ホロライブラバーズ『幸福論者』獲得RTA なんでもありチャート 作:かとしょう
「ねぇ!本当に休んでいていいの?」
星本宅でベッドに胡坐をかく俺に声を荒げるフレア。
壁に背を預けながら大声を出すのをやめて欲しい。安い賃貸だから壁が薄くて音が伝わりやすいんだよ。
先日なんか下の階の鈴木さんからえっちビデオの音が漏れていたんだぞ。そもそもこの壁の薄さのせいでメイドを雇うことにもなったし(一敗)
「そんなことを言われてもな……。今日できることはもうほとんどないんだよ」
「だからってだらだら過ごす理由にはならないでしょ!?貴重な時間が~って言ったのはそっちじゃん!」
「逆だよ。明日からは────といよりも明日からじゃないと動けない理由があるんだよ。そもそも動き出したら1秒たりとも休めない。作戦のために今は休養を取るべきなんだ」
「でもほら……。今からでもできることとかあるんじゃないの……?戦場となる公園の下見とか、罠を張っておくとか色々とさ」
「結構えげつないことを言うのな……」
エルフってもっとこう、清廉潔白というか、正しさを貴ぶ種族だとイメージしていたけどそんなことはなかったみたいだ。
そもそも目の前のエルフが服装ガバガバだしな。このハレンチが!
「あの公園は小さいころから遊んでいたからよく理解しているよ。そして罠はダメだ。俺はあいつとの契約で
デュラハンが潔く簡単に退いたのは俺の人間性を信頼していたからでは決してない。契約の魔法への信用────俺が決してこの魔法を破れず約束を守るしかないと考えているからだ。
それは概ね正しい。俺にはこの魔法を打ち破る方法はない。
だからこそこの魔法の危険性を理解しようとしてなかったのかもしれないがな。
「それに
「……?どういうこと?」
「すぐにわかるさ」
問答を終えると立ち上がり襖をあけて物色する。一つ探したいものがあるのだ。
デュラハンとの出会いから感じていた違和感と既視感の正体。そしてその違和感から立てた作戦が本当にあっているのか答え合わせがしたい。
もし勘違いだったら作戦を少し軌道修正しなければならない。
服や布団から俺の子供の頃のおもちゃなどを取り出していく。がらくたを一個一個丁寧に床に並べていく。フレアにも手伝ってもらい襖の奥へ奥へと進み、俺の歴史を、家族の思い出を掘り出す。
そして、ついに発見した。古びた和紙の箱と、中に収められた一冊の本を。
「あった……」
表紙が破られているため、筆者も題名もわからない。だがこれこそ今の俺にとって値千金の情報の塊。
はるか昔の戦争について書かれた英雄譚。最強の英雄が世界を救うありきたりなキラキラ。
そう────
「人魔戦争の歴史書だ」
『その姿はまさしく兇にして怨、邪にして姦。
黄昏の境から訪れた黑の重力だった。
エルフ族の最大の禁忌にして欽慕の存在。
生物の枠から外れた月の御阿礼。
私の対となる色彩を放散している姿に思わず 死 をも予感した。
襲い掛かる彼に私は初めて一歩引いた。
──破れている──
これにより、我らは痛み分けという形になった。
どれだけ攻撃を加えても自分の実力では打倒できなかった。
彼の覚悟を知った。
彼の悲しみを知った。
そして理解したことがある。彼の清々しいまでの精神が。
死がある。その虚ろの瞳には死がある。
だからこそ誰よりも厳かで優しい。
もし人を真の意味で救うのならば彼しかいないだろう。
私は力でもあり方でも勝てなかった。
彼と出会ったときから私は不安定になってしまった。
失った右腕を抱きながら想う。
彼だけでなく彼らを殺すことができない』
「さて。ここからは情報のすり合わせと行こうか」
これからこの本の内容と、エルフに伝わるデュラハンの伝承。そしてフレアが実際に相対して感じたことを合わせてどれくらいの戦力かを測る。
「教えてくれフレア。そもそもデュラハンとは何者なんだ?」
「……私も詳しくは知らない。ただ森の子供にとって有名な怪談で都市伝説の一つなの」
「怪談というと?」
すわりが悪そうに足をもじもじと動かすフレア。
「人間にも夜遅くまで起きているとお化けが来るみたいなことを言うでしょ?同じように森ではしつけのために頭の無い亡霊が襲いに来るぞって話すんだけど……」
……よくある話だ。
子供の無知と幼さを利用して────言い方は悪いが────守るべきルールを教える。
ごはんを残したらもったいないお化けが出るとか、そういう類の話だ。
有名な話だとなまはげだろうか?家にやってきて「悪い子はいないか?」と子供を怖がらせる。もし子供がおいたをすれば親に「なまはげ」がやってくると脅しをかける。こうやって子供をコントロールする方法、システム。
だがこれが通用するのは幼少期までだろうが。人間は成長するにしたがって社会を学び、そして自然を学ぶ。そしていつか気が付く。
この世に怪談で語られるような話は全部嘘っぱちだと。
そしていつからか実話は噂へ堕ち、恐怖は娯楽へ変容する。
とゆうか日本人のHENTAI性を舐めてはいけない。近年の八尺様ブームとか、恐怖をおかずにしてるような国民性だもん。こんな国で怪談なんてしようものなら翌年の同人誌即売会で売られる。
「で、だ。エルフの中でどういう話が伝わっているんだ?」
「聞いた話だとデュラハンは追い詰めれば追い詰めるほど強くなる能力を持っている。ノエルは最初は優勢だった。でもダメージを与える度に魔力が跳ね上がり、鎧の強度が増した」
「……やはりか」
本にも少しだけ記述がある。デュラハンはどれだけ追い詰めてもそれから力が増すという能力を持っている。『誓約』と呼ばれるそれは二度と負けないという誓いが形になった精神に依存する概念防御。
人族の英雄も苦しめられたと書かれたいる。
そしれ何よりも鬱陶しいのが、能力の最奥。
倒す寸前、殺すギリギリまで追い詰めた時デュラハンは真の力を発揮する。
すべての攻撃をはじき、その速さハヤブサの如くと書かれている。
この覚醒時にはさらに硬く、唯一の弱点である鈍重さが消えるということだ。
まるで物語の主人公のようだ。
「……さすがに、なぁ」
俺にかつての人族の英雄ができなかった防御を突破できるだろうか?
いや、考えるまでもなく無理だ。俺の細腕じゃ、片手で扱える細い短剣では強大な壁にかすり傷をつけるだけだ。その奥にある命までは届かない。
愛用の短剣を抜く。天井からの照明を受けて反射するその光は命を奪う独特の輝きをしている。でもこれからの相手のことを考えるとその光もくすんで頼りなく見える。
よくよく観察してみると刃こぼれしている部分や、汚れがついていたりする。
ちょうどいい。相棒の手入れをして明日の決戦の準備をしよう。
「武器……。そうか武器か……」
改めて武器をいじって思い出したが、魔法で武器でエンチャントする技術もあったな。雀の涙くらいの可能性だが役に立つ可能性もあるし、聖騎士を探して聖力を付与してもらったりしたほうがいいだろうか?
その旨をフレアに伝えてみる。
「……………」
だがフレアから返事はなかった。
膝を抱えて縮こまり顔を乗せている。
今にも空気の溶けて消えてしまいそうな存在感。希釈された姿がフレアの心をそのまま表しているようだ。
だが、場の静まり返った空気に耐えられなくなったのか、それとも自分の中で確信ができたのか。フレアは口を開く。
「……おそらく今の時代でデュラハンを知っているのは、小さいころから話を聞いて実際に出会った私だ。だからこそいえることがあるんだけど、ノエルの聖力は効き目が薄かった。
アイツは────────そもそも魔族じゃないんだ」
「はぁ……はぁ……いや、きっついわこれ」
愛しの我が家から1km離れたところに神社があった。町内では有名なそこそこ大きな神社で年末年始は行列ができているのを見れる。
その境内で死にかけている人が一名確認できる。俺です。
「なんで……本殿は……こんなに……階段が長いんだよ……」
「ほら、だらだら歩かない!」
神社の手すりに体重を預けながらカメのごときスピードで上る。息を切らしながら膝をつく俺とは反対に息切れ一つしていないフレア。
「ここに用事があるって言ったのはそっちなんでしょうが。ほら歩いた歩いた!」
「てめ、この……!こっちは怪我人なんですけどォ!?」
「エルフなら両足骨折しても登れるよ」
「森暮らしは違うなぁ!」
いつもは散歩のついでに神社の鳥居をくぐってすぐの場所でおみくじを引くだけだったから知らなかったが、まさかここまでだとは思わなかった。年始にお参りに来る人は何を思ってこのクソ長い階段を上るんだ?
「ひぃ……ふぃ……」
息もたえだえで階段にへばりつくような形で何とか頂上へ上る。
まさか決闘の前にこんなところで死にかけるとは思わなかった。
それにしてもここまで体力なかったっけ?毎日の散歩とか歩き回っていたんだけどな……?
「それにしてもなんで神社になんて思っていたけどまさかこれを狙って?」
いまだに地面に這いつくばっている俺を尻目に周囲を見渡すフレア。なんだか昨日の不安そうな消えそうな気配は今は少し和らいでいるように感じる。
それもそうだろう。なんたって今日は────
「桜神社例大祭だ」
ここで決闘に必要不可欠のアイテムを狙う。
「むくつけきムサイ野郎どもー!勝ちたいかぁ!」
「「「「「オオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォ!!!!」」」」」
「お守りが欲しいかぁ!?」
「「「「「オオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォ!!!!」」」」」
「ならば這いあがれぇ!!ここに桜神社例大祭を始めるにぇ!!」
「……なにあれ?」
「
櫓の上で拡声器でただでさえデカい声を耳に痛いくらい大きくして叫ぶ巫女さん。
そしてそれ以上の声量と熱量を持つ男たち。
近所の人間なら知っている桜神社4月の非モテ救済イベント。
その名も「的だけじゃなくあの子のハートも射止めろ!ドキドキ!流鏑馬大会!」である。
これは神社が定期的にやる例大祭でも特に盛り上がりを見せる大会の一つ。
この大会の優勝賞品でもらえる「幸運のお守り」は持ち歩くだけでツキまくることで有名なのだが、地元でも有名なある50年物の非モテがお守りを手に入れた次の日に彼女ができたことで事態は一変。一気にモテアイテムとして世間に広がった。
この日のために一年間を流鏑馬の練習につぎ込んでいる人も多いらしい。
それを聞いたとき俺は『その暇に服装整えたりコミュニケーション能力鍛えて普通の出会い目指したほうが確実じゃね?』と思ったが言わぬが花なのだろう。
この大会の参加者は男性が9割以上を占めて観客席は女性が多い。女性も非モテの空いている物件を探すいい場所なのだ。
閑話休題。
重要なのは男性ばかりのムサイ空間だということ。
そう、俺はフレアをこの非モテの
「じゃあこの彼氏いない歴221年感を出すためのThe!!喪女!!っぽい服に着替えてね?あ、これは非モテ感を出すためのクソデカ眼鏡でといとす!?」
俺の頭にゲンコツが落ちる。
「ふざけんな!あの時ノエちゃんじゃなくて私を選んだ理由がこんなアホみたいな祭りに参加させるため!?アンタ頭おかしいんじゃないの!?」
「だってエルフなんでしょ!?弓得意なんでしょ!?」
「そ!こ!じゃ!ねぇ!」
「あっやめてぇ……!誰かー!!殺人ダークエルフがぁ!」
「私はダークエルフじゃなくてハーフエルフだって言っているでしょうがぁ!?」
「アッ────!?」
祭りの賑わいもものともしない叫びが境内中に響き渡った。
「本当に作戦にあのお守りがいるんだね?」
「ぼん゛どう゛でず……」
ひと暴れして落ち着いて話を聞いてくれるようになったフレア。
「前が見えねぇ……」レベルで殴られてうまく話せない俺。
とりあえず何とか誠心誠意お願いしてお守りがどうしても必要なことを理解してもらった。
「しょうがないなぁ。あまり人間の多いところに行くのは好きじゃないけどしょうがないか……」
「結局了承するなら殴ってないで早くいけよ」
「うーん、なんだってぇ!?」
「
まぁ、フレアの気が乗らないのも分かる。
親友を助けるために力を貸してほしいと言われて来たら世間で有名な恋愛脳垂涎アイテム取ってこいと言われるとか。
人間が苦手なのに輪に入ってこいとか。あまつさえその輪の中身がこじらせた人間の負そのものとか。
キレられても文句は言えないのだ。
だがこればかりは俺も譲れない。あの「幸運のお守り」が無ければ作戦どころではない。お守りがあって初めて作戦の土台ができるのだ。
フレアには悪いが一位を取ってもらわないと作戦も俺の命も散る。
しかしフレアがやる気を出してくれた。
弓の扱いに並ぶ者がいないとされるエルフ族ならばっちり優勝してくれるだろう。勝ったな、ガハハ!
「ねぇ颯太。流鏑馬ってことは馬に乗るんだよね?私経験ないけど大丈夫かな?」
「……………………」
今の内に遺書でも書いておこうかな?
あくあ「ただいまー……ってえええぇぇぇ!!??ちょ、ちょちょだれだれだれ??」
颯太「お!いいところに!はいこれ」
あくあ「え……なにこれ」
颯太「一万円。これ好きにしていいから今日どこか適当なところで泊まってきて」
あくあ「そんな急に……!そもそもあの女は誰!?」
颯太「いいからいいから!それじゃあ」
あくあ「ご主人!?ちょっとご主人!?ドア開けてよー!」
あくあ「ご主人に彼女がいた……?そしてわざわざ
あくあ「…………(思い至る)」
あくあ「────(赤面する)」
あくあ「ご主人の浮気者ぉ!?慰謝料は五億だからぁ!!」
その日、泣き顔でマンガ喫茶でゲームするメイドのコスプレをした子が発見されてtwitt〇rで有名になるがそれはまた違うお話。