ホロライブラバーズ『幸福論者』獲得RTA なんでもありチャート 作:かとしょう
ゴールデンウィーク(4月29日から5月5)はストックが切れたけど毎日投稿目指します。
まだ3月も前半だというのにここはただ突っ立ているだけでも汗が浮かんでくる。今さっきまで屋内にいたからか輝く太陽がまぶしくて仕方がない。ひび割れたコンクリートは砂がまぶしてあり滑りやすい。走っても全力を出し切れないだろう。『目』を使って裏側に隠れることはできるが、この状況で逃げるのはよくないと誰かが俺の自由を縛り付ける。
目の前には肌を服ではなくぴっちりと吸い付いている何かで覆っている女性が怪訝そうに見つめてくる。
「ね、ねぇ?大丈夫?」
「なにがでしょうか肌色のまぶしいお姉さん。痴女するのなら俺以外でお願いしたいのですが」
「痴女じゃないよ!これはこういう装備なの!」
「ではナンパですか?すみませんコンクリートに足跡が浮かぶ女性はちょっと…総体重を1トン未満にしていただけないと対象外なのですが…」
「そんなに重くないよ!てゆうかずいぶん範囲広いね!?」
「俺の守備範囲は身長154cm、誕生日は5月23日、一人称がボクであいさつがはろーぼー以外の純人間なので」
「狭いようで広いね!?とゆうかそれボク以外じゃん!」
面白い人だなぁ。
ゆったりとしながらもしっかりと聞き取りやすい声で語り掛けてくる。
「もう……せっかく心配してきてあげたのに!猛スピードでダンジョンに向かう人がいるから怪我しちゃうかもって思ってたらまさかこんなになるなんて。とゆうか鍵は僕が持っているから開けないはずだったのに」
どうもこの人?は俺のことを心配してきてくれたらしい。そういえば道すがら声を聴いたような気がしなくもない。おせっかいというかお人よししらしい。
「それはどうも御親切に。しかし見てくださいよこの傷一つない健康的な肉体を。ボディビル大会に出れば優勝できてしまうのでは?その時はぜひ客席からヤジ飛ばしてください。」
「いやずっと肘の関節が曲がっちゃいけない方向に曲がってるんだけど。君人間じゃなくてボクと同じロボットじゃないの?
そういえばさっきから腕の調子がおかしいと思ったら肘が180度向いてはいけない方向に向いている。どうもさっきやった外法の副産物らしい。痛みは感じないし大丈夫だろう。とゆうかどんどん現在進行形でねじれて戻っている。
「ドリルみたいでかっこいい!地面掘れそう!」
「感想それでいいの?」
コンクリートに手を尖らせて押し当ててみた。少し掘れた。マジか。マジだ。
「……」
「……」
「えぇ……」
「なんで自分で試して自分でドン引きしているの」
「普通出来るわけないでしょ常識でモノ言ってくださいよ」
「出会ってから君が常識的なこと一回もやってないけど!?」
そうこう言ってる間に腕は元通りになった。指を動かしたり肩をぐるぐる回すが痛みも違和感も感じない。
「本当に腕大丈夫?とゆうかあのダンジョンではなにもなかった?」
一応まだ心配をしていてくれるらしい。本当に優しいのが伝わってくる。
「大丈夫ですよ。怪我もしていませんし、そもそも魔物と出会ってすらいません」
「……まぁ鍵がないのにどうやって入ったの??とか聞きたいことは山ほどあるけど」
すると目の色が突然変わる。キュインキュインと機械音を立てて俺の頭からつま先をなめるように眺める
「失礼だけど君とても弱いね。筋肉も平均的だし指の形から何らかの武器を長いこと使っているわけでもなさそう。なにより才能とか将来性が皆無」
「突然こんなディスられることある?」
あまりにもあんまりだった。人が人だったら泣いているぞ。
そんな俺の心境は知ってか知らずか彼女は言葉を紡ぐ。
「そんなに弱いのに君はどうして入ったの?死に場所を探したりとか?」
「……ッ!そんなわけないでしょう!!」
「え!ご、ごめん。そんなに怒るとは……」
思わず大きな声を出してしまった。スージーちゃんはびっくりしたのか尻尾を下げくるくるとその場を回りだした。
相変わらずの自身の沸点の低さに嫌気がさす。
命を自ら絶つなんてそれは俺が一番許せないことだ。命を絶って苦しみから逃げたとしてもそれはおいてかれた人を悲しませるだけだ。何より死んだら終わりだ、何も残らない.
「いえ、急に大声を出してしまいすみませんでした。ただ中に入ったのは悪だくみでもなく自殺をしに来たのでもありません。それだけは本当です」
そう口にすると彼女は緊張が解けたのか大きくあくびをする。そして朗らかに笑い足元で寛いでいたスージーちゃんを撫で始めた。
「改めてはろーぼー。ボクの名前はロボ子、高性能ロボットだぞ~」
「パソコンで例えると?」
「Core i9、5.3 GHzのRAM容量が64GBくらい」
「すげぇ!未来行ってる!」
ふっふぅーんと擬音が付きそうなくらいドヤ顔と決めてくる。若干うざかった。
「ホログラムや映像を映すこともできるぞ」
「マジで!?ちょっとこのR18サイトの動画を……」
「あ、ごめんコンプライアンスプログラムのせいでそういうところアクセスできないんだ」
「は?カッス粗大ゴミって何曜日?」
「ひどい!!」
手のひらを返すことに神速の領域まで踏み込んだ奴がそこにいた。
自慢でもないが強いものに取り入りYESマンとしてへりくだり、靴も舐めることに抵抗感はない。座右の銘は「
知る由もないことだったが荒地には生物は少なく、人懐っこく愛玩用の動物は彼女にとって新鮮だった。
相変わらずスージーちゃんを撫で続けるロボ子さんだったがふと何かに気づいたのか目を細める。そして恐る恐るといったように言葉を発し始めた。
「もしかして毒沼の宝を狙いに来たの?」
「そうですよ。もう手に入れちゃいましたけど何かまずかったりします?」
「ううん、いいの……そっかあれなくなっちゃたのか。そっかぁ、そっかそっか」
撫でる手は止めず一定のリズムを奏でながら、小さくか細い声で口にした。
何度も自分に言い聞かせるように飲み込むように納得するように。嬉しそうな悲しそうなどっちつかずの表情で彼女は撫で続けていた。なぜ彼女があんな表情をするかわからない。宝を持ち出したことに嘆いているのか?しかしそんな気配ではない。
「よいしょ」
掛け声とともに立ち上がると、先ほどまでの曖昧で消え入りそうな気配はどこえやら、快活な表情を浮かべた。つま先で砂を撫でてジャリジャリと音を立てながら問いを投げかける。
「君学生だよね?ボク、ホロライブ学園に通っているのだけど、君もここら辺に住んでいるならもしかして?」
「ええ。俺もホロライブ学園に今年から通うんです」
「そーなんだ。よろしくね。じゃあ君には先輩からこれを授けよう!」
意気揚々とさっきまでのノスタルジックな表情が一転笑顔を咲かせた彼女はポケットから手のひらより一回り小さい紙切れを取り出した。
「これは?」
「私の連絡先だよ。ここに電話してくれれば携帯ではなく、直接私本人につながるよ。しかも秘匿回線付き!」
「いります?その機能」
「何か困ったことがあったら電話して。必ずどんなことでもやってあげるよ」
「ん?今何でもするって言ったよね?」
「言ってない。それとこれ」
おもむろに服に手を入れると鍵を取り出した。
「これは?」
「ダンジョンの鍵だよ。今まであそこに行く人を止めていたけどもうその必要もなくなったしね」
「え?宝ももうないしこれから行く予定もないし個人的にゴミ押し付けられてる気分なんですが」
「ゴミ!?いいから受け取ってよ!これでも中にはまだまだ貴重なものいっぱいあるんだから!特に最下層には読めば一発で魔法が使えるようになる魔術書があるんだから!レアだよ!レア!」
「マジで!?どんな魔法?」
「……物をMP切れるまで浮かせ続ける魔法」
「『
本当にゴミを押し付けようとしていた。魔法「FLOAT」といえば魔法使いでもない俺でも知っているくらい有名だ。
その効果は単純にして明快。無機物なら大きさに制限があるものの、どんなに重いモノでも空中に浮遊、固定させることができるというものだ。これだけなら日常生活でも使える便利魔法と思えるがこれには落とし穴が存在する。大陸より大きく、地球の裏側まで続くような穴が。
この魔法はまず無機物、つまり生命を浮かばせるなんてことはできない。要は戦闘中に相手に使用し一方的にタコ殴りなんてできない。
では日常ではどうだろうか?
これもおすすめできない。
この魔法は三分間しか持続しない。きっかり三分経つと勝手に魔法が切れて重力に従い落ちてくるのだ。しかもこの魔法
おまけに使用する条件は、残存魔力のすべてという。
もしこの世界に神がいるのならばおふざけで作ったか、
あまりの産廃っぷりと使用目的が一つしかないとして、つけられた名前が「
「あげるから!あーげーるーかーらー!」
受け取ってしまった。正直鍵だから場所を取らないので持っているのは構わないのが。今の俺では正攻法から入っても中の敵に撲殺されるだろう。使うことはないだろうし家の机にでも入れておこう。
「あとそれ、なぜか壊せないんだよね。一回電動のこぎりで1時間切断を試みたんだけど傷一つ付かなかった。」
「オーバーテクノロジーにもほどがある」
たしかに目を凝らすとコーティングされたばかりの様に傷も汚れもなかった。もしかしたこの世界にたまに見受けられる破壊不能物かもしれない。
気づくと太陽の位置は地面に近くなり足元から長い影が伸びていた。
「やっべぇ!スーパーの特売が!今日はここまでで」
「うん。ここら辺明かりがないから夜は何も見えなくなるから、早く帰ったほうがいいよ」
横になって眠っているスージーちゃんを起こし町に向けて足を動かした。すると後方から声をかけられた。
「ねえ!今日はなんだか楽しかったよ。人もあまり寄り付かないのにここでお話したの久しぶりだったし、君面白いし。学校であったら仲よくしよーねー」
「……」
オレンジ色の空をまぶしそうに目を細めながら手を大きく振るロボ子さんに対して、俺はただ声を返すこともなく手を振ることしかできなかった。
別に恥ずかしかったとかそういう理由は全くない。
同年代と話したのはひどく久しぶりの気がする。彼女とのやり取りはとても楽しかった。それでもこれ以上話すべきではないと誰かが俺に言う。
彼女はきっと俺の嫌いなタイプと真逆だと思う。しかし……。
何かこの先自分が取り返しのつかないことをするようなそんな危機感。胸に残るのは歩くのすら煩わしくさせる焦燥感。
頭の後ろがチクチクと痛い。あぁ、そうだ。経験則で知っている。こういう時はロクなことが起こらない。
確かめるように腰につけている
頭痛のたびに俺の中から何かが零れ落ちる。勝手に体が動く。
『目』は夜になるほど世界の不気味さを映す。
俺は――
――――もう二度と彼女と会えない気がした。