歌を奏でる装者と無限を操りし少年   作:アユムーン

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「親子」と「師弟」

翼と闘って、響から逃げてから1ヶ月が経った

 

「おはようございます!」

 

学校が終わって二課にやってきた響、キョロキョロと辺りを見回している

 

「おはよう立花君、今日も精が出るな!」

 

「はいっ!ノイズが現れるまでは探させてください!」

 

「いいぞ!ほしけりゃその手で掴め!」

 

「はいっ!」

 

弦十郎に挨拶をしてから、あっちこっちと施設内を探し回る。

 

「はぁー・・・やっぱりいないー!!どこにいるのー!!!」

 

響が探している人物はもちろん孤仁、この1ヶ月装者としての任務の傍ら、毎日孤仁を探していた。

 

そんな響を二課一同、全員が応援していたが、皆も知らないので教えることもできなかった(弦十郎を除く)

 

そんな尋ね人の孤仁はというと・・・弦十郎の家にいた

 

「・・・」カタカタカタカタ・・・ゴクッ

 

最近ハマった紅茶を飲みながら、パソコンで報告書を作成する。

 

「・・・」カタカタ・・・ターンッ!

 

報告書を書き上げて、送信したところで・・・

 

ピリリリッ♪

 

「!」

 

「もしもし、先ほど昨日の報告書の訂正を送らせてもらった。訂正したらまた提出してくれ。」

 

「ありがとう、ございます」

 

「・・・いつまで続けるつもりだ?」

 

「なにか、支障が?」

 

「支障はないが、こちらも良心が痛むんだが」

 

「?」

 

「立花君は毎日健気にお前を探しているというのに・・・この一ヶ月、ノイズの襲撃以外では家に籠り、事務作業・・・そろそろ誤魔化しが効かないんだが?」

 

弦十郎の言う通り、この一ヶ月はノイズの襲撃、晩御飯の買い出し以外では外に出ず、仕事を続けていた。

 

「なんとか、してください」

 

「はぁ、なにがお前をそこまでさせるんだ」

 

「私情、です」

 

『うわ、なんか懐かしいやりとり』

 

人々はこの孤仁の仕事形態のことをこう呼んだ

 

「在宅ワーク」、と

 

・・・

翼も孤仁もノイズの襲撃ではただただノイズを倒していた。

 

会話もなく、とにかく目の前のノイズを倒す。

 

孤仁は闘いつつも六眼で響の様子を確認しつつ・・・ではあったが

 

そして、終わったらすぐに帰る・・・そんな噛み合わない毎日を繰り返していた

 

「そうだ、立花君の学業に関しての補填の件だがなんとかなりそうだ。流石に我々の仕事の手伝いをしているからという理由はいえないが、非常時は公休扱い、追試や休日登校は免除、追加のレポートの提出でなんとか・・・という具合だ」

 

「ありがとう、ございます」

 

「いや、こちらもありがとう。翼は文武両道だからな、そういった点への配慮が欠けていた。」

 

「それでも、です」

 

この一ヶ月で孤仁は戦闘員の仕事をしつつ、響の装者としての活動をサポートする体制を築いていた。

 

基本は学業優先だが、それでもどうしても・・・という時の対応の計画

 

給与とそれを支給する口座作りの計画

 

学校への説明はかなり難航したが、なんとかしてもらった(無断外出、夜中の出歩き等も)

 

「風鳴翼さんは?」

 

「変わらずだよ、その身を剣としてノイズと闘っている」

 

「・・・響とは?」

 

「それも変わらずだ」

 

あの一件から、翼と響にわだかまりができた

 

奏のギアを軽々しく使い、奏の変わりになりたい・・・と言う響のことを認められない

 

響は認められないのは自分が未熟だからだと、更に自分を追い込む、そんな悪循環が起こっている

 

「正直、こちらの件の方がかなり難航している・・・なぁ孤仁、戻ってきてくれないか?」

 

「・・・」

 

「お前があの二人のわだかまりを解くための鍵なんじゃないか?」

 

「・・・」ギリッ

 

「・・・すまない、これではお前に押し付けているだけだな」

 

「いえ、申し訳、ありません」

 

「・・・ここ数ヵ月、こちらに向けての正体不明のハッキングがある。米国による疑いもあるが・・・一概にそうとも言えん。それらに関してはこちらで「デュランダル、ですか?」!流石だな」

 

特務二課の更に地下、アビスと呼ばれる場所に保管されている完全聖遺物デュランダル、日本預かりとはなっているが、米国により再三の提出要請がかかっている。

 

そう考えると、米国からのハッキングだと考えるのが普通だが?

 

「持ってること自体で文句言われてるからな、万が一何かあれば国際問題になりかねん。そちらに関してはこちらでなんとかする・・・が、ここ数ヵ月のリディアン付近でのノイズの発生率は異常だ、お前を呼び戻したのもそれが理由だ」

 

「そう、ですが。なにか?」

 

「なにか作為的なものを感じないか?」

 

「!?」

 

「明らかにこちらを狙うなにかが、人為的にノイズを誘導もしくは、出現を操っているかのように感じてな」

 

「・・・」

 

「とはいっても、これはあくまでも憶測だ、こちらの守備は了子くんによって万全の体勢・・・だが、一応気に止めておいてくれ」

 

「了解、しました」

 

「それじゃあな・・・あ、今日の晩飯はなんだ?」

 

「ビーフシチュー」

 

ピッ

 

『確かにずっと謎だったよねぇ』

 

ノイズは世間的には特異災害とされており、いつどこに現れるのか分からず、意思もなく、人を襲い、炭化させる災害

 

そして、その存在は影ながらシンフォギア装者と特異災害対策課によって沈められてきた

 

しかし、その存在は超古代より伝えられており、その正体は未だに不明なのだ

 

『それに加えて未知のハッキング、これはもう私情とか言ってられないよ。弦十郎の真意、分かってるでしょ?』

 

「・・・」コクッ

 

弦十郎が孤仁を呼び戻したのは戦闘員として、そしてもうひとつあったということ

 

その役割は守りの要としての役割

 

『孤仁はノイズにも敵対する人間にも対応できるからね。翼や響がいない間にノイズやその人間に特務二課が襲われたとして、対応できるのは弦十郎と緒川くらいじゃない?それでも人間に対してのみだけどね』

 

やはりノイズが厄介で、そうなった時に両方に対応できる孤仁が間違いなく守護に適任なのだ

 

『装者がノイズを殲滅する間、二課を守る、それが孤仁本来の役割なんじゃない?』

 

「・・・」コクッ

 

そうだとしても、なぜ弦十郎はそれを孤仁に伝えない?

むしろ、積極的にノイズの殲滅に出ていくように指示を出してくれている

 

『はぁぁ・・・それ本当に分からない?』

 

「?」

 

『弦十郎って結構甘ちゃんだからね、孤仁が翼や響と話すきっかけをなんとか作り出そうとしてるんじゃない?』

 

「!」

 

『どっちにしろ、在宅は終わりだよ。ほらお坊ちゃん、お仕事の時間ですよ!もう十分引きこもったでしょ?』

 

「」イラッ

 

擬きに若干イラつきながらも、明日からは出勤することにした。

 

『なに言ってんの、今から行くよ。晩御飯の用意はもうできてるでしょ?』

 

「・・・了解」

 

しかし、そんな甘えは許されなかった

 

『明日やろうは馬鹿野郎だよ、ほらとっとと行った行った』

 

・・・で、特務二課に到着

 

「あ、孤仁さん」

 

「!、お疲れ、さまです」

 

「・・・随分遅い出勤だな」

 

緒川と翼に会った。

 

「・・・二人は、どちらへ?」

 

「これから今度のアルバムの打ち合わせがありまして」

 

「!、アルバムですか」

 

「はい、それから今後のスケジュールとイギリスからのオファーも「それは断ってくださいと行ったはずです」この調子でして」

 

「それに、櫻井には関係のないことでしょう」

 

「関係、なく、ないです」

 

「なに?」

 

「アル、バムも海外、進出も応援、してくれる、人、沢山いるで、しょう?」

 

「そうだが・・・はやりお前には関係ない。失礼する。」

 

「あっ翼さん・・・すみません、私も失礼します。」

 

「あ、緒川、さん」

 

「はい?」

 

「CD、ありがとうございます。響と、俺の分」

 

緒川にこっそりと頼んだ翼の新曲のCD、それを響の鞄にいれてもらった。

 

そして後日、緒川は孤仁にもくれたのだ

 

「いえ、気になさらないでください・・・では」

 

「・・・」ペコリ

 

・・・翼と緒川と別れてから・・・

 

「・・・」ソローッ

 

二課に到着、皆が休憩しているエリアを覗いていた。

 

「む?・・・なにをやってるんだアイツは」

 

弦十郎はもちろん気づいたが、知らんふりをしてくれていた。

 

結局その日はノイズは現れず、全員定時で帰った。

 

・・・翌日

 

「・・・」ポヘーッ

 

ちゃんと出勤した孤仁、とは言えやることがないのでボーッとしていた。

 

机の上には手つかずの参考書と食べかけのお菓子

 

『ほらほら、気引き締めとかないと響来ちゃうよ?』

 

「!」

 

「なにを急に焦って・・・なるほど安心しろ、今日は呼び出しをかけない限りはこないそうだ」

 

「」ホッ

 

「しかし、本当に来てくれるとはなぁ。俺の気持ちが伝わったようで、なによりだ」

 

「・・・」コクッ

 

皆にも孤仁の本来の役割を明かしていないようだ、孤仁がいることこそが敵対勢力に対する抑止力になるのだろう・・・そしてそれを悟られないようにするために

 

「今は平和だな・・・そうだ孤仁」

 

「?」

 

「久々に汗でも流さないか?」

 

「!」

 

・・・トレーニングルーム

 

バシッバシッ!

 

「やはり強くなったな、在宅でなまっていなか心配していたけど、そんな心配はいらなかったな」

 

「・・・」

 

呪力オンリーで弦十郎と組み手を行う。

 

「だが、心はまだまだ、だなっ!」

 

ドスンッ!

 

大きく後ろに飛ばされたが、倒れないように踏ん張る

 

「・・・」

 

「お前の気持ちは想像に難しくない、分かってるとは言わないがな。」

 

「・・・」

 

「擬きとも何度も話したんだろ?それでもお前は正体を明かさず、遠くから立花君を守ると決めた。俺はその想いを否定はしないさ。これも擬きも同じだろうがな」

 

「・・・」

 

「翼とやりあった時はできたようだが。やはり守るために力を使うことが怖いか?」

 

「・・・」コクッ

 

この気持ちを先生には言えない、だけど父になら言える

 

「また、失う、んじゃないかって、間違え、るんじゃ、ないかって」

 

五条擬きは間違ったとき以外はどんな時も肯定してくれる。そんなことないと言ってくれる。

 

でも、それでも怖い

 

「この力は、呪い、だから」

 

初めて失った家族は力がなかったから失ったのだろう

 

二回目は、力があっても、近くにいなかったから失った

 

三回目は力があって、近くにもいたけど、自分が間違った

 

「俺には、なにも、守れないっ・・・」

 

この間のことで守れる力をもっていることは分かった、だけどまた間違えるかもしれないという恐怖に囚われている。

 

そして、初めてそれを五条擬き以外に話した。

 

「・・・お前がエージェントとして行動してきた二年間でどれだけの人が救われたと思う?」

 

「?」

 

「正確な数は知らん。だが、お前によって救われた人物はいるだろう」

 

「・・・うん」

 

エージェントの仕事はそれはもう苛烈だった

 

それでも強くなるために頑張ってきた

 

テロやら、自分が受けたような人体実験、それを潰し回った。

 

ノイズも数えられる程度かもしれないが、殲滅し続けた。

 

「それにより、お前は沢山の人を守ったんだ。誇れ」

 

「・・・「顔も知らない人を守れても実感が持てないか?」・・・うん」

 

「それなら、孤仁が救った顔も名前も知っている人がいるだろう。一等仲良しのな?」

 

「?・・・響?」

 

「そうだ、お前の報告から確かに立花君を巻き込んでしまったのかもしれない・・・だけどそもそも立花くんの命を救ったのは誰だ?奏君だけじゃないだろう?」

 

「・・・俺」

 

「そうだ、お前が呪いというその手で確かに救ったんだ」

 

以前五条擬きにはこの手にあるのは奇跡の力ではないと、言われた。

 

それでも、確かに救えたのだ

 

そのことを忘れてしまっていた、響への罪悪感がそれを忘れさせていた。

 

「・・・」  

 

自分は守れていた、この手で大切な友だちを二回も

 

「そう自分を卑下するな。あんまり卑下しすぎるとお前を信じる俺や擬きの気持ちはどうなる?」

 

『その言い方は卑怯だろ・・・でも、その通りだよ』

 

「それに、奏君を失ったなんて言うな。彼女はまだ生きている、どうなるか分からないにしてもひとまず生きてるんだ」

 

「違う、奏さんは、俺が「だからお前は闘う地獄を選んだんだろう?」!」

 

「俺に証明しただろう、自分が闘うのは贖罪ではないと・・・なら今のお前はなんのために闘うんだ?」

 

「!」

 

「今のお前は奏君、翼、立花君、この三人への罪滅ぼしのために闘っているように見えるぞ」

 

「・・・」

 

奏を呪ってしまって、翼の大事な相棒を奪ってしまったこと

 

響を平穏から離してしまったこと

 

それの罪滅ぼしのためにこの一ヶ月は闘っていたかもしれない

 

進む地獄を間違っていた。

 

「そんなのお前一人で抱えられるわけがないだろう、潰れるぞ」

 

『そうしないために、僕や弦十郎がいる』

 

「もっと頼れ」

 

『もっとすがり付け』

 

「泣いたっていい」

 

『みっともなく鼻水垂らしたっていい』

 

「一人で守っているんじゃない、俺達がいる」

 

「っ!お、俺っ」ポロポロ

 

涙を流しながら、前を向こうとした・・・その時

 

ビーッ!ビーッ!ビーッ!

 

ノイズの出現を知らせるアラートが鳴る。

 

「全くこんな時に・・・孤仁、お前は「行くっ」そうか」

 

「翼と立花君には既に連絡済みのようだ、お前も準備ができ次第向かえ・・・守るぞ、全員でな」

 

「はいっ!」

 

もうその顔に悩みはなかった

 

しかし今夜、流星群の元で・・・衝撃の再会があることをまだ知らない

 




親子→なんでも話せる関係、時に対等に時に守る者と守られる者として、全てを話すことができ、側にいられる存在

師弟→教え導く者と学ぶ者、教えることはできても答えをあげることはできない。助けてあげることはできても最後には生徒に決断を委ねないといけない 

話すこと→先生は背中を押し続けてくれて、自信をつけさせようとしてくれた、しかし隣には立ってくれない。

父は一緒に進もうと手を引いてくれた、だから前を向こうと思えたが、先生がいないとどう進めばいいのか分からなくなってしまう

その不安を双方にちゃんと話すことで、孤仁は再び自分の地獄と向き合えた。

先生と父は子どもが一人で歩けるようになるまでは、支え続けなければいけないのです。

そして、どうかその地獄を一人で進む時には大切な子が誰かと一緒に歩んでいけますように・・・と、願いながら

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