クリスが散った
命を賭けて世界を守るために、カ・ディンギルに立ち向かい、散っていった
その光景は戦う一同の手を止めるには十分だった
「クリス・・・ちゃん・・・」
弧仁、そしてクリス、親しかった者と親しくなれるかも知れなかった者を続けて失くした響、心が折れ、体を覆っていた黒は溶け、ギアは解除され、その場に座り込む
瞳からは止めどなく涙が流れる
「立花・・・」
しかし、クリスの最後を嘲笑う者がいた
「無駄なことを、見た夢も叶えられないとはとんだ愚図だな」
カ・ディンギルには再びエネルギーが溜まっていく
設置してあるデュランダルの生み出す無限のエネルギーに限界はない
即座に次弾は発射される
クリスの行ったことは無駄だったのだ
「笑ったか・・・命を燃やして、大切なものを守り抜くことを、お前は無駄と!せせら笑ったか!!」
「ハッ、それでどうする?」
「貴様を倒し、この塔を止めるっ!!立花っ!・・・!」
「あ・・・あぁ・・・」
響に目を向けたが、その瞳から光は失われている
とても戦える状態ではない
「完全に心が折り砕かれたようだな・・・もうお前の声は聞こえていない」
「っ!」
「そもそもこのような状況に陥ったのも唯一私を倒せる可能性のあった弧仁が私を仕留めきれなかったからだな・・・アイツもまた、守りたい者を守れなかった弱者」
「それ以上、雪音と弧仁を愚弄するなっ!!」
大剣のアームドギアを振るうも容易くかわされてしまう
「おっと、とはいえ・・・お前ももう限界だろう?体も心もな」
「例えこの身が潰えようと・・・あの二人が守ろうとしたものを捨て置くわけにはいかないのだ!!」
「そうしてまたその身を剣とするのか」
「今日に折れて死んでもと明日に人として歌うために・・・風鳴翼が歌うのは戦場だけではないと知れっ!」
フィーネに立ち向かい、剣を振るいながら、弧仁との思い出を振り返る
初めて会った時は知らない間にできていた従弟だった
それから何度もあって遊んで同じ時間を過ごして、従弟でありながらも、大切な友になった
奏のように弟・・・とは言えなかったが、それでも同じくらいに大切に想っていた
弧仁を戦場から遠ざけたかった、守りたかった
だが、あのライブをきっかけに奏は眠り、弧仁は戦場に足を踏み入れた
「(もう、なにに詫びればいいのか分からなかった)」
弧仁を拒絶してしまったこと
奏を守れなかったこと
だからせめて、弧仁がこれ以上戦うことがないようにと、戦場に身を置き続けた
だが、弧仁は戻ってきた
「(もう謝らないって決めたけど、ごめんね、弧仁)」
奏が眠って一番辛かったのは?
奏を呪ってしまって、一番辛かったのは?
そんなの、弧仁に決まっている
「そうして剣を振るうのは、弧仁への贖罪か?」
「・・・」
「そもそもの奴が背負っている罪は全て奴自身が犯したものだろう、それをなぜお前が背負う」
「奏のことが弧仁の罪というのなら、私は背負う」
「だから、それが不可能と言っているのだ!!」
パキィィンッ!
フィーネの攻撃でギアが砕ける
身体が痛む、そもそも暴走した響との戦闘で限界だった
「なぜ奴を憎まない!大切なものに呪いをかけた奴を!!」
フィーネが向ける感情は憎悪そのもの
理解できない翼の考えに対して、怒りを露にする
「・・・そうか『お前も』そうなのだな」
その様子を見た翼は交戦を一時止め、剣を下ろす
「!」
「私は呪いに狂わされていた、他でもない弧仁の呪いによってな・・・お前もそうなのか?」
フィーネの言葉から、呪いに対する憎しみを感じた翼
その翼の瞳は・・・最期の時を迎える弧仁と同じ瞳をしていた
「ッ!その目をやめろッ!!」
ジャキンッ!!
「形は違えど、私たちは呪いに狂わされた」
迫るフィーネの攻撃を掻い潜る
「同情のつもりか!?」
「・・・どんなことがあろうと、それはしない。それがなんの慰めにもならないことは身に沁みて知っている」
「だとしたら、その目はなんなんだ!!?」
圧倒的優位なのはフィーネの筈だ、なのに弧仁と翼の向ける目は同情ではないというのなら、なんだというのか
「その目のことは分からないが、今際の弧仁がどんな想いを貴様に向けたのかは分かる
それは決して同情ではない、憐れんだわけではない」
「だとしたらなんだと言うっ!」
「・・・悲しいんだ」
「!?」
「同じ痛みを持つからこそ、その痛みが分かってしまうんだ」
「同じ痛みだと・・・あのお方から引き剥がされ、呪いを受け、拷問ともいえる無限の輪廻を繰り返した私の痛みを同じと言ったかっ!!?」
「貴様がどれだけの痛みを受けてきたのかは知らない、だがその痛みの形は同じのはずだ・・・愛する者と呪いによって引き剥がされたことは同じだろう?」
「!」
「だから・・・ただ悲しいのだ、そこにお前への感情なんてなにもない」
「そうか・・・なら、もう手を抜く必要はないな」
鞭が突き刺すように動く、その鞭の先は翼ではなく・・・
「なに・・・!、立花っ!!」
グサッッ!!
「!、翼、さん?」
「ぐっ・・・」
「身を呈して守ったか」
響の前に立ち、鞭による一突きから庇った翼
腹部を鞭に貫かれた、地面に血が滴る
「それも贖罪か?」
「そうだな・・・そういえば、先程なぜ弧仁の罪を背負うのかと聞いたな?簡単なことだ」
ガシッ、鞭を掴む
「!」
「私がそうしたいから、それだけだ」
そうして、いつか共に・・・
グッ!ズズズッ・・・ブシュッ!!
無理矢理鞭を引き抜くと共に血が吹き出す
「翼さんッ「立花っ!」!」
「そこで立ち止まっても構わない、だが必ず立ち上がってくれ
・・・奏から受け継いだ力と弧仁が託した想いを絶やさないでくれ」
優しく、響に微笑み、最期の願いを伝え・・・飛び立つ
その先にはあるのはカ・ディンギル
「!、させるかっ!・・・!?」
翼を止めようと、フィーネも動こうとしたが、身体が動かない
辛うじて動く首で足元を見ると、影に小刀が突き刺さっている
「これはっ、影縫!?」
通り過ぎ様に、相手の動きを拘束する技影縫いをフィーネに放った翼は誰にも止められることなく高く飛ぶ
「そこで見ていてもらおう!防人の最期の飛翔をっ!」
そのまま、前に向かい刀を投げる。
刀は巨大な剣と変わり、それを蹴り付け、加速していく
「(ごめんね、弧仁、奏・・・)」
たくさん生きろと願ってくれた奏の願いも
共に奏を救おうと、弧仁と交わした約束も
もう叶えることはできない
「(それでも、二人が託した力も想いを・・・絶やしたくないっ!!)」
その言葉に答える声はない、当たり前だ
奏は生きている
弧仁は死んだ
だけどもう、後悔はない・・・!!
その身を賭けた『天ノ逆鱗』がカ・ディンギルに炸裂
ドッガァァァァンッッ!!!
巨大な爆発と共に、カ・ディンギルは倒壊していった
翼はその爆発に巻き込まれ・・・
・・・
「私の想いは・・・又も・・・」
崩れ落ちたカ・ディンギルを見て唖然とするフィーネ
それは響も同じ
「あ、あぁ・・・翼、さん・・・」
『奏から受け継いだ力と、弧仁が託した想いを絶やさないでくれ』
翼はそう願い、自分に託してくれた・・・だけど
「ごめん、なさい・・・私の、せいだ・・・皆いなくなっちゃった・・・学校も、皆も・・・私のせいだ・・・」
守りたかったものは全部失くなった
友だちも、自分が帰る場所も・・・陽だまりもなにもかも
手に残るのは弧仁の目隠しだけ
「くそっ!!お前が!お前らがぁ!!」
激昂し、響に襲いかかるフィーネ
頭を掴み、地面に投げ捨て、痛め付ける
あと少しで自身の願いが叶うかもしれなかったというのに、全て潰えた
再び計画を立て直そうとしても、どれだけの時間がかかるのかも分からない
もう融合症例もどうでもいい、自分の計画を邪魔する者を消し去ってしまいたかった
鞭を振り上げ、今度こそ確実に響を殺す
「さらばだ、立花響」
ギュンッ!!
目にも止まらぬ早さで鞭を突こうとした、その時
パァァァンッッ!!!
フィーネの後方で、赤いレーザーが昇った。
レーザーの出所は地下、そうしてできた巨大な穴
「?地下にいる風鳴弦十朗達の攻撃か?」
しかし、二課の設計をしたのは自分だ、把握している限りではこのような兵器はないし、このような大がかりな兵器が作られていることをみすみす逃すわけがない
そして援護にしてはあまりにもお粗末な狙い
それにより、降り注ぐ瓦礫に焦げた後がない。あくまでもなにかに弾き出されたかのような壊れかた
つまり先程のものはレーザーではない
「だとしてこんな芸当ができるのは・・・まさかっ!!」
フィーネがなにかに気づく、その瞬間穴から影が飛び出し・・・
ダンッ!!
響の前に降り立った
上半身の服はボロボロだが・・・見覚えのある服
「あ、響が持っててくれたんだ。ありがとう」
「!、嘘・・・」
響の手からそっと目隠しを抜き取って、着ける
「うん、やっぱり僕はこれがないと落ち着かないんだよね」
「・・・お前は・・・お前達は完全に殺したはずだ!!」
「あの程度じゃ死なないよ。
首から腹にかけて切り裂かれて、頭ぶっ刺されようが生きてるくらいには最強だから」
そうやってフィーネを煽り倒すのは、死んだはずの・・・
「弧、仁?・・・違う、貴方は、誰?」
「!、ちゃんと分かるんだね」
見た目は弧仁、だけど、中身が違うことが分かる響に微笑む
「お前、擬きかっ!!」
「大正解っ!百億点あげようっ!」
「ふざけるな!!何度心を!身体を!!砕いても砕いても何度も立ち上がるッ!櫻井弧仁ッ!お前のその力は何なのだ!?!?」
弧仁の力がどんな力なのかは、知っている
だが、何度の挫折、損傷、それでも何度でも立ち上がった・・・それは争いの道しか知らぬ獣ではあり得ないこと
「あれ?知らないの?散々研究したのに?」
「ッ!!」
「知らないなら教えてやりな・・・弧仁」
そうして折角つけた目隠しを首もとにずらしていく
「この力の火種は確かに僕だよ、弧仁に名を与え、人間にしたのは間違いなく僕さ」
目隠しにより捲り上がっていた前髪が降りていき、閉じられた瞳が開いていく
「先生、父さん、響、未来、翼ちゃん、クリス、それから・・・奏さん、他にもたくさんの俺を支えてくれる人がいる」
「(雰囲気が変わった!)この感じは・・・」
響が気づく、その目に映る弧仁の瞳には蒼く輝く片眼の六眼がある
「だけど、勘違いしないでほしい」
先程までのように強者のオーラを纏っていない
「この力は仲間の力とか絆の力だとか、言うつもりはない。俺の手に宿るこの力は・・・」
今の弧仁は響のよく知る・・・安心できる、暖かい雰囲気
「ただの呪いだよ」
それを持ちながら相反する呪いの力を振るう、この世界唯一の呪術師、その名は
「弧仁ッッ!!!」
耐えきれず、響が弧仁に抱きつく
「・・・遅れてごめんね響」
皆を愛し、皆に愛される呪われた少年・・・弧仁が再び戦場に立ち上がった
「さぁ、全部守ってみせようか」
シンフォギアさんぽ
ザパァ・・・
や、走馬灯旅行どうだった?
え?ここがどこかって?
慌てなくてもちゃんと教えてあげるよ
それよりここに戻ってきたからにはまだまだ生きるつもりなんでしょ?
え?分からない?・・・しょうがないな、ほら一先ずソファ座って、なんなら寝転んでもいいから
うん、ようやく落ち着けたね
さぁそれじゃあ話そう
内容はもちろんこれからの話だよ
けどまぁ時間はないから巻きでいこうか
分からないことは教えてあげる
だけどまず、君がどうするか・・・どうしたいのかを僕に教えて?行き先はそれから決めたらいいさ