歌を奏でる装者と無限を操りし少年   作:アユムーン

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散り行く「夢」

遂にその正体が明らかとなったカ・ディンギル

 

その正体はバラルの呪詛の源である月を破壊するための荷電粒子砲であった

 

そしてその塔を建造したフィーネはその正体、目的の全てを響、翼、クリスに明かした

 

たとえそれを知ったとて、学校や大切な人を傷つけたフィーネを許せない

 

三人はシンフォギアを纏い、臨戦態勢をとった・・・しかし

 

「そうだ、これは返しておこう」

 

フィーネから投げられ、ひらひらと空を舞いながら落ちてくる

 

「「「!」」」

 

「見覚えはあるだろう?お前らの大切だった人間の物だ」

 

「これって・・・」

 

落ちてきたものを響が拾い上げる。

 

それは弧仁が肌身離さず身に付けていた目隠し、そしてそれがここにあるということは

 

「!、貴様!弧仁になにをしたッ!!?」

 

翼が剣を突き付け問う

 

「見て明らかだろう、そいつはもうこの世にはいない」

 

「ッ!弧仁がお前ごときにやられるわけがねぇだろ!!」

 

「いや?実に簡単だった。ある少女を盾にすれば、従順に自らの命を差し出した。殊勝なことだ」

 

「!まさか、未来!?」

 

本当を言えば、リディアンに到着した時点でこの場に弧仁がいないことに違和感はあった

 

飛行型ノイズを倒している間、無防備となる二課を守っていたのだろう・・・だが、二課とほんの一瞬繋がった通信の際に聞いた学校を襲ったノイズを弧仁が放っておくはずがない

 

弧仁は他の所で戦っている、もしくは誰かを守っているのだと、無意識に思い込んでいた

 

いつか三人でライブに行こうと約束したから

奏の呪いを共に祓うと、約束したから

もう二度と離さないと、言ってくれていたから

 

だから弧仁が負けるはずが・・・死ぬはずがないと思い込んでいた

 

しかし、フィーネの話を聞けば納得がいってしまう

 

あの優しい弧仁が、大切な友達を見捨てるはずがない

そしてその友達を守るためなら自らの命を差し出すということも容易に想像できてしまう

 

「お前ッ、本当にアイツをッ!」

 

「擬きなら、このようなことにはならなかっただろうな。風鳴弦十朗と同じで非情になりきれない愚かさが自らの命を断ったのだ」

 

「愚かだと!?誰かを想う優しいあの子の気持ちを!愚かと言ったか!?」

 

「あぁそうだ、いつだって愚かであっただろう?大切な家族を自らで呪い、守るべきものを他者に託したあげく傷ついていることも知らず、そして今その愚かさで自らの命を捨てた「それでも」ん?」

 

フィーネの言葉を遮った響、その瞳は紅く光り、その体は少しずつ黒く染まっていく

 

「それでも弧仁は・・・挫けても、立ち上がって、前を見て、守って、戦うことを決めたんだ・・・」

 

「そうだったな、だがあいつの過去を考えるとまた愚かなものだよ」

 

「!!、弧仁の過去だと!?」

 

誰も知りえない弧仁の過去

 

「血の繋がる本当の肉親はノイズに奪われ、孤児となり、米国の研究施設に拉致され、記憶と人として育つ時間を奪われ、その結果得た正体不明の力

 

そこからはその力である擬きの言いなりで動いていたに過ぎん

 

あいつが戦う道を選んだのは、それしか知らないからだ」

 

「そんなことあるかっ!アイツは自分の守りたいもののために自分の道を決めて!「例えそうだとして、クリス、お前があいつと出会ったのはどこだった?」ッ!?」

 

そう、記憶を失い、弧仁が出会った家族を奪ったのはクリスが嫌う争いだ

 

「成長し、お前らの言う守りたいものを見つけたとしても、それをどこで失った?」

 

「ッ!、奏のことか!!」

 

またできた大切な家族を失い、友達とも引き裂かれたのはノイズとの戦いだ

 

「挙げ句の果てには守りたいものを争いの渦中に引き込み、その守りたいものから拒絶された。ハッ、とんだ笑い種だな」

 

響を戦いに巻き込み、未来に拒絶された・・・それも戦いがきっかけ

 

「いくら擬きやお前達が肯定しようと、名もなき頃から、風鳴弧仁の時も、櫻井弧仁の時まで、常に戦い争い奪い奪われる世界の中に生きてきた。それ以外の道を知らぬ存在であることには変わりない」 

 

戦いを必要としない時間もあったのかもしれない

 

だけど結局、醜い争いの中へ帰ってきていた

 

弧仁はいつだって戦い続けてきた

それ以外の道を歩もうともしなかったのだ

 

例えその道中にどれだけの覚悟があったとしても、それは変わらぬ事実

 

「もう、いい・・・」

「それでもまだ、愚かではないと言うか?」

「もう・・・やめろ・・・」

「所詮奴は争うことしか知らぬ獣と変わらん」

 

響の制止を無視し、言葉を続けるフィーネ

 

「その結果、自らの命を亡くし!これから守りたかったものも失う!これを愚かと言わずしてなんとする!!」

 

確かにフィーネの口から語られる言葉は全て真実

 

だが、それは客観的な真実

 

弧仁をよく知り、時にぶつかり、分かち合ってきた時間がある者からすればそれは・・・

 

「もう・・・黙れェェェッッ!!!」

 

堪えられないほどの侮蔑に他ならなかった。

 

影のような黒で体を染め上げ、獣のように地を這いフィーネに襲いかかる響

 

「ドンナ事実ガアロウトッ!!イツダッテ弧仁ハ守ル為ニ戦ッテイタンダッッ!!」

 

だが、そんな響を見ても一切焦る様子も見せず、攻撃を避けていくフィーネ

 

威力こそ凄まじくとも動きは直線的で避けるのは容易い

 

しかし響の姿、戦闘は明らかにいつもと違う

 

「!?立花ッ!!?」

「ッ!?あれはデュランダルの時と同じ!?」

 

翼とクリスの二人は響の豹変に戸惑う、それに対してフィーネは

 

「心臓にあるガングニールの破片、その力が暴走しているのだ。まさに人の形をした破壊衝動そのものだな」

 

鞭を幾層に重ねた盾で攻撃を防ぎながら、余裕を持った表情で二人の言葉に答えたその瞬間

 

「ソレヲ侮辱スルナァァッッッ!!!」

 

バリバリ・・・バキィンッッ!!

 

響の勢いは止まらず盾が砕かれ、フィーネに響の一撃が炸裂した・・・しかし

 

「聖遺物との融合、立花響の症例を元に私も聖遺物をこの身に宿した」

 

大きく裂けたはずの上半身が繋がっていき・・・傷ひとつない姿のフィーネ

 

「!、その再生力は!?まさか、ネフシュタンの鎧か!?」

 

「その通り、面白いものだろう?・・・そして、カ・ディンギルのエネルギーがもうすぐ充足される、さぁどうする?」

 

再生したフィーネにもう一度襲いかかる響

 

エネルギーが溜まりつつあるのか、揺れ動くカ・ディンギル

 

フィーネからすれば後は時間を稼いでいれば問題ないという状況

 

このままでは世界がフィーネによって支配されてしまう

 

「もう見てるだけではいられない。雪音クリス、貴女にフィーネを任せる」

 

「!アンタはどうすんだよ」

 

「私は立花を止める。ガングニールは・・・あの子の手はこんなことに使うべきてはない」

 

「・・・指図されるのは気にくわねーが、乗ってやるよ」

 

それぞれの目的のために今一度協力することを決めた二人だが

 

「正直まだ貴女のことを完全に信じきれてる訳じゃない」

 

「気が合うじゃねーか、アタシもだ」

 

この二人はまだ知り合って間もない

 

信じきるにはまだ時間が足りない・・・だけど

 

「弧仁が信じた貴女なら信じてみようと思う」

 

「!、そう言うアンタは弧仁に信じられてたのかよ?聞いた話じゃギクシャクしてたらしいけどな」

 

「以前の私なら、分からなかった。だけど、同じ約束を交わした今なら、私たちは信じ合えていたと言える」

 

「・・・そーかよ、そんで?カ・ディンギルはどうすんだ」

 

「互いに隙を見て破壊する、私も立花を落ち着かせ次第向かう!」

 

「なんだ、とにかくブッぱなしっちまえばいいってことだろ?簡単じゃねぇか!」

 

「参るっ!!」

 

クリスはフィーネ、翼は響を止めるために駆け出した

 

・・・

 

「っ!どういう状況なんだこれは!?」

 

避難区画の一室、そこで外との通信を取り戻した弦十朗達一向はモニターに映る映像を見て驚く

 

「響・・・?、!あれって!」

 

暴走し、翼と戦う響がその手にもっているもの

 

それは・・・

 

「弧仁の目隠し・・・!弧仁のことを知ったから!?」

 

・・・

 

「やめろ立花ッ!これ以上は!」

「ウガァァァァッッ!!!」

 

響の猛攻を辛うじて防ぐ翼、しかし響の身を案じてか反撃に移ることができない

 

「くっ!」

「グゥゥ・・・ウァァァァッッ!!」

 

一度互いに下がるが、響は即座に飛びかかった

一歩遅れて、翼もまた攻撃を防ぐ・・・その繰り返し

 

クリスとフィーネは・・・

 

「!止めれてねぇじゃねぇかッ!「よそ見をしてる暇があるか?」!!」

 

ジャキンッ!!

紙一重で鞭を避ける

 

ズガガガッ!!

避けるだけではない、ボウガンで反撃を見せるが鞭によりあっけなく掻き消された

 

「くそっ!」

 

ネフシュタンの再生能力を考えれば、クリスの放つ攻撃は避けるまでもない攻撃

 

それをわざわざ振り払うということはつまり、フィーネにより遊ばれている状態ということ

 

その状況に悪態をつきつつ、再びボウガンを構えるが・・・

 

「フッ、あれはある意味風鳴翼が望んでいたことだ」

「あ?なに言ってんだ?」

 

響と翼の戦いを見ながら嘲笑うフィーネ

 

「天羽奏と立花響の関係は知っているだろう?」

「!」

 

翼が弧仁と響と一時期険悪となっていた理由はクリスも聞いている

 

「ただあの一件があったからこそ、立花響という聖遺物との融合という研究対象ができ、私に生かされている・・・『ズガガガガガンッ!』!」

 

悠長に話すフィーネに向かって、ガトリングに形を変えたアームドギアを発砲

 

盾でそれを防いだフィーネ

 

「ハッ、他所様のこと笑いたいなら後でやれ。今のお前の相手はアタシだ」

 

「薄々気づいているのだろう?このまま戦っていても意味はないと・・・それに、珍しく射線がずれているぞ?やはり弟の死を知ると冷静でいられないか?」

 

「っ!」

 

「風鳴翼が攻撃に転じられないのも、立花響の身を案ずるだけではない、弧仁に対する負い目があるからだ。

 

弧仁が大切に守ろうとしていた立花響を傷つけるわけにはいかない、そういった想いがあるのだろうな」

 

そもそも響の暴走は弧仁の死があったからだ

 

彼の死はたくさんの人の心を砕くには十分だった

 

「そう、かもな・・・」

 

「だが、それももう終わる!カ・ディンギルによっ「けど、負い目ならアタシにだってある」?」

 

「アタシが一番理解してやらなきゃいけないのに否定した」

 

いくら現実を信じられないからといっても、弟に銃口を向けてしまった

 

「争いが嫌いだとかいうくせに、一番争いの中にいた・・・だからもう、姉には戻れないって言ったのに」

 

それでも、助けに来てくれた、側にいてくれた

 

自分は弟だからと言ってくれた

 

だからもうこの銃を突き付ける相手は間違えない

 

「だけど回り道してようやく見つけた、ケジメの付け方・・・そのひとつがお前だ、フィーネ」

 

真っ直ぐにフィーネに向けて銃を向ける

 

「ほう?」

 

「お前と決着をつけて、アタシはやっと見つけた夢の為に進む!!それができたらアタシはもう一度弧仁のお姉ちゃんを名乗れるんだ!!・・・だけど、それはもう無理だな」

 

銃を下ろして、覚悟を決める

 

「?なにを言っている?」

 

「アイツ一人、あっちに行かせるわけにはいかないんだよ」

 

弧仁は今頃、大好きなパパとママと再会できているだろうか?

 

自分が同じ場所に行けるとは思えないけど、一人で逝かせたくない

 

「(待ってろ、弧仁)よく聞きやがれ、アタシが歌う・・・最後の歌をな」

 

スゥゥ・・・息を吸い込む、もう恐怖はない

 

「まさかっ!?」

 

フィーネに止められる前に、アームドギアを即座に変形させ、巨大なミサイルを発射

 

片方はフィーネに向けて、もう片方は空に向けて・・・そのミサイルに乗り込む

 

「♪~♪~♪~」

 

そうして口ずさむ歌の名は・・・

 

「これは・・・絶唱!?」

「?・・・!?」

 

翼が驚き、クリスが昇っていく空を見上げる。

 

それは先程までクリスとフィーネの方を見向きもしなかった響も同じ、体は以前戻らずとも、覚悟を込めたその歌声に意識を奪われた

 

空中で停止し、アームドギアを展開

 

エネルギーリフレクションにエネルギーを巡らせ、自身も二丁のレールキャノンを構える

 

本来広域に放射するエネルギーを一点集中

 

巨大なレーザーに変えて粒子砲を発射するカ・ディンギルに向かい・・・放つ

 

一時的に粒子砲を抑えることができたが、長くは持たない・・・そう悟った

 

「(ずっとアタシはパパとママのことが大好きだった)」

 

ひび割れていくアームドギア

吐血し、己の最後も悟る

 

「(だから、二人の夢を引き継ぐんだ。パパとママの代わりに歌で世界の平和を掴んでみせる。アタシの歌は・・・そのために!)」

 

押し返すカ・ディンギルの粒子砲に飲まれながら・・・夢を思い返す。

 

「(この夢、お前には・・・聞かせたかったな)」

 

たったひとつ、弟への後悔を残して、クリスは散り・・・地に堕ちていく。

 

その瞳には自分が守った一部の欠けた月が映った




シンフォギアさんぽ

擬きのランデブーその2

「気まぐれで釣糸垂らしてみたけど・・・やっぱり釣れないね~」

ソファに座りながら、どこから取り出したのか分からない釣竿で釣りを行う擬き

しばらくそうしていたが飽きたのか、釣竿を投げ捨てた。その釣竿は音もなく消え去った

「でも、感覚的にはもうちょいって感じかな」

相変わらず揺れない水面だったが

・・・!・・・

「!、それでいい」

ほんの一瞬少しだが水面が揺れた

「そのままこっちにおいで。皆待ってるよ」
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