃ無いかというと敵が体育館に寄らなくなり居眠りしていたところ、ロボ子さんの極太レーザーを食らったんだと。

 

 バトル中に居眠りとか鬼やっべぇな。

 というかロボ子さんまたあの外れロマン技使ったのか。意外と使えるやんけ。

 

 それにしてもどうして自分の武器を落とすかね。腰に差しているだけの短刀とは違いあやめさんのは落とせばすぐにわかりそうなもんなのだが。

 

 「ところであやめさんはなんでこんな人間の町にいるんです?通学路というわけでもないでしょう?」

 

 俺の質問にバツが悪そうに頬を掻くあやめさん。

 

 「いやぁ、実はな?すごい噂を聞いて確かめに来たんだ」

 

 「噂?」

 

 「そうなんだ。人間界のこの町附近にとんでもない魔族がいるとか。なんでも旧魔王軍の幹部とか」

 

 「ッ!」

 

 魔王軍の幹部!?いるのかここに!?

 ちょこ先生が言っていた4人のうちの一人がすぐそばにいるというのか?

 

 いったいどこに、なぜこの場所に来ている?いやそもそもその情報の信頼性は?

 

 「そ、それはどこの情報から!?」

 

 「さぁ?余も小耳にはさんだ程度だからな」

 

 信憑性は皆無、だが気をつけなければならない。先日のヴァンパイア事件といい明らかにこの町に良くない傾向へ向かっている。

 もし見つけられたなら謎を一気に解明できるかもしれない。

 

 ……探すか?

 

 その思考を浮かべたとたん右手の小指に痛みが走る。

 小指に巻かれていた赤い鎖が具現化し、俺の体に巻き付き足も動かせなくなりその場で倒れこむ。

 

 「おわぁ!なになになに!?」

 

 あやめさんがビクッと体を震わせる。

 

 忘れていた。ちょこ先生との約束である魔法の鎖。

 俺が魔王軍を探そうと意思を持ったせいで条件を満たしたせいで発動してしまった。厳しいなぁ!

 

 「余が取ってあげる!フン!」

 

 「いだだだだだだだだだだだだ!!!やめてやめてやめて!」

 

 あやめさんが鎖を引っ張るが、ぴったりとくっついた鎖がさらに食い込んでいたい。

 というか鬼の腕力でビクともしないって強力すぎでしょ。軽く死ねるよ。

 

 「なんか鎖をうまくつかめないんだけど。空間そのものが固定されているみたいだ余」

 

 「ちょこ先生曰く、隔絶された空間がうんたらかんたらだだだだだだだだ!!」

 

 無理やり干渉すると痛みが増すから本当にやめて欲しい。

 

 「これ魔法なんだけど魔族のあやめさんはこれを戻す方法や、魔法そのものを解除する方法を知らない?」

 

 「あ!そういえば太刀は一回家に帰ってきたときに置いてきたんだった!」

 

 「話聞いていらっしゃる!?」

 

 なんも聞いとらんどころじゃないだろう、あえて無視していないか?

 あやめさんはそのままジャンプすると一息に10mはある家の屋根に着地した。

 

 「付き合わせてすまないな人間様!今日はありがとう!」

 

 「嘘だろ!?マジでこのままどっか行くつもりなのか!?落とし物のことを思い出したら俺のことを忘れていない!?脳の記憶容量どうなっているんだよポンとかそういうレベルじゃねえぞこれ!30年前のゲーム機かよ!」

 

 俺の叫びも虚しくあやめさんはそのままどこかへ消え去っていった。やっぱり鬼と人間は分かり合えないわ。

 

 時刻はもう夕暮れ。探し物のために路地裏に入ったため、ここに人が来るのは何分後だろうか?そもそもその人がガラの悪い人なら財布だけとか抜き取られるのではないだろうか。

 体が縛られ、足と腕が怪我して使えない以上あおむけの状態から体を起こすこともできない。

 

 「詰んだ?」

 

 まさか現代日本で青空の下、緊縛で人生詰むとは思わなかった。

 

 しかし神はそこまで薄情というわけではないらしい。

 

 「あらら。こんなところに憎き仇敵発見」

 

 聞き及びのある声が鼓膜を震わせる。この声は――

 

 「私をあんなにボコボコにした人がまさかこんな攻めたプレイをしていたとは」

 

 つい昨日、俺が意識を途切れさせる前に戦いそして勝利して見せた獅白ぼたんだ。

 

 

 

 「いやー、緊縛プレイとはなかなか」

 

 「だから違うって言ってんだろ!」

 

 場所は移って俺の家からも学校からも近い公園だ。結構広く池でボートの貸し出しをしていたり、草花の手入れがされていたりとデートスポットとして人気とか。

 あれから獅白ぼたんさんに担いでもらいここまで避難させてもらった。さすが百獣の王、力持ち。

 

 夕陽を見ながら一息入れる。帰りが遅くなったがあくあは心配しているだろうな。いやゲームしているかも。

 

 「……この間はごめん」

 

 夕陽に目を細めながら獅白さんはそんなことを言う。

 

 「正直舐めていたよ。だから返り討ちにあった」

 

 どうもバトルロワイヤルでの出来事のことを言っているらしい。

 

 「自分の力を過信し、相手の力量を勝手に低く見積もることであんなにあっさり負けるとはねぇ。恥ずかし」

 

 「あれは俺が自分を犠牲にした奇策です。そもそも犠牲を出さなければいけないまで追い詰めた獅白さんの作戦と射撃術を誇るべきでしょう」

 

 「ありがとう……」

 

 しんみりとした雰囲気の中、地平線の向こうに太陽が消えるとガラス製の電灯が点く。同時に鎖が空気に溶けるように薄くなり消えていった。

 

 「おっと……」

 

 手首足首をぐるぐると回し感触を確かめる。これからはしっかりと鎖の魔法について意識しておかないとな。

 

 「運んでいただきありがとうございました。今日は帰ります」

 

 「ねぇ!」

 

 帰路につこうと足を進めると呼び止められた。

 振り返ると風にたなびく髪を手で押さえながら、こちらにまるで楽しくて仕方がないというように笑顔を向ける。

 

 「ありがとうね、嬉しかったよ」

 

 そう言って猛スピードで走り去ってしまった。

 

 獅白ぼたんへ向けた言葉は決して嘘ではない。彼女は強敵で自分を捨てることでしか勝利を拾えなかった。

 だがそれが彼女の一助になったのならこれほどうれしいことはない。

 

 俺は止めていた足を踏み出した――

 

 

 

 

 

 

 

 「――本当にやり返せて嬉しかったよ」

 

 

 ドサァァァァ!!

 

 「ああああああああああああああ!!!??」

 

 踏み出した右足から地面という絶対の存在が消え、前へつんのめる。慌てて手をつこうとするがそのまま柔らかい地面は崩れ去り俺を奈落へ誘う。

 間違いなくこれは――

 

 「やーい引っかかった!」

 

 獅白ぼたんの落とし穴だ。

 

 「私負けっぱなしって性に合わないからやり返さないと気が済まないんだー!あ、さっきのは嘘ね!」

 

 亜人差別主義になりそう。

 

 

 

 奈落から助けてもらった後、獅白ぼたんは落とし穴を作り直し板で誰も落ちないよう塞ぎカモフラージュした後そのまま俺の前から消えた。

 俺はキレ気味に落とし穴の周りに、目印代わりにポインターを差し込み二度と引っ掛からないと誓った。

 

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