ペンを走らせながら、過去を思い出す。
もう何年前になるのだろうか、擬きと出会って当てもなくひたすらに放浪していた頃のことだ
『密輸船に忍び込み、はるばるやって来たのはバルベルデ共和国、国交が途絶えていて紛争が行われてる国だね』
「?」
『え?見所?まぁ自然豊かだからそこみてればいいじゃない?』
「!」オー!
この頃、自分に話しかけてくれて接してくれた人物は擬きしかいなかったので、擬きの言うことにとにかく従っていた
『いつか、弧仁がやりたいこととか、いきたい場所とかができるといいね』
「?」
『今はまだ分からなくていいよ』
そんな会話をしながら森林のなかをずんずん進む・・・途中なんかでかい遺跡みたいなのを見つけたり、なんか銃を突きつけられたので無限バリアと呪力パンチでやっつけたりしながら、とにかく進む
その途中
♪~♪~
「?」
綺麗な歌声が聞こえた、そっちの方に進んでみる。
「♪~あら?可愛いお客さんね」
「?」ハテ?
そこにはクリスに似た顔立ちの女性がいた。
『日本語ってことは日系の人なのかな?しかしなんでこんなところに』
「でも、貴方この辺りでは見ない子ね?お父さんかお母さんがいるのかしら?」
「・・・」フルフル
両親が死んだらしい記憶は朧気にあるので、多分いない
「!?もしかして、一人?」
「・・・」コクリ
『まぁ僕いるから二人っちゃ二人だけどね~』
「・・・ちょっと私と一緒にきてくれるかしら?」
「?」
『んー?まぁ悪いようにはならないと思うから着いてってみなよ』
「・・・」コクリ
「そう、なら行きましょう?」
そう言われて差し出された手・・・をじっと見る
「?」
なんの手だろう・・・こうかな?
差し出された手に自分の手を合わせる。
「ふふっ、それじゃあお手ね・・・こうするのよ」
合わせた手が握られる。
「!」ホワッ
「さ、行きましょう」
そのまま手を引かれて歩く
なんだか、とってもふわふわして・・・いい気持ち
・・・
手を引いて連れてこられたのはベースキャンプ・・・
「ここはNGO団体のベースキャンプ、私達はここで難民の救助を目的に・・・って言われても分からないかしら?」
「??」
「簡単に言えば貴方みたいな迷子を助けてるの・・・今は色々あって孤立した状態なのだけどね」
「!」
『迷子って・・・間違ってはないのかな?』
「それで、貴方には・・・そういえば名前をまだ聞いてなかったわ。貴方の名前は?」
「!・・・!・・・」パクパク・・・ウーン
口を開いて発声しようとしてみたが、やはり声がでない
「もしかして声がでないのかしら?」
「」コクリ
「そうなのね・・・そうだ、名前かけるかしら?」
手渡されたメモとペン、平仮名なら擬きに習ったので書ける、そして
カキカキ【おれのなまえは弧仁です】
自分の名前は一番最初に習っていたので書ける。
「弧仁・・・男の子だったのね」
「?」
「それにしてもやっぱり日本人・・・それにしては身なりはととのってるけど・・・どうしましょう」
「?」コテッ?
小さな声でなにかを呟いている女性、首をかしげていると
「!、ごめんなさい。私はソネット、声楽をやっていてここの団体のメンバーなの。それで、貴方さえよければだけど、暫くここで暮らさない?」
「!」
『こりゃ勘違いされてるっぽいね、別に難民・・・っていうか密入国者なんだけど』
「ここはまだ戦線の真ん中、子どもが一人でなんて生きていけないわ・・・どうかしら?」
「・・・」ウーン
『なに悩んでるのさ、ここは居住一択!』
「!」ハイ!
「!、ここにいてくれるのね!」
「」コクリ
「よかったわ、ならここの案内をするわ。それに弧仁と年の近い娘もいるのよ」
また手を引かれて進む
そこで出会ったのが・・・
・・・現代、2課メディカルルーム
「内戦さなかのバルベルデ共和国に訪れた際に出会った女性、その人の娘が雪音クリスというわけか」
「そう」
メモに書いたことで、気持ちの整理ができてきた。
受け答えも今ならできる。
「しかし、放浪していた時期があったとは、昔から妙な知識があると思っていたが・・・危ない橋をいくつも渡っていたのね」
「せん、せいの、おかげ」
「その点は擬きに感謝か・・・それで?雪音クリスと出会ってそれからは?」
「書く、ね」
もう一度ペンを取り書き出す・・・時代は再び数年前
「ママはアタシのママなんだからな!」
幼い頃のクリスがソネットに抱きつきながらこちらを睨んでいる
「?」ポカーン?
「あらあらクリスったら、やきもちかしら?」
弧仁がソネットに手を引かれているところを見て、ママがとられると思ったようだ。
「?」ジーッ
「な、なんだよ」
「・・・」
研究所からの放浪の日々、年の近い子と会うのはほぼ初めてだ
「?」ドキドキ
なんだか胸がドキドキする。顔が熱い
『それは照れてるんだよ。女の子と会うの初めてだもんね』
「あらあら、静かな子かと思ってたけど以外と照れ屋さんなのね」
よしよし、と弧仁の頭を撫でるソネット
くすぐったい、けど、なんだかまたふわふわする
『それは嬉しい、だよ』
「あっ!ダメーっ!」
「!」
クリスによって撫でてくれた手が離れた、少し寂しい
「クリス?この子はこれからここで一緒に暮らすのよ?」
「それでも、ママはダメっ!」
「もう・・・そうだ、あのねクリス。この子は今日初めてここにきたの・・・つまり貴女の弟なのよ?」
「えっ?」
「?」
『お?面白くなりそう』
「ソーニャがクリスのことをお世話してくれたみたいに、クリスが弧仁のことをお世話してあげるのよ?」
「アタシがソーニャお姉ちゃんみたいに?」
「そうよ?」
「分かった・・・たまになら、ママのこと貸してあげる・・・」
「はい、交渉成立~♪」
『あははっ!これから楽しいことになるね!』
「・・・」ニコッ
あの時は擬きの言う通り、なんだかワクワクしていた気がする。
・・・
「なるほど、姉変わりだったのか」
何枚目かになるメモに目を通した翼が弧仁に聞く。
「うん」
「・・・奏が知ったら嫉妬しそうだな」
「?」
「なんでもない、それからどうしていたのか、読ませてもらってもいいかしら?」
「うん」
・・・
それから暫く、恐らく数ヵ月くらいは平和だった
ソネットとそれから旦那さんの雅律さんの手伝いをしたり、クリスと遊んだり、ソーニャさんというNGOのボランティアのお姉さんに勉強を習ったり、クリスと遊んだり・・・そんな感じだった
そんなある日、なにも予定がなかったので散歩に出掛けた。
元々旅をしていたのだ、寄り道は得意
改めて見る大自然に興奮しながら、散策を続けた。
さて、そろそろ帰ろうとお土産に見つけた花を手に帰路を辿った時だった。
きっとお土産を喜ぶ皆の顔を思い浮かべながら、帰っていた時だった
ドォォォンッ!!!
「!?」
『!、ベースキャンプの方からか!?』
大きな爆発音、鳴ったのは帰路の先
嫌な予感がする。慌ててキャンプ地まで戻ったが・・・
「!・・・!?、!?」
辺りは火の海・・・そしてソーニャを見つけて、ソネットと雅律が亡くなったの聞き・・・クリスとははぐれてしまったことを知って・・・
・・・
「難民の救助をしていたキャンプに爆弾が持ち込まれ、お世話になった人が亡くなり、姉とははぐれ・・・それで今に到ると?」
「はい」
「・・・よく話してくれたわ」
「・・・」
「なら、今度はこちらの番。現段階で雪音クリスについて分かっていることを話すわ」
「!」
「弧仁と別れてしまった恐らく六年前からの四年間、その間は捕らえられ奴隷のような酷い扱いを受けていた、と報告にある。そして二年前、当時の国連はシンフォギアの装者としてバイオリン奏者の雪音雅律と声楽家ソネットMユキネの娘を探していて、保護するために日本が彼女を救出した。」
「!」
「だけど、二年前に行方不明に・・・恐らくあのフィーネと呼ばれる人物によりシンフォギア『イチイバル』と聖遺物を与えられ、今に到る。今分かっているのはこの程度」
「・・・」ギリッ
歯を噛み締める、何に対して怒ればいいのか分からないが、とにかく腹が立つ
「・・・本当に、感情を出せるようになったわね」
「?」
「・・・彼女が行方知れずになった二年前に貴方を拒絶し、遠ざけていた」
「!」
「出会った頃の弧仁は、正直何を考えてるのか分からなくて、表情もまだまだ固かった・・・それでもおじさまや奏と過ごしている時の貴方は幸せそうだった。」
「・・・」
「学校や友だち、それから家族と触れているうちに貴方は本当に変わった。そしてあのライブがあった。」
「・・・」
「今まで弧仁に対して形容しがたい気持ちは確かにあった・・・だけど、もうそれは終わりにしよう」
「!」
「これから私は弧仁の力になる。今さら遅いのかもしれない、だけどあの日奏が望んだことを裏切ることはもうしたくない。」
「それ、って、笑って、長生き、すること?」
「えぇ、このままじゃそれもできそうにないもの、それにそれだけじゃなくて、私はもう一度弧仁と友だちになりたい。」
「!、翼、ちゃん」
「あの頃みたいに純粋無垢とはいかないかもしれない。そうかもしれなくても、私はもう一度、弧仁と歌いたい」
「!!」
「答えは、また今度でいい。今弧仁には色々と整理する時間がいると思う・・・今はおじさまや、私達に任せて」
「・・・」
「だから今日は、ゆっくりおやすみなさい」
そう言って、翼は病室を後にした
翼はドアを出るその時、振り返り弧仁に手を振った。
弧仁も手を振り、それに答えたのだった。
・・・
静かになった病室・・・その時
『弧仁』
「!」
翼との話し合いの間黙っていた擬きの声が響いた
『クリスのこと、黙っててごめんね』
「・・・」
『僕が黙ってた理由は感情の薄かった昔と違って、成長した今の弧仁がクリスが生きてると知ったらショックを受けると思ったからだよ』
「・・・」
現に今回、ショックで気絶するほどだ
擬きの選択は間違っていない
『それでも結果、弧仁を傷つけてしまった。僕は先生失格だね』
「!」
『だから・・・クリスの件に関してなにも隠さないけど・・・僕はもうなにも言わない。弧仁がどうしたいのか決めた時、その時は全力で手を貸すよ』
「・・・」
響や翼の時は成長し、発露した感情が先走って気づけば身体が動いていた。
翼の命を助ける時、奏のことを乗り越えて、守るために救うための力を振るうことを恐がることを乗り越えた
今も、もちろんクリスのことを守りたい・・・そう思う
だけど・・・
「あの時、救えな、かった・・・」
一度救えなかったから、恐くて踏み出せない
『何度でも言うよ。弧仁は強くなった。絶対にクリスのことも救える、守れる力があるよ』
自分の力を理解していなかったあの時とは違う
魂に宿る五条悟の力も、身体をめぐる呪力もちゃんと使える
呪いの力は救うための力になりつつある
・・・それでも
「・・・」
『それに僕や2課の皆がついてる』
一人だけじゃないのは分かってる
擬きも弦十朗も翼も響も皆、力を貸してくれる
分かってる
・・・それでも
『・・・恐いよね、一度上手くできたからってもう一度なんて、できっこないよ』
「ッ!」グッ
強く拳を握る
今度こそ、彼女を救うことができるのではないか?
何度も間違えた自分が、この手でなにかを救えるのか?
彼女を助けたいと願う自分と恐怖に飲まれる自分、二つの想いが交錯する。
「・・・」
『・・・そんな簡単に、トラウマは乗り越えられないさ、焦ることはないよ』
「・・・」
『だけど、その手が届かない時に大切なものが失われる恐怖はもう知ってるでしょ?』
「・・・」
そんなこと、痛いほど知ってる
『だから、翼も言ってたけど、今は弦十朗達に任せよう?今の弧仁は整理する時間が必要だよ』
「・・・」
苦い想いが喉に引っ掛かるような感覚に耐えながら・・・夜が更け、時間は過ぎ、朝が来る
どうしたって、運命はいつだって、少年に過酷な選択を突きつけるのだ
シンフォギアさんぽ!
昔の話
ソネット達のベースキャンプの一角にて・・・
幼クリス「すー・・・すー・・・」
幼弧仁「zzz・・・」
ソネット「♪~♪~・・・あら、もうこんな時間ね」
ある日の昼下がり、たくさん遊んで疲れた二人はソネットに膝枕をされながらお昼寝していた
最初は眠くないと訴えていたクリスと膝枕ってなに?と首をかしげていた弧仁だったが、ソネットの歌を聞いていたら速攻で寝た
「ほらクリス、弧仁、起きて?そろそろご飯にしましょう?」
「ふわぁぁ・・・おはようママ・・・あれ?まだ弧仁寝てる」
「ふふっ、弧仁はねぼすけさんなのね。クリス起こしてあげて」
「うん、弧仁、起きろよ。おねーちゃんが起こしてやるからさ」
「・・・」モゾモゾ・・・Zzz
「起きない!」ガーン!
「クリスったらすっかりお姉ちゃんなのね、弧仁が弟になったら嬉しい?」
「もう弧仁は私の弟だ!」
「もう弟なのね(今日も娘と将来の息子が可愛い)」
「だ、だけど、もう少し弧仁がカッコよくなったなら・・・その・・・」
「その?」
「な、なんでもない!」アタフタ
そのまま慌てて去っていくクリス
「これは・・・ふふ」
先程のクリスの顔は真っ赤・・・これは恐らく
「そういった意味での息子でも大歓迎よ?」
ナデナデと、弧仁の頭を撫でるが一向に起きない
この時はまだ幸せな未来を考えて・・・こんな日常が続くのだと、皆そう思っていた