歌を奏でる装者と無限を操りし少年   作:アユムーン

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話す「これまで」

・・・

「♪~♪~」

 

まどろみの中、歌声が聞こえた。

 

心地よいこの歌声は翼でも奏でもない

 

響達と出会うもっと前に聞いたことのある歌声

 

「♪~・・・あら、もうこんな時間なのね」

 

歌声が途切れた。

 

「ほら   、弧仁、起きて?そろそろご飯にしましょう?」

 

歌声の主が自分ともう一人を起こしてくれている。

 

「ふわぁぁ・・・おはようママ・・・あれ?まだ弧仁寝てる」

 

先に目覚めたのはもう一人・・・先ほどの歌声の主の娘が先に起きて、まだ眠る弧仁に気づく

 

「ふふっ、ねぼすけさんなのね。クリス起こしてあげて」

 

「うん、弧仁、起きろよ。おねーちゃんが起こしてやるからさ」

 

「クリスったらすっかりお姉ちゃんなのね、弧仁が弟になったら嬉しい?」

 

「もう弧仁は私の弟だ!」

 

自分を弟と呼ぶこの少女は・・・

 

・・・

 

「・・・」パチッ

 

目を覚ます、どれくらい寝ていたのだろうか

 

「・・・」グィー・・・ヒリヒリ

 

頬を引っ張る、痛い・・・現実のようだ

今いる場所はいつもの病室

 

サイドに置かれていた目隠しを着ける、二課に入ってからは着けないと落ち着かないのだ

 

『おっはよー!一日寝てたね!』

 

「!」

 

『さぁ!いつかのようにそこのボタンを押してごらん!』

 

ポチっ

 

「・・・」

『あ、ちなみにそれナースコールだよ。』

 

ドタドタドタ・・・バタンッ!!

 

「無事か弧仁!!」

 

廊下を走る音が響き、ドアが壊れんばかりの勢いで開かれた。

 

「!?」 

 

駆けつけたのは弦十朗

 

「あ、すまん。驚かせたな・・・それにしてもお前が倒れるなんて、あの日以来だな」

 

「・・・」

 

「身体に異変はなさそうだな。擬きの言う通り、呪力切れ、スタミナが切れただけのようなものだったらしい」

 

「!、翼ちゃんは?」

 

「安心しろ無事だ。医療チームが驚いていた、身体にはなんの別状もない、とな」

 

「身体に、は?」

 

その言葉に疑問を感じた

 

「・・・お前も遭遇したネフシュタンの鎧を持つ少女のの遭遇、立花君やお前とのあれこれ、加えて駄目押しの絶唱だ、かなり参っていたんだろう意識はまだ戻っていない」

 

「・・・」

 

『しょげないしょげない、いくら反転術式でも心までは治せないんだから』

 

「暫く安静にすれば意識も戻るだろう。それにしても翼ちゃん、か」

 

「!」

 

「ようやく向き合えそうだな、翼とも、立花君ともな」

 

「響は?」

 

「五体満足・・・とはいえんな、だがそのことを俺の口から語るのは野暮ってもんだ。今日こちらに来る予定だから、そこでじっくり話せ」

 

「・・・はい」

 

・・・

着替えて、少しコンビニに行って甘いものを買ってきた。

 

「・・・」あーん・・・

 

『シュークリームか、いいね』

 

「!」パクッ、モグモグ・・・

 

「できればメディカルチェックの後で食べてくれないかしら?」

 

シュークリームを頬張りながら、了子のメディカルチェックを受ける。

 

「なにも、もぐっ、食べて、ゴクッ、なかった、ので・・・けふっ」

 

「まぁそれは仕方ないわね。あらこれ美味しい」

 

「!?」

『エクレアが!?』

 

エクレアをしれっと取られたが、素知らぬ顔で了子がカルテを見ながら話す

 

「身体に別状なし、受け答えもできててメンタル面も大丈夫そうね♪」

 

「・・・」グスン

 

「それにしても弧仁ちゃんがスタミナ切れ、ね。今まで倒れるまで呪力使ったりしたことなかったの?」

 

「大概、一瞬で、終わるので」

 

「なるほど、今回は多岐にわたる乱用と駄目押しの反転術式が原因ってところなのね。呪力尽きちゃったらもう呪術って使えないものなの?」

 

「?『まぁそうなるね』そう、らしいです」

 

「そうなのね~。あ、これも美味しい」

 

「!?」

『プリンが!?』

 

そんなこんなで腹ごしらえしつつ、響を待っていた。

 

・・・

 

ここの部屋を使え、そう言って弦十朗は会議室を空けてくれた。

 

なにを話そうか

 

まず、黙ってたことと嘘ついたことを謝らないと

 

それから、これまでのことを話して・・・それから

 

何を話そうかと、考えていたその時

 

ウィンッ「すみません!弦十朗さんに言われて来ました!!」

 

会議室のドアが開かれ、挨拶が部屋をこだまする。

 

ドアの先にいるのはもちろん響

 

翼と戦ったあの時以来の再会、本当に久しぶりだ

 

「・・・あ、貴方は」

 

「・・・響」スッ

 

名前を呼び、目隠しを外す

 

片目だけの六眼が露になる

 

「!、やっぱり・・・」

 

「黙ってて、ごめん」

 

開かれた改めて響を見る。

 

「嘘ついて、ごめん」

 

髪の色は以前と違う、だけど

 

「・・・ッ!弧仁、なの?」

 

「・・・うん」

 

「声出るようになったんだね」

 

「うん」

 

「あのライブの時に、聞いた声はやっぱり弧仁だったんだ」

 

響はあのライブの日のことを朧気にしか覚えてなかった

 

それでも奏と翼がノイズと戦い、奏が自身を守ってくれたこと

 

そして、消え入りそうな意識の中で奏ともう一人、かけ替えのない友だちが必死に声をかけてくれていたことだけは覚えていた。

 

「生きるのを諦めない」という言葉と優しい青い光、それらに包まれた後の事は何も覚えていない・・・だけど、奏と弧仁が助けてくれたのは間違いなかった。

 

「なのに、起きたら弧仁は死んだって言われて、病院にも、学校にもどこにもいなくて、私、訳が分からなくなった。弧仁は生きてるはずなのにどこにもいなくて、なにも言えずに、お別れになって」

 

「ッ!・・・ごめん」

 

「昔も今も!何で何も言ってくれなかったの!?言ってくれなきゃ、分からないよ!」

 

未来は約束を守ってくれた、響はなにも知らない

 

弧仁が生きていたことも知らない、

 

何故弧仁が二人のもとから離れたのかも・・・知らない

 

「・・・」

 

目が覚めた時に、側にいるはずの大事な友だちがいなかったらどんな気分だろうか、自分ならきっと死にたくなる

 

「なにか事情があったのなら、それでもいいよ・・・だけど、せめてちゃんとお別れしたかった!なのに・・・」

 

「・・・」

 

ただただ、響の言葉を受け止める

 

その言葉が何度も何度も頭を殴っているようで、それほどにショックだった

 

弧仁は守っていたつもりだった

 

自分がいなくたって、響の家族と未来が響を支えてくれているから大丈夫だと思っていた

 

いつか、傷は癒えて、自分のことを忘れて・・・幸せに生きてくれると信じていた

 

だから、二人のことを遠くから守ろうと決めた

 

だけど、こんなにも、彼女のことを傷つけていたなんて、思いもしなかった・・・自分は・・・なにもできていなかった

 

そんな自分が情けなく憎い・・・それを誤魔化すように、拳をギュッと握った

 

「なにも言わなかったのは、私のことが嫌いになったから?忘れてほしかったから?」

 

「っ!そんな、わけ、ないっ!!」

 

そう言ってからポケットに手を入れ、あるものを取り出す

 

「!、それっ、まだ持ってたんだ・・・」

 

それを見た響は驚く、何枚ものカードが連なったそれは・・・

 

「・・・捨てられる、わけ、ない、忘れられる、わけ、ない」

 

いつも持ち歩いていたので、すっかりくたびれてしまっているが、間違いない

 

それは響と未来が弧仁に贈った挨拶カードだ

 

「何度も、これに、助けられた」

 

エージェントの仕事が辛かった時や目の前で命が失われてしまった時、何度も心が折れそうになった時があった

 

その度に沢山の思い出が詰まったこれを見て、持ち直した。 

 

自分が守ったものの先に、響と未来がいるんだとそう思ったら立ち上がることができた。

 

「未来と、響、が俺を、助けてくれた。初めて、会った時と、同じ、何度も何度も」

 

忘れたことなんてない、嫌うわけがない

 

それだけは知ってほしかった

 

「ッ!弧仁っ!!」

 

ガシッ!

「!」

 

響が弧仁に抱き着いた

 

「弧仁、弧仁っ!!」

 

背に手を回されて力強く抱き締められる

 

その存在を確かめるように、離さないように、強く強く抱き締める

 

いつの間にか弧仁の身長は響より高くなっていた

 

いつだったか、ハグされて撫で回してきていた響

 

その響が今、自分の近くにいる

 

「ひ、びき」

 

震える手がそっと、響の背に伸びていく

 

背に触れるその直前、迷う

 

抱き締めて、触れていいのか?

自分は彼女を傷つけていたのに・・・

 

『ここで抱き締め返さないと、男じゃない!・・・なんてね、弧仁、素直になりなよ』

 

「!」

 

『前から言おうと思ってたけどさ、うじうじしすぎ!前にも言ったでしょ!欲張れって!独善的で独占的でいいんだよ!今!弧仁はどうしたい!』

 

「・・・」

 

『細かいことは一旦全部捨てな?、弧仁が望むままにしてみなよ』

 

どうしたいかって?・・・そんなの決まってる

 

ギュッ!

 

「!、弧仁?」

 

ギュゥ~~ッ!!

 

「ちょっと!?流石に痛い!「響」?」

 

きついくらいに抱き締め返した腕、そしてようやく発せられた弧仁の声

 

それと同じく、昔と同じように触れ合ったことで溢すことができた本心がようやく溢れだす

 

「本当は、ずっと、会いた、かった」

 

「!」

 

「こう、した、かった」

 

涙が流れる、あぁ暖かい

 

こうして抱き締めて、抱き締められたのはいつ以来だろう・・・記憶である限りは響しかいない

 

優しく自分を照らしてくれる暖かい太陽、それが弧仁にとっての響なのだ

 

「響は、太陽、だね」

 

「あはは、なにそれ・・・けど、分かるかな。私もね、未来が陽だまりで、帰りたい場所なんだ。だったら弧仁は私にとってはなんなんだろうね?」

 

「分から、ない」

 

「そっか、分からないね・・・けど、いっか」

 

「うん」

 

今はただこの一瞬を噛み締める、永久に続けと願いながら

 

・・・

 

それから少し名残惜しみつつも、離れてお互いのこれまでのことを話す。

 

「弧仁は私達を守るために別れを選んだんだね」

 

【呪術のことは秘匿しなくちゃいけなかったから、巻き込みたくなくて、ごめん】

 

「ううんいいよ・・・ってなんでメモ帳?」

 

弧仁はこれまでよ説明を全てメモ帳で行っていた、その理由は

 

【声を出してたらたどたどしいから】

 

いつでもメモ帳は持ち歩いている。

 

肉声で話す場合、なるべく普段は返事は短く、端的に、を心がけているのだ

 

それでも重要な会議や報告の際にはこのように筆談に切り替える必要があるのだ

 

「うーん、それも懐かしくていいけど、折角なら弧仁の声が聞きたいな」

 

「!・・・分かっ、た」

 

「うん♪・・・次は私の番かな」

 

響は目覚めて一番に弧仁の安否を心配し、病院の先生から弧仁は死んだ、と聞いてから病院や復帰した学校を探し回ったが・・・弧仁はいなかった

 

それから色々大変なことはそれなりにあったが、なんとかなり、今に至る

 

「ざっくり、しすぎ」

 

「私のことはいいよ~、それより弧仁何で名字変わったの?」

 

「死んだ、ことに、なって、その時、了子さん・・・姉さんが、身元、保証人になってくれた」

 

「へぇ~そうなんだ、なんていうか波乱万丈だよね」

 

「響が、言える?」

 

「あははっ、私もクライマックス百連発だったかな・・・それと、弧仁は翼さんのこと知ってたの?」

 

「翼、ちゃんとは、昔から、友だち」

 

「えぇ!?す、すごいね」

 

「一時期、従兄弟、だった」

 

「えぇぇ!?」

 

「今は、同僚?」

 

「関係が近いのか遠いのか分かんないよ・・・じゃあ奏さんは?」

 

「・・・どこまで、知ってる?」

 

「今も眠り続けてるって、それで原因は分からないままって言う風には聞いた・・・緒川さんから

 

あのライブの日に奏さんは昨日の翼さんと同じ絶唱を歌ったって聞いた。」

 

「・・・そっか」

 

奏は自分にとって姉のような存在だった

翼もきっと同じように思っていたのではないだろうか

 

「奏さん、は、一緒に、暮らし、てたんだ」

 

「!そうなの!?」

 

「けんか、したことも、あったよ。だけど、俺は、姉、みたいに、思ってた」

 

「・・・そうなんだ、弧仁が言ってたお姉さんって奏さんの事だったんだね」

 

「・・・うん、それから、奏さんが、眠り、続けて、るのは、俺が、原因、なんだ」

 

「!?」

 

「あの時、消えそうだった、奏さんを、俺が、呪った」

 

「な、なんで?」

 

「失いたく、なかった。俺の、ワガママ」

 

「ッ!」

 

「それで、奏さん、起きなく、なった。だから、俺は、いつか、奏さんの、呪いを、祓いたい」

 

「!」

 

「奏さん、を、自由に、してあげたい」

 

「それで奏さんがどうなってもいいの?」

 

「・・・どんなこと、でも、受け入れなきゃ」

 

もう、子どもではない

このままじゃだめなことは分かってる

 

現実を受け入れる覚悟はできている

なにが起こっても、受け入れてみせる

 

机の上に置いた手を強く握る・・・その様子を見た響は

 

「そうなんだ・・・だったら、やっぱり私ってバカだなぁ」

 

「?」

 

「私、奏さんの代わりになろうとしてた。」

 

「!」

 

「翼さんが怒って当然だよね。誰かが誰かの代わりになるなんてできないのに」

 

「・・・」

 

「だから、私は・・・私のまま強くなりたい」

 

「!」

 

「私にも守りたいものがある。まだ会ったばっかりだけど学校の皆や、お母さんにおばあちゃん、それから未来・・・それから必要なんてないかもしれないけど、弧仁のことも」

 

「響・・・」

 

「それから・・・緒川さんにお願いされたんだ。翼さんを一人ぼっちにさせないでって」

 

「!・・・俺も、昔、言われた」

 

翼に初めて会った日に、弦十朗に言われた

 

「だけど、今はまだ私が守れるものなんてちっぽけなものだけで、一人じゃできないから・・・お願い」

 

ぎゅっと、優しく弧仁の手を取る

 

「一緒に、強くなろう。もしかしたら、弧仁はもう強くなったのかもしれないけど・・・一人は寂しいでしょ?」

 

「!」

 

「弧仁は弧仁の守りたいもののために、私は私の守りたいもののために、一緒に強くなろうよ」

 

「・・・うん」

 

この時もう二度とこの手を離したくないなと、二人は同じことを思っていた・・・

 

・・・それから解散して翌朝

 

「たのもー!!!」

 

「!?」

 

弦十朗の家に響くのは聞き覚えのありすぎる声、朝御飯の準備をしていた手が止まる。

 

「この声は立花君か?少し出てくる」

 

居間で新聞を読んでいた弦十朗が玄関へ

 

『弦十朗に弟子入りに来たんじゃない?』

 

「!」

 

強くなると決めた響が訪ねてきた理由はきっと擬きの言う通りだ

 

『相変わらずすごい行動力だね・・・それにしても弧仁が守りたいものの中に響がいて、響の守りたいものの中に弧仁がいるんだね』

 

「?」

 

『君達はさ、ちゃんと話し合って、高め合って、それからちゃんと理解し合うんだよ?』

 

いつも明るい調子で話す擬きの声・・・だけど今はどこか寂しそうだ

 

「?」

 

『ん?なんてことないよ。これはただの先生からのお言葉、ありがたく受け取ってね~』

 

「」コクッ

 

いつもの調子に戻った・・・なんだったのだろうか?

 

『さ、それじゃあ朝御飯仕上げちゃおうよ!響の分も追加してさ!』

 

考えさせる間もなく、弧仁を急がせる擬き

 

この後、弦十朗による響の特訓に巻き込まれることは言うまでもない

 

 

 

 

 

 




ちょっと話が明るくなってきたので~

じゅじゅしないフォギア

響「そういえば弧仁のその目隠しってずっと持ってるよね?」

弧「大事な、もの」

響「昔は首に巻いてたけど、目につけるものなんだよね・・・それちゃんと見えるの?」

弧「見える、よ?」

響「へーどこまでみえるの?」

弧「この施設、の全部、なら」←呪力による感知ができる

擬『普段は疲れにくくするためにつけてるよー』

響「すごい!じゃあ弦十朗さんはどこにいるの?」

弧「トレーニング、ルーム」

響「了子さん!」

弧「研究、室」

響「あおいさんと藤尭さん!」

弧「あおい、さんは、給湯室。藤尭、さんは、司令室」

響「緒川さん!」

弧「響の、後ろ」

響「へ?「呼びましたか?」うわぁぁ!?」

擬『流石忍者!神出鬼没!』
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