ホロライブラバーズ『幸福論者』獲得RTA なんでもありチャート   作:かとしょう

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 久しぶりの投稿なんで初投稿です


月蝕の妖精 4

 陽が地平線の先へ隠れようとする黄昏の時。俺の決意が自然の中に溶け沈んでいく。

 言った。言ってしまった。

 自ら安寧への切符を破り捨てて、地獄へ片足を突っ込んだ。

 

 やっぱり怖い。が、────そこに後悔の念は全くなかった。

 俺は俺としての一歩をやっと歩き始めたのだ。

 責任や対面、あるべき姿ではなく、ありたい姿を俺はとる。

 

 「戦え……だと……?まさか貴様ごときが我と戦うと?」

 

 「そう言ってるだろうが。脳の認識機能がぶっ壊れているのか……、ってもともとカラッポか!」

 

 イラ!

 

 そんな擬音が聞こえてきそうだった。

 初めての経験なのだろう。格下相手に逃げられず、自暴自棄に戦いを挑むのではなく、煽り散らかすというのは。

 そこから来る驚きと、イライラは俺の唯一の突破口だ。

 

 デュラハンは握った大剣を震えるほど力を込めると、地面に突き刺した。その動作だけで衝撃波が巻き起こり、木々を大きく揺らす。

 

 「フフフ……。佳い……!佳いぞ!その無謀をも超えた偽称と勇猛!このデュラハンが断って見せようぞ!その負傷を持ちながら我を相手に吠えるその喉から割き!肺を潰してまた同じことを呟けるのか見ものだな!」

 

 叫ぶと同じタイミングで黒く、禍々しい────そんなありきたりな言葉でしか測れない────圧倒的な力が奴を取り巻く。俺の人生で出会ってきた人たちの『力』を合わせる。そんなありえない総量でも奴の立っている場所が見えない。

 手汗があふれ、震える。どうも体が言うことを聞かないらしく、思考がおぼつかない。

 

 分かってしまう。あと2秒後に俺は死ぬ。大上段に構えた体験が振り下ろされ、俺は唐竹割にされる。

 ただ殺意を放つだけでその者の(DEAD END)を予期させる。そんなの死を何回も与え、日常化させるくらい繰り返してきた証。心をすりつぶした結果。

 ならば────

 

 「オイオイオイ。まだ俺はやるなんて言ってないだろう。騎士が不意打ちとか恥ずかしくないんか?」

 

 その心を手玉に取る。

 

 「「「は?」」」

 

 デュラハンだけでなくノエルや不知火さんからも同音が発せられる。

 

 「いや怖いわぁ。戦えと宣言したらいきなり斬りかかろうとするんだもん。なんだこいつ怖ぇよ」

 

 「え……え?」

 

 「普通戦いというのは、ルールを決めてその中でやるもんだろう?これ国同士の戦争でもそうだぞ。それなのに目の前の騎士様(笑)ときたら……。恥を知れ!恥を!」

 

 「え、これ我が悪いの?」

 

 あーやだやだ恥ずかしい!見てるこっちが火が出そうだわ!

 

 「しょうがないから常識しらずの騎士様に俺がルールを決めてやるか!」

 

 「この実力差と人質までいる状態でなんであそこまで強気でいられるのだ?」

 

 よしよし。ここまで持ってくることができた。

 あとはルールだ。いかに俺に有利でかつ相手に悟られないようにするのか。ここで俺が出すルールにどれだけ乗っけられるかなのだが……一つ懸念点がある。

 

 それはデュラハンがそれを守るのかどうかだ。

 出会ってまだ数分だが相手の性格は大体理解できる。

 それは忠義、騎士道、公平を重んじていることだ。

 

 奴はもうこの世にいない『魔王』とやらのために脱獄してきた。

 また、最初にノエルとの戦いに満足していたことから正々堂々と強敵にぶつかることを望んでいる節がある。ならば敵との約束事も馬鹿正直に守るだろう。

 

 だがもし俺が追い詰めることができたら?もしかしたら「騎士道」ではなく「忠義」をとり反故にすることも考えられる。

 ましてや俺だ。あの化け物に勝つためには絶対に手段を択ばない。奴の琴線に触れることを間違いなくする。

 「貴様がそうならば我も」とか言われたらどうしようもないのだ。

 

 どうする?どうすればいい?

 

 じっとりと滲み額から流れる汗を手の甲で拭う。

 手で────

 

 「あっ……」

 

 そうか!

 ある!もしデュラハンが使えるならそれは確実にある!

 

 思考をつなげろ。俺があいつに勝つ方法を考えろ。何か最近にヒントはなかったか?

 

 『魔界──魔族──アンデッド──悪魔──学園──バトルロワイヤル──吸血鬼──白と黒──神社──巫女──骨折──養護教諭──魔法──機人──聖騎士──エルフ──大剣──メイド──不調──公園──獣人──』

 

 ……限りなく。限りなく細く小さい可能性だがある。針の穴を通すような作戦だが、たったひとつだけ俺が勝つ方法がある。

 

 それには俺の弁舌がどれだけ通用するかがかかっている。

 

 「勝負は────」

 

 喉がカラカラで喋るのも痛い。でも、やるしかない。

 

 「勝負は今から36時間後にここで行う」

 

 「36時間?今ではなく?聞くに堪えんな」

 

 「これはそっちの状況を鑑みて言っているんだぜ?」

 

 「……なに?」

 

 「気丈にふるまって地面に軸が入っているような立ち姿だが、その実立っているのがやっとなんじゃないか?ノエルとの死合で追い込まれたのでは?」

 

 「…………」

 

 「沈黙は肯定と受け取るぜ。さて、正直に話すと俺はまだお前を倒すに至れていない。だが一日半あればそれ相応の実力をつけられる」

 

 「貴様が一日で我を倒すまでになると?世迷言を抜かすな」

 

 「逃げるんですか?」

 

 「上等だァ!」

 

 プライドが高い奴は乗せやすくて助かる。

 

 「そしてもう一つ。その二人の内から一人開放してもらう」

 

 「人質を解放しろと?ふざけるのも大概にしろ……。これからの勝負に関係なかろう。そも、貴様が一人でも人質の解放をしたことに満足し逃げるやもしれん」

 

 「まぁそういうなよ。俺がこれから戦えるようになるには力を貸してほしい人がいるんだ。それに逃げるかもしれないというなら……締め付ける方法がある」

 

 「ほう?」

 

 俺は左手を胸の前に置くと強く握りしめる。

 

 「あるだろう?宣誓した言葉を順守させる鎖の魔法が?」

 

 そう、俺が言っているのはちょこ先生がかけたあの鎖の魔法だ。

 

 「あの魔法の存在を知っているとは見かけによらず博識だな。あれは我が魔王軍の中でも使えるのは片手で数えられる者のみ。しかし効果は絶大だ」

 

 知っているさ、身に持って体験をしているのだから。その効果と────俺も見落としていた穴を。

 

 「俺が宣誓するのは二つ!まず一つは、戦闘はこれから36時間の午前4時に今この場と全く同じ位置で!相違ないか!?」

 

 「構わん」

 

 「二つ目!俺はここに一人でお前と一対一で戦うことを誓う!」

 

 「良かろう」

 

 「そしておまえにも誓ってもらおう!一人で正々堂々と戦うこと!そして人質に傷一つ付けずにここに連れてくること!最後に人質に逃げられないように魔法、あるいは手錠をつけるとき俺でも簡単に解けるようにしろ!お前を倒した後解けなきゃ意味ないからな!」

 

 「おもしろい……」

 

 俺の言葉に心底楽しそうに声色を弾ませる。

 やはり奴はバトルジャンキー。それも正々堂々と一騎打ちを好む正統派だ。

 その戦いの清潔さを好み、相手の精神力を愛でる。いうなれば潔癖症に近いかもしれない。

 

 もし、俺がここで逃げていたら奴はその姿を嘲笑しながら背中を斬っていたかもしれない。俺の命を助けるためにも、彼女の命を助けるためにも踏みとどまって正解だ。

 だが、あいつの性格を見ていれば分かる。これは正解だが最善ではない。

 

 「その高潔さに敬意を表し、約定を果たそう」

 

 デュラハンの手が黒く変色し、濃く鋭い魔力が包み込む。

 魔力は形を変えて、鎖ではなく楔となり周囲を取り巻く。

 

 「だが!我は他の同胞のように甘くない!」

 

 「────!!」

 

 楔は俺の周囲を取り巻くと左胸を突き刺した。

 

 「ゥ……」

 

 痛みはないが心臓が何かに振れているという、今までにない感覚が俺を襲う。骨を通してと鉄と鉄がぶつかり合う不協和音が頭蓋を反響する。楔は断続的に俺の左胸に入り込み綺麗にしまい込まれた。

 

 「我は縛るなど甘いことはせぬ。その楔は宣誓を不意にした瞬間に具現化し、心臓を引き裂くであろう」

 

 「なる……ほどね……」

 

 やはり、な。

 あいつがこのままおめおめと返すわけがないとは思っていたけど、特級の枷をはめてきやがった。

 これで俺の行動も消極的にならざるを得ない。厭らしいことこの上ない。

 

 「さて……では我はこれにて去るとしよう。最後に聞いておくがどちらの捕虜を選択する?金髪のエルフか銀髪の聖騎士か」

 

 胸の違和感に四苦八苦しながらも息を整える。酸素を送り込んで今一度自分の考えが正しいのか自問自答する。

 普通に考えれば一択だ。魔族に対する力を急ごしらえでも手に入れるには聖騎士に師事するしかない。彼女レベルにはなれずともインスタントな力は彼我の差を大きく埋めてくれる。

 でもそれは勝ち目0を1にするだけだ。

 

 ならばやるしかない。これからやるのは100に1つを拾うのではなく、0か100かの大博打。失敗すれば死ぬが成功すれば必ず勝てるハイリスクハイリターンのひび割れた可能性に賭ける。

 

 そのために必要なピースは────

 

 「不知火フレア、俺と来い。お前の力が必要だ」

 

 

 

 「…………」

 

 陽が陰り街灯のスポットライトを渡り歩く。

 俺の返答の後、デュラハンはよほどの予想外だったのだろう。2,3回俺の意思を聞きなおして俺の意思が変わらないことを確認して、ノエルを連れて闇に消えた。

 

 俺は残されたフレアさんにあごをしゃくり着いて来るように伝えると自宅に向けて足を動かしている。それから一回も後ろを振り向けていない。というのも背中に突き刺さる殺気が怖い。

 

 「なんで……?」

 

 一定のリズムで鳴らされていた靴音が止まり、一拍の空白に続く。

 

 「教えてよ……なんでなの?」

 

 「なんでって……なにが……?」

 

 「────ッ!決まっているでしょう!?なんでノエルじゃなくて私を助けたの!?」

 

 閑静な住宅街に金切り声が貫く。

 ゆっくりと振り向くと、手を震えるほど握りしめて瞳に紅蓮を宿した姿があった。

 

 「別に大それた理由があるわけじゃない。それに言っただろう?あいつを倒すにはノエルではなくあんたの力が必要なんだよ」

 

 「できるわけないでしょう!?」

 

 キンッ……、とかすれながらも甲高いつんざく音が鼓膜を震わせる。

 

 「あいつを倒せるわけないでしょ!?人間の最高峰で魔族の天敵である白銀ノエルが倒せなかった化け物をアンタがやれるの!?無理に決まっているでしょ!?」

 

 痛いところをついてくる。

 というよりもそれが正常な判断だ。俺が今から一日死に物狂いで特訓しても俺の勝率は0だ。可能性を0から1にしたいならノエルから聖なる力について学ぶべきだ。俺の采配に彼女は怒っている。

 

 そしてそれ以上に彼女は────

 

 「どうせならノエルを助けてあげて欲しかった…………。私なんかじゃなくてノエルが生きるべきなのに…………」

 

 「…………」

 

 選ばれてしまったという罪悪感と生への渇望に負けてしまった自分にかつてない怒りと羞恥心でぐちゃぐちゃなのかもしれない。

 

 「まだノエルが死ぬとは決まっているわけじゃないだろう。俺がデュラハンを倒せば────」

 

 「だから!!それが無理だって言っているでしょ!!」

 

 目じりに涙をためながら叫ぶ。

 

 「アンタはあいつのことをわかっていない。実際に戦っているから知っているわけじゃない。私たちエルフ族はアイツの恐ろしさを誰よりも知っているんだ」

 

 両手で肩を抱くフレアさん。

 

 「アイツは私たちエルフ族が生んでしまった最も高貴にして邪悪の化身。世界のシステムを見て狂月の花の体現者。アイツは……人魔戦争で人族の英雄が()()()()()()()()()()

 

 「なんだって……?」

 

 「言った通りだよ。かつて何度もぶつかり合ったけど人族の英雄はアイツだけは倒せなかったんだ。今まで監獄で大人しかったのは主君の魔王が討たれたから喪に服していただけ。この意味が分かる?」

 

 「…………」

 

 驚いた。化け物だ怪物だと感じていたけれどもそれほどとは思わなかった。

 

 でも、なぜだろうか。

 自分でも違和感を感じるくらい衝撃の度合いが小さい。この話を、どこか────。

 

 「今からでもいいからアイツを探し出して交渉しよう。ノエルと私を交換するの」

 

 「それはできない。デュラハンがどこにいるのか見当もつかないし、見つかってもあの堅物が一度取り付けた約束を変えるとは思えない。貴重な時間が無駄に成りうる」

 

 「そこまで予想できるならなんで私なんかを選んだのよ……。感謝されると思ったの?エルフが長寿だから少しでも長く命の恩人としてありたかったの?」

 

 「…………」

 

 ついに瞼から涙が一筋頬を流れ落ちる。

 

 このまま彼女が落ち着けば、冷静になれば現状を理解しノエルを助ける唯一の道である俺に手を貸してくれるだろう。

 でも、大切な友人のために泣いている少女を前に俺は隠し事をし続けられるほど心が強くなかった。たとえ軽蔑されてしまうとしても俺の心の内を語らずにはいられない。

 

 「俺は、────二人を置いて逃げようとした」

 

 「────」

 

 「二人が倒れているのを見て、デュラハンの姿を見て真っ先に逃げようとしたんだ。でもできなかった。それは二人を置いていけないという強さじゃなく、逃げる背中を見られたくないという汚い弱さで、だ」

 

 「…………それは……」

 

 「でもな……聞こえてきたんだよ、諦めるなって。

 俺は記憶を失ってほとんどのことを覚えてないんだけど、それでも胸の内に残る炎となって鼓舞する『ナニカ』があった。

 思い出そうとするだけで涙が出てくる祝福が。見るだけで勇気が湧く光景が。風の中でも負けない強い意志が。

 まだ終わっていない立ち上がれ、人の強さこそ希望だと俺を優しく叱るんだ。

 正直に言えばノエルを助けたい。俺の大切な友達だから。

 でもそれ以上に、あの絶望の塊のような、邪悪の根源のような魔界の騎士団長(最強)に人の強さを見せたい。そう思ったんだ」

 

 呼吸もはさまず、相手の遮りも許さないといった風に鬼気迫る思いで自分の丈をぶつける。

 

 「何それ……。じゃあアイツに勝って人間の強さって奴を証明したいってこと?」

 

 「ああ」

 

 「人間の最強(ノエル)でも勝てなかったのに?」

 

 「それを言われると少し痛いんだが……」

 

 少しの沈黙と共にフレアさんが「ほんとうにバカ……」と小さくつぶやき、涙を拭いながら立ち上がる。

 

 「アンタにそんなバカなことを言った大馬鹿は何を考えているのかな……」

 

 「さぁな。俺の原動力そのものだが、俺自身だって半信半疑さ」

 

 「バカだよ、アンタは。……そしてそんな馬鹿に賭けようと思った私もね」

 

 「それって……?」

 

 「いいよ気に入った。私たちを助けるためではなく自分のために戦うというのなら気兼ねなく、後腐れなく手を貸すことができる」

 

 フレアさんは手を差し出してくる。

 

 「改めて不知火フレア。フレアでいいよ」

 

 「星本颯太だ」

 

 今ここに、それぞれの思惑は違えどただ一つの目的のために同盟が成された。

 デュラハンを倒す。その偉業の為だけに。

 

 「さぁ早速何をするの?私を選んだ理由があるんでしょう?特訓?それともエルフの秘術?」

 

 「あぁ時間はないからな。じゃあ早速────

 

 

 

 

 ────家帰って休むか」

 

 

 「────は?」

 




 久しぶりに活動報告更新しました。

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