歌を奏でる装者と無限を操りし少年   作:アユムーン

10 / 92
祝10話


決意の「一撃」

孤仁が第二課に配属され、しばらく経った。

 

まず今までの検査よりもより精密な検査がなされ、五条悟擬きによる呪術の説明や、戦闘訓練が課された。

 

それから孤仁の名字が風鳴ではなくなった。

 

現在の名字は櫻井となっており、なんと櫻井了子の弟として存在することになった。

 

【よかったんですか?】

 

「いいのよ。保護者の存在や明確な所在があった方が色々便利だから、名字くらい貸してあげるわ。」

 

【いや、弟は無理があ「余計なこと言うのはこの手かしら?」】

 

手をつねられそうになったが、無限でガードしました。

 

そして、このことに関して、弦十郎はなにも言わなかった。

 

・・・

 

孤仁が進むべきを決めた時、弦十郎はその話を聞くと、分かった、と一言だけ告げました。

 

その後のあれそれは緒川や友里、了子に頼んでくれたそうです。

 

現在孤仁は第二課の寮で一人で過ごしています。

 

「・・・」

 

『弦十郎の家、汚れてないといいね。それから奏の部屋と孤仁の部屋の片付けもしなきゃいけないね。』

 

今着ている服や、日常品は新しく買い揃えてもらった物

 

きっと自分と奏の部屋はそのままにしている。

 

「・・・」

 

『弦十郎がなにも言ってこないのが不安?』

 

「・・・」コクッ

 

『確かに5年位一緒に過ごしたのに、なにも言ってこないんだもんね、そりゃ不安にもなるよ』

 

「・・・」

 

『・・・弦十郎も奏のことを知ってるから、話すにも話せないんだよ。孤仁だって、どうすればいいのか分かってないでしょ?』

 

「・・・」コクッ

 

『こればっかりは時に任せるしかないよ。あっちが動くかそれか孤仁が動くのか、時間をかけないとどうにもならないさ』

 

「・・・」

 

『それにしても、こんなに孤仁と沢山話すの久しぶりな気がするよ』

 

「?」

 

『これまでは孤仁の近くには絶対に誰かいたからね。』

 

「・・・」

 

生きるのに必要な家具しかない部屋、自分以外に誰もいない

 

『寂しい?』

 

「・・・」フルフル

 

『嘘だね、弦十郎とも翼とも話せてないでしょ?』

 

弦十郎もそうだが、翼ともあれから話せていない

 

時々すれ違うことはあったけど、会釈をしてそれっきり

 

そもそもどの面下げて話せばいいか、分からない

 

『孤仁の気持ちも分かる、でも一人は寂しいよ?』

 

「・・・」

 

『いや、一人ではないか、もちろん僕はいるよ。

 

だけどもう僕だけじゃ寂しいでしょ?』

 

擬きの言う通りだ。

誰かと一緒にいるのが長すぎた、かの日がまだ微笑むように眩しい

 

それでも、今の自分では誰かの手を取ることはできない

 

『・・・これは重症だな』

 

・・・そんなある日だった。

 

『今日は反転術式について学ぼう』

 

「・・・」コクリ

 

五条擬きの指導の元、トレーニングルームで呪術の特訓を行う。

 

『孤仁が響を助けた時の力だよ。今まで呪力操作のトレーニングのお陰でより精密な呪力の操作が行えるようになった。その結果があの反転術式だ。』

 

「・・・」

 

攻撃で流す呪力とは違い、優しい力を纏った感覚を思い出す。それを手のひらで再現する。

 

『うん、出来てるね。本来負の感情から捻出されるマイナスのエネルギーである呪力を自分の中で重ね合わせてプラスのエネルギーに変えてしまうのがその反転術式だよ。』

 

「?」

 

『そう!プラスのエネルギーだから、体の活性化!つまり傷を治したりができるわけだよ。』

 

「・・・」

 

『けど、五条悟は自己の回復に反転術式を行うことはできたが他人に反転術式を行った情報はない。それは孤仁自身の力だよ。』

 

「!」

 

『もちろんそれなりの知識が必要だし、かかる呪力もよりかかる、特に今の孤仁が一番気にするのとはここだ。呪力が尽きるリスクを考えてみよう。』

 

「?」

 

『そう、自分の負の感情から捻出される呪力、それが尽きると単純に闘う意思や生きるための気力も低下する。簡単に言えばバテる。

 

本来六眼はね、術式を使った時のエネルギーが限りなく0になるんだよ。だけど孤仁の六眼はまだ片方、それは望めない。精々半分くらいにはなるんじゃないかな?それでも破格の性能だとおもうけどね』

 

「・・・」

 

『孤仁は元々の呪力が多めな方だよ。それに加えて六眼のバックアップ、それにより通常より遥かに長いけど、五条悟に比べれば短い、なんていう変な感じだね。』

 

『それからさ、孤仁この間怪我した所に反転術式かけてみて』

 

「?」

 

訓練中に軽く怪我をした膝に反転術式をかける・・・しかし

 

『やっぱり治らないよね』

 

「?」

 

『んー・・・実は「五条悟の目隠し」に含まれる情報のうち孤仁が持ってるのってさ「呪術について」「無下限術式」「片方の六眼」それから「蒼」だけなんだ。』

 

「?」

 

『つまり、「五条悟の反転術式」の情報を孤仁はまだ持ってないはずだったんだ』

 

「!」

 

『呪力に触れているうちに孤仁自身の力が覚醒して、反転術式が使えるようになった・・・ってのは分かるんだけども、孤仁は自分の治療はできない。これが五条悟の情報を得られていないからなのか、はたまたなにか別の理由があるのか、分からないけどその力も伸ばしていこう』

 

「!「孤仁」」コクッ・・・ビクッ

 

後ろから声をかけられ振り返る、そこには

 

「・・・」

 

「すまない、擬きと話し中だったか?」

 

「・・・」フルフル

 

「そうか、なら話がある。」

 

「・・・」

 

「確かにお前の第二課への所属は認められた。だが、まだ任務に投入するには早いという俺の判断でここしばらくは訓練にあたってもらっていた。」

 

「・・・」コクッ

 

「そして今日改めてお前の実力を見極めさせてもらう・・・構えろ」

 

「!」

 

拳を構える弦十郎、その意味は・・・

 

「俺へ一撃入れてみろ、そうすれば正式に認めてやる」

 

「っ!『孤仁』!」

 

『弦十郎の思惑は分かってるでしょ、構えるんだ』

 

「・・・!」

 

自分が今試されている、そんなことは分かってる。

だけど・・・

 

『今までの訓練で分かってると思うけど、弦十郎はこの世界の「人間」のカテゴリでは最強だと思う。

 

呪力もない、シンフォギアもない、人間の中でね。

 

けど、五条悟の経験上、そういうのが一番厄介だよ。』

 

「構えないのか?ならこちらから・・・ハァッ!!」

 

ガンッ!!!

 

「っ!!!?」

 

ドンッ!!!

 

弦十郎が繰り出した拳、咄嗟に呪力を通した腕をクロスし防いだが、吹き飛ばされて、壁に叩き付けられる。

 

「ガハッ・・・」

 

殴られたダメージより、叩き付けられたダメージが大きい、身体中の酸素が一気に抜けるような感覚に襲われる。

 

「どうした終わりか?そうだ無限のバリアとやらを張れるのなら常に張っておけ。でないと命を落とすぞ・・・フンッ!!」

 

倒れる孤仁を踏みつけるように足が降ろされる。

 

「!?」

『孤仁っ!!』

 

ググググッ・・・

 

「なるほど、これが呪術か」

 

ギリギリで無限のバリアを展開、顔の目前で止まった・・・のではなく、足の速度が限りなく減速される。

 

「これで俺の攻撃は通らないというわけか」

 

バッ!

「ッ!」

 

とにかく距離をとる、命の危険の外側へ

 

『ナイスだ孤仁、これで弦十郎に有効打はない』

 

「・・・」ハァハァ

 

『といっても、これも長続きはしない、速攻で決めよう!』

 

無限のバリアを展開しつつ、呪力を込めた拳を叩き付ける。

 

ドッ!!

 

確実に入った手応えを感じた

 

「っ!!」

 

「この程度、か?」

 

弦十郎はなんてことない顔をしている。

全力の呪力を込めた拳を肉体で受け止めたのだ。

 

「そして、バリアが疎かになっているぞ」

 

ガシッ

「!」

 

「そのバリア相当集中力を割くようだな。その結果攻撃の瞬間バリアが解けて、こんな風に捕まえられる」

 

まだまだ術式の使い方が甘い孤仁だからこそできてしまった弱点、拳を捕まれて・・・

 

ズドンッ!!

 

振り回されて、地面に叩き付けられる。

 

「ッッ!!」

 

呪力で防いでいるに、そのガードを超えてダメージが入る。

 

「痛いか?それが奏君や翼が今まで闘いの中で重ねてきた痛みだ、その痛みを堪えてでも二人は闘い続けると決めていた」

 

ズガンッ!

 

「いつか奏君を救うために闘う、そう言ったな」

 

ズガンッ!

 

「俺はそこからお前の覚悟を感じなかった」

 

ズガンッ!

 

「結局のところ、お前はただ逃げているだけだ。闘うことを決めたのは奏君への贖罪、そして友人を遠ざけたのはその力を御することができず、傷つけるかもしれないと逃げただけだ」

 

ズガンッ!

 

「覚悟も持っていない腰抜けこちらから願い下げだ」

 

ぶら下げられるように持ち上げられ、無理矢理視線を同じにされる。

 

きつく孤仁を睨み付ける弦十郎、怒られた時だってこんな目で見られたことはなかった。

 

「今からでも引き返したらどうだ。俺や翼や奏くんから逃げて、優しい友人と先生の元に戻れば元通りだ。そのくらいの尻拭いはしてやる。」

 

『(こっちの手は知られてる、その上で孤仁の心をへし折る言葉選んできてるねぇ)さぁどうする孤仁?』

 

「術式順転"蒼"」

 

ズンッ!

 

「なっ!」

 

グイィィッ!!

蒼を孤仁の後ろ側で発動させて、その収束する力を自分に向ける。

 

収束される孤仁、そして孤仁を捕まえている弦十郎ごと道連れにされそうになり・・・

 

パッ!・・・ズテンッゴロゴロ・・・

 

拳を放されたと同時に、蒼も解除、着地を考えていなかったのか、そのまま地面に転がる。

 

「・・・」ユラッ

 

そのまま立ち上がる。

いつも綺麗な片眼の六眼共々、瞳は光を宿していない

 

「(心が折れたか)」

 

もう戦意はないだろうと、警戒を解いた弦十郎

 

確かにこのままなら孤仁の心は折れるだろう

 

『ねぇ孤仁、言われっぱなしでいいの?』

 

ここに最強の先生がいなければ、の話だが

 

『僕は孤仁が腰抜けだなんて思ってない。

 

むしろ、それなりに覚悟を決めてこの道を選んだんだと思う。

 

だって、そうでしょ?大好きな人達と別れるのがどれだけ辛かった?力のない自分をどれだけ恨んだ?今だって自分の親に拳を向けるのにどれだけの想いを振り絞った?そんなの贖罪のためだけにできるわけないもん・・・だけどね?』

 

孤仁が間違えたら叱り、理不尽に否定されるというのなら肯定する。

 

しかし、もしも全力でやっていないのなら・・・

 

『孤仁、本気でやれ。お前の本気の覚悟で弦十郎をへし折れ』

 

「?」

 

『ずっと本気だって?本気なわけない』

 

最初の一撃も無限のバリアをしていれば、序盤から勢いを持っていかれることはなかった

 

呪力をこめたパンチもすぐに引いて、何度も打ち込めば効いていた

 

さっきの蒼も弦十郎の背後に出していれば、そのまま決まっていた

 

『孤仁はさ、自分の大切な人を傷つけるかもしれないといって怖がるから無意識に手加減してるんだよ。

 

その考えが悪いとは言わない、過ぎた力を振るうことは馬鹿のすることだよ。

 

だけどね・・・適切に力を振るうことを恐れるな。現状維持なんて捨てて、もっと高みを目指せ』

 

「!」

 

『呪力を100%込めた一撃を打ち込め。そしてそこに至るまでの道筋を考えろ。考えて考え続けて思考を止めるな、止めた瞬間負けると思え』

 

『そしてその一撃はなにも考えず、ただ全てを撃ち込むんだ。ありったけの呪力を込めろ。コントロールも今は考えるな、がむしゃらにただ一撃に集中しろ』

 

グッ・・・

 

右手の拳を握って、構えて、瞳を閉じる。

 

「っ!まだやるのか!」

 

すぅーー・・・息を吸う

弦十郎が何か言ってる、けど聞こえない

 

「・・・」

 

はぁーー・・・息を吐く

考えろ、渾身の一撃を叩き込む術を

 

無限バリアを展開しながらでは無理だ、呪力と集中が乱れる。

 

蒼で弦十郎をこちらに引き寄せることは可能だろうか?・・・無理だ、多分脚の力だけで簡単に逃げられる。

 

・・・だとしたら?

 

「・・・蒼」

 

小さく呟く、その瞬間

 

グンッ

一瞬で弦十郎の懐に現れた孤仁

 

無下限術式は本来無限を現出させて自己に近づくものを永久に近づく収束にする力

 

近づくほどに低速になり触れることがなくなる術式

 

それを強化した蒼はより収束する力を強め引き寄せるものになる

 

対象を選んだり、効果範囲を含むとより複雑化し、負担が大きい蒼、だが

 

『自己と他者を選ばず、両者の中間に全ての指向性を放棄したただ純粋な引き寄せる蒼を発動、だからこそ、この速度で近づけた』

 

指向性を捨てた蒼はより純粋に引き寄せる蒼を持ち、一瞬といえる速度で二人を引き寄せた。

 

それは「人間」では知覚できない速度で、本来なら引き寄せる力を軽くはねのける弦十郎に引き寄せられたという事実を認識させず、孤仁が近くにいることも認識できない。

 

そしてこの蒼を使うために孤仁が高めた集中力、それに対して黒い火花が微笑む

 

打撃との誤差0.000001秒以内の呪力が衝突した歳に生じる空間の歪み(刻まれた五条悟、呪術呪力についての記憶の中より抜粋)

 

その名は

 

「黒閃」

 

ッッッ!!!

 

通常の2.5乗の威力を持つそれに音は無かった、ただ空間が歪み、黒く光る呪力が辺りを照らし、弦十郎を飲み込んだ。

 

「ガハッ!?(なんだ、何が起きた?)」

 

吹っ飛ばされて、壁にぶつかり、その壁ごとをぶち抜かれて、ようやく自分の現状を理解する弦十郎

 

「(いつ孤仁は懐に現れた、いつ拳が当たった、いつ吹っ飛ばされたんだ?)」

 

現状を理解しようと、原理は理解できない。

 

前を見る、ズズズズズズ・・・

 

弦十郎の眼に写ったのは、青い呪力を身に纏う孤仁

 

なにかに覚醒し、先程とは格が違うことが簡単に分かる。

 

「(これが、俺たちには理解できない力なのか!?)」

 

『おめでとう孤仁、これで君はより呪術師としてより高い高みに片足をかけた。』

 

「・・・」

 

意識しないとできていなかった呪力を纏うことが無意識にできている。

 

『黒閃の記憶あるでしょ?それを決めた呪術師は、呪力の核心に触れ、先程までとは段違いの領域にいるんだよ。さて、ここからどうする?』

 

「・・・」ザッ

 

弦十郎に近づく、もう勝負は決まっている。

 

立てない弦十郎に近づき、右手を翳す。

今ならこれも簡単にできる。

 

「反転術式」

 

「!?これは!」

 

黒閃を受けて傷ついた体を癒す。

 

「・・・お前はこの力を奏君に向けたんだな」

 

もう痛みはない、全快に近い程だ

 

「・・・う、ん」

 

「そうか、それがなんらかの理由で奏君をあの状態にしてしまったのか」

 

「うん・・・」

 

「・・・そうか、辛かったな」

 

弦十郎の手が孤仁の頭に触れる。

 

「さっきはあんなこといってすまなかった。お前の覚悟確かに響いたよ・・・だが、俺は今もお前はまだ引き返した方がいいと思っている。お前に・・・息子に血生臭い世界なんて触れてほしくないんだ」

 

「!」

 

「だが、もう決めたんだな」

 

「う、ん」

 

「ならなにも言うまい。正式に櫻井孤仁、君を特異災害対策機動部第二課の一員として認める。」

 

「!」

 

「もう、俺とお前は親子ではない・・・好きにしろ」

 

「っ!」

 

分かってる、だけど言ってほしくなかった一言

 

「・・・家の合鍵は渡したままにしておく」

 

「!」

 

「部屋もそのままにしてある」

 

『おいおい、それって』

 

「いつでも帰ってこい」

 

そう言って、弦十郎は去っていった。

 

「っ!父、さん・・・」

 

『良かったね、孤仁』

 

その背中は紛れもなく、父親の背中

少なくとも孤仁にとってそれは世界で一番頼れる背中だった。

 

 

 




詳細な設定

新しい名前→old風鳴 孤仁、new櫻井 孤仁
      姉、櫻井 了子

弦十郎の家→名前や戸籍の繋がりがなくなって、孤仁にとって弦十郎は父親で、この家こそが帰る家なのです。

次回からついに原作へ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。