歌を奏でる装者と無限を操りし少年   作:アユムーン

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ウルトラマントリガー・・・最高でした


走り出すための「言葉」

未来と話し、緒川から真実を聞いた弧仁

 

その翌日、緒川は本当に弧仁の休みを取り付けてくれており、その日は家で休んでいた。

 

響からのメールで、

 

『今日はお休みだって、師匠から聞いたよ。

 ゆっくり休んでね!』

 

と、送られてきた。

 

本当ならクリスのことを聞いたりしたいだろうが、弧仁のことを気遣った内容のメール

 

だが、払拭したはずの響への罪悪感が甦り、そのメールを返すことができなかった。

 

擬きもその日はなにも言わず、弦十朗が帰ってくるまでなにもせず過ごした。

 

・・・そしてまた次の日

 

司令室で待機していたが、その日は弦十朗がいなかった。

 

「父、さ・・・司令、は?」

 

「司令は今現場だよ。実は明朝にノイズの反応があったんだ。被害はないんだけどね」

 

デスクワークをしていた藤尭が手を止めずに答える。

 

「!、響、か翼、ちゃんが、倒し、たん、ですか?」

 

「いや、それと現場からはイチイバルのアヴフヴァッヘン波形も確認されたんだ。つまり、あの雪音クリスがノイズを倒したんだろうね。」

 

「!、なんで、クリスが・・・」

 

ノイズを操る聖遺物をもつはずのクリスがノイズを撃退した・・・つまり、クリスはノイズと敵対しているということ

 

『・・・フィーネじゃない?』

 

「!」

 

弧仁は直に見たことのない人物フィーネ、そしてフィーネとクリスは協力関係にあった。

 

しかし、フィーネはクリスを見限ったと聞いている・・・つまり

 

「フィーネ、が、クリスを、狙ってる?」

 

「そう、恐らく雪音クリスは現在孤立している状態だ。」

 

「・・・」グッ

 

今すぐクリスを探しに飛び出したい、がその気持ちを打ち消すかのように、自分には無理だと・・・もう一つの気持ちが生まれた。

 

「行かなくていいのかい?翼さんから聞いたけど、雪音クリスと幼なじみだったんだろう?心配じゃないのかい?」

 

藤尭が問いかける。割りと重大な事実であるし、クリスと関係があるというのならこの二課にいることすらできないはずなのだ。

 

だけど皆、弧仁がしたいようにさせてくれている。

 

きっと自分がクリスを助けたいと言えば、手を貸してくれる・・・だけど

 

「いえ、大、丈夫、です。」

 

また、二の足を踏んでしまう。

助ける、守ることが怖くなってしまった。

 

嘘つきの自分には、なにも守れない、と

 

「・・・俺はここで、皆のサポートをするのが役割だ」

 

弧仁の様子を見た藤尭が語りだす。

 

「情報収集、作戦の立案、戦闘員の案内とサポート、その他諸々・・・ここに籠って、一番安全圏で戦ってるっていわれても仕方ない」

 

「!、そんな、こと」

 

藤尭の指示にはいつも助かっている

 

現場に迷わずたどり着けるのも、戦闘でどう動くか迷わず行動ができるのも、藤尭やあおい達、オペレーターのおかげだ

 

「でも、俺はこの役割に誇りをもってる。これは俺にしかできないことだと思ってる。弧仁君は?」

 

「え?」

 

「弧仁君が誇りを持ってることは?」

 

「!・・・分かり、ません」

 

誇りなんてない、ただがむしゃらに進んだ結果今ここにいる。

 

確かに覚悟を決めて、戦うことを選んだ。

だけど今はその覚悟すらも揺らいでいる。

 

「俺は現場にはあんまり出ないし、出たとしても翼さん、響ちゃん、弧仁君みたいに戦うことはできない。

 

だから俺に弧仁君の今抱えている問題をどうにかしてあげることはできない。

 

だけど、状態を見て悪いところを見つけて改善策を出すのは得意なんだ。だから弧仁君が分かってない悪いところを教えるよ」

 

「!」

 

「一つ目、言われたかもしれないけど守りたいものを自分の手で守らなかったこと。響ちゃんの件がこれだね

 

二つ目、いつも行動の前に躊躇してしまうこと。俺たちや司令の指示があれば迷わず動けるのに、自分で判断してなにかをしようとした時には絶対に少しのラグがある。多分擬きと相談したりしてるんだろうけど、その躊躇がなければもっと動けると思う。

 

そして、三つ目・・・の前に弧仁君が尊敬してる人って誰?」

 

「?・・・先、生と、父、さん」

 

「納得の人選だね。擬きの方は知らないけど、司令が今までなんでもかんでも全部守ることができたと思うかい?」

 

「?」

 

「例えば、今孤立している雪音クリス。二年前に彼女を保護する命令を司令は受けていた。だけど帰国した途端に行方知れずとなった。そのことを司令は後悔してる。」

 

「!」

 

「行方知れずとなった二年間の間、司令以外にもたくさんの人が雪音クリスの捜索の命令を受けていたが、どこも少し探っただけで全員殺された。今のところ生き残ってて、なおかつその命令を続けようとしているのは司令だけなんだ。」

 

「そう、だったん、ですか」

 

「司令はそのことを後悔してた。だから今現場に出てるのかもね」

 

そんな話知らなかった、あの父さんが後悔していたなんて・・・

 

「それから同じく二年前、あのライブでは奏さんを失った。」

 

「!」

 

「その奏さんの両親はとある聖遺物の発掘メンバーだった。当時まだまだ幼かった奏さんと妹さんを連れて発掘に訪れたが、そこでノイズに被災し、奏さんを残して全員亡くなった。」

 

「!」

 

また、知らないことだった。奏が家族を亡くしたのは薄々分かっていたが、そんなことがあったなんて

 

「そして、司令と君と同じように翼も奏さんを失った。

 

君のよく知る響ちゃんと未来ちゃんも弧仁君という存在を失った。・・・この中で一人でも前を向くのを諦めた人はいる?」

 

「!」

 

「失っても、立ち止まってでも前に進む。未来(みらい)に進もうとしている人ばかりだと思うけど?」

 

「その、通りです・・・」

 

皆、全て守れてるわけじゃない。

 

なにかを失ってる。

 

自分も奪われて失ってきたから、その苦しみは想像できる。

 

「それが三つ目、一人で全てを守ろうとしていることだよ。

 

誰かに頼ることは知ってるかもしれないけど、その根底には自分一人でなんとかしなきゃいけないという考えがまだある。」

 

「っ!」

 

「弧仁君は優しいから、サポートしている俺たちのことや隣で戦う響ちゃんと翼さん、それから一番近くで支えてくれる擬きのことを忘れていないことは分かっている。

 

だけど、いざって時には自分が全部やらなきゃいけないと、思ってないかい?」

 

「それは・・・」

 

支えてくれる人がいることは十分分かっている。

それでも確かに・・・なにかアクシデントや、危機に陥った時には自分が何とかしないといけないと、思っていた。

 

「きっと君の尊敬する擬きも、司令も、守りきれなかったこともある。それでも進むことをやめなかったはずだ」

 

「先、生、も?」

 

『・・・あるよ。上の腐ったミカンどものせいで大事な生徒が一人死んだ。他にもいろいろある・・・だけど僕には目標があったからね、諦めなかったよ。』

 

「・・・」

 

皆目標や未来(みらい)のために、諦めていなかった。

諦めそうなのは自分だけ

 

「そして、皆守るために、前に進むためにいろんな人と手を取り合っている。弧仁君にどれだけの力があったとしても、限界はある。」

 

「!」

 

「だから同じ志や、目標を持つ人と手を取り合い、進んでる」

 

『五条悟は自分の隣で戦うことのできる強く聡い仲間を育てるために、教師になった。そして、そのために先輩や同輩や後輩に生徒のことを頼むこともあったよ。それから一緒に戦うことはできなくてもサポートしてくれるやつもいた、今思えば割りとひどい対応だったかもしれないけどね』

 

「前と違って今の弧仁君はもうなにをしたいのかの目標を持ってる・・・だけど、それを自分にできるのか分からない、どうすればできるのか分からない、違う?」

 

「そう、です。」

 

響を、クリスを守りたい

奏の呪いを祓いたい

 

なにをしたいのかは分かる、だけど自分にできるのかが不安で、どうすればいいのか分からない

 

「皆が君にどうしたいのかを自分で決めろっていうのは、もう弧仁くんの中でそれは決まっているのに、そしてそれを自分一人でやろうとするからそれを話してほしいんだよ。

 

そしてそれを聞いてサポートするのが周りのやること、そして弧仁君も同じように皆のやりたいことのためにサポートすればいい。」

 

「サポー、ト・・・」

 

「そう、そして主なサポート役は俺だ。だから弧仁君が次に話すべきことは?」

 

・・・まず、自分がやりたいこと

 

「・・・俺は、クリスを、助け、たい」

 

「了解、それなら俺たちと一緒だ。次はどうしたらいいと思う?」

 

クリスを助けた・がまずなにをすればいいのかが、分からない。

 

会ってもまた戦うことになるかもしれない

刺激せず会う方法が分からない

 

「・・・分かり、ません」

 

「わかった。ならまずは保護するために居場所を見つけなければいけない。それは現在司令が行っているから合流しよう。」

 

「・・・」

 

それでも、もし出会ってしまったら、間違いなく戦闘になる・・・

 

「もしも戦闘になったとしても、弧仁君本来の実力なら傷つけずに確保できるんじゃないか?」

 

「!」

 

「今までの雪音クリスとの遭遇の時にはなにかしらのアクシンデントがあった。けど、これまでの戦闘を見返してみると、間違いなく弧仁君と彼女の実力には差がある。それに現在孤立した状態の彼女は疲弊していると考えられるからより可能性が高い。

 

 それにイチイバルに対しての無下限術式は相性がいい。基本重火器のような攻撃を一方的に無限のバリアで無力化するから相手は手詰まりになる。そこから離れた距離を詰めるのには蒼を使えば一瞬で詰められる。」

 

自分とクリスの力量を考えた上での的確な指示

 

『そこからの方法は僕が教えるよ。未来にやったあれでもいいんだし』

 

「そこからどう交渉するかだけど、こっちには弧仁君っていう現状最高と思える交渉カードがある。彼女の心を開くのは、間違いなく君だよ。」

 

・・・あっという間に解決してしまった。

戦いたくないという選択肢しかなかったはずなのに、今ならできそうな気すらしてきた。

 

「どう?簡単でしょ?」

 

「・・・はい」

 

「きっと色んな人に自分の手で守れって言われたと思うよ。けどそんなこと近くにいなきゃできないし、色んなしがらみだってあると思う。だから分からないのならどうすればいいのか聞けばいいと、俺は思うよ。」

 

「・・・」

 

響と未来と別れる時、二課に入り戦うことを決めた時

 

あの時、自分で決めて、大切なものを他の人に託した

 

その全部を誰にも相談しなかった。

 

自分の抱えてる色々なものは放り出して、ただ過酷な道を選んだ。

 

そんな道を選んだことを擬きも弦十朗も尊重してくれた。

 

それでも、本当にいいのか、と確認をとってくれていた。

 

もしもその時、別の道を相談していたらどうなっていたのだろう・・・きっと、たくさん悩んでくれて、一緒に考えてくれた

 

今とは違う未来(みらい)だってきっとあったのかもしれない

 

自分の今やりたいことは奏の呪いを祓うことと響、翼、クリスを守ること

 

全部心ではこうしたいって分かっているのに、一人で全部やらなければいけないと思うと・・・なにをどうすればいいのか分からず躊躇してしまっていた。

 

そして、クリスと未来との再会がそのきっかけになって、守れなかった自分にはできないと、諦めていた。

 

だけど、皆失ってでも諦めず前に進んでいる、だったら

 

「藤、尭、さん」

 

「分かってる、弧仁君の端末にもう司令の居場所は送ってる。随時連絡も行うから、いってらっしゃい」

 

「あり、がとう」ダッ!!

 

諦めて、立ち止まる時間は終わった。

 

弧仁は自分の手で守りたいものを守るために、走り出す




シンフォギアさんぽ

藤尭の災難

弧仁が去った後の司令室

「ふぅー・・・あー緊張した」

「ふふっ、お疲れ様。はいあったかいものどうぞ」

大きく伸びをする藤尭の机に給湯室から戻ってきたあおいがあったかいものを置く。

「あったかいものどうも・・・ってずっと見てたの?」

「おかげで入るタイミング逃して、ちょっと温くなっちゃったけどね。」

「助けてよ。こういうこというタイプじゃないのに」

「かっこよかったわよ?それにしても珍しいじゃない。どういう風の吹き回し?」

「・・・オフレコでいいなら話すけど」

「オフレコで?なにかしらないけど分かったわ」

「まず昨日の朝、司令から弧仁君と話してやってくれって頼まれたんだ。これが報酬の映画のチケット」

「あら、ペアチケットなのね」

「そう、だから一緒に行くような関係のいない俺には無用なものだね・・・それから昼休憩の時に緒川さんから弧仁君のサポートを頼まれた。元凶である自分がするべきではないって・・・その報酬に昼飯奢ってもらった。」

「よかったじゃない」

「まぁそこはよかったけど・・・それから夜・・・帰る途中の俺の背後に謎の気配、恐る恐る振り向くと・・・」

「え?え?急にホラーなの?」

「いや、目隠しつけた弧仁君・・・っていうか擬きがいた」

「えぇ!?特級呪具って暇なの・・・?」

「『うん、君なら話せそうかも』だってさ、それから肩を掴まれたと思ったら某ドーナツチェーン店の前に移動してて、さっきの話す内容の台本作って読み合わせしてた・・・お礼に奢るよって言われたけど見た目年下の相手に奢らせるとか周りの目が痛いし、俺が払った。」

「そ、それはお疲れ様・・・」

「大変だったけど、前向けたみたいだしよかったよ」

「そうね、翼さんも弧仁君も時々まだ子どもなんだって忘れそうになる。」

「けど、最近は響ちゃんが来て、二人とも少しずつ年相応の姿が見られるようになった。いい傾向だと思うよ。」

「そういった点をサポートするのも私たちの仕事なのかもね」

「そうだね、それじゃあ早速そのために頑張りますか」
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