歌を奏でる装者と無限を操りし少年   作:アユムーン

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選ぶ「命」

「呪い、殺して、やる」

 

研ぎ澄まされた透明な殺意

 

弧仁にとってこれは初めての感覚・・・そして

 

『ノイズみたいな生命かどうか分からないやつの相手をするのとは違う、しっかりと生きている・・・命のあるものに対して初めて覚えた殺意、そして力』

 

通常呪力は負の感情から捻出されるもの、もちろん殺意などはもっての他であり、より激しい呪力を生み出す

 

ダンッ!

 

思い切り地面を踏み出したと思った、その瞬間・・・ドスッ!!

 

「カハッ!?」

 

呪力の籠った拳がフィーネの胴体に胴体に突き刺さる。

 

一瞬でフィーネの懐に潜り込んだ視認などできない速度

 

たったの一撃、その一撃は明らかに先ほどの弦十朗の拳を越える威力を持っていた。

 

更に・・・ガシィッ!

 

後退しようするフィーネの肩を掴み、逃さずそのまま

 

「貴さ!?」

 

ドスッ!バキッ!ゴスッ!

 

貴様、そう言おうとした言葉を遮り、拳の連撃が引き続き胴体に突き刺さる。

 

「(なんだこの力は!?)」

 

これまでに弧仁の力は調べてきた

 

それに加えて、擬きの縛りにより語られた今後弧仁が得るはずの術式の効果と技、それらに対して全て対策を立てていた

 

しかし、蓋を開けてみれば完全に圧倒されているフィーネ

 

「(隠していたのではない、こいつはまだ・・・)」

 

鎧部分が砕けた胴体、もう殴り飽きたと言わんばかりに振り上げた拳は上段を狙い・・・

 

バキィッッ!!!

 

フィーネの顔面を捉え、大きく吹き飛ばした。

 

「ッ!?・・・術式を使っていない、だと!?」

 

再生するとはいえ、完全聖遺物である鎧を大破させた攻撃、しかし術式を使用する素振りがみられないことから、現在の戦闘は弧仁の呪力操作による攻撃でのみ行われていることが分かる。

 

その事実に戦慄するフィーネ、それに対して

 

「術、式の、必要、は、ない」パキパキッ

 

手の骨を鳴らしながらゆっくりと歩む。

 

「言った、だろ、呪い、殺す、って」

 

決して一瞬で楽になど、してやらない

 

「ジワジワ、と、苦しみ、悶え、死んで、いけ」

 

呪いらしく少しずつ、死を与えていく

 

弦十朗とは違う、生かして捕えるなど考えない

 

弧仁の大切な人をたくさん傷つけたコイツは・・・

 

「お前は、呪いだ、確実に、殺して、祓う」

 

「くっ!?ふざけるなぁぁっ!!!」

 

弧仁の言葉に激昂し、ネフシュタンの鞭に振るう

 

縦横無尽に迫る鞭はクリスが身に付けていた頃より複雑、さらに鋭利を増している。

 

「・・・」ダンッ!!

 

それに臆せず立ち向かうかのように迎え撃つ

 

無限のバリアを使うこともなく避け、即座に再びフィーネの懐に潜り込み、弧仁のフィーネに対しての殺意が極限の集中に繋がった

 

「黒ッ「弧仁ちゃん!」!!」

 

迫る弧仁に対して、フィーネの表情が変わり、弧仁がよく知る声が聞こえた。

 

それは間違いなく了子の声だった

 

例えフィーネの演技だとしても、その時間は確かに存在した

 

その思い出の海に潜ってしまいそうになる自分の意識

 

・・・風鳴弦十朗は今の弧仁と同じでこの手を使われ破れた

 

だが、もう一度言おう、弦十朗とは違う

 

弦十朗との違い、それは・・・

 

『迷うな』

 

迷った時、道を正し、教えてくれる「先生」が側にいること

 

一度手が止まってしまい呪力が霧散したが、擬きの言葉で呪力を捻出・・・再び黒い火花となる。

 

「黒閃」

 

ッッッ!!!

 

黒く光る呪力を纏った一撃がフィーネの鎧を砕いた

 

「グァッッ!!?」

 

メゴォッ!!!

 

全力の拳により、フィーネは壁に叩きつけられた

 

「おのれ・・・カハッ、ネフシュタンの鎧を食い破り、私の身体にこれほどのダメージを与えただと!!?」

 

吐血し、膝をつくフィーネ、目の前に立つ弧仁には傷一つついていない

 

今回外に放ったノイズは今までの比ではない、更に学内には多数の逃げ遅れた生徒や軍、ノイズに対して対抗策を持たない者がいた・・・弧仁はその全てを守りきった

 

以前の弧仁ならここにたどり着くまでに疲労困憊となり、フィーネをここまで圧倒することはなかった

 

『(弧仁自身、呪力量や呪力操作の精度は高い)』

 

そしてこれまでの戦い、葛藤、それらを全て乗り越えたことで

 

「このあり得ない速度で増進していく力、貴様は!」

『そう、瞬きする今この瞬間にも弧仁の力は!』

 

その魂に宿るもうひとつの魂、その魂を評する言葉に相応しく・・・

 

「成長しているのかッ!?」

『成長している!!』

 

「最強」により近づいていた

 

・・・

 

「言い、残す、ことは、あるか」

 

もう情に絆されることはしないが、最後の質問だ

 

右手に呪力を纏い・・・ゆっくりと近づいていく

 

これで、終わる

 

この場にいる誰もがそう思った・・・ただ一人を除いて

 

「クククッ・・・ハッハッハッ!!!」

 

「!?」

 

フィーネの狂った笑い声に弧仁が一瞬戸惑った、その瞬間

 

ヴォンッ!!

 

ネフシュタンの鞭が弧仁を逸れて振るわれた・・・その先には

 

「?・・・ッ!!!」

 

ズンッッッ!!!

鞭が肉を突き刺さる音が響いた

 

「認めよう風鳴・・・いや櫻井弧仁、お前は今私が最も警戒する存在だ」

 

その音がフィーネにとっての賛歌であり、そしてその音を発したのは・・・

 

「ぐっ、がっ・・・」

 

「しかし、それはたった今、そう感じただけだがな」

 

「こ、うじ?」

 

腹部に深く突き刺さる鞭、それを受けた弧仁からだ

 

その弧仁の背後には緒川がいた

 

・・・そしてその緒川の背後には未来がいた

 

弧仁を逸れた鞭が未来に迫ったのを確認した瞬間、身体が動いていた。

 

鞭を受けた身体には無限のバリアも呪力による硬化も存在しなかった

 

「今までお前の存在・・・いや、お前の中にいる『五条悟擬き』それに対して私は一番に警戒していた。なにせ、何度も輪廻を繰り返したこの身にも一切記憶にない力だったからな」

 

ブシュッ!!・・・鞭が引き抜かれた

 

「だが、櫻井弧仁には特別警戒はしていなかった。こうすれば簡単に貴様は排除できる。」

 

グラッ・・・ダンッ・・・

その痛みから倒れそうになるのを堪える

 

「!、弧仁!」

 

「!、未来」

 

その身体を未来が支えてくれた。

少しだけ、身体の力を抜き・・・フィーネを睨み付ける

 

まだだ、まだ倒れるな・・・このくらいの痛みなら昔何度も味わった

 

傷口を手で押さえ、この痛みすらも呪力に変えようと意識を集中しようとする

 

「お前の中にいる擬きなら、この状況でも自身の身を傷つけることはなかっただろう。そもそもこのような状況にすらならなかった」

 

この状況を引き起こしてしまったのは弧仁がまだ未熟だったからだ

 

近づいているといってもまだそこに至るには途方もない道がある

 

その結果が、これだ

 

「とはいっても、私もこれでお前を封じたとは思っていない。現にお前の目はまだ死んでいないからな・・・だから、私はこうする」

 

弦十朗との戦闘を前に投げ捨てた亡骸?を拾い上げ、包帯をほどいていく

 

「なぜ私がこの亡骸を持ってきたと思う?・・・いや、まだ亡骸ではないか、とはいっても対して変わらないものだろう」

 

その包帯に包まれていた人は・・・

 

ぶつかり合って分かりあって自分が大切に思っていた存在で・・・

 

自分が呪ってしまった彼女

 

 

 

「か、なで、さん?」

 

 

 

ようやくその目に映ったのは間違いなく天羽奏だった

 

「この包帯にはフォニックゲインが宿っているから六眼でも探知できなかったようだな。案ずるな身体に別状はない、変わらずお前に呪われている状態だ」

 

「お、まえぇ!!!!!」

 

「弧仁っ!ダメッ!!」

 

激昂する弧仁、だが身体を動かせない。

 

それは未来が弧仁の身を案じて、止めるからではない

 

「状況が分かっているようだな、中々利口じゃないか」

 

「ッ!!」

 

これは人質だ

 

擬きを止めることはできなくても、その身体の主導権を持つ弧仁を止めることのできる最高のカード

 

『弧仁!!変われ!!』

 

以前までなら楽に身体の主導権を握ることができた擬き・・・だが呪術師として成長した弧仁はそれを拒絶する

 

弧仁もエージェントとして戦う日々の中で、何度も助けてもらったから擬きが自分と入れ替われることは知っている。

 

だけど今は一瞬でも変われば、間違いなくフィーネは奏を殺してしまうと感じ取れた

 

だから、入れ替わりを拒絶している

 

「なんで、どうして天羽奏さんを・・・?」

 

未来の疑問にフィーネが反応した。

 

未来も天羽奏のことに関しては響を通して知っている。

だが、それは現在昏睡状態状態であるということだけ

 

弧仁と奏のことは知らないのだ

 

「そうか、なにも知らないんだったな。なら聞かせてやろう「や、め、ろ!」静かにしていろ」

 

鞭で奏を掴みあげ、その切っ先を奏の首筋に向ける

 

「教えてやろう。2年前、天羽奏は風鳴翼と共に偶像としてあの日ネフシュタンの鎧の起動実験のためにライブを行った」

 

「!、それって、響と弧仁が行った・・・」

 

「その実験の最中ノイズが現れ・・・いや私がけしかけたノイズによりライブでは多くの死者を出し、その生き残りが立花響、そして公的には死亡したとされていたが当時はまだ風鳴弧仁だった貴様も生きていた。これはお前達のほうがよく知っているな」

 

「でもそのライブにより天羽奏さんは昏睡状態と言われていたはずじゃ・・・」

 

それが未来の知っている話だが・・・

 

「その通り・・・ただその状態に至った原因はノイズではない。むしろシンフォギア装者としてノイズと戦い、立花響と風鳴弧仁を守り、その命を燃やし尽くし、死ぬところだった」

 

「!、だったらなんで今まだ・・・「そこにいる男が呪ったからだ」!!」

 

未来の視線が弧仁に向けられる。

唇を噛みしめ、手に爪が食い込む程に拳を握っている弧仁

 

「風鳴弧仁が天羽奏の死を拒み、呪った。フォニックゲインと呪力の相性は悪い、単純に出力が多いほうが片方を圧殺してしまう・・・だがこれが完全に同等の量だった場合、本来交わるはずのない二つが混じり膠着、残留する。その結果がそれだ」

 

奏の絶唱によるフォニックゲインと当時の弧仁の呪力

 

この二つが偶然釣り合い、今の奏の状態となった

 

「でも、なんで弧仁が奏さんを?」

 

奏がシンフォギア装者として響や弧仁たちのことを守るのは分かる。

 

そして優しい弧仁が奏を助けようとしたのは分かる・・・が、ここまで弧仁が激昂する理由が分からない未来

 

「そうかそうか、そこから知らなかったのか」

 

「どういうこと、弧仁と奏さんになにがあるの?」

 

「風鳴弧仁は風鳴弦十朗の義息子、そして天羽奏は弦十朗の保護下になっていた期間がある・・・二人は共に過ごす時間の中で家族となった」

 

「!、弧仁が昔言ってたお姉さんって・・・」

 

「姉のような存在の天羽奏、それの命を救うために躍起になった結果がこれだ、本人は不本意だろうがな」

 

「弧仁・・・」

 

「助けたかった存在を呪い、友だった風鳴翼に拒絶され、生き残った友は人々の悪意に傷つきそうになった、櫻井弧仁は全てを守り、取り戻すために戦う道を選んだ」

 

「私たちと別れたのはそういうことだったの?」

 

「・・・」コクッ

 

「とはいっても、戦う道を選んだ引き換えに頼んだ立花響の保護は中途半端に終わり、多数の悪意に傷つけられたがな、実に滑稽だ」

 

「っ!」

 

「そうして戦い続けた結果、戦場から最も遠ざけていたかったはずの立花響は戦う力を得て、かつての家族と争い、守りたかった存在からは拒絶された。」

 

「そんな、私・・・」

 

「あぁ拒絶した友は、今支えているそいつだったな」

 

「!!」

 

「自分は失っても友にはなにも失ってほしくないから、守りたかったから辛い道を選んだ。

 

だが再会と同時に立花響を戦場に巻き込み、そのことに苦しんだ。

 

そしてもう一人の友からなにも守れていなかったことを知り、戦場に巻き込んだことを責め立てられた、なにも知らないくせに」

 

「・・・まれ」

 

「憎いだろう、小日向未来が」

 

「黙れっ!!」

 

我慢の限界だった

 

未来を引き剥がし、拳を振り上げ、フィーネに振り下ろす。

 

「フッ」

 

ピタッ!

フィーネに拳が当たる前に、奏を盾にされる。

 

奏に当たる直前で拳を止めた

 

「これ以上傷つけたくないだろう?」

 

「ッ!!」

 

ズバンッ!!

 

鞭で叩かれる、今度は呪力でガードしたのでダメージはない、だが押されて後方に下がってしまう・・・その隙に

 

「一時の感情で行動し、状況を更に悪くする、お前の悪癖だな・・・このように」

 

ネフシュタンの左右の鞭、片方には奏が、そしてもう片方には

 

「!、未来っ!!!」

「弧仁っ!!・・・うぅっ!」

 

未来が捕えられてしまった、更に締め上げられて苦痛の表情を浮かべている

 

「案ずるな、お前の対応次第では殺さないでやろう」

 

「!」

 

その言葉の意味は・・・

 

「さぁお前が呪いを与えてしまった『天羽奏』、お前を拒絶した『小日向未来』・・・一つ命を差し出せば見逃してやろう」

 

突きつけられたのは非常な選択、果たして弧仁は・・・




シンフォギアしない散歩

未来との思い出

中学生の頃、響と未来と三人で遊びに行く約束をしていた時のこと

待ち合わせ場所

「全く響ったら明日提出の課題忘れてたーなんて、あれだけ言ったのにね」

カキカキ
「それだけ楽しみだったんじゃないかな」

すぐに終わらせるから待っててー!!と響から連絡が来たのがついさっきのこと

「・・・弧仁って自分のことで怒らないよね」

「?」

「小学生の時も声がでないことをからかってきた男子にも怒らなかったよね」

カキカキ
「そうだっけ?」

あれは響と未来と両手に花みたいな状態の弧仁に嫉妬した男子の妬みである

「けど、その男子が「そんな変なやつといる立花と小日向も変だ」って行った瞬間にすごい怒って」

そこからは取っ組み合いの大喧嘩である(流石に呪力は使いませんでした)

「今だって遅れてる響に怒らないし、何回も勉強教えてーって泣きつかれてもニコニコしてるし、宿題も何回も見せるし・・・甘やかしすぎじゃない?」

「?」ウーン

カキカキ
「自分のことで怒るって、よく分からない

 ルール違反する人とかは普通に嫌だけど・・・父さんとか姉さんみたいな人とか未来とか響とかが傷つくのは嫌だから、怒るのかも」

「そうなんだ」

「・・・」コクッ・・・

カキカキ
「もしかして、変、かな?」

多少ましになったかもしれないが、まだ自分がおかしいところがあることは自覚してる

だけど未来にもそう思われてるかもしれないと思うと、悲しかった

「そんなことないと思うよ」

「!」

「誰かのために怒れるのって、すっごく優しいってことだって私は思うな」

「・・・」

「だから、私は弧仁のことが大好きだよ」

「!」

「響に甘すぎるところはちょっとって思うけどね」

そう言って立ち上がった未来

「けど、私もそれは同じ」

「?」

「だって今から響のところに行って、課題手伝おうとしてるもの。弧仁も行くでしょ?」

「!」コクッ

そうして二人並んで響のもとへと急ぐのだった
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