屑が行くダンジョン物語   作:仁611

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食堂に行くと、そこにはダンジョンで出会った少年がおり予想通り彼がベル・クラネルだった。

 

ベルくんの奇怪な行動は、どうやら綺麗な人に助けられた事で気が動転して逃げてしまったらしい。今回はどうだったって…。

 

 

「ほああああああああああああああああ!本当にあの人が同じファミリアだぁぁぁぁぁ!?」

 

 

と言って逃げようとしたが、俺は食堂の入り口にいる為当然ベルくんの襟首を捕まえた。『ぐえっ』と言う少し可愛そうな声を発していたので直ぐに手を離した…。

 

結果、一瞬だけ浮いたベルくんを離したのだから当然落下する。『ゴンッ』と言う音が打ち付けた後頭部からなり、ベルくんは床をのたうち周り、痛みが引いた頃に話し掛けた。

 

 

「ごめんね。ベルくん」

 

「あれ?僕はベルくんのこと話した覚えは無い筈だけど」

 

「ええ、リヴェリアさんにダンジョンで聞きました」

 

「あっあの!ごめんなさい…助けて貰っておいて逃げてしまって、それとありがとうございますアールヴさん!」

 

「ふふ…凄く素直で真っ直ぐ、聞いていた通りです」

 

 

俺の発言で、ベルくんは林檎の様に赤くなってしまったが、ヘスティアの助け舟によってどうにか普段通りまで回復した。ヘスティアから粗方の紹介がなされ、俺はベルくんの純粋さに好感を抱いた。

 

その日は俺が購入した食材を使って夕食を摂り、若干ベルくんの異常な程俺を意識した態度に違和感はあるものの、思春期真っ盛りな少年だからこんなものだと納得した。

 

 

 

入浴後、俺からステイタス更新したが殆ど伸びは無いがレベル10だから当たり前だなよとヘスティアに言われた。ベルくんの更新が終わり、何故か不機嫌なヘスティアが俺を執務室へ呼び付け、どうしたのか聞いて頭を抑えてしまった。

 

ヘスティア曰く、ベルくんは俺を女性だと思っていて惚れているっぽいらしいし、スキルには【憧憬一途】(リアリスフレーゼ)などと言う成長促進スキルが発現してたとか…。

 

俺が女性である事を否定出来ないヘスティアは、乳房の膨らみを俺の意識で女体化出来る事を説明してる為、男性器を気にしなければ女性とも言えるからこそヘスティアは不機嫌だった。

 

だからと言ってベルくんに俺が両性である事を告げ、彼の可能性を摘み取る事を躊躇い、俺に言われのないジト目を向けて来ている。俺からしたらベルくんの気持ちは憧れだと思うし、特に今すぐ変に刺激しない事自体は賛成だ。

 

ヘスティアとの話し合いでベルくんへのスキル秘匿は決定し、俺がヘスティアの恋路を邪魔する気が無い事を告げると、先程までチクチクした視線が嘘の様に「レガリア君を僕は信じてたさ」と言う我が主神に少し呆れた…。

 

 

 

 

 

 

翌日、リヴェリアさんに責任持って預かって貰っていたドロップ品を受け取りに行くと、お礼と言う事でロキファミリアのメンバーがバックパックを持ってくれるそうだ。

 

確かにバックパック7つ分だと、3つは積み重ねて何とかなるがそれでもハイエルフにそんな行為をロキファミリアには出来なかった。最悪荷台を引くのも有りだろうけど、結局俺にそれをやらせる訳には行かない様だ。

 

まず向かったのがギルドだが魔石全てを担当アドバイザーに渡し、待ち時間を気にしていたらギルド職員が午後までに精算してくれると言い出した、その好意に甘えた俺はドロップ品や採取品を売りに行く事にした。

 

 

《へファイストスファミリア》

・鉱石(ミスリル・オリハルコン・アダマンタイト)

・ゴライアスの硬皮

・ヴィーヴィルの鱗

・木竜の爪と牙

・【アンフィス・バエナ】の鱗

etc…

 

《中小ファミリア》

・宝玉樹の貴石

・ティアードロップ

 

《ディアンケヒトファミリア》

白葉樹の葉(ホワイトリーフ)

・人魚の生き血

・ユニコーンの角

・カドモスの被膜

 

《自分用》

・ヴィーヴィルの血

・カドモスの泉水

・ユニコーンの角

・バロールの牙と硬皮

・カドモスの牙と鱗

・鉱石全種

 

 

へファイストスファミリアの後に商業系ファミリアに寄り、最後にディアンケヒトファミリアへ向かうと、アイズ・ティオネ・ティオナ・レフィーヤに遭遇した。

 

入り口前で簡単な挨拶を済ませて一緒に店内に入ると、ディアンケヒトファミリアの看板娘と言われる【戦場の聖女】アミッド・テアサナーレが丁寧な対応をしていた。

 

俺はロキファミリアのメンバーの最後尾だった為見えていなかったのか分からないが、アミッドさんの視界におさまると誰もが通るフリーズをした。

 

 

「お〜い!アミッド〜大丈夫なのぉ?」

 

「少しだけ待ってあげましょうティオナ」

 

「そうですね…レガリア様を見た方は、大体こうなってしまいますから仕方ないです」

 

「うん。レガリアさん、綺麗…だから」

 

 

俺は何とも言えない気持ちになるが、客観的視点から見れば仕方ないと諦めるしか無かった。アミッドさんが現実に戻って来たのか再起動が完了したらしく、何も無かった様にその話題には一切触れ無いので誰も振らなかった。

 

 

「本日は冒険者依頼の報告をいただけると言う事でしょうか?」

 

「ええ。泉水を届けに来たわ」

 

「そう言えばさ、レガリアさんは何でディアンケヒトファミリアに来たのぉ〜?」

 

「私は、カドモスの被膜やユニコーンの角を買い取ってもらいに来ただけです」

 

「「「へ(は)(え)!?」」」

 

「マジで凄〜い!?「ちょっとティオナさん失礼ですよ」ええ〜でもレガリアさんって畏まられるの嫌いっぽいよ?」

 

「ええ、気軽に接してもらった方が嬉しいです」

 

「分かった…そうするね?レガリア」

 

「あっアイズさん!?」

 

「レフィーヤさん、気持ちは嬉しいですが気にしないで下さい。一般種族の失礼に当たらないなら、基本的には問題無いですよ?」

 

「はい!はい!じゃあ私も改めて宜しくね!レガリア〜呼び方はティオナで良いよ〜」

 

「では、私もティオネで良いわ…妹は少し失礼があるかも知れないけれど宜しく、レガリア?」

 

「あう〜っ…レガリア様、呼び方は他のエルフの先輩方の事も有りますが、是非レフィーヤと呼んで下さい!」

 

「レフィーヤは気合入れすぎだよ〜まあ、そう言うとこが良いとこだけどね!」

 

「お話しの途中に申し訳ありません…ディアンケヒトファミリア所属アミッド・テアサナーレと申します。因みにですが、貴方様が『人神レガリア様』でしょうか?」

 

「ええ。自身でそうお応えするのは気恥かしいですが、私がレガリア・リヨス・アールヴです。今後とも宜しくお願いします」

 

「ねぇねぇ!?アミッドも、もしかして『妖精王レガリア』の読者なのぉ〜?」

 

「お恥ずかしながら…」

 

 

そこから始まった記憶に無い知識を引き出す内容達は、黒歴史とまでは言わないけど数々の元レガリアの英雄譚…。知識から生まれる齟齬を訂正しながら何故か他の客まで質問する朗読会の様になってしまったのだ。

 

 

『妖精王レガリア』

 

どこで産まれ何歳なのかは誰も分からないが、どうしてやって来たのかも誰も知らない、妖精王(ハイエルフ)の人類救世の物語。世界はまだ未熟で、神々が架空の存在だった時代の古代の英雄。種族に偏見を持たなかったレガリアは、『原初の水』通称原初の湖の方角から来たと言われている。

 

時代は怪物が大陸を覆い隠すほど地上を彷徨っていた。彼が訪れた先々で倒される強大な怪物達、レガリアは皆に必ずとある森を指差してからこう言った。

 

「あなた方の安住の地はそこにあります」

 

多くの伝説と一緒にレガリアが残したこの言葉、妖精王レガリアには多くの冒険者が描かれていたが、どれもこれも必ず違う種族を助けて行ったのだ。

 

そんなレガリアも、時が経つにつれ人々の生存圏が広がると共に神秘的な森へと姿を消した。だがそんなレガリアは必ず人類の窮地に立ち上がり、当代の英雄が存在しなければレガリアは必ず現れた。

 

災害に獣害、疫病などでもレガリアが現れ人類を滅亡から救って行ったと言われてる。武力を誇る英雄は多く居るが、知識で人類を救い続けた英雄はレガリアだけだ…。

 

 

 

 

そんな物語を俺は聞かされ、アミッドさんがやたら俺を尊敬した風に見るのは命を大事にするからだろうか?ディアンケヒトファミリアの店舗では、一般人も多く来店していた様で小さな子供を連れる母親が子供の頭を撫でて欲しいと頼まれ、俺は嫌な気持ちすら湧かずに撫でてあげた。

 

漸く店内が落ち着き、レフィーヤは自分が悪く無いのに猛省したように謝り、ティオネがティオナに変わって謝罪する。来店から既に2時間経過しているのだから仕方ないが、レフィーヤの謝罪はちょっと行き過ぎている為思わず頭を撫でてしまった…。

 

頬をリスの様に膨らませたアイズが、何故か俺の手を自分の頭に乗せてレフィーヤと同じ様にする様催促して来た。ヒリュテ姉妹はアイズの行動が可愛いが故に「「可愛い(わね)」」思わず呟いた。

 

 

 

 

無事にドロップ品を買い取ってもらえ、予想最低価格から上方修正された売り上げの数々、合計金額だけでも小振りなお城が買える金額らしい。

 

9750万ヴァリス

 

 

即貯金へ回す予定だが、今日はベルくんの歓迎会を開こうと思い多めに持参しようと考えた。そんな帰り道、急に話し掛けられて驚いたものの、振り返った先には銀色の髪に灰色の瞳と言うあどけなさがまだ残る美人が立っていた。

 

 

「あの…魔石、落としましたよ?」

 

「……何故、嘘を吐いたのですか?」

 

「ッ!ごっごめんなさい!?本当はそこにある『豊饒の女主人』と言う居酒屋の客引きをしてまして!それで、困って……嘘を吐きましたが、そこに悪気はありますが悪意はありません!因みに私の名前はシル・フローヴァです…宜しくお願いします」

 

 

余りにも弾丸言い訳を聞きシル・フローヴァと名乗る彼女を観察していた。噂程度には豊饒の女主人を知っている、フレイヤファミリア元団長が経営する飲食店だとか…。

 

そもそもガッツリ『豊穣』を意識させる『豊饒』と言う文字、シル・フローヴァとは北欧神話に登場した神フレイヤの偽名だ。同一人物かは分からないが、バベル最上階から神の視線を感じている。

 

まあ神フレイヤは奔放だが無謀では無いだろうし、『豊饒の女主人』自体はただの飲食店だから良いかと思い、彼女に今夜行く事を伝えたが、次に嘘を吐いたら二度と信じない事を伝えた。

 

 

「今夜お待ちしてま〜す!」

 

 

そう言って手をブンブン振ってくる彼女に若干毒気が抜ける、ホームに着くまで視線を感じていたので、振り返り軽くお辞儀をしておいたが視線の種類が若干柔らかくなった。

 

神フレイヤは美の女神としてオラリオでも有名な神様だ、性に奔放で自由気ままな性格だと北欧神話では語られていた筈だ…。

 

今後神フレイヤからの接触が少し億劫だが、自身と言う特殊な存在を視界に入れないなど神フレイヤには絶対無理だろうな。面倒ごとではあるけど、これも運命だと諦めて対応出来るだけ情報を集めておこうと決意した。

 

 

 

 

 

 

夕食時になり、ヘスティアとベルくんを連れ立って『豊饒の女主人』へと足を運んだ。噂通りで店内は清潔な上店員の清潔感にも好感が持てるお店だと思っていると、シルさんがこちらに気付き足早にこちらへ近寄る。

 

 

「いらっしゃいませ冒険者さん!3名様でよろしいですか?」

 

「ええ…名乗り遅れましたがレガリア・リヨス・アールヴです」

 

「本当に来て頂けて嬉しいですレガリアさん!因みにお連れ様はファミリアの方と神様ですか?」

 

「僕はヘスティアファミリアの主神ヘスティアさ!さあさあ店員君、案内を頼めないかい!」

 

 

 

テーブル席へ案内された事で漸くベルくんの自己紹介が叶う、シルと言う小悪魔系女子にベルくんはタジタジだったが、ベルくんLOVEヘスティアフィールドによってどうにか守られ、赤面しながらシルの過激なスキンシップに耐えていた。

 

途中シルさんが、再度嘘を吐いてしまう事に成りかけた女主人であるミアさんとのやり取りも無事乗り越え、我々ヘスティアファミリアは盛り上がっていた。

 

ロキファミリアが来店して10分後までは…。

 

神ロキが来店したと知るや否や、ヘスティアが文句言いに行こうとするのを止め「折角こちらも盛り上がってるのに、ヘスティアが問題を起こしてしまうとベルくんの歓迎会は台無しですよ?」そう伝えるとご機嫌にベルくんを甘やかしていた。

 

 

 

「なあ!アイズそう言や昨日、遠征帰りで5階層の『ほぁぁぁぁ』だかなんだか叫ぶ声聞こえてたか?」

 

「えっと、ミノタウルスが逃げ出した件?ですか…」

 

「そうそう、あん時聞こえた叫び声だよ!どうせ糞牛に追い掛けられて逃げ出す雑魚の声だろ!マジで情けないゴミがいたもんだよな」

 

「辞めないかベート……ミノタウルスを逃したのは我々であるのだから、謝罪する事はあれ酒の肴にする話しでは無い!」

 

「出たよ、糞エルフの戯言が…屑を屑と言って何が悪いぃ!あんな冒険者が居るから俺達冒険者の品位がさがんだろ!」

 

 

俺は心底切れていた、ヘスティアにベートを連れてくるから神威全開しろと命令した…。ヘスティアは最初は意味が分からなかったが、ベルくんの青ざめた顔を見て理解した。

 

俺は誰も見えない速度でベート・ローガの後ろに回ると、頭を鷲掴みにしてヘスティアの眼前に移動した。ヘスティアの神威全開は神格が高位な故に、レベル10の俺でも結構きつかった…。

 

ベート・ローガは失神して白目を向いていたが、誰もが声を出せなかった空間に、道化のエンブレムを象徴する神が口を開いた。その瞬間俺は神ロキを首を掴んで持ち上げた…。

 

 

「「「!?」」」

 

「どうせ何故と問うのでしょう?恩を仇で返した相手に報復しただけですが、貴女には謝罪する事はあれど文句を言う資格すらありませんよね?」

 

 

俺の手に触れる小さな神の手を感じ神ロキの首を離した、ロキファミリアの団員達は数日前まで一緒にダンジョンで戦っていた為、理解が追いついていなかったった。

 

そんな空気にアイズが悲しげな顔で答えた…。

 

「ベートさんが馬鹿にしてたのは……レガリアの仲間…冒険者になったばっかりの子」

 

「「「なっ!?」」」

 

「では、2週間前に冒険者になった者を馬鹿にしていたのか…それも我々が原因だと言うのに」

 

「…リヴェリア何故2週間だと知ってるんだい?」

 

「神ヘスティアから直接聞いたのだ……」

 

 

そこからは本当に酷かった、ロキファミリアは御通夜状態だが辛そうな顔のアイズの頭を撫でた。無言でベルくんのとこに行くと、震えて涙を堪える彼に「ホームに帰り…自分の意思でダンジョンに行くか決めなさい」そう言うと、ベルくんは「はい!行ってきます」そう言って立ち上がると走ってホームの方へ消えて行った。

 

ヘスティアはずっと黙っていたが、口を開いた事でいかにロキファミリアが驕っていたかが分かる内容だった。

 

 

「ベル君は…身体が小さくて見た目が頼りない、それが理由でロキの所を門前払いされた子だ「『!?』」……それでも諦めず多くのファミリアの門を叩いていた、そんな芯の強い素敵な子だ!」

 

「君達全員が驕って居るとは言わない…だけどベルくんと同じ何も無い弱い頃が皆ある筈だ…。小人族が率いるファミリアが見た目で判断するなど、己と団長を馬鹿にしているのと同じですよ?」

 

「帰ろうレガリア君…「まっ待って、下さい…ごめん、なさい」」

 

「アイズ…君は確かに口下手だけど、君なりに不快に思っていたのを私は理解しています。ありがとう」

 

「ありがとう。アイズ・ヴァレンシュタイン君」

 

 

俺はカウンターの内側から様子を見ていた女主人のミアさんに頭を下げ、50万ヴァリスが入った麻袋を渡し「後日改めて謝罪に伺う」そう伝えて立ち去った。

 

ヘスティアはベルくんが心配だったろうが、ベルくんの始めての冒険だから黙って彼の帰りを待ち続けた。俺に関しては、ベルくんが帰宅するであろう時間を肉体の筋肉量や年齢で予想し、予めお風呂を用意したり軽食を準備した。

 

ベルくんが帰宅する頃には朝日が顔を出し、笑顔で帰って来た彼に俺達も「『おかえり』」そう言って迎えた。ベルくんはぼろぼろになっているが、怪我自体は擦り傷や軽微な切り傷だけで全てが肉体の全面に存在していた。

 

油断せず、逃げもしなかったその証…

 

疲れもあるが無理矢理風呂に入れさせ、上がって来た彼の治療と軽食を食べさせた。全てが終わる前にはコクコクと船を漕ぎ、どうにか全ての食事が終わらせその場で眠りに就いた。

 

ヘスティアもずっと心配していたせいか、ベルくんが眠ると直ぐに欠伸をしていた。ヘスティアの要望で、ベルくんの部屋より大きなベッドがあるヘスティアの部屋へ彼を運ぶと、電池切れの様に彼の隣へ倒れ込んだ…。

 

どっちが神か分からないじゃ無いかとヘスティアを見て思いながら、二人に布団を掛けてから一人で紅茶を飲んでいた。

 

 

今回の俺の行動は、暴力と言う名の力で黙らせた様なものだ…。自分の短略さを後悔してはいるが、何度同じ場面に出会おうときっと同じ結果になっただろう。

 

その日は寝ずに、1日を始めたのだった…

 

 

 

 

 

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