白兎の誓い   作:天城八雲

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1話 出会い

 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか?

 凶悪なモンスター達が蔓延る巣窟。

 その先広がる未知なる光景。

 そして、可愛くて、綺麗なる女性との交流。

 何より、幼い頃からおじいちゃんに読んでもらった、英雄譚に出てくる英雄への可能性。

 その全てが、この迷宮都市オラリオに。

 だからこそもう一度言いたい、ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか?

 

 

 

 

 

 結論

 僕は間違っていました。

 この迷宮都市オラリオに来て六日間。遂に宿屋に泊まるお金が無くなり、何としても今日中に【ファミリア】に入らなければ野宿になってしまう。

 結果、本日十六度目の【ファミリア】の門前払いを受け、街頭の隅に座りこんでしまった。

 この六日間、基本的に門前払い会ってももらえず、会ったとしても僕を見た瞬間、サポーターとしても使えないだろうと断られてしまった。

 規模の小さいファミリアならと思い行ってみると、団員を増やす余裕がないと申し訳なさそうに断られてしまう。

 希望を見いだせず、どんどん落ち込んでいく僕の心情とは逆に、今日のオラリオの空は曇一つない晴天であった。

 そんな空が、今の僕にとっては心身共に眩しく、自然と顔が俯いてしまう。

 

「・・・これから、・・どうしよう」

 

 出会いを求めて、オラリオにやって来た。

 子供の頃からおじいちゃんが話聞かせてくれて大好きになった、英雄譚の英雄達の様な英雄になりたくて。

 何より、おじいちゃんや、短い期間一緒にいたあの人達(・・・)と過ごした日々の様に。

 あのかけがえない――。

 うつむいていた僕は、よろよろと立ち上がった。、

 ふと横を向くと、裏通りに続く道があった。逃げる様に、裏通りを向かおうかと脳裏に浮かぶ。

 

『堂々と、真っ直ぐ生きなさい』

 

 声は大きいわけではなかったが、凛とした声で言われた言葉を思い出す。

 今の自分を見たら、あの人達は何と思うだろうか。

 落ち込んでいるとはいえ、自分から暗い方向に進んで行けば、怒られるならいい、でも悲しい顔させてしまうかもしれない。それだけは駄目だ。

 

「・・もう少し、頑張ってみよう」

 

 そう思い、僕は再度歩き始めた。

 しばらく歩いていると、僕のお腹から音が鳴り響いた。

 

「あ~、朝のパンから食べてないや・・・」

 

 ただ、財布の中にお金は残っていない。しかし、そんなのは知らないとばかりか、クルクルと訴えを起こし続けてくる。

 

「・・・!?」

 

 ばっと、後ろを振り返る。

 振り返った先には、こちら見ている人はいなく、周囲にもその様子は見られなかった。

 しかし、確かに自分の中では見られていた感覚はあった。こちら見定める様な無遠慮な視線を。

 

「あの・・・」

「!!」

 

 意識外からの突然な声掛けに、つい反射的に身構えてしまった。

 声をかけてきたのは僕と同じ、ヒューマンの少女だった。

 どこかのメイドかお店の人だろうか、若葉色の服に、エプロンを身にまとい、薄鈍色の髪をポニーテールの様にまとめている。

 髪と同色の瞳が僕の挙動に驚きを示していた。

 

「す、すみません」

「いえ、こちらこそ急に声をかけてしまい、すみません」

 

 慌てて頭を下げる向こうも頭を下げてきた。

 

「あの~、僕に何か用でしょうか?」

「その、お腹の音を聞いていしまって。空いていらっしゃるのかなと」

 

 聞かれていた。言われた瞬間、自分でも分かる位、顔を赤く僕。

 

「私、そこのお店で働いていつんですが、もう少しでオープンしますので、良ければ、お食事いかがですか?」

 

 彼女が指す方向からは、開店前なのに美味しそうな料理の匂いが漂って、さらに空腹を刺激してくる。

 

「・・・その、ありがたいお話なんですが、今手持ちのお金があまり無く、また今度行かせてもらいます」

 

 噓である。手持ちのお金は全くと言っていいほど残っていない。それでも、限りなく0に近いプライド何とか絞り出しての返事(断り)だ。

 少女は両手を絡めながら、考える素振りをすると、こちらににこっと笑いかけてくる。

 

「それでしたら、また次も来て下さるのでしたら、私が上手いことサービスをしていくので食べていきませんか」

「え!!、良いんですか!あっ、でも、あなたに迷惑をかけるんじゃあ・・・?」

「このまま空腹のあなたを見過ごしてしまうと、私の良心が痛んでしまいます。ですから、私のためと思って」

「ずるいなぁ」

 

 そんなこと言われたら断るに断れない。何より、こんな可愛い女の子に笑顔で言われてしまうと。

 これがおじいちゃんなら、「性格の良い町娘最高じゃぁぁ!!ベル、お持ち帰りするんじゃあ」っていいそうだなぁ。

 返答に困っていると、少し意地悪そうな笑みを浮かべ、一歩前に踏み込んできた。

 

「大丈夫ですよ。いずれはきちんと私にもいい結果に繋がりますから」

「良い結果にですか?」

「はい、お店の料理が気に入って、今回以降も来て下さったら結果、売上に繋がり、私のお給金が増えますから」

 

 女の子にここまで言わせておいて、断るのは良くないよねおじいちゃん。

 にこっと笑う店員さんを前にして、僕は初対面の人に対する壁みたいなものを、引っぺがされてしまった。

 

「それじゃ、お言葉に甘えさせて頂きます」

「それでは、私が勤めている豊穣の女主人へ入りましょう」

 

 終始店員さんは僕の事を笑ってくれていた。その笑顔が心地良く、【ファミリア】への入団を断られ続けて、落ち込んでいた僕の心を少しだけ軽くしてくれた。

 僕は思い出したように先導している店員さんに向かって、言う。

 

「僕の名前はベル・クラネルって言います。貴女のお名前は?」

 

 彼女はこちらを振り向き、にっこりと微笑んだ。

 

「私はシル・フローヴァです。ベルさん」

 

 こうして僕と彼女は、ダンジョンの外。このオラリオで出会いを交わした。

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