屑が行くダンジョン物語   作:仁611

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夢を見ていた…。

 

レガリアが行った数々の日々、普段の彼がどんな人物だったのかを俯瞰的に見ていた…。数百年単位だろうが、人物像が少しだけ違うのを感じてしまうのは何故だ。

 

目が覚めて写る景色は最近では当たり前になりつつある天井、誰もまだ起きて無いのだろう静けさ、この肉体になって習慣付いた朝日より前の起床。

 

エルフと言う種には、遺伝的に健康志向が刻まれているのでは無いだろうか?早起きに健康食、怠惰な生活を苦痛に感じる精神性。潔癖症だけは元のレガリアが持っていない事に感謝する。

 

朝食を作り(ベルくんには外で話さない様注意済み)を済ませ、教会の花壇からハーブを採取して朝食を始める。俺自身の準備が全て済むと、ヘスティアを起こすベルくんの声が聞こえる。

 

 

 

そんな日常でふとした時に、レガリアとは器だけなのでは無いかと思うのだが、日を追う毎に確信へと近づく。レガリア自身、何千年も生き永らえるなど孤独でしか無い…。

 

今でこそ千年前から神が下界に居るが、それより前の孤独に対し原初の神が与えた終わりのスイッチが有るのかも知れない。

 

人々の人生を嘆く程優しい神が、1人だけ苦しみ続けるのを見過ごすだろうか?その答えだけはレガリアの知識に残されていないが、時が来れば分かる事だろうと考えるのをやめた。

 

 

 

 

 

最近は日課になったベルくんへの指導、彼が望んだ自身の飛躍を確実にして行ってる。彼が眩しく感じる自分が、腐り過ぎた果実の様で嫌になる、力だけ持った傲慢にも上から見下ろす前世の自分が未だに残ってる…。

 

生活が軌道に乗って来て、自分を冷静に見れるようになった事で自分の屑だった過去を振り返る。善行をしなければ何て言うのも、勝手に自分を上に感じて慈悲を与えてると悦に入っているのだろうか。

 

レガリア・リヨス・アールヴ…。

 

偉大で英雄な存在は、俺と言う男には大き過ぎる器だろうと自分の後悔を溢れさせる。

 

 

 

 

そう思った瞬間に妻の笑顔を思い出し、どんだけ俺は力んで空回りしてるのか自覚した…。元レガリアは関係無い、何故なら俺にだって守って来た存在が居た、少数だっただろうが俺には世界一大切だった。

 

レガリアになるんじゃ無い、俺がレガリアで守りたいものを守り抜いて見せる。気付けばフル装備で58階層で『砲竜』(ヴァルガングドラゴン)と闘っていた。

 

そこら中から火炎砲撃や尻尾の打撃が迫る中、守るべき存在を思い出して全力斬撃を繰り返してた。100を超えるワイバーンや竜種の攻撃、レベル10の全力の前では脚力に音が遅れてやって来る。

 

 

 

58階層のモンスターを粗方殲滅し終わり、バックパックに詰めまくり自前の折り畳み台車に乗せる。目的地は、未開エリアの階層主を倒す事にあった。

 

59階層から61階層までは極寒地帯、62階層から64階層まで灼熱地帯だった…。出てくるモンスターの傾向は、極寒地帯はマンモス型やペンギンのようなモンスター、灼熱地帯では巨大なヘビ型にマグマを泳ぐ3M程の竜種…。

 

65階層に辿り着くと、あり得ない程大きなドームの様なエリアが眼前には広がり、レベル10でも傷付けるのが辛そうな目算50Mはあろう黒い竜。

 

目撃された瞬間、巨大な翼を羽ばたかせた瞬間ドームのあちこちにで竜巻が発生したのだ。気付けば眼前まで迫っていた竜に自分の油断を自覚して、全力跳躍ですれ違い様の刺突。

 

一枚一枚が巨大な鱗の硬度が高く、レイピアが硬質な音と共に弾かれる、今までの道のりに無かった相手に集中力を高めて行く。肉体が覚えているだけでは駄目だ、未熟な思考力の俺のままでは俺はこいつに殺される。

 

思考は散らかるが竜と本気で戦っている、攻撃手段を工夫してそれをイメージする。相手の次を読み切る様に、縫い目をなぞる様に竜の尾を斬り飛ばし『ヨシ!』そう思った瞬間…。

 

俺は黒き竜の翼に全力打撃された、俺の身体は天井に激突して呼吸が出来なくなった。肋骨が折れた上、肺に刺さったのか吐血したのに加えて呼吸が上手く出来ない。

 

自由落下する俺に竜である証の様に黒い炎が俺に迫る、走馬灯の様にこの世界に来た日が駆け巡る。出会った人に、もらった暖かみや想い出達、まだまだほんの少しの付き合いだが俺には過分な存在だ…。

 

 

「死んでたまるか———ッ!?」

 

 

『行ってらっしゃい!僕は君を信じて待つ…それが僕に出来る全てだからね!』

 

そんな事は無い、貴女の優しさに何度も救われた…。

 

 

 

『僕も強くなって、必ずあなたに追い付きます!』

 

ベルくんの言葉は、何処までも真っ直ぐで眩しくて俺の憧れは君だ…。

 

 

 

『あなた…ありがとう「「パパ!また明日」」』

 

『私も、貴方に追い付く……隣で、貴方と闘う』

 

やっぱ似てるよな『妻』とアイズ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘の記憶は無く、目覚めた時には黒い竜の首と胴が離れた位置に落ちていて、全力魔法を放ったのだろう竜の胴体はボロボロだった。まあ俺自身もぼろぼろだが、色んなものが吹っ切れた事に気が付いていたし、良く考えたら肋骨も既に完治していた事に驚いた。

 

魔石を抜き取ると灰へと変化したモンスター、足元には巨大な鱗に自分の顔ぐらいある紅い石と、ゴライアスの魔石の3倍はある巨大過ぎる魔石があった。

 

台車に無理矢理乗せて紐で括り付け、モンスターを避ける様に台車を引いて上層を目指した。どうにか1階層まで戻って来れたが、どうやって地上まで魔石を上げたら良いのか悩んでいたら、後ろから突然話し掛けられた。

 

 

「レガリア…大きい魔石、だね?何のモンスター…なの?」

 

 

この時の俺はどうかしていたのだろう、目の前の人物がアイズだと言うのに、妻を抱きしめたい時の様にアイズを抱きしめていた。しかも『ただいま』何て言いながら…。

 

 

「お…おかえり、なさいレガリア///」

 

「あっ…ごめんアイズ、ありがとう………ゴホンッ!魔石は65階層のモンスターですよ」

 

「そっそう、何だね……上に…上げる方法考えてた、の?///」

 

「ええ。まあ…そうですね」

 

「私が、ギルド職員に…昇降機の依頼して、来る?///」

 

「ええ、頼めますかアイズ?」

 

 

どうにか乗り越えたが、実はリヴェリアさんが10M程後方に居るのが途中から視界に入ってた。何も無い様にアイズを見送り、リヴェリアさんにも何も無い様に話し掛けた。

 

 

「こんにちわ。リヴェリアさん、今日は二人でダンジョンだったのですか?」

 

「イヤ…そうだが、そうじゃないだろ!?無理があるだろう!…失礼しました……レガリア様」

 

「そう言えば、リヴェリアさんにも言うべきでしたね。出来たらそんなに硬い話し方は好きじゃ無いんです、出来たら呼び捨てで呼んでもらいたいし、もっとフランクに話しませんか?」

 

「ゴホン……分かった、今後はアイズ達の様にレガリアと呼ばせてもらおう。先程のあれはどう言う風に認識したら良いんだ?」

 

「そうですね。買い物中に、呼び掛ける相手を両親と間違えた子供の様に考えて下さい」

 

「…どちらにしても、痛みを伴うな」

 

「ええ、まあ」

 

 

昇降機と一緒にギルド職員とアイズが降りて来ると、台車ごとリヴェリア含め乗り込んだ。アイズがもじもじするせいなのか、リヴェリアさんがこちらに何とも言えない顔でジト目を送る。

 

娘を誑かす軽薄な男を目の前にしてる、そんな感じの目線を『気にしたら負けだ!気にしたら負けだ!』そう言い聞かせながら、この場をやり過ごす事に成功した。

 

ギルドの【万神殿】(パンテオン)にある、裏手の特別搬入口に向かうと、ドロップした魔石類だけ全て預けた。搬入口ギリギリだった魔石だが、ギルド職員のつぶやきから「1億絶対超えてるよな、これ」と聞こえ、自分の常識外を再確認していた。

 

 


 

《内訳明細票》

 

総魔石買取額:246,500,000ヴァリス

Sαランク2億1千50万ヴァリス

Sランク3千200万ヴァリス

Aランク300万ヴァリス

Bランク100万ヴァリス

Cランク—

Dランク—

Eランク—

Fランク—

Gランク—

Hランク—

I ランク—

 

 


 

 

詳細を見て唖然としていた俺の手元を覗き込むアイズ、アイズもフリーズしておりリヴェリアが同じように覗き込んで来た。リヴェリアさんも見たことない様な個人での収益に驚いていた…。

 

アイズは自分の立ち位置にやっと気付いたのか、壊れたロボットの様にギクシャクし始め耳を真っ赤にしていた。ギリギリ言いそうな程ぎこちない動きと、異性との関わりに疎いアイズはかなり純情なんだろうな。

 

 

「可愛いな…」

 

「ふぇっ!///」

 

「クッククッ!」

 

「リヴェリア!///」

 

「す、すまないな…アイズのそんな反応は初めてだ」

 

「……///」

 

「ごめんアイズ、私が軽率な発言をしたからだね」

 

 

アイズは気恥ずかしさからかリヴェリアさんの背中に隠れてしまい、視線を下げて目も合わせてくれなくなった。仕方ないから次回にアイズとの微妙な空気をやり直そう、そう決めてアイズの頭をポンポンとしてしまって、思わず行った軽率な行いに自分の頭を撃ち抜きたくなってしまう。

 

口を開かず立ち去った後、ずっと背中に突き刺さる視線と笑いを堪えるリヴェリアさんの声が聞こえていた。

 

 

 

 

ホームに戻って来た俺は、小さな溜息を漏らしながら先程までのやり取りを思い出し頭を抱えてしまうが、ダンジョンでの事が原因なのか分からないが手が震えている事に今更気付いた。

 

レガリアになって初めて感じた明確な『死』の気配、初めて行った俺自身の冒険だったのだから必然かも知れない…。このままの状態でヘスティアに会うのに躊躇った俺は、自室で少しだけ眠る事にした。

 

ヘスティアがバイトから帰って来るまでだと、瞳を閉じて自分を落ち着かせて行った。

 

 

 

 

 

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