歌を奏でる装者と無限を操りし少年   作:アユムーン

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「信じる」時間と「守る」時間

フィーネの屋敷からでて、ポヤーっとすること数十分

 

屋敷からフィーネの手がかりはないかと探していた一同が戻ってきた、弦十朗はクリスと共に来た。

 

ちゃんと涙を流すことができたのだろう、先程よりもすっきりとした顔をしている。

 

「成果、は?」

 

「さっぱりだ、全くここまで来てまた手詰まりとはな」

 

弦十朗の言う通り、爆発によってほとんど吹っ飛んでしまったので手がかりはない

 

振り出しに戻ってしまった

 

「とにかく二課に戻るぞ、ほら君も」

 

「やっぱりアタシは・・・」

 

「一緒にはこられないか?」

 

「っ・・・」

 

弧仁や弦十朗を含め響や翼、たくさんの人に負い目があるのだろう

 

その誰もが、気にしてない、と言うのは目に見えている

 

だけど、二人はクリスの気持ちを優先したい

 

「お前はお前が思っているほど一人ぼっちじゃない、そんなことは分かってるだろう」

 

「っ!分かってるよっ!・・・けどアタシは「今、は、待って、る」!」

 

「待って、る、よ」

 

いつかと同じ笑顔を浮かべながらクリスに伝える

 

「それにお前が一人で道を進もうがその道は遠からず俺達の道と繋がる」

 

「!、そーかよ」

 

以前の自分なら大人の世迷い言と切り捨てていた、だがこうして何度も出会い、戦い、助け合いを繰り返した今なら、その言葉の意味が分かる

 

それからほれっと、クリスに向かって通信機を放り投げる

 

「限度額までなら公共交通機関が利用できるし、自販機で買い物も出きる代物だ、便利だぞ」

 

それはクリスにこれ以上苦しい生活を送らせないための贈り物

 

そして弧仁からは、大きめの風呂敷を手渡した。

 

「はい」

 

「!これは?」

 

「お弁、当」

『それ作るために6時起きだぜー?ありがたく食べなよ』

 

保冷バックにいれていたお弁当を手渡す

 

雨の日にあったあの日から、また会った時に渡すために選んだ最新の弁当箱

 

「冷え、てる、けど、箱、開けたら、暖まる、よ」

『かがくのちからってすげー!』

 

ずしっと重たく感じるのは中身がたくさん詰まっているからか、それとも・・・

 

「っ!・・・さっきは、叩いて、ごめん」

 

一度でなく、二度までも、弧仁を否定してしまった

なのに弧仁は変わらず自分のことを抱き締めてくれた、手を繋いでくれた。

 

「いいよ、俺が、悪、かった」

 

「前にも、私はお前を否定した。なのになんでお前はアタシのことを信じてくれるんだ?」

 

ずっと聞きたかったことだ

 

信じて裏切られ、傷つくことを知っているはずなのに、弧仁は何度もクリスを信じてくれた

 

その理由が聞きたかった

 

「弟、だから」

 

「!」

 

「もう、アタシの、弟、なんでしょ?」

 

「お前!あの時っ!」

 

ニコッ、誤魔化すように笑ってから車に乗り込む

 

大丈夫、今回もお別れじゃない

 

そしてこれからもお別れなんてしない、してたまるものか

 

「またね、クリス」

「じゃあな」

 

再会の約束をしてから分かれようとした・・・その時

 

「カ・ディンギルっ」

 

「「『?』」」

 

「フィーネが言っていた、それがなんのことかは分からないけど、それはもう完成しているみたいなことを」

 

「!」

 

クリスからもたらされたヒント、まだ誰にも正体は分からないが、これは重大な手がかりになる予感がした。

 

「カ・ディンギル・・・後手に回るのは終いだ、こちらから打って出てやる」

 

そういってから車を発進させる、クリスは車を見送り・・・手元の風呂敷をギュッと握った

 

・・・そうして帰ってきた二課、早速得た情報を響と翼達に共有、

 

そこに一人欠けている人物がいた

 

「了子君は?」

 

「まだ、出勤していません。朝から連絡不通でして」

 

いつも重要な場面では必ずいる了子がいない・・・それはそのはずだ

 

『弧仁、探知は?』

「・・・」フルフル

『六眼でも日本の隅々までみえるわけないもんね・・・ってことはどこかに身を隠しているのか?』

 

フィーネの屋敷に向かう道、屋敷、そして帰り道と現在、弧仁は六眼による探知を行い了子を探していたがどこにもいない

 

「了子さんなら大丈夫ですっ!なにか来たって私を守ってくれたみたいにドガーンっとやってくれます!」

 

「いや、戦闘訓練もろくに積んでいない非戦闘員にそんなこと」

 

「ふぇ?師匠とか了子さんって人間離れした特技とか持ってるんじゃないですか?」

 

響と翼も了子の行き先は知らず、身を案じている。

 

それもそのはず弦十朗、弧仁と擬き、そして緒川にのみ了子が内通者ということが伝えられている。

 

無駄な混乱を避けるために、他のみんなにはまだ伝えていないのだ

 

そうしているうちに了子からの連絡が繋がる、本人曰く寝坊したらしいが無事らしい

 

「カ・ディンギル、この言葉が意味するものは?」

 

「・・・カ・ディンギルとは古代シュメールで高みの存在」

 

天を仰ぐための塔として伝えられている。

 

塔みたいなものが建造されていたら誰かに見つかるのでは?・・・と一同は思ったが、今はそれだけが唯一の手がかり、総員カ・ディンギルについて調べあげることとなった・・・その時

 

ヴーッ!ヴーッ!

「!」

 

ノイズの発生を知らせるアラームが響く

 

これまでにない規模の飛行型のノイズが4体出現

どこかに移動しているらしく、現在は被害はない

 

このことは装者に伝えられ、現在急行している

 

「弧仁」

 

「分かって、ます」

 

オペレーションルームを出て、向かうのはいつもの会議室

 

弧仁の役目は待機だ、今この現状に置いて弧仁がここを離れるわけにはいかない

 

会議室に来たのは余計な情報を聞き、飛び出してしまうのを防ぐため

 

響、翼、そしてクリスがもしも危機と知ってしまったら間違いなく飛び出してしまうから、そのための判断

 

椅子に座り、手をグッと握る

 

『心配?』

 

「うん」

 

自分の立場は自分が一番分かっている、だけど全て守ると決めたのに、行けない現状が妬ましい

 

『けど、今は信じなきゃね』

 

「・・・」

 

『大丈夫、君の仲間は弱くない』

 

「!」

 

『君と共に歩んできたんだ、信じろ』

 

「・・・うん」

 

擬きの言葉に頷く、今は信じる時間だ

どうか、誰一人欠けませんように・・・そう祈った

 

・・・

 

そう祈ってからどれくらいたったのだろうか『十分くらいだよ』、十分らしい

 

ヴーッ!ヴーッ!

再びアラートが鳴り響く

 

「!」

響達の交戦が終わり次第連絡が来る手筈だったのにまだ来ていない。そこに響く新たなノイズの出現

 

『ちっ、ノイズのバーゲンセールかよっ!』

 

今この状況ではノイズを倒せるのは弧仁しかいない

 

オペレーションルームへと急ぎ、そこのモニターに映し出されている場所は・・・

 

「リディ、アン?」

『ここかよっ!』

 

ここ二課の上にあるリディアン音楽院高等科、響や翼の守りたい場所がノイズに壊されていく、それが分かると同時に足が動いた。

 

「っ!」ダッ!

 

「弧仁っ!」

 

走り出す弧仁を止める弦十朗、その声に一度だけ足を止め・・・

 

「俺が、行か、なきゃ・・・俺が、守らなきゃっ!」

 

響が言っていたこの学校が居場所で、未来の側が帰る場所だと

 

その両方が今、壊されそうになっている

 

もう止まってなんて、いられないっ!

 

前を向き、再び走り出す

 

・・・エレベーター内

 

『命令違反なんじゃないこれ』

 

「どうでも、いい」

 

『・・・確かに、僕にも覚えがある』

 

「響、達が、いない、なら、俺が、やる」

 

『その結果どうなったとしても?』

 

「その、時は、その、時、なんとか、する」

 

普通に考えればできるはずがない、なのに弧仁はなんとかするとのたまわった・・・

 

信じる時間はもう終わり、ここからは守る時間

 

『僅か十分の信じる時間・・・ククッハッハッハッ!!いいね!弧仁にこの言葉を言うことになるとは思わなかったけど、言うね!』

 

「?」

 

『弧仁、君イカれてるね!』

 

侮蔑に聞こえるその言葉、だがそれは今

 

「で、しょ?」ニッ

 

呪術師として最高の誉め言葉となり、弧仁に贈られる。

 

・・・

 

エレベーターを抜け、外に出ると、そこには避難する生徒と抵抗する一課の軍隊・・・そして大量のノイズ

 

グッ・・・バサッ

 

目隠しを首元に下ろし・・・六眼を開く

 

地下からでは分からない地上の探知を行う

 

『まだ避難しきれてない、学校は既に半壊に近い』

 

「校舎にも、まだ、人が、いる・・・」

 

被害は既に甚大、今自分がすべきことは

 

「術式順点」

 

知能がないノイズはまだ無事な校舎や抵抗する軍隊、逃げる生徒に向かっている

 

そのノイズを六眼をフルに使い探知、全てに向かって

 

「蒼!!」

 

一気に術式を発動、多少の被害は目を瞑ってもらおう

 

そうして外にいるノイズを一気に退けた

 

『次校舎・・・けど、いきなり飛ばしすぎでしょ』

 

「言って、られな・・・!」

 

急いで校舎に向かおうとしたが突如ノイズがいなくなり、パニックになる生徒たちが我先にとシェルターに向かって走り、人の波が起きている

 

このままでは二次被害が・・・そう思った矢先

 

「安心してくださいっっ!地下のシェルターは!皆さん全員を匿うことができますっ!!慌てずに!!」

 

「!」

 

即座に冷静を取り戻した軍が避難誘導を行い始めた。

それは徐々に生徒たちを落ち着かせ、誘導に従っていく

 

『へぇやるじゃん、これなら大丈夫だね』

 

「うん「!、君は!・・・ここは私達に任せて!君は早く行ってくんだ!」!、はいっ!」

 

軍の一人が弧仁を見つけて、声をかけてくれた。

 

その声に任せて、先を急ぐ

 

『弧仁、さっきのやつ覚えてる?』

 

「・・・」コクッ

 

『そう、僕たちがこの戦いに入った時に助けたやつだよ』

 

その日のノイズは翼が即座に倒したが、弧仁が見つけて怪我を癒した軍人だった

 

『こうして、頼り頼られて、繋がっていくんだね』

 

「・・・うん!」

 

自分は一人で戦っているのではない、そう再確認し足を急がせる。

 

校舎に残っているの人はもう少ない、誰かが避難誘導をしている・・・この呪力は

 

「未来っ」

 

私情だとしても、響の大切な陽だまりを失うわけにはいかないと弧仁は急ぐ

 

大切な友の元へ




シンフォギアさんぽ

弧仁が飛び出した後の二課

弦「全くあいつは・・・」

藤「けど、仕方ないのではないですか。被害の拡大を防ぐには弧仁君が動く以外に方法はありません」

弦「くっ」

友「それに、リディアンは響ちゃんと未来ちゃんと翼ちゃんの大切な場所なんですから、なおさら止まるわけがありません」

弦「くっ」

藤「!、弧仁君、屋外にいるノイズの殲滅を達成!」

弦「なにぃっ!?」

友「そのまま校舎内へと進んでいますっ!」

弦「・・・あんなに小さかったのにな」

モニター越しに見る弧仁はずっとずっと大きく見える

弦「これが親離れ、というやつか」グッ

熱くなる目頭を抑えたが・・・

友「司令っ!今は指示を早くお願いしますっ!」
藤「後!早く子離れしてくださいっ!」

弦「っ!・・・すまん」
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