歌を奏でる装者と無限を操りし少年   作:アユムーン

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辿る「歴史」

再び戦場に舞い戻った弧仁

 

片眼の六眼はフィーネを逃さず見つめ、その腕は響を優しく抱き締める

 

「全てを守ってみせる?既に失っているお前がか?」

 

「ッ!弧仁、あのね・・・クリスちゃんと翼さんがっ「大丈夫」えっ!?」

 

「二人だけじゃない、父さんも二課の皆も、未来も皆生きてる」

 

「!それって」

 

「!?なにを根拠に「六眼で見た」!!」

 

弧仁の六眼は片眼、両目が揃っている状態に比べればその効果である「呪力を詳細に見る」という効果も半減する・・・だが

 

「クリスと翼ちゃんがいる辺りくらいなら見れるから二人が生きてるってことは確認済み

 

それから地下にいる時に避難した人達も無事ってことも

 

・・・約束守ってくれてありがとう、未来にも奏さんにも手を出さないでくれて」

 

「ッ!?」

 

「ごめんね響、少し離れてて」

 

「えっ」

 

「・・・フィーネと少し話したい、それに少し待ってたら、きっと響にいいことがある」

 

「!、それってどういう」

 

フィーネの元に向かう前に、もう一度響を見る

 

傷だらけだけど、先程まで光を失っていた瞳とは違う

 

きっと響なら・・・皆なら、大丈夫

 

「また、後でね」

 

「っ・・・うん」

 

堪えるように顔を曇らせてから響は弧仁から離れる 

 

まだ自分は彼の隣に立つことはできないと、悟ってしまった・・・それが悔しいが、今のままでは弧仁の足を引っ張ってしまう

 

「・・・ありがとう」

 

視線をフィーネに向けて・・・シュンッ

 

瞬間移動で近づき、右手で印を組んで・・・述べる 

 

「闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え」

 

「!?」

 

弧仁とフィーネがいる上空からドーム状の黒い膜が広がっていく

 

地面はそのままに、黒い膜の中に二人は取り残される

 

「これは・・・結界か」

 

「惜しいね、正確には帳だよ。色々な効果を持たせることができるけど、今回はシンプルに内側から出られない効果で張ったみたい」

 

再び目隠しをつけて、擬きと入れ替わっていた

 

「!、いつの間に」

 

「色々あったお陰で今僕らの魂は極めて近くなっている。だから簡単に入れ替われる・・・最も本来の所有者である弧仁の方が立場が強いけどね」

 

「以前はそんな立場関係はなかったはずでは?」

 

「弧仁自身が強くなったおかげでできたんだ。だから弧仁が心底拒否している場合の入れ替わりはできなくなった」

 

「しかし擬き、お前が最初から出ていれば失わずして勝利できたものを」

 

「弧仁の成長に繋がらないからあんまり出るつもりはない。・・・さて、こんなことを話すためにわざわざ帳を下ろした訳じゃない。そちらも聞きたいことがあるんじゃないかと思って、二人きりにさせてもらったよ」

 

「聞きたいこと?」

 

「そう、どうやって僕らが復活したのかとかさ、興味ない?」

 

「ふん、どうせお前が反転術式を施したのだろう。櫻井弧仁が絶命する際なら身体の主導権も奪えた。最後の瞬間まで死を与えなかった私が迂闊だっただけだ」

 

「いや?作戦は結構いい線いってるさ、それにその考えは半分正解してるしね」

 

「!?」

 

「確かに死に際で反転術式は施したよ。でも僕は全快までは治していない。簡単にいえば仮死状態にもっていっただけだよ」

 

「!」

 

「あの状態で僕が全快させたとして、弧仁は繰り返していただろう。人質がいる状態で無策でお前に挑み殺される。それなら動かさない方がいい」

 

だから、仮死状態にもっていき弧仁を一時行動不能にしたのだ

 

「そうだとしてもあの状況では周囲にいた者達を失う可能性があった「なんか勘違いしてない?」!?」

 

「僕は正直この世界をお前が滅ぼそうがどうしようが、弧仁が生きてるならどうでもいい

 

 僕の守りたいものと弧仁の守りたいものは別なんだよ」

 

弧仁は家族、友だち、仲間、そしてその皆が大切にしているものを守りたい

 

だが、擬きはそうではない

 

「今ここにいる弧仁にも言っておくけど

 

よっぽどの危機がない限りは弧仁以外も視野にはいれてあげる。だけど弧仁が本当に危機にあるのなら、僕は他を見捨てて弧仁をとるよ」

 

「今回は、その対象となったわけか」

 

「そういうこと」

 

「しかし、それなら何故今櫻井弧仁は全快している」

 

前が激しく破れている弧仁の上着から覗かれる肌には傷一つない

 

まさに五体満足、全快している

 

「そうそう、話したいのはそこなんだよ。さっきからなんか違和感感じなかった?」

 

「違和感?」

 

「いつもの弧仁と違うところあったでしょ?」

 

身体には特に変化はなかった、なら呪術に変化が?しかしそんな端から見て分からない問題を擬きが問いかけるはずがない

 

なら精神的な変化か?弧仁の言葉を思い出す

 

『この力は仲間の力とか絆の力だとか、言うつもりはない。俺の手に宿るこの力は・・・ただの呪いだよ』

 

いや、以前から変わりない

真っ直ぐこちらを見つめて、迷うことなくはっきりと

 

・・・はっきりと?

 

「・・・!、言語機能」

 

「正っ解っ」

 

とんとんっと自身の喉を親指で叩く擬き

 

そう、いつもあった言葉の詰まりが全くなかったのだ

 

それに関しては、身体的かつ精神的なものによる障害である、と了子・・・フィーネは診ていたが・・・

 

「幼少のトラウマ、実験、その他諸々のお陰で弧仁の言語機能に関わる器官、様々なホルモンを分泌する器官、身体のその他諸々に障害を背負っていた。

 

それをなんで僕が今までそのままにしてたと思う?」

 

弧仁を守り、導くと豪語する擬きが、そのような障害をそのままにする理由はない・・・ということは

 

「治さなかったのではなく、治せなかった、のか?」

 

「またまた正っ解っ、花丸あげちゃう」

 

擬きはこれまで、弧仁が怪我を負った際には入れ替わり、自身にかける反転術式によって傷を癒してきた

 

しかし、あくまでもそれは弧仁の身体、本来の所有者である弧仁に対して、より細かな反転術式を施すことはできない

 

「そこに関しては僕の力不足ではないにしろ歯痒さを感じていたよ。でもここまで言えばなんで弧仁が全快したのか分かるでしょ?」

 

「櫻井弧仁自身が自分に反転術式を施した。しかし、それは今までは不可能だったはずだ」

 

「不思議なものでね。五条悟と同じく、弧仁は死に際で掴んだんだ。呪力の核心を」

 

目隠しの下で擬きは瞳を閉じ、思い出す。

 

弧仁が自身の元となった存在と同じものを掴んだ瞬間を

 

・・・

 

ポコン・・・ポコン・・・パチンッ

 

暗い暗い闇の中、そこにいる

 

漂っているのか、沈んでいるのか、浮かんでいるのか・・・さっぱり分からない

 

息は苦しくない

 

ポコン・・・ポコン・・・パチンッ

 

下から泡が立ち上り、割れる

 

瞳を開けても周りは真っ暗ではっきり見えない

 

耳には先程から途切れ途切れな声が聞こえる

 

「  だけでも逃げてッ!!」

「逃げるんだ!!  !!」

 

よく聞こえないけど・・・誰かが、必死に逃げるように伝えている

 

なんだが聞いたことのあるような・・・声

 

ポコン・・・ポコン・・・パチンッ

 

その声をもっとよく聞こうとしたら、また泡が立ち上り、割れる

 

「  !こっちに来るデスっ!」

「今は数少ない自由時間、ここで休もう」

 

周りが少し明るくなったからだろうか?

 

泡が割れると浮かぶ映像、

 

金と黒髪の・・・女の子?が自分の手を引いてどこかに連れていこうとしてくれている?

 

「あの子達の相手、大変かもしれないけどよろしくね  」

「疲れたらいつでもきていいよ」

 

今度は姉妹?のような人達が自分の頭を撫でてくれているようだが・・・誰だろうか?

 

ポコン・・・ポコン・・・パチンッ

 

また少し明るくなった

 

『そうだね、君のこれまでは独りの時間が長かったけど、これからは僕がいる・・・そうだ、孤仁(こうじ)なんてどう?独りから二人になるって意味で』

 

これはハッキリと分かる、先生と初めて出会って、名前をもらった時のこと

 

この時初めて自分は弧仁という人間となった

 

ポコン・・・パチンッ

 

「弧仁はもうアタシの弟だ!」

 

これは、クリス

 

あの時はなんだがよく分からなかったけど・・・今なら分かる、照れ臭くて寝たフリをしたあの日のこと

 

弟と認めてくれたことが嬉しかった

 

「そういった意味での息子でも大歓迎よ?」

 

そういって頭を撫でてくれたクリスの母ソネット、自分を迎えてくれたクリスの父、雅律

 

間違いなく自分に家族を教えてくれた人達

 

ポコン・・・パチンッ

 

「男一人のやもめ暮らし、俺も仕事があるから毎日は帰れないが、それでもいいなら来ないか?」

 

「大人として君を放っておくことはできないからな」

 

今度は弦十朗、自分を迎えてくれた恩人であり、かけがえのない父

 

ポコン・・・パチンっ

 

「もう未来ったら・・・けどこれで私たち三人は親友だね!」

 

「そうだね、ずっと一緒」

 

今度は響と未来、初めての友だち

 

別れたり、ぶつかったり、色々あったけど・・・それでも決して捨てることができない大切な友だち

 

ポコン・・・パチンっ

 

光が差し込んできた、もう暗さは感じない

 

「今日は楽しかったわ、ありがとう孤仁」

 

「身長伸びた時にはさ、次はお前が誰かの頭撫でてやれよ?お前がたくさんしてもらったみたいにさ」

 

翼と奏、大切なことをたくさん教えてくれたクリスとは違う形の姉達

 

そして、自分の永遠の一番の推しだ

 

「暖かいものどうぞ・・・にしても本当に飲むの?この砂糖増し増しココアを?そう・・・ちゃんと歯磨きしなきゃだめだからね?」

 

「きっと色んな人に自分の手で守れって言われたと思うよ。けどそんなこと近くにいなきゃできないし、色んなしがらみだってあると思う。だから分からないのならどうすればいいのか聞けばいいと、俺は思うよ。」

 

あおいと藤尭、自分が迷わないようにいつも指示をくれた人達

 

「これはマネージャーではなく、エージェントとしてでの言葉でもありません。ただの大人の一人言です・・・本当に大切なら、自分の近くで、自分の手で守りなさい」

 

エージェントの先輩として、時に厳しく指導してくれた緒川

 

そして・・・パチンっ

 

「もう聞いてると思うけど、弦十朗君に変わって私がこれから貴方の保護者役になるわ・・・といっとも立場上は姉にあたるのだけどね。改めてよろしくね、弧仁ちゃん」

 

もう一度全部失った自分にまた名前をくれた了子

 

例えそれが策略の一環だとしても・・・あの時確かに自分は嬉しかった

 

それが今はもう殺すしかない存在だとしても・・・あの時は

 

ザパァ・・・水面から浮かび上がる

 

どうやら自分は浮かんでいたようだった

 

目を開ける、そこに眩しくらいにこちらを照らす太陽と・・・

 

「や、走馬灯旅行どうだった?」

 

聞き覚えのある声を発して、見覚えのありすぎる髪、目隠し、衣装を身につけた男がいた

 

「え?ここがどこかって?慌てなくてもちゃんと教えてあげるよ

 

それよりここに戻ってきたからにはまだまだ生きるつもりなんでしょ?」

 

・・・分からない

 

「え?分からない?・・・しょうがないな、ほら一先ずソファ座って、なんなら寝転んでもいいから」

 

勧められるままに水面に浮かぶソファに座る

 

「うん、ようやく落ち着けたね。さぁそれじゃあ話そう。

 

内容はもちろんこれからの話だよ」

 

これから?

 

「けどまぁ時間はないから巻きでいこうか

 

分からないことは教えてあげる

 

だけどまず、君がどうするか・・・どうしたいのかを僕に教えて?行き先はそれから決めたらいいさ」

 

・・・どうする、どうしたい

 

今まで散々言われてきた言葉

 

それらをちゃんと自覚するまでは衝動的に動く感情と身体に身を任せていた

 

今ならちゃんと分かる

 

「守り、たい、皆、を」

 

「・・・そっか、なら生きないとね」

 

「けど、身体、動かない」

 

ここがどこかは分からないが、今の自分は眠っているような状態だということが分かる

 

そして、起きようとしても起きられないのだ

 

「うんうん、分かるよ。なんせ、君と同じ魂にいるからね」

 

「!」

 

その一言が指す意味は、この男の正体

 

少しだけ驚いたが・・・すぐに落ち着いた

 

「あ、そういえば会うのは初めてだもんね。改めて自己紹介しておこうか?」

 

「・・・ううん、大丈夫、だよ」

 

自己紹介なんていらないくらいには、知っているつもりだ

 

自分を導き、守ってくれる

 

ずっと側にいてくれる存在のことを

 

「そうだね、今更必要ないか」

 

「ここは、どこ?」

 

「ここは生得領域、君の心の中、普段僕はここにいるんだ」

 

「そう、なんだ」

 

「水平線が見える程に広く澄んだ蒼い海、雲一つない空・・・君の純粋無垢な心そのものだよ」

 

「けど、なにも、ないね」

 

「そんなことないさ、水面をよく見てごらん」

 

「?・・・!」

 

海をよく見てみると、海中には巨大な街が沈んでいて、たくさんの魚が泳いでいる

 

日に照らされて明るい底は、楽園のような景色だ

 

「さっき、まで、と、違う」

 

「そりゃ君の意識や想いがあやふやだったら暗くなるさ。けど今は大丈夫だからこうしてはっきり見えるんだよ。」

 

「そう、なんだ」

 

「建物は君が訪れた場所、そして魚達は君が出会った人達、最初はなにもない場所に少しずつ増えていったんだ」

 

「じゃあ、これが、俺の、守りたい、もの?」

 

「うん、そうだよ。そしてこのままだったらそれは失われてしまうよ」

 

「・・・」

 

水面に手を伸ばす、拒まれることなくその手は水の中へ

 

「この世界は君の心、望むならなんだってできるさ」

 

黄色、青、赤の魚が手に近づいてきた

 

後を追って、紫、オレンジ・・・たくさんの魚もやってきた

 

「ここにいる皆、君のことが大好きなんだね」

 

「・・・俺が皆のことが好きだからかな」

 

「そうだね」

 

「もう、一人じゃないね」

 

「うん、もう分かるでしょ?」

 

「今反転術式を自分に当ててる」

 

傷、今まで自分にあった違和感、障害が全てが次々と消えていく。

 

声と言葉もスラスラでてくる

 

「今まで弧仁が他人にしか反転術式使えなかったのはさ、自分のことを勘定にいれない弧仁の考え方があったからだよ。

 

身を挺して仲間を守りたい、そう思うのは立派だよ。

 

けど残された方の気持ちを君はちゃんと理解してなかった、弧仁が犠牲になる未来(みらい)なんて誰も望んでないんだよ。

 

他者を守るなら、自分自身が最後まで立ってるのが最低条件だ」

 

「・・・うん」

 

未来(みく)が自分の身を犠牲にしようとした時、すごく嫌だった

 

誰かの犠牲の上に立つなんてしたくなかった

 

それが大切な友だちなら尚更

 

「分かったなら・・・もういけるね」

 

「うん」

 

ポスッ、弧仁の頭に・・・『擬き』の手が乗る

 

「反転術式、その真の使い方を今から君に刻む。今の状態なら反動も少ないでしょ」

 

「うん、お願い」

 

ズキッ、少し頭が痛む・・・がすぐに治まった

 

「君が守りたいもの、全部守ってみせるんだ」

 

「うん、ありがとう・・・先生」

 

「!、面と向かって言われると嬉しいもんだね。さぁ・・・行ってきな」

 

「いってきます!」

 

そうして、弧仁は消えた。

 

残されたのは擬きのみ

 

「ふぅ・・・んん?あぁ君たちか、着いてきちゃったみたいだね。

 

見ての通り弧仁は生き返ったから、このお話はもうちょっと続くよ

 

けど、これからは僕が語るんじゃない

 

僕もこれから君たちと一緒に弧仁の行く末を見守ろうと思う

 

さぁそれではご清聴よろしく頼むよ

 

この世界唯一の呪術師の第二幕のはじまりはじまり~」

 

ドサッ、擬きはソファに座り、空を見る

 

その瞳に写るのは大切な愛弟子だけだった




シンフォギアさんぽ

『弧仁の幸せ家族計画』

母、ソネットさん
父、弦十朗、雅律さん
長女、了子
次女、奏、翼
三女、クリス
長男、弧仁

「こんな、感じ、かな」

『いやいやいや、なにこのとんでも家族』

「私と未来がいないっ!」
『そうじゃないでしょ』

「わ、私が姉なのか!?しかも奏と同じ・・・ふふふ」
『喜ぶところそこなんだ』

「なんでこんなに姉いるんだよ!それにこのままだとおっさんとパパが複雑な関係になるだろ!?」
『よかったまともなツッコミがいた』

「ダメ?」コテンッ

「「「くっ、許す」」」

『ダメだ!総じて弧仁に甘かった!!』
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