12番街に起きた悲劇と喜劇のゲーム実況 作:室星奏
「え~皆様、良い朝ですね」
私たちはその後、教室みたいな部屋に集められ、座らされました(半強制的に)。特に嫌な気持ちはしませんでしたが、恐怖と不安は感じます。
ですが、私と同じ状況に置かれた人がもう何人かいた事だけは安心でしょうか? 孤独だったら、絶対に死んでましたよ、私。
「……怖い顔が数人いらっしゃいますが……今は置いておきましょう。それでは、さっそくこれから共に生活と苦楽を共にする仲間の自己紹介と行きましょうか」
パンッと叩き、私の方を指差す。あ、これは私からという事でしょうか?
「お名前と得意ゲームジャンルを、どうぞ? 元気な声でっ」
「ぁ、は、はーい」
とりあえず誘導には従ったほうがマシですよね。断ったら何されるか溜まった物ではありません。皆を簡単に誘拐できるような奴です、相当な手練れのハズ……。
警戒するにこしたことはありません。
「えー、皆さん、初めましてっ! 桐ケ谷アサヒっていいます! 得意ゲームはUFOキャッチャー! どんな景品も、500円以内で取るんですよ? あ、他にはアニメとか人形とか好きで~……」
「長いわッ!!」
「ふぇえ!? だ、だって時間制限は言われてないですよ~!!」
私の後ろにいたレン君からの鋭いツッコミです。痛い、言葉の刃物が痛すぎます。一応優しい人な筈なんですけどね、コラボしましたし。
……あ、でもこういう状況ですしね。ストレスが溜まったりすることもおかしくない話ですね。
でも人にはぶつけないでいただきたいっ!
「お前、本当に呑気っつーかなんというか」
「笑顔が取り柄です!」
「あーはいはい」
「アサヒ様は、パンダに遠距離攻撃をぶつけた事で一気に注目を浴びた人物です。顔面を安全に攻撃するのは高難易度でしたので……」
何やら凄い事だったようです。いやあ、照れますね。UFOキャッチャーやっててよかったと思います。あ、今度FPSゲームの方も拝借しましょうか。少し興味が出てきました。
でもこの状況でゲームはできるのでしょうか? 出来なかったらちょっと病んでしまいそうです。
「えーそれでは次、お隣と行きましょうか。姫嶋さん、貴方ですよ」
「お? 俺っすか?」
(アサヒと似た様な奴だ……)
次に立ち上がったのは、今時ファッションともいうべきポップなジャケットを着た黄髪の男の子です。
私に似たような性格そうです。仲良くなれると良いのですが。
「姫嶋カヤ。好きなゲームはスポーツゲームッ。たっとーえーばー、最近はやりのスピリッツイレブンとか? サッカーゲームっす!」
「ありがとうございます。カヤ様はその愉快な口調で語られるコミカルな実況が売りの人物です。皆さま仲良くなれるといいですね」
「っす! よろしくっす! ……この状況にはちょい納得はいかねぇ~っすけどねっ!」
語尾を強めながらニヤッとホーさんを睨みます。あ、やっぱとても怖そうです。いや、もしかしたら素じゃないかもしれません。
スポーツゲームはやったことないですけど、今回を機にいろんなゲームをしてみたいですね。
「……さて次は」
「俺だろ? クソ馬……」
「っひ!」
声を出したのは、カヤ君の隣の席に座る大柄な黒髪の男と、その後ろにいる小柄な銀髪の女の子です。
クソ馬って、いや確かに馬の被り物してますが、いきなりそれはどうかと思うんですけれど……。女の子の方は臆病なんでしょうか? 護ってあげたいですね。
「お、兄ぃさん……そんな声を荒げなくても……」
「お前は黙ってろ。おいクソ馬! 俺達をさっさと解放しろ、クソが!」
「……乙斬様、散々申し上げましたが、それは致しかねます。それに、この自己紹介はその為でもあるのですよ? 身の程をわきまえた方が……」
「ッチ! モデルガンは奪われるし……」
「だ、だからやめましょうよ。あ、じゃぁ私が代わりに……」
「おい! シホ!」
兄ぃさんと呼んだってことは、あの二人は兄妹なんでしょうか? じゃあ私の守護は必要ないですね。最も兄さん凄い怖そうですけど、大丈夫なんですかね?
兄の静止をよそに、シホと呼ばれた少女は前に出て一礼してくれました。
「……乙斬シホです。得意ゲームはアドベンチャーゲーム全般ですけど、特に……あの……ヤクザとかの仁侠系が……はい」
「おいシホ、付き合う必要ねえって!」
「で、でもでも!」
兄妹そろってトンデモない人達のような気もします。いや、人の趣味はそれぞれですからね。性格ではとても仲良くなれそうな気がします。
「でもじゃねぇって、こいつぶん殴ってさっさと出――」
「るせぇぞ兄貴! こいつぁ今何とかできる修羅場じゃなか! はよぅ自己紹介せんかァ!!」
「……ぁ、はい」
あ、やっぱとんでもない人の様です。
「シホ様は時々、こういった演技をされる事で有名なのです。生で見る事ができて、私幸せでございます」
「……ぇ、ぁ、す、すいません……」
「ッチ。俺ァ乙斬ダイア。シホの兄貴だ。得意ゲームはサバゲ、以上ッ!」
ダイア君と仲良くになるには、少し厳しそうな気もします。でも、いつかは心を開いてくれると信じる事にします。
一緒に食事するなりして……隣にシホちゃんがいれば、何とか溶け込めたりしないでしょうか。
「あ? UFO女、何見てんだ」
「あ、なんでもないです」
「ふふ。では続いてシホ様の隣、ですかね」
「俺かよッ!」
レン君の出番です。
「響谷レン、レースゲーム十八番。以上」
つまらない自己紹介でした。
「響谷レン様はそのクールな実況がウリですね。女性人気も比較的高いとか、なんとも妬ましい限りで――」
「うっせ。懐かれる身にもなれっつーの」
「はい、次隣ですね」
私はレン君の隣に目をやります。……実はさっきから気になっていたのです。だって、レン君の隣にいるのは……。
「……がう?」
ライオンの着ぐるみなんですから。声は女の子なんですけど。
一応ライオン君は見たことあります。確か獅子劫チャンネルって呼ばれる所で配信してるライオンのバーチャルユーチューバーなんですけれど。
「がう~、百獣の王である獅子劫ユイを誘拐するとはいい度胸がう……ッ!」
「し、獅子劫さんっ!? へ!? え!? 本物!?」
「は? おいあれ合成だろ!?」
「え、あの、あの……え?」
皆が皆、同じ反応をしました。誰もが合成だと思うことでしょう。着ぐるみで実況なんて、誰が思うのでしょうか。
しかし、今考えればよくできた編集技術だと思いました。バーチャルユーチューバーだと思ってしまう程の透過技術、感服です。
「獅子劫様。得意ゲームがまだですよ」
「うるさいがうっ! 早く出すがうっ!!」
「……肉、夕食から無くしますよ?」
「うぐっ……! に、肉が……? ……得意ゲームは、動物育成……がう」
(((屈した……)))
肉が好物だという設定でしたが、アレはどうやら本当だったんですね。屈する程、肉に依存しているのでしょうか? それはヤバイ話です。
私もシチューが無かったらどうしましょうか? 頼んで作ってもらう事にしましょう。そのためにも、機嫌を損ねちゃダメですね。
「では次お隣へ……」
「私の番ね。さっきぶりって顔が多いけれど」
先ほど出会った樋宮さんです。可愛らしい服装で、カードを武器にする結構野蛮な人物です。
でもかっこよかったですよ。
「樋宮アリス。トランプはもちろん、OCG等も含めたカードゲーム全般を好きでやってるの。宜しくね」
「ありがとうございます。ちなみに先ほどのゲームで、アリス様は最多討伐記録を持っております。その外見とは裏腹に、戦闘技術は非常に優秀なんですね」
「何それ凄いムカつくんだけど~?」
「はい最後、内海様ですよ」
カードを取り出し威嚇した瞬間に話を切り替えました。分かりやすい程の変わり身ですね、恐ろしいです。
さて、最後の内海さんですね。あれ、どこにいるのでしょうか?
「おや、内海様ー? 内海様?」
「……もしかして、机の下で寝てる子ですか?」
シホちゃんの声に反応して、全員机の下を除く。するとそこには白色のフードを被った青髪の女の子がすうすうと寝息を立てて寝ていた。
「内海様!? 起こしたいところですが、少しためらってしまいますね……仕方ありません。彼女は内海アミ様、寝てはいますが耳は常時動いているという謎の体質の持ち主であり、リズムゲームや音ゲームを得意としていらっしゃいます」
「……寝てるけど、いつもこんななのかな?」
「アリスは会話したことあるから知ってる。何時も寝てるよ」
何時も寝てるって、それ少し不便じゃないですかね。ゲームするときどうするんですか。
「皆さま、ありがとうございます……それでは早速――」
第二ステージの選出と行きましょうか。