湖の上のどこかの屋敷
弧仁達が何度か対峙していたネフシュタンの少女が桟橋の上にいた。
湖を見ながら思うのは先日のこと
「(完全聖遺物の起動には相応のフォニックゲインが必要だとフィーネは言っていた。私がソロモンの杖の起動に半年もかかずらったことをあいつはあっという間に成し遂げた)」
少女が手に持つ銀色の杖、ノイズの出現や転送を可能にする完全聖遺物『ソロモンの杖』
それは半年をかけて、少女が起動させたものだった
「(そればかりか、無理矢理力をぶっぱなしてみせやがった)」
悔しそうに、唇を噛み締める少女の脳裏に浮かぶのは、それと同じ完全聖遺物である『デュランダル』を暴走しながらではあったがその力を見せつけた響だ。
だが、少女の脳裏にもう一人浮かぶ人物がいた
「(あの目隠しはそれを片腕で止めやがった・・・フィーネからの情報によると、あれは恐らくあのお坊ちゃんの中にいる最強の呪術師の人格・・・)」
軽口を叩きながら戦場に現れ、あろうことか自身を守ったあの男・・・五条擬きと弧仁
「(最強の名も納得の力・・・だけどあのお坊ちゃんもポテンシャルだけならそれと同等だと・・・くそっ)化け物共め・・・」
そう吐き捨て、もう一度手に持つソロモンの杖を見る
それは響の身柄の確保のためにフィーネ、と呼ばれる人物から渡されたもの
「このアタシに身柄の確保なんてさせるくらい、フィーネはあいつにご執心というわけかよ」
少女の脳裏に新たに浮かぶ、過去の記憶
紛争の最中、家族を失い、捕虜として最低の生活を送らされた忌まわしい記憶
「・・・そして私はまた、一人ぼっちになるわけだ」
しかし、忌まわしい記憶の中でも忘れたくない記憶が2つ
一つは家族の記憶そして、もう一つは・・・
「弧仁・・・か、久しぶりに聞いたな」
何も喋らない、違う・・・喋ることのできなかった少年
母に連れられやってきて、最初は困惑した・・・だけど共に過ごす中でかけがえのない家族の一員となった少年の名前を
「(なんでアイツが知ってるの知らねー・・・けど・・・)」
擬きから問われた名前、それは大切な記憶をいくつも思い出させた、最後はあっけない別れだった、その少年の名は・・・
「弧仁・・・お前どこにいるんだ?生きてるのか?・・・会いてぇなぁ・・・」
生き別れとなった「弟」を想うその姿は年相応の「姉」だった
・・・
所変わり、リディアンに隣接した医療施設・・・その廊下
「ハァっ、ハァッ・・・」
杖をつきながら歩くのは、意識を完全に取り戻した翼
しかし数日間寝たきりだったいうこともあり、杖を使い、点滴を繋いで歩いていたが、その顔には汗が浮かんでいた。
もちろんそんな状態の翼を看護婦が止めたが、ふらつき窓張りの壁にぶつかりそうな所だったのを・・・ガシッ
「!弧、櫻井」
「無理は、駄目」
弧仁が支えた
「すまない・・・!」
「?・・・!、響」
ぶつかりそうだった窓の外から見えるこはリディアンのグラウンド、そこには未来と共に走り込みをする響の姿が見えた。
「あ、あぁ・・・あの子はトレーニングか?」
「ここの、ところは、ずっと」
「・・・そうなのか」
「病室、戻ろ?」
「・・・あぁ」
翼の病室・・・そこはありとあらゆるものが散乱していた
「うわぁ・・・」
「こんな時に限って淀みなく発音しないで・・・いつもは緒川さんがやってくれてるから・・・」
「それは、それで、どうかと」
「くっ、とにかく椅子はそこあるから・・・って!?」
椅子を示すために少し目を離すと、片付けをしている弧仁が
「そんなことしなくていいから!」
「汚いと、落ち着かない」
『できた主婦かよ』
「で、でもその・・・下着、とか」
現に今弧仁が畳んでいるものがそれなのだが
「今更」
「・・・それもそうね」
昔、弦十朗宅に泊まりにきた翼にめんどくさいから奏さんのと一緒に洗っちゃうね?と言って服やら下着やらを洗濯したのは弧仁である。
『主な原因奏だけどね!』
数分後・・・
「とりあえず、これで」
きれいに畳んだ服、並べた雑誌と薬類、洗濯物は病院のランドリーに頼み、シーツの交換もついでにやった
「あ、ありがとう」
『いや、至れり尽くせりすぎでしょ』
翼はベットに横になり、その傍らの椅子に弧仁が座る。
「・・・りんご、剥くね」
ショリショリショリ・・・
どう切り出せばいいのか分からず、りんごを剥く音だけが室内に響く・・・
「そうだ、これは貴方のでしょう」
「!、ありがとう」
片付けの最中発見された弧仁の音楽プレーヤー、以前落としてしまっていたものだ
「今日はそれを取りに来たんじゃないの?」
「それもある、けど、お見舞いが、本命」
「!、緒川さんから聞いたわ。前からお見舞いに来てくれてたってそうね。それからその・・・私のファンだって」
「!、うん、ずっと応援、してた」
「そのプレーヤーの中も?」
「うん、翼ちゃ・・・風鳴さんの歌と・・・ツヴァイウィングの歌しかないよ」
「・・・あの時関係なくないって言ってたのはこういうことだったのね」
「ずっと、ファン、だから」
「・・・今までごめんなさい、弧仁」
頭を下げる翼
「!」
「奏が目覚めなくなったあの日、私は弧仁を拒絶した。弧仁がどれほど奏を慕っていたか知っていたのに、それなのに、私は「それは、違う」弧仁?」
「翼、ちゃん、のせい、じゃない」
あの日奏を救えなかったのは翼じゃない
「俺が、未熟で、弱かった、から」
あの時奏に絶唱を歌わせたのも、奏を呪ったのも、全部
「俺が・・・悪いんだ」
「弧仁・・・」
響との一件から一歩前へ進めたと思っていた
けど、翼を前にすると、やっぱり・・・
「・・・今日は、帰る」
そのまま病室を出る。
翼は引き留めなかった
弧仁も振り返らなかった
『んー・・・後もう一歩なんだよなぁ』
それから
『それで、今度未来にふらわーのお好み焼きご馳走することになっちゃってさー』
「ふらわー?」
『うん、学校の近くにあるお好み焼き屋さんだよ。』
特に何事もなかったので自宅で携帯で響と電話をしていた。今日は未来と一緒にトレーニングに励んでいたらしい
『ほんっとに美味しいんだよ!まさにほっぺの急降下作戦ッ!』
「へぇー、おいし、そう」
『でしょ?・・・あのね、その時に弧仁も来ない?』
「!」
未来との約束に誘われた・・・それはつまり
『未来と会ってみない?きっと未来も弧仁が生きてるって知ったら喜ぶよ!』
「!・・・」
楽しそうに話す響・・・そう、響は知らない
弧仁が未来に、嘘をつかせていることを
『弧仁?』
未来のことは響と同じくらい大切だった
だから、守りたかった・・・守りたいから別れた
・・・だから
「まだ、無理、かな」
『・・・そっか』
「ごめんね」
『ううん、気にしないで、それじゃあまたね!』
ピッ!・・・
『よかったの?弧仁』
「?」
電話を切ると、擬きが話しかける
『未来と久々に会うチャンスだよ?』
「・・・」
『え?不安?そうだろうね、自分勝手に別れたくせにのこのこ現れるなんて、僕じゃ無理だね』
「!」
『けど、いつまでも未来に嘘をつかせるつもり?』
「!・・・」
『また、逃げるんだね。』
「・・・」
そんな話をしていると玄関が開く音がした、弦十朗だろう。
出迎えと、晩飯を暖め直すために立ち上がる
擬きの言葉は頭の端に追いやって、見ないふりをした
・・・翌日
「・・・!」
弧仁は休日だったので、色々見るためにブラブラしていた。
『この辺結構変わったから散策も兼ねて、散歩だね』
なので私服姿、いつもの目隠しではなく、新たに新調したサングラスを掛けていた。
今日が休みになったのは二課が現在慌ただしく、弧仁がやれることがないからである。
『輸送作戦に失敗したデュランダルは再び二課預かり、それに加えて二課本部も強化された』
「・・・」
『それができるようになったのも、設備強化に反対してた防衛大臣が暗殺されたから・・・か、弦十朗寂しそうだったね』
日本政府の防衛大臣、広木は謎の武装集団により先日暗殺された。
広木大臣は二課に法令を遵守させることで、余計な横やりを入れさせず、俺たちを守ってくれているんだ、と弦十朗は語っていた。
弧仁は会ったことはないが、擬きからの評価は高い人物だった。
『拳骨だろうが絞め技だろうが叱って止めてくれる存在ってさ、大切だよ』
「?」
『え?誰のこといってるのかって?君にとっての僕みたいな人のことだよ』
「??」
『君もいつか分かるよ』
「?」
『さ、しんみりした話はここまで!そろそろ夕御飯の時間帯でしょ?弦十朗は今日はご飯要らないって言ってたし、ちょっと早いけど夕飯にしたら?』
「・・・?」ウーン、?、スンスン
折角外にいるのだから外食にしようと思い、なにを食べようかと考えている鼻に香ってきたソースの香り
『この香りは・・・あそこだね』
「!」
香りの出所を見てみる、そこにはふらわーと書かれたお好み焼き屋さん、昨日響がおすすめしていたお店だろう
『いやー、すごい運命のいたずらだね。どうする?行ってみる?』
「!」
『響といつか行きたいから我慢するって?健気だね』
グゥ~~・・・
途端に鳴り出す弧仁の腹
「・・・」ダッ!
『ソースの匂い嗅いで我慢できなかったんだね』
空腹には逆らえず、お店に走っていきました。
・・・ガラガラ
「いらっしゃい!、あら?はじめてのお客さんだね」
出迎えてくれた店主に挨拶を返す
「こん、にちは」
「今空いてるから好きなところ座りな、ご注文はそこのメニュー「おすすめ、で!」あらあら、よっぽどお腹空いてるんだね、ちょっと待ってな」
『いい店主だね、弧仁のことみても、驚きもしなかったし』
現在のコーディネートは白のTシャツ、黒のジャケット、黒のズボン、スニーカー、サングラス・・・と普通だが、弧仁の見た目はかなり目立つし、話し方だって違和感を覚えられるだろう・・・それでもおかしな顔一つせず向かえてくれた
今日だってじろじろ見られたりすることがあって、少し気分が悪くなった時もあったが、ここは居心地がよかった
「・・・」
『そりゃ響がお気に入りのお店だもん・・・って、それが理由になるの?』
ジュウゥゥと耳から幸せになる音を聞きながら、お好み焼きを待っていると・・・
ガラガラガラ・・・ドアが開かれる、来客だろう
「いらっしゃい」
それを向かえる店主の声・・・そして
「こんにちは」
玄関に立っていたのは・・・
「!!!?」
『あははははっ!本当、運命はいたずら好きだねぇ!気が合いそう!』
響と同じリディアンの制服、そして彼女のトレードマークともいえる白いリボン
「風鳴弧仁」が最後に会った人物、忘れられるわけがなく見間違えるはずがない
そこにいたのは弧仁のもう一人の友だち、小日向未来
予期せぬ遭遇!脳内に響く擬きの爆笑をBGMに、弧仁はこの危機をどう乗り越えるのか!?
シンフォギアさんぽ
ある日の二課、研究室
響「そういえば了子さんと弧仁って戸籍上の兄弟なんですよね?」
了「そうよー、一応弟」
響「へー、よかったね弧仁!美人のお姉さんができて!」
弧「兄弟って、言っても、義理」
了「そうね、設定上は私の両親の隠し子・・・ってことになってるわ。といっても普段は別々で生活してるしほぼほぼ他人ね」
響「そうなんだー、じゃあ特に一緒に何かしたりとかはなかったんですか?」
了「ないない、弦十朗君ったらこの子のこと離さないし」
響「師匠が!?親バカだねぇ」
弧「過保護、すぎ、だけどね」
了「それに一緒に暮らしてたら色々問題もあるだろうし」
響「!それってもしかして18歳未満お断り案件!?」
弧「いや、親子に、間違われ「余計なこと言うのはこの口かしら?」ひたたっ!?」