響がシンフォギアを纏った翌日
「翼からの連絡だ。立花響君は特に異常は見られる様子はなく、学園に登校、予定どおり放課後こちらに来てもらうことになった」
弦十郎と了子と孤仁が部屋に集まっていた。
「そして、メディカルチェックの結果はどうだったんだ了子君」
「昨日の検査の段階で初使用の影響は残ってたわ。それからなぜガングニールが纏えたかというと、これを見て」
ディスプレイに映し出されたのは、響のレントゲン写真
「心臓にガングニールの破片が刺さってる、奏ちゃんの置き土産ね。」
「・・・」
『あの時の、か』
あの日のライブ会場で、奏から飛んできたガングニールの破片が響の胸に突き刺さった時のことを思い出す。
傷は孤仁が治したが、破片が残っているとは・・・
「当時の医療関係者は響ちゃんが倒れていた状況から出血多量、さらにその量の血が出る程の傷ならかなり重症だと考えて安静に搬送しようとしたけど、蓋を開けてみれば傷は見あたらない・・・これは孤仁ちゃんのしわざってことでいい?」
「はい」
「反転術式か?」
「はい、無我、夢中で」
「あの時、孤仁ちゃんを保護したのは弦十郎君だったわね」
「あぁ・・・そうか、あの時の女の子が・・・」
奏を救おうとした孤仁が呪力の使いすぎで倒れ、それを保護したのは弦十郎
そこには孤仁以外に呆然とする翼、眠り続ける奏、倒れる響がいた。それらを全て、弦十郎がなんとかしてくれた。
「・・・」
「それで現在は安定していると判断していいのか?」
「現在の様子は見てみないことにはなんとも、でも翼ちゃんの報告を聞く限りは安定していると判断してよさそうね」
「分かった、念のため今日来て貰い次第その判断を任せる。そして、なにも問題がない場合は事情を説明次第、協力を要請する。問題はないな」
「・・・はい、あの、俺は」
「分かっている。今日のところはメディカルルームにだけに通すつもりだ。ノイズはいつ現れるか分からない以上お前は別室で待機していてほしい。連絡や指示は順次行う。」
「分かりました」
・・・別室、一応仕事着には着替えておいた
「・・・」
『また、迷ってるの?』
「・・・」コクッ
『だろうねぇ』
「・・・」
『響は確実にこの話に乗ってくるだろうね。昔から世のため人のためにならなんだってしちゃう子だったもん。』
「・・・」
『ま、だからこそ今孤仁が頭を悩ませてるんだけどね』
「・・・」
『ねぇ、孤仁昨日の話の続きをしよう』
「?」
『孤仁はこの二年間で強くなった、僕の想像以上にね、今の君なら五条悟の全てを受け入れられるかもしれない』
「・・・」
『だからさ、もういいんじゃない?』
「?」
『響と未来に会ってもいいんじゃない?』
「!?」
『もう孤仁はさ、守れるんだよ。その手に宿るのは確かに呪い・・・だけど、もう大丈夫、その力を守るたに使えるよ。』
「でも、昨日は・・・」
『昨日のは自分の手で響を守ろうとしなかったのが原因だ。自分の恐怖を優先し、響を先に逃がした結果だよ。そこは間違っていた、だから今の状況になってしまった。それは悔い改めてね』
「っ!」
『響がシンフォギア装者になれば、嫌でも響は孤仁の側にいるよ。だから今は君が守るんだ』
「・・・?」
『失うのが怖いなら、最前線で一番近くで守ってあげなよ。けど、君の知ってる響はずっと守られてばかりの存在でいると思う?』
「・・・」フルフル
そんなわけ・・・ない
『だよね、きっと彼女も強く聡い仲間になろうと努力する。そしていつか孤仁と肩を並べて闘うだろうね。』
「・・・」
『だから、それまでは孤仁が守ってあげなよ。それでもう守りたいものを誰かの手に託すのはやめにしよう。孤仁自身で守りなよ。』
「・・・でも、俺、は・・・」
『・・・決めるのは、孤仁だよ』
・・・守るための決意が出ない、間違ってばかりの自分にその資格があるとは思えない
「・・・どう、すれば、いい、か、分から、ない」
『そっか、でも一つ忠告ね。失ってから気づくのってさ、滅茶苦茶辛いよ。これは先生の経験談としてとっておいてね。
さ、この話は終わりにして、参考書開こうか』
「・・・」コクッ
・・・それから、勉強して、休憩して、昼寝していると
ピリリリッ!!
「!?・・・もしもし」
「孤仁、先ほど立花響君に協力を要請した。本人からは承諾を得た。これからは二課預かりになるだろう。」
「そう、ですか」
予想通りだ
「・・・孤仁、彼女の過去になにかあったのか?」
「?」
「お前や翼のように昔から闘ってきたわけでもない少女が誰かのために、だけの理由で命を投げ出せるのは歪ではないかと、俺は思う。」
「・・・わかり、ません」
自分が知ってる限りの響は、人助けが趣味というほどのお人好しだった。
だから、響はそう答えるんじゃないかと、なんとなく思っていたが・・・よくよく考えれば、それもそうだ
翼は一族のしきたり、そして孤仁は大切なものをいくつも失ってようやく闘う覚悟を身につけたのに、そんなにすぐに決意できるものか?
・・・もしかすると、自分が知らない間の響になにかが?
思考の海に飲まれそうになった、その時
ビー!!ビー!!ビー!!
「!」
第二課に響くアラート音、これはノイズが現れた知らせだ
即座に弦十郎にあおい、藤尭の声が聞こえる。
「!、座標は」
今はノイズだ、と思考を切り替え、弦十郎に問う。
「リディアンより距離200!「迎え撃ちます」今翼が出た・・・待つんだっ君はまだ!「私の力が誰かの助けになるんですよね!?」」
「!、響!?」
「シンフォギアの力でないとノイズと闘えないんですよね!?だから行きます!」
そのまま走り去る音が聞こえた。
「っ!聞こえたか孤仁!立花君も向かった!お前も向かえ!」
「っ!はい!」
二課を飛び出し、目隠しを着け、携帯に届けられた座標に向かって走る。
・・・
指定した座標についた、翼が既に闘っている。
手を出す必要はないだろうとその様子を静観し、危なければ助太刀しよう、と戦闘に意識を向けていた。
しかし、そこに
「はぁぁー!!」
翼の後ろに迫っていたノイズを響が蹴り飛ばす。
『あっちゃーやっちゃったねー』
「・・・」
「翼さん!」
「っ!」
響の声に目もくれず、ノイズを蒼の一閃で倒した翼
『・・・さて、終わったね孤仁、どうする?帰る?』
「・・・」
物陰に隠れて、話し合う響と翼の両者を見つめる。
『心配ならいけばいいのに』
「・・・」
擬きの声は知らんふりして、見続ける。
「私と一緒に戦ってください!」
そう話しかける響、それに対して翼は
「そうね、貴女と私、闘いましょうか」
その手に持つアームドギアを響に向けた。
・・・その光景を見た孤仁は
「・・・」スチャ
プルルル・・・プルルル・・・ガチャ
「どうした孤仁!そちらの状況は把握している今俺が向かって「来ないで」!?孤仁!?」
「けど、近くには、来て」
ガチャッ
『覚悟、決まった?』
「・・・まだ、分からない」
この状況を見て弦十郎が動かないわけがないと、分かりきっていたので、先手を打って連絡しておいた。
分かると言っては烏滸がましいかもしれないが、少なくとも同じ人を想っている理解者として、孤仁は翼の気持ちが分かる
戦場を知らずに、奏のギアを纏う人物が軽率に戦うなどというのは聞き捨てならない翼の気持ちは分かる
・・・だけど
ザッ
「孤・・・櫻井」
「へっ、あっ、あの時の!?」
術式の瞬間移動を使い、翼と響の間に立つ。
「・・・そうか、櫻井。お前はその子につくのだな」
「つく、とか、つかないとかじゃ、ない」
「ならなぜ、今私に立ちはだかる。」
「・・・これは、間違ってる、から」
「え?二人は一体何を・・・っていうかそもそも貴方は何者?」
響の問いかけが聞こえるが、答える余裕はない。
しかし、その問いかけに翼が気づく。
「なにも伝えていないのだな、櫻井」
「・・・伝える、必要は、ない」
「そうね・・・でも覚悟を持たずにノコノコと遊び半分で戦場に来たその子を許せない」
フォンッ!
「!」
キンッ
「っ!無限か」
「・・・」
斬りかかってきた翼の剣は孤仁に触れることなく、目前で減速されていく。
「手を取り合って共に闘うなんて、受け入れられない、風鳴翼は認められない。それは貴方もよ櫻井」
「・・・分かって、ます」
「そこまで分かっていながら、貴方はなぜここに戻ってきた!貴方が戦場にいることを奏が望んでいると思ったのか!?」
「っ!」
ガシッ!!
『なっ!』
「あぁっ!!」
ポタ、ポタ・・・
「・・・」
「・・・それが、覚悟のつもり?それでもおじさまが認めても、私は認めない。」
無限を解いて、翼のアームドギアを素手で握る、当然血が滴るが、互いにそんなことを気にせず、話続ける。
「認めてほしいのなら、櫻井もそこにいる貴方も、証明してみなさい。常在戦場の意思の体現、胸の覚悟を構えてみなさい!!」
バッ!
孤仁の手を振り払い、高く飛翔する翼
そして、投擲したアームドギアが巨大化し、翼がそれを蹴り貫く技、天ノ逆鱗、が迫る。
「スゥー・・・フゥー・・・」
『・・・本気でやってやりな、あの日のように』
拳に呪力を高めて・・・迫る剣に真っ向から構える。
少しだけ後ろを向き、響の顔を見る、不安そうだ
安心してほしいから、ただ一言だけ声をかける。
「大、丈夫」
「!」
それだけ伝えて、目前に迫った剣に向き直して、拳を繰り出す。
剣と呪力を纏う拳がぶつかる。
ズドォォォンッッ!!!
「くっ!」
「っ!!」
『気持ちが揺らいだね。黒閃には至らなかったか』
黒閃を撃つつもりで放った拳はそこには至らなかった
ズズズズッ!!!・・・
剣と拳、拮抗する両者、一瞬でも気を抜いたらやられる。
「櫻井!お前は!なにも思わないのか!!」
「!?」
「なんの覚悟も持たず、奏が命を懸けて得たガングニールを使う立花響に!なにも思わないのか!!」
「っ!」
「奏がお前を守るために振るっていた力を、軽々しく扱う彼女を私は・・・受け入れられない!!」
ズンッ
「ぐっ!!」
翼の攻撃の重みが増した、右腕の袖が破れる。
「それ、でも・・・」
拳から血が流れる、腕が、脚がどんどん悲鳴をあげていく。
「それ、でもぉ!!」
・・・「この子のことしっかり守るんだ、男だろ?」・・・
奏の声が甦る、あの日孤仁は奏に響を任された。
例え正体が明かせなくても
例え傷つけるかもしれなくても
例え・・・姉の力を振るう者だとしても
「守、る・・・守って、みせる!!!!」
友だちを守りたい、守るためにこの呪いを振るいたい・・・そんな初めての気持ちが爆発する
パァァァァンッッ!!
「っ!?なにっ!?」
天ノ逆鱗を弾き返した。
『守るって気持ちが目の前の敵(翼)に対する怒りの感情になったのか・・・その結果爆発的な呪力を生んだ』
「フゥー・・・フゥー・・・」
「くっ!!まだだっ!!」
着地、そして即座に反撃に転じた翼
「・・・」
全力を出したお陰で大分体の力が抜けた・・・今ならいける
『そうだね、今度こそへし折って、少し頭を冷やしてやろう・・・行け、孤仁』
「ハァァァッ!!!」
翼の剣が振り下ろされた。
・・・呪力は攻撃力や運動能力を高めるだけではない
「っ!!!」
パシッ!
無限バリアをしてしまうと、攻撃に転ずることができない
・・・だからこそ呪力で強化し保護した左手でアームドギアを白羽取った。
高い呪力操作能力を持つ孤仁だからこそできる、刃物を恐れない闘い方
「なっ!!」
驚く翼、そこにすかさず
パキンッ!!!
空いた右手で弦十郎と見た映画の中の技、鈴割りで翼のアームドギアを折った。
「!?」
だからといって、手を緩めるわけにはいかない、そのまま右手を構えて・・・
「ごめん、なさい・・・翼ちゃん」
ー黒閃ー
ッ!!!
音もなく、黒い火花が散り、翼を貫いた。
ドンッドッ・・・ドシャッ!、キィィィン・・・
何度か地面をバウンドして、翼が倒れ、ギアが解除され、気を失ったようだ。
「父さ・・・弦十郎さん」
「全く、近くまで来てというのは後処理のためか?」
さっきほどから近くにいるのは分かっていたので、弦十郎を呼び出した
「・・・」コクッ
「はぁ・・・なにをやってるんだお前らは。とにかく翼の怪我はお前が治せ」
「・・・」コクッ
翼に反転術式を施す・・・その時
ポロッ・・・
「!」
翼の瞳から涙が溢れていた。
「・・・名前、言わないで、くれて、ありがとう」
孤仁の身を案じたからなのか、翼は孤仁の名を一度も出さず、響に孤仁の正体を明かさなかった。そしてそれがどうであれ、感謝したかった。
治療を終えた翼を抱き上げて、弦十郎の方を向く。
「それじゃあ帰るか、翼はメディカルルームに連れて「あ、あのっ!」なにかな?」
いつの間にかギアを解除して、制服姿になっていた響が話しかけてきた。
「貴方は誰なんですか、さっき翼さんは櫻井って呼んでだけど、もしかして「こいつはうちのエージェントだ」えっ?」
「数年前から二課でエージェントとして働いてもらっている了子君の弟だが・・・櫻井、知り合いなのか?」
全部知った上で、弦十郎が空気を読んで、話を作ってくれている。
それでも、孤仁にどう決断するのかを委ねてくれている。
「友だちかもしれないんです!教えてください!私のこと覚えてませんか!?」
涙を浮かべながら問いかける響に・・・それに対して
「・・・覚えて、ない」
『はぁ・・・ここまで来てそれ?』
「そんな!その目も声も!同じなのに!」
「貴女なんて、知ら、ない。助けたのは、装者の、保護だ」
明確な拒絶を示した
「っ!!」
「・・・とにかく一度戻ろう、沢山のことがありすぎたからな。報告を頼む」
弦十郎が響を支えて、帰路を進む
・・・翼をメディカルルームに送り、響は寮に帰った。
『響のこと、誤魔化したと思ってる?』
「・・・」フルフル
『だろうね』
瞳も見られた、声も覚えていたようだ。
名前が違うから、なんて、理由だけでは誤魔化されないだろう。
『守るって決めたから、翼に立ち向かったんじゃないの?』
「守る、のは、会わなくても、できる」
確かに、あの時は守りたいと思って闘った。
だけど、それは響と会わなくたってできる。
正体を明かす必要はない。
今まで通り、遠くから・・・そしてこれからは時々近くから、響を守ればいい。
『・・・ハァ、もう好きにしなよ』
擬きが投げ出す程に固い意思の孤仁
その意思に込められた願いはただ大切な人たち皆に幸せに生きていてほしいという願いだった。