歌を奏でる装者と無限を操りし少年   作:アユムーン

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「彼」がいなくなってから

フィーネが去り、数分が経った。

 

未来は弧仁の頭を膝に乗せ、項垂れていた。

 

「・・・未来さん」

 

弦十朗に応急処置をした緒川が話しかける

 

「・・・」

 

「お気持ちはお察しします・・・ですが今はフィーネを止めなくてはなりません。そのために今は「分かって、ます」!」

 

「私たちを守ってくれたからいかないといけないって分かってます・・・だけど、弧仁をここに置いていきたくない」

 

今は一度他の二課の面々と合流し、対策をとらなければならない・・・だが今倒れている弦十朗、眠っている奏、そして弧仁、三人全員を連れていくことはできない

 

「・・・分かりました、私が分身で「待て、緒川」司令!」

 

緒川の肩を叩き、言葉を遮ったのは弦十朗・・・だが傷口を抑えおり、息も荒い、反転術式を施されたとしても当たり前だが万全ではない

 

「奏君を頼む。弧仁は、俺が運ぶ」

 

「っ!、しかし「頼む」!」

 

「頼むっ・・・」

 

そう言って俯く弦十朗、肩が震えている、その姿はなにかを必死に堪えているようだ

 

弧仁の死を悲しんでいるのだろう。だが、司令官として立ち止まっている時間はない

 

今は一秒でも早く本部に戻り、対策を練らなくてはならない

 

だから、せめてちゃんと弔えるように、その亡骸を守らなくてはならない

 

それだけはどうしても、自分の手でやりたかった

 

上司として・・・父として

 

「・・・分かりました。未来さん」

 

「はい、お願いします」

 

弧仁の上体を起こし、弦十朗に託す。

 

自身の血で真っ赤に染まった弧仁を抱き上げる、出血のせいかひどく軽かった

 

「・・・行こう」

 

そうして本部に向かおうとした時、未来が気づいた

 

「あれ?」

 

「どうかしましたか?」

 

「あの、弧仁が着けてた目隠し?が見当たらなくて・・・すみません、また後で探します」 

 

「それなら、私も手伝います。あれは弧仁さんにとって大切なものですから」

 

「はい」

 

一行は本部へと急ぎ、そうして二課本部に到着した。

 

弧仁を奏と隣り合うように寝かせてあげて、地上にいる装者達に連絡を行った・・・しかし

 

「!本部内からのハッキングです!」

 

「っ!こんなこと、了子さんにしか!!」

 

電力が途絶え、二課本部の機能が停止、モニターから明かりが消え、連絡が断たれてしまった。

 

リディアンが危険なことは辛うじて伝えることができたが、このままでは装者との連携が取れず、地上の様子が掴めない

 

「くっ、このままでは・・・」

 

焦る弦十朗・・・その時、藤尭が気づく

 

「!、避難区画の電力なら生きているかもしれません!」

 

「本当か!」

 

「俺とあおいさんで向かいます!!」

 

オペレーターとして、自分の責務を果たすために立ち上がる藤尭、そしてその言葉を聞いたあおいも即座に準備に取りかかる。

 

「よし、そこに俺と緒川も共に向かう、他の連中はここに残って復旧作業を「私も行きます!」小日向君!?・・・ダメだ危険だ!」

 

「避難区画には私の友達もいるんです!それに・・・私は弧仁に守ってもらいました!だから、次は私が!!」

 

手が震え、本当は怖い・・・だけどその気持ちをぐっと堪え、覚悟の瞳をもって弦十朗に答えた未来

 

「!・・・分かった、だが危険を感じたら即逃げるんだ。君になにかあったら、俺は弧仁に顔向けできなくなる」

 

「!、分かりました」

 

そうして、藤尭とあおいの準備が完了し、出発する・・・その前に

 

「弧仁、行ってくるね。」

 

未来が語りかけるが当然なにも答えない弧仁

 

瞳に浮かぶ涙を振り払い、未来も出発する。

 

・・・地上、リディアン音楽院

 

弧仁の活躍により、半壊程度で済んでいた校舎の残骸の上に立つフィーネ・・・今は弧仁の姉の了子の姿をしていた

 

その手には弧仁の目隠しが握られていた

 

血に染まったそれを拾ったのはほんの気まぐれだったが、これから現れるであろう装者達に見せれば動揺を誘うことができるだろう・・・

 

しかし、それを見ていると自らが手を掛ける直前の弧仁の姿を思い出した。

 

戦闘を始めた時には殺意しか籠っていなかった瞳

 

だが、自分が死ぬ寸前の弧仁の瞳は違った

 

その瞳はまるで慈愛が籠っていた

 

「自らが死ぬ寸前で、私を憐れんだのか・・・不快だな」

 

超先史文明記の巫女だったフィーネは、神・・・自分が愛したお方に近づくために塔を作った

 

しかし、神からの天罰なのか、その塔に雷が落とされ・・・人々は統一されていた言語を失い、争い合うようになった。

 

「バラルの呪詛」と呼ばれる呪い、その争いの最中で生まれたものがノイズだった

 

それでもあのお方に近づくために、自らの遺伝子に刻印を刻み、その遺伝子を持つものがアヴフヴァッヘン波形に触れれば、フィーネの意識がその人物の意識を塗り潰して甦るようにした

 

そうして何度も何度も輪廻転生を繰り返し・・・今回、櫻井了子を食い破り顕現した。

 

シンフォギアを作り上げ、翼や奏、クリス、響などたくさんの人間を操り、今に至る。

 

その人間の中で一人想定外の人物がいた

 

突如現れた正体出自全てが不明の聖遺物・・・否、特級呪物「五条悟の目隠し」に適合した少年、弧仁

 

自身の全ての知識や経験を用いてもなにも分からなかった呪物、それを戦力を欲しがり、その危険性を全く理解せずに、違法な実験を容易く行える米国に押し付けた結果、適合した

 

だがフィーネは運が良かった、その少年は自分の近くに来て、絶好の研究対象となった。

 

後にその対象は立花響に移ったが、呪いを操り、呪いを祓う呪術師の力は興味深かった

 

自らの目的、バラルの呪詛からの解放・・・それも呪術師ならばできるのではないかと期待したが、弧仁の中にいる擬きは神出鬼没かつ、あくまでも弧仁を守るためにしか力は使わないと言う

 

従って弧仁を操ることもできず、弧仁と擬きという爆弾を抱えたまま計画を進めることになってしまった。

 

しかし擬きは勘づいていただろうが弧仁は一切了子のことを疑わず、定期検診では普通に肌を晒し、義理とはいえ姉弟にもなった

 

だからといって情なんてものは湧くことはなかったが、最後の最後まで弧仁は了子を疑わなかった

 

そうして先程この手で殺した

 

だからこそ憎く、殺そうとしていた存在に向けたあの瞳が頭の中をちらつく、うざったらしくて仕方がない

 

ギュッと目隠しを握ったその時「櫻井女史!?」

 

翼の声が聞こえた、その方へ視線を向けると三人の装者がいる

 

今さら計画の障壁にもならないであろうが、消しておくに越したことはない

 

そして、もう正体を隠す必要もない

 

フィーネの姿に戻り、ネフシュタンの鎧を纏う

 

唖然とする装者達に自らの計画と今に至るまでの話を全て暴露した。

 

憎悪を向ける装者達、それが心地いい

 

あの慈愛の目など、すぐに消し去り・・・計画の要を建てる

 

「そう、全てはカ・ディンギルのため!」

 

ゴゴゴゴゴ・・・地を裂き、高く伸びていく塔

 

これこそが

 

「荷電粒子砲カ・ディンギル!、これで月を穿つ!」

 

カ・ディンギルでバラルの呪詛の源である月を破壊し、世界を呪いから解き放つため、フィーネは最後の戦いへと乗り出した




シンフォギア散歩

擬きのランデブー

「快晴快晴・・・ってここはいつも晴れてるけどね」

上は雲ひとつない青い空、そして何故か青い水面が広がる地、その上にソファを置いてそれに寝転がる擬き

その姿は「五条悟」そのもので擬きの姿を知っているものはこの世界に誰もいなかった

「んー、目隠しなくてもやっぱり僕はここにいられるのか

となると、あの目隠しはあくまでも五条悟の情報を一時保管するためのUSBみたいなものでその中身が僕、その僕が弧仁の魂に移った。その時点でもはやあれはただの布だね」

その目隠しと同じ目隠しをぐいっとめくり上げて、水面に視線を移す

波ひとつなく、揺れもしない水面

「んー・・・まだかかりそうかな」

果たして擬きが待つものものとは・・・

「さっさと来なよ、大切なものをこれ以上失くす前に」
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