歌を奏でる装者と無限を操りし少年   作:アユムーン

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望んでなかった「再会」

「いつも人の三倍は食べるあの子は一緒じゃないの?」

 

「いえ、今日は私一人です」

 

店主が未来に聞いた人物は恐らく

 

『響だろうね・・・もしかして今日一緒に行く約束してたのかな?』

 

「・・・」チラッ

 

メニューで顔を隠しながら様子をうかがう。

今のところばれていないが、未来の様子はどこか寂しげ

 

響が前に未来にシンフォギアのことを伝えられないのを心苦しく思っていると言っていた。

 

なら、なにも知らされていない未来も・・・

 

「じゃあ、今日はおばちゃんがあの子の分まで食べるとしようかねぇ」

 

未来の様子を察したのか、冗談を言う店主

 

「食べなくていいから焼いてください」

 

「あら?あはははっ・・・」

 

「・・・お腹空いてるんです。今日はおばちゃんのお好み焼きが食べたくて、朝からなにも食べてないから」

 

「・・・」

 

俯いているので、こちらに視線が向いていない未来

 

もう少しだけ、もう少しだけと、メニューを下に降ろしその様子を見る。

 

久しぶりに見た未来、響同様成長している。

 

だけど、弧仁の記憶の中にいる未来が、そんな寂しげな顔をしている記憶なんて・・・『なに言ってるの、あるでしょ?』

 

・・・一つしかない、あの日、どんな理由があったって、なにも言わず、自分が別れを告げたあの時

 

『今の未来はその時と一緒だよ。なにも知らされず、ただ離れていく友達を見守ることしかできない』

 

「・・・」

 

『昔は弧仁で今は響・・・残される者の気持ちって僕らでは分からないよね。』

 

「!」

 

『弧仁にも響にも言えることだけど・・・そこんとこ、ちゃんと気づかないと後悔するよ。』

 

「?」

 

『僕の経験かって?・・・さぁどうだろうね?』

 

妙に引っ掛かる擬きの言葉を聞きつつも、目と耳は未来の方に向ける。

 

「お腹空いたまま考え込むとね、嫌なことばかり浮かんでくるものだよ」

 

「・・・ありがとうおばちゃん」

 

考え込んでから、少しだけ笑みを浮かべておばちゃんにお礼を言った未来

 

それを見た弧仁は・・・

 

「なにかあったらまたいつでもおばちゃんのとこにおいで!」

 

「はいっ!」

 

「さて・・・そっちのイケメンさん待たせたね、ふらわー特製お好み焼きだよ!・・・ってあら?未来ちゃん、そこにいた男の子は?」

 

「メニュー見てた人ですか?・・・あれ?」

 

店の奥の方に座っていたはずの弧仁がいない、弧仁が座っていた座席のテーブルの上には

 

「お金・・・とメモ?」

 

メモには急いで書いたのか、荒っぽい字で急用ができたので帰ります、お釣りは隣の子の分で・・・と

 

「あら、お腹空かせた顔してたんだけどねぇ?」

 

「・・・この字「みくちゃん?」!」

 

どこか見覚えがあるその字・・・思い出す前に店主に話しかけられる。

 

「折角作ったし、それにあのイケメンさんの驕りみたいだし、これ食べる?」

 

色々分からないことはあるが・・・お腹は空いているので

 

「い、いただきます」

 

・・・

 

ふらわー近くのコンビニ・・・から出てきた弧仁

 

そこから少し離れたところまで歩いて・・・買ってきたおにぎりの封を切り、食べる

 

「・・・」パクッ

 

『あーあ、折角美味しそうなお好み焼きだったのにね』

 

「・・・」モグモグ

 

『まぁ、また行けばいっか。それにしてもメモ持ち歩いててよかったね。』

 

筆談用のメモを使って、さっきのメッセージを置いてきたのだ。

 

『隣の子の分なんて、キザなことまで書いちゃって・・・せめてもの償いのつもり?』

 

「・・・」ゴクンッ

 

『だんまりだね、おにぎりなんの具選んだの?』

 

「・・・しゃけ」

 

『そっか、美味しいね・・・ちょっとしょっぱいだろうけどさ』

 

「・・・」グシグシ

 

雑に涙を拭う。

 

未来のためになにもできない自分が情けなくて、悔しくて、辛くて、悲しくて

 

「・・・」バクッ・・・モグモグ

 

それでもお腹は減る、昔旅をした時に知ったことだ

 

生きるため、死なないために、少年はただただおにぎりを食べた。

 

・・・

 

食べ終わって、ベンチに寝っ転がる。

 

傍らにはおにぎりのゴミを入れたビニール袋

 

もう今日はなにもしたくない

 

『もしかして寝るつもり?やめな、いくら春でも風邪引くよ』

 

「・・・」プイッ

 

『あらら、へそ曲げてるよこの16歳・・・』

 

そもそも擬きの意地悪な言葉のせいで結構傷ついてるのだ

 

もう今日は話してやらない

 

任務にだって出てやるものか

 

『ノイズ出たらどーすんの?響一人にやらせるの?』

 

・・・前言撤回、任務は速攻で終わらせる

 

『そこで行かないってならないのが五条悟との違いだよね』

 

「・・・」ガバッ

 

そうだ

 

『ん?どしたの?』

 

今まで知ろうとしなかったが、この擬きのモデルになり、今の自分の力の源である「五条悟」

 

そのことを自分は全く知らない

 

『呪力や術式以外での五条悟のこと?確かにその辺関連はまだ弧仁に刻んでないよね。っていうかそもそも必要ないでしょ?』

 

「・・・」ウーン

 

でも、もしかしたらそれを知ったらもっと強くなれる・・・かも?

 

『ないない、確かにこの僕「五条悟擬き」のモデルでもある人物だけど周りからの評価は大体クズだったしね。それか最強の二通り・・・あっ、信用されてて信頼もあったけどね、ただ尊敬はしてないらしいけど』

 

「!?」

 

『・・・だからさ、ちゃんと弧仁は信用も信頼もそれからまぁ、尊敬もちゃんともらいなね』

 

「?」

 

『誰も置いていかないように、強く聡い仲間と共に強くなりな』

 

「?」ウーン

 

よく、分からない・・・けど

 

「!」コクッ

 

『うん、いい返事』

 

ただ、先生がそう言うならそうした方がいいんだろうと思ったし、そうしたいとも少しだけ思った

 

・・・

 

「zzz」

 

『ほんとに寝たよ、しょうがない入れ替わって帰ろ』

 

その時、ピリリリリッ!!

 

「!」パチッ

 

以前の反省から持ち歩くようにしていた仕事用の携帯端末が鳴る。

 

即座に覚醒、慌てて出ると・・・相手はもちろん弦十朗

 

『弧仁っ!オフ中にすまないがネフシュタンの少女が現れた!』

 

「!」

 

『今から送る座標に急行してくれ!』

 

「了、解!」ピッ!

 

通話を切り、端末に表示された座標を確認して、走る。

 

『オフなのに呼び出しとは・・・労働はクソ、はっきり分かんだね』

 

・・・時を同じくして、弧仁と同じ連絡を受けた響もまた、現場に急行していた。

 

連絡を受ける前には、緒川に頼まれ翼のお見舞いに行っていた。

 

そこで、改めて翼から覚悟を問われ・・・そこで、自分の守りたいものを見つめ直した。

 

・・・

 

なんでもないただの日常を守りたい、ノイズに襲われている人がいるなら救いだしたい

 

最速で、最短で、真っ直ぐに、一直線に

 

ノイズでもない者が相手だったとしたら、どうしても戦わなくちゃいけないのなら、その疑問を、自分の想いを真っ直ぐにぶつけたい・・・それが響の覚悟

 

・・・そして

 

「それから・・・私より前を走ってる弧仁と肩を並べて戦いたいんです。」

 

「!」

 

「弧仁のこと聞きました。翼さんとのことも、それから奏さんとのことも・・・

 

それで弧仁を助けてくれて、守ってくれて、導いてくれる人はきっと沢山いたと思います。けど戦う弧仁はずっと一人だったんじゃないかなって・・・」

 

「・・・そうかもしれないわね」

 

「私はまだまだで、追い付くなんてできっこないかも知れないけど・・・それでもいつか必ず弧仁の側で一緒に戦いたいんです。」

 

「!」

 

響の言葉に翼は奏が言っていたことを思い出す

 

大きなライブを控えたなんてことないある日のとこ

 

『なぁ翼、旦那に言ったんだけどさ、もしも弧仁が闘うようなことがあったらさ・・・その時は私たちが隣で一緒に戦ってやろうな』

 

姉のような瞳でそう語った奏、それに対して翼は・・・

 

「そうだったね、奏・・・」

 

「へ?翼さん?」

 

「!、なんでもないわ・・・今貴女の胸にあるものをできるだけ強くはっきりと想い描きなさい、それが貴女の戦う力、立花響のアームドギアに他ならないわ」

 

自分もまだ弧仁の隣には立てない

 

幾度か見て、実際に立ち会って感じた弧仁の強さに並び立つこと・・・それになにより、友達としてまだ隣には立てない

 

「(・・・まずはちゃんと仲直り、それから笑顔で沢山長生きしないとね、大丈夫ちゃんとやれるから)見ててね、奏」

 

・・・時は戻り、現場に急行する響、しかしその途中

 

「響ー!」

 

「っ!?未来!?」

 

ふらわー帰りの未来と鉢合わせてしまう。そして更に・・・

 

「お前はぁぁぁ!!」

 

ネフシュタンの少女まで現れる。

 

「っ!きちゃダメだ!ここはっ」

 

迫る攻撃、しかし未来が近くにいるのでギアを纏うのに躊躇した瞬間・・・

 

「キャァァァァ!!!」

 

響と未来の間を裂くように少女の攻撃が炸裂し、爆風に飛ばされる未来・・・そこに

 

ガシッ!!

 

「っ!・・・?」

 

瞳を閉じて、迫る衝撃に身を固めた未来だったが、その衝撃はこない

 

それどころか、自分を優しく包む腕の感触

 

恐る恐る瞳を開ける・・・そこにいたのは

 

「!・・・弧、仁?」

 

あの日・・・大事なことはなにも告げず、ただ別れの言葉を残して去っていったはずの親友が未来を抱えていた。

 

不思議な眼だと昔感じていた水色の片眼が未来を見つめている。

 

「なんで・・・っ!?」

 

弧仁に気を取られていると、今度は上から迫ってくる車

 

恐らく、自分と同じように飛ばされたのだろう・・・それが迫ってくる。

 

迫る車に視線が移る、しかし耳がある歌を拾う。

 

「Balwisyall Nescell gungnir tron」

 

聞き覚えのある声が奏でる聞き覚えのない歌

 

そして、自分の前に差す影に気づくと共に、その影が車に向かって拳を振るい、吹っ飛ばした。

 

その影は

 

「響?」

 

「っ、ごめん・・・弧仁お願い」

 

「・・・分かった」

 

未来を抱えたまま駆け出す弧仁とそれと反対方向に駆け出す響

 

「どうして響が、それになんで弧仁・・・「ごめん」!?」

 

トンッ、未来の額に優しく指を当てて、気を落とした。

 

『とにかく安全なところに運んで、早く響と合流しよう』

 

「・・・」

 

『こんな形での再会は僕だって望んでなかったさ・・・けど、なってしまったものはどうしようもない』

 

「分かっ、てる」

 

『そうか・・・なら急ぎな』

 

「うん」

 

・・・駆ける弧仁、この後のことはなにも考えず、ただ一心不乱に走った。

 




シンフォギアさんぽ!

昔の話(小学生時代)

響「弧仁の字ってきれいだよね」

弧『そう?』カキカキ

未「うん、いっつも早く書いてるのに読みやすいし」

弧『沢山練習したからね』

響「でもたまに難しい漢字も書いてるから読めないんだよね~」

未「それは響の勉強不足なんじゃないの?」

響「違うよー!ほんとに難しいんだって!ねぇ弧仁が昔行った国の名前ってなんだっけ?」

弧『中国、亜米利加、濠太剌利、印度、その他もろもろ』カキカキ

擬『行ったことない国はないんじゃない?』

響「ほら!どこか分かんないでしょ!?」

未「普通にカタカナで書きなよ・・・それ以前になんでそんなに色んな国名が出てくるの!?」



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