歌を奏でる装者と無限を操りし少年   作:アユムーン

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ひどく残る「傷跡」

走る走る、とにかく走る

 

かといって抱えている未来に負担がかからないように安全に走る

 

そうしてたどり着いた場所はリディアン音楽院、そこで

 

「はぁい、弧仁ちゃん」

 

門の前で了子が待っていた。

 

「・・・お願い、します」

 

眠る未来を了子に託す。

 

「任されたわ。あっちは今なんと響ちゃんが優勢、アームドギアに頼らず、そのエネルギーを直接ぶつけてたわよ」

 

「!」

 

「とはいえあれだけの一撃、響ちゃんの負担は大きいと思うわ、行ってあげなさい」

 

「はい」

 

踵を返し、今度は響の元へ

 

・・・

 

響渾身の一撃を受けたネフシュタンの少女

 

その損傷は凄まじく、完全聖遺物でも再生がしきれない程のダメージを負った。

 

「(なんて無理筋な力の使い方をしやがる・・・この力あの女の絶唱に匹敵しかねない!こっちが食い破られる前にカタをつけなければ・・・)」

 

損傷箇所に眼を向け、そして響に視線を戻す。

 

「♪~♪~」

 

しかし目前の響は、丸腰の自分に追撃を行わず歌を奏続けた

 

戦場においてあまりにも無粋で、非常識なその行為に少女の・・・

 

「お前、バカにしてんのか!私を・・・雪音クリスを!」

 

クリスの神経を逆撫でる。

 

しかし、それに対して響は

 

「そっか、クリスちゃんって言うんだ」

 

遂に知れた少女の名を呼び、笑顔で語りかける。

 

翼の前で覚悟を決めた通り、言葉が通じる人間が相手だからこそ争うのではなく、相互理解を目指す。

 

「お前・・・くせぇんだよ。嘘くせぇ!青くせぇ!」

 

その手を拒むよう感情のまま、響に攻撃を加え・・・

 

「ぶっ飛べよ!アーマーパージだ!」

 

損傷の治らないネフシュタンの鎧など不要と言わんばかりに脱ぎ飛ばし、その鎧の破片が辺り一面に飛び散り、砂塵が舞う・・・そんな中でも

 

友の姿を見逃さない、呪術師がいた。

 

「ッ!・・・!弧仁」

 

「響、下がって」

 

駆けつけた弧仁、無限のバリアを展開して攻撃から響を守る。

 

「(ダメだ、結局私は弧仁に守ってもらってる・・・)」

 

自分を守るために、前に立つ弧仁・・・傷つかなくても、己の未熟さが歯痒い響

 

そんな間もなく・・・

 

「Killter Ichaival tron~♪」

 

「!、この歌って」

 

「はっ、お坊ちゃんも来たのかよ・・・まぁいいさ、見せてやるイチイバルの力だ」 

 

聞こえるクリスの声、砂塵の中でクリスが纏っているものは赤を主体とした・・・響や翼と同じシンフォギア

 

『さっきあの子が言ったイチイバル、確か何年か前に行方知れずになった聖遺物じゃなかったっけ?』

 

「その、はず」

 

『なんであの子がとかは今弦十朗達が調べてるに違いない、とにかくやるべきことは分かるでしょ?』

 

「うん」

 

今はまだ名も知らぬ装者の少女を一時戦闘不能にする、そう結論付けて構えたが・・・

 

 

 ・・・

「クリスちゃん、私達と同じ」

 

 

 

そう呟いた響の一言

自分と同じシンフォギアを纏う『クリス』に驚いたが故の一言・・・だが

 

その一言は・・・

 

 

 

「クリス・・・ッ!?」

 

 

 

弧仁の脳内に確かに存在する記憶

 

忘れていたわけではなかった、でも彼女はもう死んでいると思ってしまっていた・・・だから悲しくて、無意識に思い出さないように、蓋をしていた

 

それでも今目の前にいるのは、間違いなく

 

幼き日、ほんの少しだったかもしれないが・・・大切な時間を過ごしたあの少女と同じ名前・・・

 

成長して分からなかったが・・・あの綺麗な銀髪、そして今シンフォギアを纏うために奏でられる歌は間違いない

 

『ようやく気づいたんだね、弧仁』

 

「せん、せい?」

 

その口ぶりはまるで知っていたかのようで

 

『内緒にしてたつもりじゃない、ただ「黙って、たの?」ッ!』

 

グラリと、視線が揺れる。

擬きの言葉がとどめとなり、倒れた

 

彼女は、クリスは・・・自分があの日、守れなかった女の子・・・初めてできた家族で、自分の大切な姉

 

「ア、アァァァァ!!!」

 

頭を抑え、声にならない叫びをあげる。

 

もう訳が分からない、思考が定まらず、ただ声をあげる

 

『まずい・・・ッ!やっぱり無理か』

 

擬きが慌てるほど弧仁は錯乱している、そして身体の主導権を入れ換えようにも、あのライブの日と同じく、弧仁が無意識にそれを拒否していた。

 

急に倒れ、無線からの弦十朗の声も響いているが、それに気づかないほどに錯乱し、叫ぶ。

 

「!?なんだアイツ「!?ど、どうしたの!?弧仁!!?」なにっ!?」

 

そんな弧仁を怪しみながらも攻撃へと転じようとしたクリスだったが、その弧仁を心配した響が呼んだ「弧仁」という名前にその手が止まる

 

「ふ、ふざけんな!そいつは弧仁じゃねぇ!!」

 

そうだ、自分の知ってるあの子の髪は白くない、それにこんな風に声は出せなかったのだ

 

あの子が、大切な弟が・・・生きてるなんてことあるわけがない

 

「!?クリスちゃん弧仁のこと知ってるの!?」

 

「そこで喚いてるお坊ちゃんなんて、知らねぇ!!だけどお前がその名前を言っているのが気に食わねぇんだよ!!!」

 

迷いを振り切り、イチイバルのアームドギア、ボウガンのようなそれを二人向ける。

 

「待って!弧仁は記憶がないんだよ!「!?」」

 

あの日優しい母に拾われてきたあの子も記憶がなくて、それから・・・あの目につけている目隠しみたいなものを大切に・・・!

 

「クリスちゃんもしかしてその頃の弧仁の「黙れぇ!!」っ!?」

 

そんな事実を否定するが如く矢を放つ。

 

無慈悲に放たれた矢が響に迫る

 

それを避ける響、弧仁を抱えながら走るがそんな状態ではまともに動けず、即座に近づかれたクリスの蹴りを受け、大きく飛ばされる。

 

そしてその際、弧仁と離れてしまった。

 

「あの子は、あの子は・・・もういないんだよ!!!」

 

ガチャッ!!

その隙を逃さずボウガンのアームドギアが形を変えてガトリングの形になり、倒れる弧仁に向けられる

 

[BILLION MAIDEN]

 

「!!、弧仁!!」

 

数えきれない弾幕が弧仁に迫る・・・だが

 

「ハァッ、ハァッ・・・盾?「剣だ」!?」

 

倒れる弧仁の前に、巨大な剣が突き刺さり・・・弧仁を守る。

 

そして、その剣の頂に立つのは・・・

 

「死に体でおねんねと聞いていたが、足手まといを庇いに現れたか?」

 

「・・・もうなにも、失うものかと決めたのだ」

 

現在療養中のはずの翼だった。

 

静かに、戦場を見渡し・・・かなり負傷している響と倒れる弧仁を見つめる。

 

「・・・ごめんね、弧仁」

 

なにに苦しんでいるのかは分からないが、弧仁が苦しんでいる。

 

いつもの姿からは考えられない?・・・違う、弧仁だって悩んで苦しみながら戦っていたのだ

 

もっと早く、自分が弧仁と一緒に戦っていたら・・・

 

「(仮想の話など今は不要)立花、気づいたか」

 

「ッ!」

 

「私も十全ではない・・・力を貸してほしい、弧仁を頼む」

 

全力で戦うにはまだ不十分な身体、それでもこの場でなにも失わないために、翼は響と手を取り合うことを選んだ。

 

「!、はい!」

 

改めて覚悟を決めた翼、ほんの少しかもしれないが重荷から解き放たれた防人の剣は以前とは違う

 

負傷している身体を感じさせず、前回苦戦していたクリスを圧倒した。

 

そして・・・

 

・・・

 

「・・・ッ!」

 

病室で目を覚ました弧仁

 

「ハァ、ハァ・・・」

 

確か、クリスを見て・・・気絶した?

 

クリス・・・クリス?そうだ、あの時・・・あそこにいたのは

 

「アッ、アァ・・・「落ち着いて、弧仁」!、ひび」

 

「・・・立花じゃなくて、すまない」

 

再び取り乱しそうになった弧仁の手をそっと優しく握ったのは響ではなく・・・

 

「おはよう、弧仁」

 

「翼、ちゃん?」

 

「立花も帰宅した、目立った外傷もなく、過剰エネルギーの放出による疲労、弧仁は少し眠っていたんだ」

 

「翼、ちゃん、は?」

 

「!・・・まだ万全ではないけど、ギアを纏って闘う程度は問題ない、明日から学校にも行く予定よ」

 

「そっか・・・あの、後、どう、なったの?」

 

「・・・私と雪音クリスが交戦中に『フィーネ』と呼ばれる謎の人物が現れ・・・ノイズを操作し、雪音クリスを強襲し、そのまま姿を消した」

 

「・・・」

 

「そして、雪音はフィーネを追って行方を眩ませた」

 

「!」

 

「立花から弧仁が雪音クリスの名を聞いた途端に取り乱したと聞いた・・・弧仁、教えてくれないか?貴方とあの子の間になにがあったの?」

 

「・・・」

 

本当ならこちらと敵対する人物を拘束するのが当然だというのに、翼は弧仁と話すことを選んでくれた。

 

そのことを感じ、クリスのことを話そうとしたが口が開かず、声がでない・・・恐い

 

過去に置いてきたはずの後悔が弧仁に迫る・・・その時

 

『・・・変わろうか?』

 

「!」

 

『今回の件は僕にも非があるからね。自分で言うの辛いでしょ?』

 

「・・・自分、で、話す」

 

『・・・そっか、でもどうやって?』

 

スッ・・・サイドボードに置かれていたペンとメモ帳を手に取った。

 

声に出せないなら、こうして伝えるしかない。

 

カキカキ【長くなるけどいい?】

 

「もちろんよ」

 

カキカキ【ありがとう、話すね】

 

そうして、弧仁の手から語られる

一人の男の子と、歌が大好き・・・だった、少女の話




シンフォギア散歩

弧仁が目を覚ます前

翼「(弧仁の看病兼事情調査役になったはいいものの・・・まだ私と弧仁は仲直りをしていなかった。

櫻井女史の話ではもう目覚めるらしいが・・・睫長いな、身長も伸びている・・・がこの女顔は健在か、そういえば昔風呂に一緒に入るまで同性だと思い込んでいたな・・・

いかんいかん、まず起きたら挨拶だな。おはよう・・・今は深夜か、ならこんばんは?いや、そんな呑気に挨拶をしている場合ではない、場合によっては拘束する必要もあると緒川さんが待機しているほどだ。話を急がなければ

あの少女との関係を話せ!!・・・いやいや駆け付け一番にいきなり本題に入っても混乱するだけだ・・・

まずはこう、何気ない会話からだな、例えば

最近どうだ?・・・いや知ろうともしなかった私が何を言っている?そもそも何かあったから気絶したんだろう!?

彼女できたか?・・・いやいや私は弧仁の父親か!?そもそも彼女などまだ許さん!!はっ!?もしや立花か!?立花め・・・捨て置けん、身体が治ったら覚えていろ・・・

っていかんいかん、また脱線している!そうだ、こういうのは共通の話題からなら話しやすいと聞く

私と弧仁の共通・・・奏・・・だめだ、泣きそうになる

このままでは弧仁の聞き役を伯父様と立花とじゃんけんの末に勝ち取った意味がない!(決まり手、かっこいいチョキ)いったいどうすれば・・・)」

そうこうしているうちに弧仁が目覚め、起きるや否やまた錯乱しそうになったので、慌てて手を取って落ち着かせてくれました。



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