歌を奏でる装者と無限を操りし少年   作:アユムーン

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一時の安寧、浮かんでほしくなかった「歌」

「あ、あの~・・・大丈夫ですか?」

 

驚きのあまり固まってしまった孤仁、響が心配して話しかけてくるがそれに気づかないがまぁ無理もない

 

響がライブ会場の惨劇で怪我をして入院した時から、実に二年程が経つ、その間のことは孤仁はなにも知らない

 

違う、知ろうとしなかった

 

『もしも何かあったら、会いたくなっちゃうもんね』

 

「あっ、もしかして」

「!!」

 

擬きの言葉が突き刺さったところで響が何かに気づく

 

『まさか正体に!?』

 

「海外の方ですか?えーとナイストゥミートゥー?」

「・・・」ハァ・・・

 

髪の色で思い付いたらしいが的外れな発言、響らしい・・・でも

 

「・・・」ニッ

 

なんだか安心した・・・携帯を取り出して、メモ機能を開く。

 

【大丈夫ですよ、日本語、分かります】

 

「あ、よかった!でもそれならなんでスマホ?」

 

「!?」

【か、風邪を引いていまして】

 

「そうなんですか!?でもそれならなんでお出かけに?もしかして病院に行くところですか?」

 

【どうしても欲しいものがありまして】

 

そして、携帯でCDショップの地図を見せる。

 

【申し訳ありませんが、道を教えていただいてもいいですか?】

 

ここで道を教えて貰えば、自然に離れることができる。

下手に断るより、こっちの方がいいだろう。

 

あの日別れて、久し振りに会えて、嬉しかったのは事実だが、やはり彼女を傷つけてしまうかもしれないと考えると、離れた方がいい

 

「あ、ここなら私今から行くところなんです!一緒に行きましょう!」

 

「!?」

『ぶははははっ!』

 

あっけなく崩れた計画、大爆笑が頭に響く。

 

「それにしても~今日この日にCDショップに向かうってことは、もしかしてお目当ては風鳴翼さんの新曲ですか?」

 

「」コクッ

 

「やっぱりー!私もです!かっこいいですよね!翼さん!」

 

「」コクッ!コクッ!

『わぁ、激しい頷き』

 

「実は今私が通ってる学校に翼さんがいるんですよ!今日も少しだけ会えたんですけど・・・私ご飯粒ほっぺたにつけちゃっててそれを指摘されて・・・」

 

「・・・」ニコッ

 

慌てて翼に話しかける響と、ご飯粒を指摘する翼・・・想像するだけで笑えてくる。

 

「あっ!今笑いましたね!?ひどい!」

 

「・・・」ニヤニヤ

【ごめんなさい、でもどうしてもおかしくって】

 

「!・・・」

 

「?」

 

「あ、ごめんなさい。なんだかこんなやりとりが懐かしくて・・・」

 

「!」

 

「昔、声がでない友だちがいたんです。けど、そんなこと感じさせないくらい可愛くて、優しい・・・そんな子だったんです。その子とのやりとりが、丁度こんな感じだったんです・・・」

 

その先は言わなくても知ってる

 

その友だちはもういない

 

「・・・」

 

「ごめんなさい。どうでもいい話しちゃって」

 

「・・・」

【大丈夫ですよ。大切な思い出なんでしょう?】

 

「はい・・・あっ、こっちですよ!」

 

未来は約束を守ってくれたようだ

 

響は自分のことを引きずっただろう・・・だけど、こうして元気な姿でいてくれている。

 

それだけで満足『本当に?』

 

「!」

 

『本当にそう思う?』

 

「・・・」ピタッ

 

思わず足を止めた、擬きの声が嫌に頭に残る

 

「?、どうしたんですか?もしかして頭痛いとか?」

 

立ち止まった孤仁を心配した響がこちらを伺う。

 

「・・・」

【なんでもないですよ、行きましょう】

 

後悔なんて・・・ない、言い聞かせるように前へ踏み出し、曲がり角を曲がる。

 

『素直じゃないねぇ、全く』

 

・・・その時

 

ブワッ・・・一陣の風と共に、『灰』が舞う。

 

「!、これって」

「!」

 

隣にある薬局、レジやお客がいたであろう場所、道路の各所に灰が積もっている。

 

「ノイズ・・・!「いやぁぁぁぁ!!!」!?子どもの声!?」

 

「っ!」

 

慌てて二人で声のする方へ向かう、そこには逃げ遅れた女の子がいた。

 

「大丈夫っ!?とにかくお姉ちゃんとシェルターまで逃げよう!」

 

「うん・・・」

 

女の子に声をかけ、手を繋ぐ響、その間に電話をかけたが・・・

 

「・・・」ピッ・・・

『弦十郎に繋がらない・・・、多分今ノイズの対応に追われてるからだね。任務用の携帯は置いてきたから個人用のこの携帯にかける時間もないのか・・・かなり大規模みたいだね』

 

どうする、弦十郎に連絡して響を保護してもらおうと思ったが、それは望めなさそうだ・・・そう考えていると

 

「なにしてるんですか!!早く!!」

 

ガシッ!

 

「!?」

 

「こっちが近道なんです!」

 

孤仁と女の子の手を引いて走る響・・・しかし

 

「!嘘っ!?」

 

近道の路地裏で、左右の道をノイズに阻まれ、前方は水路

 

「お姉ちゃん・・・」

「大丈夫、お姉ちゃんが一緒にいるから・・・」

 

「っ!」

 

その光景にあの日の光景がフラッシュバックする。

 

響はあの日、動けなくなった自分を見捨てなかった

 

自分が怪我していても、孤仁のことを離さなかった

 

けど、このままでは・・・『迷ってる暇、ある?』

 

「っ!」

 

擬きの言う通りだ、サングラスを放り投げて、響と女の子に触れる

 

「えっ?なにをっ」

 

響と女の子、そして水路の向こう側との距離を収束し、虚数にする。

 

そうすると・・・

 

「えっ?えぇ!?」

 

『練習中の技、ぶっつけ本番で成功!やるじゃん!』

 

一瞬で響と女の子が向こう側に移動する・・・そして

 

ビシッ!

 

響達の向こうを指差す。それは先に行けという合図

 

「っ!そんなっ!あなたも早く!「い、けっ!!」っ!はいっ!行こう、お姉ちゃんの背中に乗って!!」

 

「」フゥ・・・ギンッ

 

女の子を背負い走っていく響を見て一息つき、ノイズに目を向ける。

 

そうしている間にもノイズは孤仁に襲いかかるが、ノイズは孤仁に触れられない

 

『あらら、怒ってるね・・・けど呪力は落ち着いてる、やるね。さぁ分からせてやろうか、どっちが殺戮者か』

 

「!」

 

ゴンッ!バキッ!グシャッ!!

 

・・・

「はぁっはぁっ」

 

孤仁と別れた響、女の子を背負いとにかく逃げる。

 

生きるのを諦めないために、走る。

 

脳裏によぎるのはあのライブ会場での出来事

 

あの日響は朧気だがツヴァイウィングの奏と翼に助けられたことを覚えていた。

 

そしてその時隣には大切な親友・・・孤仁がいたことも覚えている。

 

響は孤仁を助けようとした、そして孤仁も響を助けようとした。

 

・・・だけど、孤仁は死んでしまった。

 

その事実を未来から聞いた時は嘘だと思った

 

だけど孤仁が一度もお見舞いに来なかったこと、そして病院の人に聞いても、病室のあちこちを探しても孤仁はいなかったこと

 

リハビリを頑張り、学校に行った時、孤仁の机はなく、名簿からも名前は消えていた。

 

その後自分はとても辛い目にあった・・・だけど、未来が支えてくれたから、なんとかやってこれた。

 

それでもその時、これは孤仁を助けられなかった自分への罰なんだ、と思ってしまった。

 

そんなこと、優しい孤仁が望むわけないのに

 

「(あの日、あの時、間違いなくあの人に救ってもらって・・・それで確かに孤仁は生きていた)」

 

新聞やニュースで取り上げられていたのはライブ会場を襲ったノイズの出来事だけだった

 

自分を助けてくれた人は現在意識不明ということ、そしてたくさんの人が亡くなって、そのたくさんの中に孤仁も含まれていた。

 

「(なのに、さっきの人・・・)」

 

・・・「ひびき、ひびき!」・・・

・・・「い、けっ!!」・・・

 

あの日確かに聞いた・・・声がでないはずの彼の声とさっきの男性の声がダブる

 

そして、こちらを見ていた瞳はいつだったか、自分が綺麗な瞳だと褒めた片方の瞳と同じ色だった。

 

「(なんで孤仁のことが離れないの?・・・どうして?)」

 

逃げて逃げて、高い梯子を登りきり・・・倒れる

 

・・・しかし背後には

 

「っ!!」

 

迫るノイズの大群、もう逃げ場はない

 

「(っ!私にできることを・・・)」

 

女の子を庇うように抱き締める。

 

そうだ、今はこの子を守らなければ

 

手が届く距離にいる人を見逃したくない・・・

 

「(できることがきっとあるはずだ!)」

 

そして、孤仁と共に自分に呼び掛けてくれたあの人の言葉と共に

 

「生きるのを諦めないで!!」

 

少女の胸に歌が浮かぶ。

 

「Balwisyall Nescell gungnir tron」

 

・・・

 

ゴシャッ

 

「・・・」フゥ

 

ゴミを踏みつけるように、最後のノイズを踏み潰す。

消失していく様を見届けて、辺りを確認もうノイズはいないようだ

 

イラついたのもあったのか、呪力を纏った徒手空拳で沸いてでてくるノイズを叩き伏せた。

 

『さすが孤仁、やるね』

 

「・・・『だけど、0点だよ』!?」

 

『ここは術式を使って一気にやって、響を追いかけるべきだよ。それ以前に響とあの女の子を逃がしたのも間違い、距離が離れて場所が分からなくなったら元も子もない・・・だから0点』

 

「っ!」

 

『そんなに、彼女の近くにいるのが怖いか?』

 

「・・・」

 

『・・・孤仁、もういいでしょ?もう孤仁は強くなった。五条悟の器としてはまだまだだとしても、もう孤仁は呪いを守る力に変えられる。だから『ピリリリッ!』こんな時に電話?早く出なよ』

 

電話の相手は弦十郎だ。

 

『今頃連絡かよ・・・全く、なんのよう?』

 

「孤仁!いまどこにいる!?」

「・・・路地裏」

「そうか、はやりその周辺のノイズ反応が消えていたのは孤仁だったか・・・続けざまで悪いが孤仁、工業施設に急行してくれ、翼も今向かって「ノイズとは異なる、高出量エネルギー反応を検知!」なにっ!?」

 

電話の向こうで聞こえる藤尭の声、その後なにかを話す声がしたが、よく聞こえない・・・その時だった

 

「ガングニールだとぉ!?」

「!?」

 

確かに、はっきりと聞こえた弦十郎の声、そして紡がれた言葉『ガングニール』、それは

 

「かなで、さん?」

 

そんなはずない、だって奏は今・・・

 

「!、孤仁!落ち着け!」

 

「っ!」

 

「今から指示を出す、落ち着いて聞け。」

 

「・・・はい」

 

・・・弦十郎の指示の元、足に呪力を纏い走る。

 

『着地地点が分からないと、術式を利用した移動が出来ないね・・・これは結構不便だね。それにまだ飛べないんだから更に不便!』

 

もう辺りは暗い

 

ダンッ!ようやく辿り着いた工業施設

 

ガスタンクの上から状況を探ろうとしたが・・・

 

「・・・!」

 

その目に写ったのは、巨大なノイズに更に巨大な剣を突き立てる翼・・・そして

 

「やっぱり翼さん・・・」

 

奏と似た・・・同じギアを纏った響がいた。

 

「っ!!」

 

なんで、響がシンフォギアを纏っている

 

なんで、彼女が戦場(いくさば)にいる

 

なんで、なんでっ!!

 

『きっと、響もこれから人とノイズの闘いに巻き込まれるだろうね』

 

擬きの言う通りだ、これから響の日常は一変する

 

「っ!!」ギリッ

 

『また、間違えたね。』

 

「・・・」

 

分かってる、響と女の子だけを逃がした自分の行動が間違っていた。

 

でも、あぁするしかなかった

 

・・・戦場で、彼女のそばにいるのが怖くて仕方ない、今度は失うんじゃないかと、怖くて仕方ない

 

『・・・守る力は君だけが持つんじゃない。なんの因果か分からないけど、それが響にも宿った。それだけのことだろう?』

 

「・・・」

 

『だけど、それをどう使うのか、選ぶのは響だ。孤仁どうする?』

 

「・・・」

 

そっと携帯を取り出して、電話をかける。

 

・・・その後響は特務二課に連行され、今回のことの事情通調査、そして検査を行い、未来と二人部屋の学校の寮へと辿り着いた。

 

「ただいまぁー」

 

ドタバタな一日ですごく疲れた響、鞄を投げ出し、制服のまま、畳の上に倒れこむ。

 

未来が心配したと、声をかけてきたが、弦十郎と了子から今回のことに関しての箝口令がしかれていて、未来にもなにも話せない。

 

「大丈夫?響。近くでノイズも出たって・・・」

 

「うん、それはもう大丈夫だから・・・」

 

「そういえば、CD買えたの?」

 

「あぁっ!!忘れてたぁ!!」

 

「?じゃあそれはなんなの?」

 

「へ?それって?」

 

「それ、鞄からはみ出てる袋」

 

「?なんだろこれ・・・!」

 

袋の中に入っていたのは、買いに行くはずだったCD

 

「え?なんで?」

 

「なんでって、買いに行ったからでしょ?」

 

「そうだけど、あれー?」

 

「おかしなこといってないで、早くお風呂はいったら?」

 

「うん・・・」

 

今日はCDなんて買うどころじゃなかった

じゃあ・・・誰かが入れてくれた?

 

でも、このCDを買いに行くと言ったのは未来と・・・もう一人

 

道を教えたあの男性のみ

 

「!、そういえば!あの人どうしたんだろう・・・逃げれたのかな・・・でも、まさか・・・」

 

・・・特務二課、キッチン

 

「・・・」

 

ジュージュートントントン

 

「どうぞ」コトリ

 

「あぁすまないな、こんな夜中に」

 

夜食を作り、弦十郎がいる机に置く。

 

「いえ、今日、色々、あったので」

 

自分も座り、食べる。

 

「ノイズの報告が遅れて申し訳なかった。」

 

「私も、任務用の、携帯、置いてきて、しまいました」

 

「完全なプライベートだったんだ。お前が責任を感じることはない。それに偶然とはいえノイズの殲滅、ご苦労だった」

 

「ありがとう、ございま「聞きたいことがあるだろう」!」

 

「彼女、立花響君のことを聞きたいだろう」

 

「・・・はい」

 

弦十郎にはお見通しだったようだ

 

「なぜ彼女がガングニールを纏うことができたのかは現在了子君が調べてくれている。明日には分かることだろう」

 

「・・・」

 

「そしてどんな理由にせよ、彼女がノイズに対抗する力がある以上協力を要請する。」

 

「っ!」

 

「・・・お前の気持ちは分かる。だが」

 

「・・・分かって、ます」

 

一応ここで闘う一員だから、ギアを纏える装者がどれだけ希少な存在なのか、分かっている。

 

そんな存在を自分の私情で手放せる訳がないことも、分かっている。

 

「そうか・・・すまないな」

 

「・・・俺に、謝らないで」

 

「・・・あぁ」

 

きっとこの日のことも孤仁は一生後悔する。

 

折角上手くできた夜食はなんの味もしなかった




詳細な設定なの

響を移動させた方法→呪術本編で五条悟が使った瞬間移動、明確な設定がでてないのでそれっぽいことしたということで。ちなみにまだまだ呪術師としての経験が浅い現在の孤仁は空を浮かんだり、大きく距離を飛んだりすることができません。今後の成長次第です。

鞄に入っていたCD→孤仁が緒川に頼み、ツテで手に入れて貰い、鞄に入れて貰いました。緒川は気をつかせて、それを2つ、用意してあげました。

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