場面は戻りフィーネと対峙している擬きだったが、目隠しに手をかけて
「さて、そろそろ始めようか。頑張りなよ、弧仁」
そのまま首もとまでずり下ろした
開かれた瞳は片眼の蒼き六眼
「なんだ、擬きが相手ではないのか」
「言ったはずだよ、お前を祓うって」
「そう言って無様に私に敗北したことを忘れたか?」
「それは変えようのない事実だから言い訳できない、だけど同じ轍は踏まない」
その為の帳、内側からは出られないこの帳なら誰も巻き込まない
「今度はもう負ける理由がない」
「対した自信だな、だが今の私は完全にネフシュタンの鎧との融合に成功した。いくらお前が防御を喰い破る攻撃を放とうと、ダメージは入らない「それくらい大丈夫でしょ」!?なにを根拠に!」
まだ対策などは一切ないが、今なら自信をもって言える
「だって俺」
自分の一番の憧れであり、尊敬する人物のようになるために
「『最強』になるから」
ギュンッ!!
「!?」
以前より速くなった術式による瞬間移動で、フィーネの懐に潜り込み・・・
バキィッ!!!
「くっ!?」
呪力の籠った拳を叩き込む
自身を鼓舞し、奮い起たせる言葉を放った今の弧仁を止めることはできない
「そらそらそらっ!!」
バキィッ!メキッ!ゴシャッ!!!
「ぐぁぁっ!!?(前回よりも・・・立花響よりも重いッ!?)」
弧仁と響、両方と戦ったフィーネ
両方の拳を受け、それに加えたこれまでの研究から弧仁の呪力の籠った拳と響の拳では響の方が破壊力が高いと判断していた
しかし今の弧仁の拳は前回の戦闘、そして暴走していた響よりも破壊力を秘めており、更により速い連撃がフィーネに叩き込まれる
「ハッ!!!」
ドンッ!
最後に一番力を込めて叩き込む
フィーネは吹き飛ばされながらも体勢を立て直し、弧仁を睨み付ける
「カハッ!?・・・またこの短時間で成長したというのか」
「違う」
「!?」
「先生からもらった反転術式の真の使い方、それによって威力が上がったんだ」
反転術式の真の使い方、それを知ったことで術式をより繊細に扱うことができるようになったのだ
拳を放つその腕とフィーネの肉体、その間に蒼を起こし、蒼により肉体へと迫る腕の加速力を上げる
その加速は単純なパワーに繋がる
「擬きによるものか、結局お前は擬きに頼らないとなにもできないのだな」
「その通りだよ、俺は弱い。守ってるつもりでも、いつだって俺は守られてる」
擬きや、弦十朗、緒川、藤尭、あおい、といった頼れる大人たちはいつも、弧仁の身を案じてくれている
響、翼、クリス、奏、未来、ぶつかり合ったとしても心を支えてくれた友と姉
「だから本当なら俺が守るなんて言うのは間違ってるのかもしれない」
「ならばなぜ守ってみせると吠えるっ!」
上からネフシュタンの鞭が灰色の球体を纏い、迫ってくる
それに対して右手の親指、人差し指、薬指の三本を立て・・・答える
「俺がそうしたいからだよ」
今までとは違う、赫い(あかい)球体が手の前に現れる
後はそれを放つだけ
「術式反転『赫』」
キュゥゥゥン・・・ズドンッ!!!
「!?」
弧仁が赫を唱えると放たれた赤い光がネフシュタンの鎧の鞭を・・・そしてそれに引っ張られる形でフィーネも吹き飛ばされ、帳にぶつかる
「(これは、反転術式に使うエネルギーを術式に用いた攻撃、効果は)」
どこにでもある無限を現実に呼び出す無下限術式
自身に近づくものか遅くなりたどり着くことがなくなるニュートラルの使い方
その力を強化、空間に虚構を生み出し、収束する反応を作り出して引き寄せる『蒼』
そして今まで自身に反転術式のエネルギーを使うことができなかったが故にできなかったそれを可能にし、新たに得た力
その名は術式反転『赫』
『蒼』を反転させるその効果は収束ではなく発散、対象を弾く力
強すぎるその反応は鞭だけでなく、それを操るフィーネごと押し飛ばしたのだ
「(いくら再生するといっても、こちらに有効打がないのが事実、何度もこれを喰らうのは煩わしいな)」
「(だが、奴にも有効打がないのも事実、そしてなにより無限の再生力をもつネフシュタンに対してあちらは限りのある呪力・・・長期戦になれば有利になるのはこちらだ)」
いくら強い力を持とうとも、限りがあるのなら長期戦に持ち込めばいい・・・そう思っていたフィーネ
「考え事?」
「!」
そこにまたもや瞬間移動で迫った弧仁
握られた右の拳・・・固く握った瞬間に今なら放てると確信した。
黒く光る拳を振りかざし・・・
「黒・・・」
「!」
「閃!」
!
「ッ!!!」
肉体にに響く一撃、再生されるといえど衝撃が体を巡る
まだこれだけでは終わらない、止まらない
次は左拳を固く握り、下から突き上げるアッパーを放つ
「黒閃」
!!
「なっ、!!?」
二度目の黒閃
連続で出したのは弧仁も初めてだった
黒閃による効果である呪力を息をするかのように操れる全能感
そして初めての連続の経験による高揚感
それらは新たな火種となる
「黒閃」
!!!
次は右足、横に薙ぎ払う蹴りにも黒い火花が纏われていた
当然吹き飛ばされるフィーネ、その落下地点に目を向け・・・
ビュンッ!!
瞬間移動、左足に呪力を纏い蹴り上げる
!!!!
もう言わずとも黒閃へと変化した一撃を実感
上に吹き飛ぶフィーネ、負けじとネフシュタンの鞭を弧仁に向かって放つ
ガシッ!ガシィッ!
「なにっ!?」
「!」ニィッ
呪力を込め手を保護しながら鞭を掴みとり・・・グイッ!
己の方へと手繰り寄せる、今度は逆に引き寄せられたフィーネ
鎧の飛行能力で退避しようと試みるが
「(飛べない!?まさかっ!?)蒼か!?」
「ご名答」
フィーネを引き寄せるために、逃がさないために・・・蒼を使い、更に加速させて引き寄せる
それがこちらに向かってくるのに合わせて・・・拳を握る
『おいおい、まさか』
驚きつつも、喜びを孕んだ擬きの声色
『越えていくのか!?僕や七海を!!』
五条悟の記憶の中で、黒閃を連続で放つことができた人物とその回数がある
「調子がよかっただけ」と言っていたらしいその後輩が放った黒閃の連続回数は・・・4回
今の弧仁は右拳、左拳、右足、左足による計4回を叩き出していた
既に最高記録に弧仁は並んでいる
・・・だが
一度臨死体験をし、体の障害がなくなり、身には余るほどの呪力(ちから)が巡る今の弧仁
反転術式により正常に分泌されるようになったアドレナリンにより、これ以上ないほどにハイになりつつも、目の前の敵に対しての集中力
そしてなにより
この日の弧仁は黒い火花に愛されていた
「黒閃ッ!!!」
!!!!!
蒼による引き寄せる力の加速、それに合わせたドンピシャのタイミングで叩き込まれた5回目の渾身の黒閃
メキメキメキメキィィッッ!!!
もはや突き刺さった拳の触れた鎧と骨と肉体が呻き、ひび割れ、折れていき・・・終いには再び吹き飛ばされ、帳の壁に叩きつけられる
ギュンッ・・・ズドンッ!!!
「ハァッハァッ・・・ッ!うっ・・・ェェッ!!」
ビチャビチャビチャ・・・
ひび割れた部分を押さえながら立ち上がるも喉の奥から血と胃液が駆け上がり、それらが混ざったものを吐き出す
「(肉体の、至る箇所が、破壊された・・・鎧の再生が追い付かないレベルで損傷を与えたのかっ!?)」
「そうじゃない、もう気づいているでしょ」
「!!」
暴走した響の攻撃により体を裂かれたとしても再生したネフシュタンの鎧と、その鎧と融合した肉体
その肉体が呪力による連撃により、ありえないダメージを負っている
そして、今その再生力が追い付いていない程のダメージが・・・
「ち、違う・・・これは追い付いていないのではない!?」
「・・・貴女が教えてくれたんだ。フォニックゲインと呪力の相性は悪いって」
「!!、まさか!」
「そのまさかだ」
フォニックゲインと呪力の相性は悪い
その関係はシンプルであり、出力の高い方が圧殺するというもの
しかし一つだけ例外が存在する
完全聖遺物であり、無限の再生力を持つネフシュタンの鎧の機能が停止した理由は
「完全聖遺物のフォニックゲインに匹敵する呪力をネフシュタンの鎧に注いだのか!?」
「圧殺して破壊までとはいかなかったけどその機能は止まったみたいだね」
呪力、術式、そして黒閃による連続攻撃により蓄積された呪力はネフシュタンの鎧の機能を停止させた
「もう逃さない・・・これで終わりだ。なにか、言い残すことは?」
確実にとどめを刺すためにフィーネから目を離さない
ここ(帳の中)なら、人質にとる相手もいない
今度こそ終わりにするために
「なら一つ聞かせてほしい・・・貴様はなぜそれほどの力を持ちながら、この世界の変革を行わない」
「?」
「知っているはずだ。この世界は争い、奪い合い、騙しあい・・・一つの真実も明らかでない、腐敗した世界だ」
「・・・」
「お前ほどの力があるならこの世界など簡単に破壊し、作り替えられる!貴様が望む世界に変えられる!それなのに、なぜなにも成さないのだ!?」
巫女として「あの方」に想いを伝えるために、塔を作り、近づこうとしたフィーネ
塔を破壊され、唯一交わすことのできた統一言語も取り上げられた今も、その想いは変わらない
だからこそ、様々な策略を経てカ・ディンギルを作り、月を破壊し、統一言語を取り戻そうと、そして今度こそ想いを伝えるために
その一心で何度も命を繰り返してきてフィーネ
フィーネが何度も繰り返して繰り返して、ようやく目的に手がかかりそうになったそれ・・・だが弧仁ならそれを即座に行える
弧仁には世界を変えられるだけの力がある
そして大切な人を守るという目的もあり、そんな世界にしたいと願っている
だが、弧仁は世界を変えようとはしない
「・・・その通りかもしれないね。俺が生きた十数年ぽっちでも、人の嫌なところはたくさん見てきたよ」
「そんな世界から大切な者が傷つく恐れのない世界を変えたくないのか?」
もしもこの世界が大切な人たちが傷つく恐れのない世界だったら
奏は家族を失うこともない、翼も家を気にすることなく、ツヴァイウィングとして二人はどこまでも飛び続けるだろう
クリスも、争いの中にはおらず、歌を嫌いになることなんてなく・・・家族と共に歌を奏で続けることができたのだろう
響と未来も、傷一つない手でずっと二人手を取り合いながら、たくさんの笑顔の元で・・・誰かの悪意に晒されることなんてなく生きていたのだろう
そもそもノイズさえいなければ弧仁も、皆もなにも失うことはなかった
「それは勿論思うよ、そうなればいいなって思う」
「なら、何故なにも成さないのだ」
五条悟の力といえどこの世界においてその絶対的な力は弧仁のもの
決してその力を振りかざすことはなく、ただ守り続ける
そう決めた信念があるからこそ、迷いなく自分の考えを言うことができる
「確かに世界は嫌なことばっかりだ、喧嘩するし、騙しあって嘘ばっかり・・・だけどしょうがないんだよ」
「しょうがない?」
「しょうがないんだよ。どんだけ嫌でも、この世界に生きる大切な人がいるから・・・だから俺は壊さない」
どんなに残酷な世界でも、そこに生きる大切な人たちがいるから、弧仁は壊さない
逆にもしもいなかったらこんな世界など即に壊しているに違いない
「俺はヒーローじゃない、貴女がこの世界を滅ぼそうがなにしようが俺の大切な人たちが傷つかない限りなら、どうでもいい
だけど、もうここに大切な人たちが生きちゃってるから、俺はそれを守るよ」
壊したくても、この世界で大切な人たちが生きてしまっているから壊せない
弧仁はこの世界がどうなろうと、大切な人たちが傷つかないならその他大勢はどうでもいいのだ。
その他大勢の全員が死のうが生きようが・・・少しくらい心は痛むだろうが心底どうでもいい
大切な人たちがいる世界だから、しょうがないのだ
世界を壊さない理由なんて、それだけでいい
「そして、貴女は俺の大切なものを傷つけた、だから祓うよ」
「・・・イカれてるな」
フィーネが吐き捨てるように溢した一言、それに対して
「誉め言葉どうも・・・それじゃあね」ニコッ
そう言って弧仁は笑顔で答え、振り上げた拳は、無慈悲にフィーネに向けられた
シンフォギアさんぽ
呪力とかなしで腕相撲をしたら
弧仁VS未来、VSクリスはギリ弧仁が勝つ
弧仁VS響、VS翼なら弧仁は普通に負ける
弧仁VS弦十朗、腕がもげる